この記事では、映画『メメント』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。
映画『メメント』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 2000年 |
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上映時間 | 113分 |
ジャンル | サスペンス ミステリー ドラマ |
監督 | クリストファー・ノーラン |
キャスト | ガイ・ピアース キャリー=アン・モス ジョー・パントリアーノ マーク・ブーン・Jr |
製作国 | アメリカ |
映画『メメント』の登場人物(キャスト)
- レナード・シェルビー(ガイ・ピアース)
- 過去の事故により、10分間しか記憶を保てなくなった男性。妻を殺した『ジョン・G』を追い続けている。
- テディ(ジョー・パントリアーノ)
- レナードの相棒。しかし、彼の記憶障害を利用して、レナードを自分の私利私欲のために動かしている。
- ナタリー(キャリー=アン・モス)
- レナードにとある依頼を持ちかけてきた女性。彼女もまたレナードの復讐を手助けする。
映画『メメント』のネタバレ・あらすじ(起承転結)
映画『メメント』のあらすじ【起】
レナード・シェルビーは平凡な保険会社の調査員だった。しかし、ある日そんな彼の生活は一変する。なんと、自宅に侵入してきた謎の男によって、レナードの妻が強姦されたうえに殺されてしまったのだった。
そのショックはあまりに大きく、レナードは10分しか記憶を保てない、前向性健忘という記憶障害を患ってしまったのだった。しかし、そんな状況の中でも、レナードは自らの妻を殺した犯人への復讐を誓う。しかし、分かっていることは犯人の名前が『ジョン・G』ということだけだった。調査を始めたレナードは、明らかになったことを忘れないためにメモを取り、その中でも一際重要なものは自らの身体に刺青として刻み込んだ。
レナードは、自分のように前向健忘性を患っている人物をかつて知っていた。しかし、その男の末路は悲惨だった。男の病気を疑った妻が、彼を試したのだ。しかし、男の病気は本物だった。その結果、男は意図せずに妻を殺してしまうことになるのだった。
映画『メメント』のあらすじ【承】
一方、『ジョン・G』を調査するレナードには相棒がいた。テディという男性である。調査を進めた末、彼らは名前以外にも、車のナンバープレート、ジョン・Gが麻薬の売人であるという、犯人に繋がるヒントを手に入れた。
しかし、レナードが調査の末に手に入れたと思っていたその証拠は、レナード自身がしかけたものだったのだ。実は、レナードの復讐はとうの昔に成し遂げられていたのである。しかし、妻も失い仕事も失い、全てを失ったレナードには、もう復讐しか生きる意味が残っていなかった。そこで、レナードは敢えて自分が犯人を殺したことを記録せずに、第三者を追うことにしたのだ。
そして、そんなレナードをテディは利用していた。彼は自分にとって不都合な人間の暗殺や、金を手にするためにレナードを利用したのだ。そもそも、レナードが今信じている記憶も、昔彼が捏造したものだった。確かに強盗は押し入ったものの、妻は殺害されなかった。ただ、レナードが犯人との格闘の末頭を打ち付け記憶障害になってしまったのである。
映画『メメント』のあらすじ【転】
そして、レナードの障害を信じられなかった妻がレナードを試し、結果としてレナードが妻を殺すという形になってしまったのだった。しかし、レナードはどうしても、自分が妻を殺したという事実を受け入れることができなかった。そこで、レナードは10分後以降の自分を救うことができるように、自分が保険会社で勤務していた際、全く別の夫婦に起こった話、というように記憶を構造したのだ。
それからというもの、自分の気がつかないうちにテディに都合よく使われていたレナード。しかし、ある時レナードはテディが自分を利用していることを突き止める。10分後に消えてしまうその記憶を留めるために、レナードは「テディを信じるな」というメモを未来の自分宛に残すのだった。そして、テディの車のナンバープレートを調査書類の中に挟む。10分後、全ての記憶を失ったレナードは、また一人無実の人間をジョン・G.として殺害してしまうのだった。そして、レナードは殺した男の上着を羽織っていた。
映画『メメント』の結末・ラスト(ネタバレ)
そのポケットの中には一枚のコースターが入っており、そこには「あとで来て、ナタリー」というメッセージが記されていた。その上着が元々自分の物ではないことをすっかり忘れてしまっているレナードは、そのコースターに従い指定された場所へと向かった。
そこにはレナードが殺した男の恋人、ナタリーが待っていた。突然現れたレナードを怪しむナタリーだったが、レナードに記憶障害があることを知ったナタリーは、レナードにとある依頼をする。それは、ドッドという男を殺すことだった。
一度はその依頼を断るレナードだったが、ナタリーの策略にハマり、結果的にドッド殺しをする羽目になったのだ。しかし、その最中で再びレナードは記憶を失ってしまう。結果的にレナードはドッドを殺さず、捕まえていた彼を解放するのだった。
お礼にナタリーは、レナードが持っていた謎の車のナンバープレートについて調べてくれた。それはテディのナンバープレートで、そのことを知ったレナードは、彼こそがジョン・Gであると思い込む。そして、レナードは彼を殺害するのだった。
映画『メメント』の考察・解説(ネタバレ)
映画『メメント』中で、なぜ『電話に出るな』というタトゥーが体に刻まれているのか?
