この記事では、映画『MASTER/マスター』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『MASTER/マスター』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『MASTER/マスター』の作品情報
上映時間:143分
ジャンル:サスペンス、アクション
監督:チョ・ウィソク
キャスト:イ・ビョンホン、カン・ドンウォン、キム・ウビン、オ・ダルス etc
映画『MASTER/マスター』の登場人物(キャスト)
- チン・ヒョンピル(イ・ビョンホン)
- ワン・ネットワークの会長。人当たりが良く、口が上手い。ねずみ講や慈善事業を隠れ蓑に、多額の金を稼いでいる。政財界や警察、官僚などとの繋がりも強く、電話一本で事態を収拾できるほどの力を持つ。
- キム・ジェミョン(カン・ドンウォン)
- ヒョンピルを逮捕し、政財界の腐敗も一掃しようと考える刑事。強い信念を持ち、ただひたすらに真っすぐ突き進んでいく。
- パク・ジャングン(キム・ウビン)
- ヒョンピルの右腕。ヒョンピル、ジェミョン、キムママから様々な話を持ちかけられて右往左往する。事件解決には不可欠な人物で、正しい選択を試される。
- キムママ(チン・ギョン)
- ヒョンピルが信頼を置く幹部。長く行動を共にするが、次第に反乱を考えるようになる。
映画『MASTER/マスター』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『MASTER/マスター』のあらすじ【起】
マルチ商法で成り上がったチン・ヒョンピル会長のワン・ネットワークは、新たに貯蓄銀行を買収して、世界初の金融投資会社として飛躍しようとしていた。法をかいくぐり、マネーロンダリングで莫大な利益を上げているヒョンピルの悪事を暴こうと、キム・ジェミョン刑事は捜査を開始する。
ヒョンピルにはキムママとパク・ジャングンという右腕たちがいたが、ジェミョンはジャングンに接触し、彼の弱みをちらつかせて執行猶予と引き換えに、ヒョンピルの裏の繋がりを証明する帳簿を持ってこいと指示する。
ジャングンはヒョンピルを警察に売り、そのまま逃亡することを計画。ワン・ネットワークの電算室を担当する親友のギョンナムにその話を持ちかけ、会社の金500憶を持って二人で逃げることにした。
ヒョンピルの屋敷の地下室に案内されたジャングンは、そこで政財界や警察などとの黒い繋がりを記した帳簿を目にする。ジェミョンは留守中に帳簿を盗む計画を練り、ジャングンに伝えた。
計画の実行日、ヒョンピルの事業に関わっていた政治家が殺され、ジャングンは身の危険を感じる。大急ぎでヒョンピルの所に向かった彼は、自分がスパイだと告白。偽の帳簿を渡して隙を作るので、その間に密航することを勧めた。
だが、ジャングンは帳簿を上手くすり替え、本物の帳簿を持ち出すことに成功する。しかし、ヒョンピルもバカではなく保険として殺し屋をジャングンの車に乗せていた。ジェミョンが発見した時には、ジャングンは腹部を刺されて重体となり、帳簿もなくなっていた。
ヒョンピルはキムママに指示し、ワン・ネットワークの全てのデータを破棄させた。電算室にも殺し屋を送り、施設ごと爆破。命からがら逃げだしたギョンナムは難を逃れる。ヒョンピルはワン・ネットワークに集まっていた金を全額、別の口座にロンダリングすると、帳簿を手にキムママと密航して姿を消した。
大失態を犯したジェミョンは辞職を願い出るが、窓際族として残される。ジャングンは一命を取り留めた。

映画『MASTER/マスター』のあらすじ【承】
一年後、ヒョンピルとキムママの焼死体がベトナムで発見されたと報道される。落ちぶれたジャングンと再会したジェミョンは、一年かけて調べ上げた二人の足取りを彼に見せた。彼らは死んでおらず、どこかで生きている。ヒョンピルが死んだと報道されたことで、窓際族から解放されたジェミョンは、かつての部下たちと、ジャングン、ギョンナムと共に、再び捜査を開始していく。
