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映画『劇場』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『劇場』の概要:芥川賞作家となったお笑いタレント又吉直樹の2作目となる同名小説を原作に、行定勲監督がメガホンを取った一作。劇団での成功を夢見ながらも、孤独を恋人で埋める男の選択を追う。

映画『劇場』の作品情報

劇場

製作年:2020年
上映時間:136分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:行定勲
キャスト:山﨑賢人、松岡茉優、寛一郎、伊藤沙莉 etc

映画『劇場』の登場人物(キャスト)

永田(山崎賢人)
中学からの同級生と劇団「おろか」を立ち上げ、上京したものの鳴かず飛ばずで苦しい最中に沙希と出会う。プライドが高く、沙希の前では強がることが多いがとても繊細な男性。
沙希(松岡茉優)
偶然とある画廊の前で永田に声をかけられた女性。夢を持って上京し、永田と孤独を分かち合いながら寄り添って生活していく。誰もが口をそろえて「いい子」だというとても素直なタイプ。
青山(伊藤沙莉)
永田の劇団の元劇団員。永田のキツイ言葉に耐えかね退団するも、演劇への熱量は変わらずライターとして関係していく。偶然再会した永田に仕事を与える存在。

映画『劇場』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『劇場』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『劇場』のあらすじ【起】

「いつまでもつだろうか」限界間際の永田はとある画廊の前で佇んでいた。偶然、隣に立った沙希に目を奪われた永田は思わず後を追い、「靴同じですね」と声をかけてしまう。お茶に誘いたくとも持ち合わせのない永田は、とりとめのない会話を必死に続ける。「お金を貸して欲しいということですか?」と問う沙希だったが、一緒にカフェへ行きコーヒーをごちそうしてくれた。

永田は高校の同級生と小劇団「おろか」を立ち上げ活動しているが、光が当たる目途はない。「いつまでもつだろうか」と自分の不安と背中合わせな日々を送っている。一方で沙希は女優を目指し青森から上京したという。沙希と連絡先を交換できたものの、自信のない永田は電話すらできずにいるのだった。

劇団員からのクレームを受けた永田。自分の演劇を疑わない永田は、劇団員にキツイ言葉で返してしまった。帰り道、自分があげた自転車に乗った劇団員に傘で殴られてしまう。作品を生む苦しみから逃げようと沙希への連絡を試みた永田。断られたと勘違いし絶望するも、沙希の返事はOKという意味だった。

どこへいっても声をかけられる沙希。自分と同じペースで歩いてくれる沙希に居心地の良さを覚え、永田はどんどん魅了されていく。新しく書き上げた脚本「その日」の主演に沙希を起用した。これまで酷評続きだった劇団だが、沙希の名演が評判を呼びは少しだけ注目を浴びた。誰もが沙希に脚光を浴びせた打ち上げ以降、永田はもう沙希を舞台に上げることはなかった。

劇団は定期公演をできるようになった。稽古日が増え、日雇いのバイトができない永田は沙希の家に転がり込んだ。やましいこともしても、沙希の元へ帰る日々。互いに影響を受け合う二人だが、沙希の親からの仕送りを食べさせてもらうことには耐えかねる永田。プライドが邪魔をして、素直にお礼も言えずにいるのだった。

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映画『劇場』のあらすじ【承】

沙希に甘やかされた永田。「ここが一番安全な場所」という沙希は、贅沢もわがままも言わず寄り添ってくれるが、永田は家賃も支払わず我慢などせずに生きている。しかし時に永田は嫉妬に狂う。掴み切れない永田の言動に振り回された沙希は、学校に行かなくなった。朝から洋服屋で働き、夜は近所の居酒屋で働き詰める。一方で永田は夕方過ぎに起きて、演劇のことを考え歩き回る日々を送る。何も浮かばないアイデアを追い求める振りをして逃げているだけ日々である。

野原に誘われ、同い年の演出家が率いる劇団の演目を見た永田。その才能に嫉妬し、涙を流してしまう。その夜、偶然にも再会した元劇団員・青山から文章を書く仕事をもらえることになった。この頃から沙希が笑っていてくれればよかった日々は、形を変え始める。

一緒に広い家に引っ越そうという沙希の提案を断り、借金をして永田は一人暮らしを始める。仕事を理由に一人になった永田は、初めての居場所に安堵するも不意に沙希を求めてしまう。そうして自分が沙希に守られていたことに気付くのだった。