『メメント』の主人公レナードは、短期記憶喪失という障害に苦しんでいます。大切な情報を忘れないために、彼は体にタトゥーを入れることで記憶を保持しようとしています。「電話に出るな」というタトゥーは、特定の電話に出ることで、誰かに騙されたり、誤った情報を与えられたりするリスクがあることを自分自身に警告するためのものです。
このタトゥーは、レナードが過去に電話で誰かに騙されてしまった経験があることを示唆しています。彼は、同じ過ちを繰り返さないために、この警告を身体に刻んでいるのです。実際に、映画の中で、レナードが電話の相手を信用すべきか判断に迷うシーンがあり、このタトゥーがいかに重要な意味を持っているかが浮き彫りになります。
レナードにとって、このタトゥーは自分自身を守るための手段ですが、彼の記憶の断片的な性質と複雑に絡み合った物語構成のために、その真の意味を理解することは容易ではありません。観客は、レナードの行動を追いながら、彼の過去の経験とそれが現在の彼にどのような影響を与えているのかを考えさせられるのです。
映画『メメント』は、なぜ「つまらない」と言われているのか?
『メメント』が「つまらない」と評される理由は、その特殊なストーリーテリング手法にあります。この映画は、時間軸を逆行させる形で物語が進行し、シーンが時間の流れとは逆の順序で提示されます。そのため、通常の映画のように物語の流れを追うことが難しく、観客を混乱させることがあるのです。
さらに、主人公レナードの短期記憶喪失という設定により、物語はより複雑になっています。観客は、レナードと一緒に、誰を信じるべきか、何が真実なのかを探ることになりますが、そのプロセスが非常に難解であり、明快なストーリー展開を期待する人にとっては理解が難しいと感じられるかもしれません。
加えて、この映画の物語自体が非常に重苦しく、感情移入が困難な面もあります。登場人物の行動や動機が曖昧で、映画が終わった後でも「結局、何が起こったのか?」という疑問を抱く人が多いかもしれません。このように、複雑な構造やテーマが苦手な観客にとっては、『メメント』は「つまらない」と感じられる可能性があるのです。
映画『メメント』の主人公の妻を殺害した犯人のネタバレ
『メメント』では、主人公レナードが妻を殺した犯人を追い求める物語が展開されます。しかし、映画の最後で明らかになるのは、レナードが探し求めていた犯人は存在しなかったということです。実は、レナードが短期記憶喪失になる前に、自分の妻を誤って殺害してしまった可能性が示唆されるのです。
レナードの妻は、彼の障害を理解できず、彼が繰り返し自分を助けようとする姿に疲れ果ててしまいます。彼女はレナードに、自分に何度もインスリンを注射するよう頼み、その結果、過剰投与によって命を落としたのです。しかし、レナードはこの現実を受け入れることができず、妻を殺した犯人が外部に存在すると信じ込んでいるのです。
さらに、レナードの友人テディも、レナードがこの事実を受け入れられず、自分自身に嘘の記憶を植え付け続けていることを知っており、彼の行動を利用していたことが明らかになります。結局のところ、レナードは自分の罪を認めることができず、犯人探しを続けるという悲しい結末を迎えるのです。
映画『メメント』が「難しすぎる」と言われる理由とは?