ヒョンピルとキムママはマニラにいた。慈善活動団体を隠れ蓑に、マニラの議員に宅地開発の共同事業を持ちかけ、金を奪い取るつもりだった。議員は話に乗ってくるが、ヒョンピルに事業資金の半分の3兆ウォンを一ヵ月で準備してほしいと言われ、少し動揺する。金を工面するために、韓国のフィクサーであるシン先生から金を借りたいが、彼女は全く交渉に乗ってこない。
ジェミョン達は、ワン・ネットワーク被害者の会の代表を務めるファン弁護士が、ヒョンピルと繋がっていることを突き止めた。金の洗濯屋を探していると知り、ジェミョンはその筋のプロに化けてファンに接触。彼を本物だと信じたファンは、仕事を依頼してきた。
ヒョンピルは、次第に後ろ盾の政治家にも横柄な口を利くようになっていた。蚊帳の外にいるような疎外感が湧き上がっていたキムママは、ヒョンピルへの反乱を意識しだす。
映画『MASTER/マスター』のあらすじ【転】
ヒョンピルを騙すには現金が必要だ。ジェミョンはシン先生の元を訪ね、状況を説明した。行き過ぎた行為に憤りを感じていたシン先生は、口約束で3兆ウォンを貸してくれた。ジェミョンはヒョンピルに逃げられないよう、更に大きなプロジェクトを提案し、金に目がない彼は、それに飛びついてきた。
潮時だと感じたキムママは、ジャングンに電話を掛け、マニアで会いたいと告げた。ジェミョンはヒョンピルと直接会って取引したい持ちかけ、ヒョンピルもそれに合意した。何も知らないジェミョンは部下とジャングンを連れてマニラへ。
マニラ入りしたジャングンはキムママと密会し、彼女の計画を知らされる。今回の事業計画で集まった6兆を奪って逃げるので手伝ってほしいのだそうだ。ジャングンが、保険として帳簿がほしいと言うと、手数料として10%の6000憶も渡すと言われ、心がぐらつく。
作戦が決行されたが、早々にジェミョンが拉致されてしまう。焦ったジャングンはキムママに連絡し、帳簿を手にした彼女と合流。しかし、彼女は誰も信じられないと言い、そのままヒョンピルの所へ向かった。
ジェミョンはヒョンピルの所に連れてこられ、遂に二人は対面した。金の洗浄が始まり、綺麗に洗われた6兆はひとつの口座に収まる。そこにキムママがジャングンを連れて到着するが、彼女の反乱を感づいていたヒョンピルの指示によって、キムママは射殺された。
ヒョンピルはジェミョンがシン先生と密会している写真を入手し、刑事だと気づいていた。ジェミョンはヒョンピルに命令され、6兆を彼の口座に送金。パスワードを入力して入金を確認したヒョンピルは大喜びした。
映画『MASTER/マスター』の結末・ラスト(ネタバレ)
ヒョンピルはマニラから密航していこうとする。だが、不敵に笑うジェミョンを不審に感じ、口座を確認してみると、6兆はゼロになっていた。シン先生の写真などは全て工作で、ジェミョンの目的はヒョンピルに口座のパスワードを入力させることが目的だった。金を失ったヒョンピルは怒り、ジャングンを人質に逃走していった。
だが、ジェミョンの追跡から逃げ切れず、警官隊に包囲されてしまう。ヒョンピルは権力者に電話を掛け、助けを求めようとするが、電話の相手は着信拒否を決め込んだ。手錠がはめられ、念願のヒョンピル逮捕が現実となった。
ジェミョンに言われ、あるプログラムを書いたジャングン。それは、ヒョンピルの口座の6兆をワン・ネットワークの被害者たちに返金するというものだった。実行をためらうジャングンに、お前がやるべきだと背中を押すジェミョン。ジャングンはキーを叩き、金は送金されていった。ジャングンは暗い過去から解放され、ジェミョンと別れていった。
帳簿を手に行動を開始したジェミョン。多くの部下を連れ、悪にまみれた政治家たちを一掃しに行く。その足取りは力強かった。
映画『MASTER/マスター』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
イ・ビョンホンのスター性を逆手にとった味のある悪役がいい。とてつもなくスピーディに話が進展する中で裏切りや騙し合いが展開されるが、構成が見事なため破綻せずに飽きさせない。製作費、技術的にも韓国映画のクオリティの高さを感じさせる。韓国は国を挙げて映画産業を活性化させているが、プロットの組み方を見ても、実にハリウッド的になったと感じた。エンターテインメント性では、日本映画は随分と水をあけられてしまったのかもしれない。(MIHOシネマ編集部)