映画『劇場』のあらすじ【転】

自分のことでいっぱいだった永田は、ようやく沙希のことに目を向け始める。沙希のバイト先には永田が泣いてしまった劇団関係者が多く出入りしていることを知った。しかし沙希は恋人が演劇をやっていることは誰にも言っていないことも知り、嫉妬に狂うのだった。

沙希と距離を置いた永田だったが、酒を飲んだ時だけは沙希の家に行ってしまう。しかしこの頃から沙希が永田と少しずつ距離を取り始めた。そして酒の力を借りてこれまでの不満をぶつける。27歳を迎えた沙希は永田の考えも何もかもわからなくなっていたのだ。

いつからか沙希から笑顔が消えていた。「大切な話がある」という連絡を沙希から受けた永田だが、逃げ続けてしまった。沙希の職場を訪ねた永田だが、すでに店長と帰ったと聞かされる。そこで沙希と一緒に働く劇団員と対面し、劣等感に苛まれるのだった。

沙希の自転車を見つけ、「帰ろうか」と声をかける永田だが沙希は目も合わせなかった。これまでの数年間できなかった後悔を取り戻すかのように、永田は沙希を丁寧に、丁寧に扱うのだった。

映画『劇場』の結末・ラスト(ネタバレ)

精神的に不安定になることが多くなった沙希は、夜に眠れなくなった。酒の量も多くなった沙希を守ろうとする永田は、空振りばかり繰り返すのだった。その姿を見ていた野原と青山は「沙希と別れるべきだ」と説得を始める。しかし永田には人の意見を受け入れる余裕など常日頃持ち合わせていない。「最後には笑えればいい」と二人に伝え、沙希の元へ戻るのだった。

これまでならば沙希が自分以外の人を褒めることなど受け入れられなかった永田。ようやく沙希と同じ目線で話をできるようになった矢先に、沙希は実家に戻る決心をしていた。アパートの荷物を全てそのままにして永田の元を離れた沙希。「東京」の大部分を占める永田から解放された沙希は、回復し実家の近くで仕事を見つけるのだった。

永田は部屋の引き渡しに来た沙希と久々に再会する。一度だけ沙希を舞台に立たせた脚本を読み合うフリをして、永田はこれまでの後悔を伝え始める。そして沙希も即興のセリフでこれまでの感謝を伝えるのだった。

まるで舞台の上に居るように沙希に言葉を投げる永田。「一番会いたい人に会いに行く。こんな当たり前のことが何でできなかったんだろうね」と笑う永田は、形にならなかった明るい未来を語り続ける。まさにそこは舞台の上であった。その様子を客席から見る沙希は「ごめんね」と繰り返し涙を流すのだった。

映画『劇場』の感想・評価・レビュー

松岡茉優の一人勝ちである。圧勝だった。生活のリアリティーに共感する物語ではないものの、演者の作る世界観と監督の色付け、そして原作を活かした脚本の言葉選びのバランスが秀逸な一作である。明るい瞬間などない。永田と沙希、二人の笑い合う時間は暗雲への序章でしかないのだ。物書きでありお笑いタレントならではの締め方なのだろうか。綺麗に物語を構成する要素を活かした幕の降ろし方であった。劇場公開と配信の同日開始という見る者に見る場を委ねる戦略はどう出るのか、実験的な一作であった。(MIHOシネマ編集部)


原作を読んでいるときは、主人公の永田を著者である又吉直樹のようなイメージで捉えていたため、映画で観ると少しギャップを感じた。永田の言動は結構ひどいのだが、原作のときは半分ふざけてそうしているようにも思えて可笑しかった。しかしそれを山崎賢人がすると本当に冷たい男に見えてしまうのが残念だった。
松岡茉優はひたむきな沙希を好演していて、不器用な若者の切ない恋に浸ることができた。

最後の臨場感がとても素晴らしい。このタイトルが「劇場」であることが一気に胸に迫ってくるラストだった。(女性 40代)


松岡茉優の少し気の強そうな雰囲気が嫌味っぽく感じてしまい苦手だったのですが、この作品で彼女が演じた沙希はとにかく凄かったです。
可愛いとか綺麗という褒め言葉はよく聞きますが、彼女の場合は「いい子」というのがピッタリでしょう。もちろん本当にいい子なのですが、時にはそれがいい子「ぶっている」ように見え、そこの加減をちょうど良いバランスで演じていたのが素晴らしかったです。
永田のしょうもないプライドなんでどうでも良くなるほど、沙希の純粋なキャラクターに魅了されてしまいました。(女性 30代)

この記事の編集者
影山みほ

当サイト『MIHOシネマ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ局の映画番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『シネマヴィスタ』の編集長も兼任しています。

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