『メメント』が「難しすぎる」と評される理由は、その独特な物語構成にあります。この映画では、逆行する時間軸と順行する時間軸が交互に描かれ、観客は物語の結末から始まりへと向かって進んでいきます。このような構成のため、観客はシーンがどのような順序でつながっているのかを頭の中で組み立てながら映画を見る必要があるのです。
さらに、主人公レナードが短期記憶喪失に苦しんでおり、新しい記憶を保持できないために、常に「今、何が起こっているのか?」という混乱に陥ります。観客はレナードの視点に立ち、彼の混乱と共に物語を追体験することになるため、理解が難しいと感じることが多いのです。
加えて、登場人物の意図や真実が曖昧であり、何が本当で何が嘘なのかを観客自身が判断しなければなりません。レナードがタトゥーや写真を頼りに情報を整理しようとする姿は、観客にも同じような作業を要求します。このように、単に物語の流れを追うだけではなく、真実を探る観賞体験が求められるため、『メメント』は難解だと感じられるのです。
映画『メメント』の最後のセリフ「私はやり遂げた」の意味とは?
『メメント』の最後で、レナードは「私はやり遂げた」と自分自身に言い聞かせます。このセリフは、彼が自分にとって「正しい結末」を作り上げたことを意味しています。レナードは妻を殺した犯人を追い続け、その犯人を見つけて復讐することを目的としていました。
しかし、実際にはレナードが探し求めていた犯人は存在せず、彼は無限の復讐のループに陥っていたのです。彼は自分自身を納得させるために、架空の犯人を作り出し、その人物に復讐することで「目的を達成した」という錯覚を持とうとします。短期記憶喪失のために、彼は同じことを繰り返し行っていることに気づいていないのです。
「私はやり遂げた」というセリフは、彼が自分自身に嘘をついてでも、復讐という目標を達成したと信じ込みたいという欲求の表れなのです。これは、レナードが真実から目を背け、自己満足を得るために、偽りの記憶を作り続けるという悲劇的な結末を象徴しています。
映画『メメント』のタイトルの意味とは?
『メメント』というタイトルは、ラテン語の「memento mori」に由来しています。これは「自分の死を忘れるな」という意味を持つ言葉です。映画の主人公レナードは、過去の記憶を失い、新しい記憶もすぐに消えてしまう状態にあるため、彼にとって「忘れないこと」が非常に重要な意味を持っています。
レナードは、妻を殺した犯人を追い続けるために、忘れてはならない情報をタトゥーや写真で記録しています。彼にとって、過去を覚えておくことは、妻への愛情の証であり、復讐を果たすための唯一の手段なのです。しかし、彼が刻み込む記憶の断片は、必ずしも真実とは限らず、彼自身が作り出した偽りの記憶も含まれています。
このタイトルは、レナードの記憶の儚さや、彼が自分自身に課している「忘れてはいけない」という呪縛を象徴しています。彼は真実を見つけることよりも、妻を失った痛みを抱えながら、自分を納得させるために記憶を操作しているのです。『メメント』というタイトルは、記憶の重要性とそれを失うことへの恐怖を表現しているのです。
映画『メメント』の妻を殺したのは誰なのか?
『メメント』では、レナードの妻を殺した犯人が誰なのかについて、明確な答えが提示されていません。レナードは、妻を殺したと信じている「ジョン・G」という男を追い続けていますが、実際にはその犯人は彼自身の記憶の中で作り上げられた存在なのです。映画の終盤で、レナード自身が妻を誤って殺害してしまった可能性が示唆されます。
レナードの妻は、彼の障害を理解できず、彼にインスリンを過剰に投与するよう頼んだことが原因で亡くなったのかもしれません。しかし、レナードはその事実を受け入れることができず、彼女を殺した犯人が存在すると信じ込むことで、自分の罪悪感から逃れようとしているのです。
さらに、レナードの友人テディも、彼が過去にジョン・Gを見つけ出して復讐を遂げたことを告白します。しかし、レナードはその記憶を失ってしまい、再び犯人探しを始めるのです。結局のところ、彼が追い求めている「犯人」は存在せず、レナード自身が過去の記憶と戦い続けるという悲しい結末を迎えるのです。
映画『メメント』の妻の死因とは?
