映画『ルームロンダリング』の概要:霊が見える力を持つ御子は、叔父の悟郎の元で事故物件に住むというルームロンダリングの仕事をしていた。いわくつきの部屋には、さまざまな霊が住んでおり、御子は彼らの相手をしなくてはならなくなる。
映画『ルームロンダリング』の作品情報
上映時間:109分
ジャンル:コメディ、ラブストーリー
監督:片桐健滋
キャスト:池田エライザ、渋川清彦、健太郎、光宗薫 etc
映画『ルームロンダリング』の登場人物(キャスト)
- 八雲御子(池田エライザ)
- 霊が見える少女。父は他界し、母は失踪。祖母に育てられていたが、祖母の死後、悟郎に引き取られて彼の元で仕事をすることになる。性格は暗く、社交性がない。そのため、友達もほとんどおらず、人付き合いも苦手。これといった趣味は無いが、絵を描くことだけは好き。失踪前、母から渡されたアヒルのランプを大事にしており、このランプが点灯すると、霊が現れるサイン。
- 悟郎(オダギリジョー)
- 便利屋を営む御子の叔父。御子にルームロンダリングの仕事を任せる。偽造IDや立ち退きの手伝いなど、大きな声では言えない仕事もしているため、時には無理難題を押し付けられることもある。ナイーブな御子には、危険な仕事はさせたくないと思っている。
- キミヒコ(渋川清彦)
- バスルームで手首を切って自殺したパンクロッカー。霊になってからも陽気だが、新曲のデモテープをレコード会社に送らなかったことを、死んでから後悔している。
- 千夏本悠希(光宗薫)
- 殺人事件の被害者のOL。コスプレが趣味であり、専用のウェブサイトを持ち、イベントにも参加している。周りからの反響はあまり良くないようだが、本人曰く、コスプレは現実逃避で、それによりリアルとのバランスが取れるのだとか。突然にやってきた不幸により、この世に未練を残している。
- ニジカワ(伊藤健太郎)
- 悠希の隣の部屋に住む青年。悠希が亡くなった後に越してきた御子に、なにかと声をかけてくる。御子は最初、悠希殺しの犯人ではないかと怪しむが、話しかけてくるのには理由があった。
映画『ルームロンダリング』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ルームロンダリング』のあらすじ【起】
八雲御子は孤独な少女だった。父親は5歳の時に他界。母親はアヒルのランプを御子に渡して外出し、そのまま失踪してしまった。その後、御子は祖母に引き取られて生活していたが、彼女が18歳の時、その祖母も他界してしまった。
祖母の葬儀の時、祖母の息子・悟郎が突然に現れ、遺影に向かって暴言を吐きだす。会場がざわめく中、悟郎は御子に向かって、今日からお前は俺が面倒を見ると言い放った。
御子はもともと不思議な少女だったが、葬儀の時、亡くなった祖母の声が聞こえてからというもの、霊が見えるようになる。彼女はその特殊な力を使って、悟郎の元でルームロンダリングという仕事をすることになった。
賃貸物件には、説明義務というものがある。その部屋で事件や事故などがあった場合、次の借主には何があったのかを説明しなくてはならない。だが、事故発生から二人目以降の借主には説明義務は発生しないのだ。悟郎は事故物件に御子を住まわせ、説明義務を消滅させる仕事をさせていた。これが、ルームロンダリング(部屋洗浄)という仕事の内容だった。
映画『ルームロンダリング』のあらすじ【承】
悟郎の指示で事故物件を渡り歩く御子。新たにやってきたのはバスルームで手首を切る自殺者がでた部屋だった。夜、バスルームを覗いた御子は、浴槽の中にうずくまる男の霊を発見する。パンクロッカー風の男は、御子に自分の姿が見えると分かるや、気さくに話しかけてきた。男はキミヒコと名乗った。だが、今までにさんざん霊を見てきた御子は恐怖など微塵も感じず、キミヒコに構わずにさっさと寝てしまった。
その後も、キミヒコは御子に話しかけ続けた。霊と一緒に暮らすのは怖くないのかと問われた御子は、生きている人間のほうが怖いと答えた。御子は部屋でカセットテープを見つけていたが、それはキミヒコが作った新曲のデモテープだった。生前は批判を恐れ、レコード会社に送れなかったが、今ではそれを後悔しているという。キミヒコは、御子にテープを送ってほしいとお願いした。
だが、早々に次の部屋が決まったとの連絡が悟郎から告げられる。翌朝、御子はキミヒコに曲の感想を告げた。ダサい曲だったが、ダサすぎてかっこよかった、と。それを別れの言葉に、御子は次の部屋へと引っ越して行った。
次の部屋は殺人事件が起きた部屋だった。悟郎はナイーブな御子を心配するが、本人は大丈夫だと言う。隣の部屋に住むニジカワという青年が訪ねてきたが、隣人との関係はご法度だと御子は決めており、無視を決め込んだ。