韓国で実際に起きた金融詐欺を基にした映画です。権力を手に入れた悪徳詐欺師の会長役にイ・ビョンホンが見事にハマっています。裏の顔を一切見せない会長の悪行を暴こうとする捜査員。捜査員の腕前は本物で見ごたえある対決になっています。そこにさらに割り込んでくる天才ハッカー。いや凄いです。面白過ぎます。これだけで前半というのも驚きです。マニラでの対決も最後まで読めない展開でした。韓国映画の底力を感じた作品です。(男性 20代)
人種・権力・階級といった重いテーマを、スリラー的展開で魅せる力作。特にガイル教授の理想と、ゾーラやジャスミンが感じている現実とのギャップがリアルで痛烈。大学という「知の場」が、偏見と差別に満ちた空間として描かれているのが印象的でした。ラストの「真実」によって、ジャスミンが抱えていた違和感が一気に爆発する構成も見事。心理ホラーのような静かな怖さが終始漂っていました。(30代 女性)
黒人女性が主人公の物語として非常に意義深く、現代アメリカの差別構造を鋭く描いた作品でした。ジャスミンの周囲に漂う「説明できない不安」が、次第に現実の差別や組織の偽善とリンクしていく様子が本当に怖い。ホラーというよりも、社会の闇を突きつけられるような不快感があり、それが逆にこの作品の大きな魅力です。ガイルの“正しさ”も、最終的には権威を守るための仮面に過ぎなかったのだと気づかされました。(20代 男性)
物語の後半で明かされる「ガイルは実は白人だった」という衝撃の事実に、思わず息を呑みました。黒人であるかのように振る舞い、大学の“ダイバーシティの象徴”として存在していたという設定は、非常に皮肉的で、ゾッとします。ラストにかけてジャスミンがすべてを拒絶していく様子には、彼女の怒りと絶望が凝縮されていて共感しかなかったです。リアルな問題をファンタジーなしで描く、骨太な社会派スリラーでした。(40代 女性)
大学内でのマイクロアグレッションや構造的な差別を、サスペンスの手法で描いているのが興味深かったです。何気ない言動の裏に潜む悪意や偏見に、観ていて居心地の悪さを感じる反面、だからこそ現実に即していると納得しました。ホラーではなく、現実そのものが恐怖というメッセージが強烈で、観終わった後も余韻が残りました。教育機関における偽りの多様性というテーマは、もっと語られるべきです。(50代 男性)
演出も音楽も不穏な空気感をずっと維持していて、見ている側も息が詰まりそうな作品でした。ジャスミンの精神が徐々に追い詰められていく様子と、大学側の“対応”が完全に他人事なのがリアルすぎて怖かった。ガイルの正体が明らかになる瞬間の虚無感は、本作の中でも特に印象深いシーンです。「正義とは何か」「黒人であるとは何か」をここまで鋭く問う映画はそう多くありません。(30代 男性)
ブラックカルチャーを都合よく利用する白人社会の構造が浮き彫りになった、非常に痛烈な映画。ガイルの存在は、観客の良心をも試してくるような存在で、彼女に共感していた分、ラストで裏切られる衝撃は大きかったです。ジャスミンの孤独や精神的な崩壊も丁寧に描かれていて、見ているこちらまで苦しくなりました。明確な悪人がいないからこそ、この映画の構造はより残酷です。(20代 女性)
社会派映画でありながら、ホラーのような雰囲気があり、観る者に絶えず不安を与えてきます。黒人であること、女性であること、若者であること、それぞれの立場が重なり合い、ジャスミンの立場がいかに不安定かを突きつけてくる。結末で彼女が自分を見失い、ついには全てから離れるという選択をしたことが何より切なかったです。差別は、単なる言動だけでなく、構造そのものに根づいていると実感させられる一作でした。(40代 男性)
差別を“幽霊のような存在”として描くというアプローチが秀逸。目には見えないけれど、確かに存在し、常に人を追い詰める。ジャスミンの心理描写がとてもリアルで、彼女が感じている違和感や孤独が画面越しに伝わってきました。ホラーを期待すると肩透かしを食らうかもしれませんが、社会的な恐怖をテーマにした現代的なサスペンスとしては非常に優れた作品です。(30代 女性)
映画『MASTER/マスター』を見た人におすすめの映画5選
ゲット・アウト
この映画を一言で表すと?