『メメント』では、レナードの妻がどのように亡くなったのかについて、明確な描写はありません。しかし、映画の中でいくつかの可能性が示唆されています。当初、レナードは妻が強盗に襲われて殺害されたと話しています。しかし、物語が進むにつれて、彼の記憶に疑問が生じ、彼自身が妻の死に関与している可能性が浮上してきます。
映画の終盤で明らかになるのは、レナードの妻が実は彼の障害が原因で亡くなったのかもしれないということです。彼女は、レナードの記憶障害を試すために、自分に何度もインスリンを注射するよう頼み、その結果、過剰投与によって命を落としてしまった可能性があるのです。レナードは無意識のうちにこの事実を拒否し、強盗事件のストーリーを作り上げることで、自分の過失を隠そうとしているのかもしれません。
また、レナードの友人テディの発言によると、彼が追い求めている「ジョン・G」という犯人は実在せず、レナード自身の罪悪感から逃れるための幻想である可能性も示唆されています。つまり、妻の死因は、レナードの記憶障害とそれに起因する誤った行動の結果である可能性が高いのです。『メメント』は、この悲劇的な真実を巧みに描いた作品だと言えるでしょう。
映画『メメント』はどこで見れる?フルで無料視聴する方法は?
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みんなの感想・レビュー
「時間」を巧みに使うクリストファー・ノーラン監督の初期作。一度見ただけでは理解が追いつかない難解さがあり、何度か見るほど面白さの分かる作品だと言える。
物語は結末から始まって、戻っては進みを繰り返しながら展開していく。モノクロ場面の最後のシーンがカラー場面の始まりに繋がり、そこで謎が明らかになるという仕組みである。
レナードは自分の身体にメモをし、記憶障害を乗り越えながら生きているように思えたが、実は彼が殺人鬼だったという事実に驚愕させられた。レナードがそれを知ることなく、また同じことを繰り返すのかと思うと虚しさを感じる。
初めてこの映画を観たとき、クリストファー・ノーラン監督作だから観てみようと軽い気持ちで何も知らずに観たので、最初は本当に意味が解らなかった。内容についていくだけでもいっぱいいっぱい(というかついていけなかった)で、せめてあらすじくらいは知ってから観ればよかったと思った。
そのわかりにくさとストーリーの組み立て方の秀逸さがこの映画の面白さである。恐らく何度観てもどこかで混乱し、じっくり考え込んでしまうと思う。
①一度見ただけではわからない
あらすじでも先に注意しているが、この映画は時系列とは逆の進行をしている。厳密にはレナードの記憶が保てる10分ごとにさかのぼり、間に過去の回想が挟まれる。
だからあらすじでは順を追って説明しているのでこれだけみると「できごと」そのままで面白くもなんともないのだが、実際は逆なので難解かつ面白い。
面白いとはいえ、何も知らずにこの映画を観たら多分最初はちんぷんかんぷんで、途中いろんなことに気付いても前半のことを忘れてしまい、観終わっても理解できないことの方が多いのではないだろうか。
この映画の仕組みと真実を知った上でもう一度みると本当の面白さが分かると思う。
②レナードの記憶と選択
レナードは、何度も「ジョン・G」を殺している。もちろん全て別の「ジョン・G」だ。これは、レナードの記憶が10分しか続かないから繰り返されたわけではない。レナードが意図的に「忘れ」たのである。
最初に「ジョン・G」を殺したとき、レナードは忘れないように犯人の写真を取り、テディと記念撮影までした。記録しないとまた復讐のために「ジョン・G」を探してしまうからだ。
だが、レナードは自分が復讐のためだけに生きていることに気付く。復讐が終わってしまうと生きている意味がない。レナードは復讐を終わらせたくなかった。そして写真を焼き、復讐を果たした証拠を自ら消したのだ。テディが利用したから起こった悲劇というより、レナードが自分で選んだ結果だった。
そもそもレナードは妻を殺したことを認めたくなくて自分の意思で過去の記憶をすり替えている。何もかも自分の都合がいいように変えている。
テディやナタリーに都合よく嘘をつかれたが、自分自身も自分に嘘をついているのである。