しばらくして、殺された女の霊が現れた。背中に包丁を刺された姿の女は、自分が殺されたことに激情し、ポルターガイスト現象を発生させた。危険を感じた御子は、部屋から飛び出していく。ネットカフェで検索した結果、殺された女は千夏本悠希という名で、コスプレ趣味のOLで、専用のウェブサイトも作っていた。悠希を殺した犯人が未だ捕まっていないからか、越してきた御子を心配して巡回中の警官が声をかけてくれたが、御子は大丈夫だと答えた。
部屋に戻ると、悠希はとうとうと語りはじめた。ストーカーに殺されて辛い、悲しい、と延々繰り返す悠希にうんざりし始める。そこにキミヒコがひょっこりと現れた。キミヒコは部屋にではなく、カセットテープに乗り移っているらしく、テープを持っていた御子についてきてしまったのだ。テープをレコード会社に送っていないことを指摘され、御子はますますイライラを募らせる。
映画『ルームロンダリング』のあらすじ【転】
橋の上でぼんやりしていた御子は、自殺と間違われてニジカワに掴まれた。御子は驚いたが、ニジカワは悪い男ではなかった。彼は悠希が殺された時に助けを求める声を聞いていたという。だが、怖くて何もできなかった。それをとても後悔しており、もし隣の部屋に新しい人が来たら、コミュニケーションをとって相手のことを知っておこうと決めていたのだった。二人はお互いの趣味の話などをし、距離を縮めていく。
ニジカワと出会ったことで、少なからず社交的になってきた御子。だが、再び悟郎から、明日、今の部屋を引っ越せという指示が下る。ニジカワと離れたくない御子は、複雑な心境だった。
この世に未練のある悠希の気持ちを察したキミヒコは、何かしてあげてほしい、それは御子にしかできないことだと言うが、皆の勝手な発言に腹を立てた御子は感情的になり、怒って部屋を飛び出して行ってしまった。
御子がトボトボと歩いていると、探し物をしている霊に遭遇する。必死に探す姿に放っておけなくなった御子は、探し物を見つけ出し、霊に渡してあげた。霊から感謝の言葉をもらった御子は、誰かの役に立つことの大切さに気がつき、悠希の力になろうと部屋へと駆け戻った。
絵を描くことが得意だった御子は、悠希から犯人の人相を聞き出すと、見事な似顔絵を完成させる。似顔絵を渡されたニジカワは警察に連絡。巡回の警官がニジカワの部屋へとやってきた。だが、驚いたことに似顔絵は警官そっくりだった。悠希を殺したのはこの警官だったのだ。口封じのために殺されそうになるニジカワ。そこに悟郎たちを連れた御子が現れて警官を取り押さえた。こうして悠希を殺した犯人は捕まり、彼女の恨みを晴らすことに成功する。
映画『ルームロンダリング』の結末・ラスト(ネタバレ)
悟郎は、御子の母親も霊が見える体質だったのだと告白する。そういう力を持つ家系なのだそうだ。実は、その力は悟郎にもあり、彼にも霊が見えていた。悟郎が言うには、御子の母は霊たちを助け続けた結果、正気を失っていったのだという。そして、自ら施設に入る決断をし、御子を祖母に預けていったのだ。
母に会いたいと言う御子を連れ、更地へとやってきた悟郎。そこは以前、御子が両親と楽しく暮らしていた家があった場所だった。そこで御子は遂に母親との再会を果たす。しかし、彼女はすでに霊となっていた。自分の力のせいで捨てられたと思っていたと涙する御子に、その力のおかげで再会できたのだと、母は優しく語りかけた。強く成長した御子の姿に母は安心し、成仏していった。
悟郎の事務所に封書が届いた。それはレコード会社からのものだった。御子はキミヒコとの約束を守り、テープを送っていたのだ。曲を気に入ったので、CD化したいという。それを聞いたキミヒコは歓喜し、デモテープを自分の墓に入れてくれと言いだす。彼は、御子に会えて初めて生きている実感があったと語った。
御子は再び新しい部屋へと引っ越してきた。だが、今度はひとりではない。窓を開けて外を眺める御子の隣には、ニジカワがいた。二人は幸せそうに、並んで景色を眺めるのだった。
映画『ルームロンダリング』の感想・評価・レビュー
ハートフルなコメディ調の作風にこだわりすぎたために、振れ幅が狭くなった印象。例えば、最初はすごくホラー的で怖い登場だが、霊が話しだしたらパッとコメディになる。明るく話しているのに、実は死に方は壮絶で深い闇を持っている。そういったギャップでメリハリをつけたら更に良くなったかもしれない。御子の成長ドラマとして観ても、そのくらい強弱をつけたほうが説得力は増すように思う。ルームロンダリングという題名はインパクト十分だが、話や構成はオーソドックスな作り。楽に観られるがゆえに、強い印象は残らない。(MIHOシネマ編集部)
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