差別の“善意”が恐怖に変わる、現代社会をえぐる社会派ホラー。
どんな話?
黒人青年が白人の恋人の実家を訪れたことから始まる不可解な出来事。親切に見える家族の言動が次第に狂気を帯びていき、やがて予想もしなかった真実が明らかになる。人種問題をブラックユーモアとホラーで描く傑作。
ここがおすすめ!
『MASTER/マスター』同様、表面上は「歓迎」や「好意」の皮をかぶった差別が描かれ、社会の奥底に潜む偏見を突きつけてきます。ホラーとサスペンスのバランスが絶妙で、エンタメ性と社会性を兼ね備えた1本です。
ドゥ・ザ・ライト・シング
この映画を一言で表すと?
暑い夏、感情が爆発し人種間の対立が露わになる社会派ドラマ。
どんな話?
ブルックリンの街角で働く青年ムーキーと、彼を取り巻く住民たちの姿を描く。日常の些細なやりとりの中で、静かに積もる怒りや差別意識が一気に噴出する瞬間を、スパイク・リーが鋭く描写。
ここがおすすめ!
人種問題を語る上で避けて通れない金字塔的作品。明確な“悪”がいない中で、偏見や無意識の差別がどのように暴力に繋がるかをリアルに描いています。『MASTER/マスター』のような問題提起型の作品が好きな方にぜひ。
キャンディマン(2021)
この映画を一言で表すと?
都市伝説と人種問題が融合した現代的ホラーの進化系。
どんな話?
シカゴの再開発地区で語り継がれる“キャンディマン”という都市伝説。芸術家の青年がその物語に取り憑かれていく中で、黒人の歴史と暴力の連鎖が明らかになっていく。
ここがおすすめ!
単なるホラーではなく、黒人の歴史やトラウマが強く織り込まれた重厚なストーリー。映像美も際立っており、視覚的なインパクトも大。社会的メッセージとジャンル映画の融合が『MASTER/マスター』に通じる作品です。
ラヴァーズ・ロック(『スモール・アックス』シリーズより)
この映画を一言で表すと?
音楽と愛と自由を謳う、静かな抵抗と希望の物語。
どんな話?
1980年代ロンドンの西インド系移民コミュニティで開かれたハウスパーティーを舞台に、差別と排除の中で育まれる若者たちの一夜を描く。ほぼ全編が音楽とダンスで構成された実験的な一本。
ここがおすすめ!
台詞よりも感情で語る映像詩のような作品で、黒人文化の誇りや連帯が美しく描かれます。『MASTER/マスター』のように「声にならない声」を扱った作品が好きな人にぴったりです。短編としても見やすいのも魅力。
ディア・ホワイト・ピープル(映画版)
この映画を一言で表すと?
ユーモアと鋭さで大学の“多様性”を斬る、風刺的キャンパスムービー。
どんな話?
名門大学の黒人学生寮で起きた“人種差別パーティー”をきっかけに、学生たちがそれぞれの立場から声を上げていく。SNS世代ならではの視点で、現代の差別問題を鋭く描く。
ここがおすすめ!
『MASTER/マスター』と同じく、“リベラル”を掲げるキャンパスの内側に潜む差別意識を鋭く突く内容。軽妙な語り口ながら、その裏にある怒りはリアルで強烈。シリーズ化されたNetflixドラマも必見です。
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