映画『メトロポリス(2001)』の概要:ロボットと人間が共存する大都市メトロポリス。探偵助手の少年は、ひょんなことから不思議な少女と出会う。少女は高性能ロボットで、少年との触れあいで感情を学習していく。だが、少女は世界を支配するために造られたものだった。
映画『メトロポリス』の作品情報
上映時間:107分
ジャンル:SF、アドベンチャー、アニメ
監督:りんたろう
キャスト:井元由香、小林桂、岡田浩暉、富田耕生 etc
映画『メトロポリス』の登場人物(キャスト)
- ティマ(井元由香)
- ロートン博士に造られたロボット。レッド公の娘の姿を模している。ジグラッドの中枢を担い、世界を支配するよう造られた。自分自身をロボットとは思っておらず、ケンイチを父と思っている。
- ケンイチ(小林桂)
- 探偵ヒゲオヤジの助手で甥。優しく賢い少年。最後までティマを追い続け、救おうとする。
- ロック(岡田浩暉)
- レッド公の義理の息子。父親を崇拝しているが、レッド公には粗雑な扱いを受けている。信念を断じて曲げない強い意志を持つ。可哀想な青年。
- ヒゲオヤジ(富田耕生)
- 探偵でケンイチの叔父。死に際のロートン博士から手帳を預かり、ティマとジグラッドの秘密を知る。
- レッド公(石田太郎)
- メトロポリスの権力者。ジグラッド建設に携わり、ティナを中枢に据え世界を支配しようとしている。
映画『メトロポリス』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『メトロポリス』のあらすじ【起】
大都市メトロポリスはロボットと人間が共存する都市である。世間では政界と市長の後ろ盾を持つレッド公が建設した、ジグラッドの完成に沸いていた。
探偵のヒゲオヤジとケンイチは、調査のためにメトロポリスへ赴いていた。ジグラッドとは何なのか、それすらも定かではない。
逃亡するロボットをサングラスの青年ロックが撃ち抜き、動きを止める。彼はレッド公の配下で義理の息子だった。
ヒゲオヤジとケンイチはロートン博士の調査をしている。臓器の密輸と売買の罪で逮捕状が出ていた。そのためにメトロポリスの警察へ協力を要請したのだが、人型ロボットを1体しか貸してくれなかった。
犯罪者が逃亡する場所と言えば、地下世界ゾーン1が常識らしい。街では自警団マルドゥーク党が、行動範囲を逸脱したロボットの制裁を行っていた。
ゾーン1へ到着した2人と1体はエリアの奥へと進んで行く。
その頃、ロートン博士はレッド公の援助を得て、あるものを作っていた。レッド公たっての依頼で作られた人型ロボットのティマは、精巧な作りで博士の最高傑作だった。
ロックは義父が去った後、嫉妬から博士を殺害し装置を破壊した。
ロボットによって消火活動がただちに開始される。爆発した廃工場に、ロートン博士が度々出入りしていたという情報を得た、ヒゲオヤジとケンイチは2手に分かれて捜索を開始。燃え盛る工場へと入った。
そこで、ケンイチは青白く発光する少女と出会う。脱出の際、ケンイチと少女は倒壊するビルの瓦礫に巻き込まれ、地下へ落下した。
映画『メトロポリス』のあらすじ【承】
義父とはいえ、ロックに対するレッド公の態度は酷いものだった。ロックがロートン博士のラボを破壊したのには、復讐もあったのかもしれない。レッド公はティマを失い、肩を落とした。
ロックは工場の焼け跡を訪れ、ティマの姿が見当たらないことに気付く。高性能ロボットが火事で破壊されるとは考えにくかった。
ゾーン1より更に下層のゾーン3へ落ちたケンイチと少女。幸い怪我もなく、ゴミ回収のロボットの助けを借りて、一先ずは安全な場所へ。そこで少女と会話するも、彼女は何も覚えていない様子。ケンイチは少女に少しずつ様々なことを教えた。
レッド公はジグラッドを発動させ、太陽に巨大なビーム砲を照射。これにより太陽に黒点を作り出し、磁場を操って都市のロボットを暴走させる。人々に影響はないものの、ロボットが暴走。実験は成功した。
メトロポリスでは元々、ロボットと人間との間に諍いが生じている。このことがきっかけとなり、諍いは増々激化した。
ゾーン3は下水処理とゴミ処理を目的とした層だった。ロックはそこで、ケンイチとティマを発見し、殺そうとする。ケンイチは危険を察知し、少女と共に壊れたロボットに隠れた。逃げることに成功した2人は、働く人々に交じって外へ出ようとするが、再びロックが現れる。世話になったロボットが身を挺して庇った。爆発に乗じて逃走に成功する2人だったが、ロックとマルドゥーク党はしつこく追いかけて来る。
少女を連れたケンイチは自転車で逃げる。街中を暴走した挙句、ゴミの山に落下した。すぐさま捜索が開始されたが、2人は再び地下へ逃げ込んだ。危ないところを助けてくれた、ロボット反対勢力の世話になることになったケンイチと少女。
映画『メトロポリス』のあらすじ【転】
下層には貧困層が住んでいる。配給で暮らしていたが、その配給も滞っているようだった。ケンイチは反対勢力のリーダーに、ジグラッドの意味を教えてもらう。古代バビロニアで建てられたバベルの塔を意味するらしい。古代バビロニア王は、バベルの塔で神になろうとしたが、怒りに触れて命を落としたと言われている。リーダーはレッド公もそうなると断言した。
ケンイチはようやく少女の名前を知る。少女ティマは自発的に文字を覚えようとしていた。限りなく人に近く作られた高性能ロボット。特別製のティマには、ロボット制約など課せられていないのだった。
反対勢力を指揮するリーダーは、ジグラッドへ乗り込む計画を立てた。クーデターを知ったヒゲオヤジは、援軍を要請。
その頃、マルドゥーク党は市長と政界の議員を殺害。レッド公はとうとう、メトロポリスの指揮系統を把握するに至った。
戦争が始まったメトロポリスに雪が降り始めた。人々とロボットが賑わいを見せていた街は様相を変え、今や破壊された車やロボットで路上は埋め尽くされていた。
そんな中、ケンイチとティマはヒゲオヤジと再会後、ロックと対峙する。
銃を向けられたケンイチ。反論したヒゲオヤジが撃たれた。ケンイチは咄嗟にロックへと飛び掛かる。ティマが落ちた銃を手に取った。ケンイチを気絶させたロックは、ティマへと静かに歩み寄る。人間を撃てるのかと声を掛けるも、駆け付けたレッド公に止められた。
ティマの姿を見たレッド公は、ロックに詰め寄る。ティマが無事だと、報告にはなかったからだ。ロックは毅然とした態度で、ジグラッドの中枢を担うのはレッド公で、ロボットのティマではないと公言。しかし、レッド公はロックの愚かな発言に怒りを露わにし、彼から一切の権限を剥奪。
ティマはレッド公に連れていかれ、ケンイチはマルドゥーク党に連行されてしまった。
ヒゲオヤジは軍にケンイチの救出を訴えるも、相手にされず。下層階で酒をかっ食らっていたが、ロックの姿を見かけて彼を密かに尾行することにした。
一方、ティマは豪奢な部屋で、ひたすらケンイチの心配をしていた。そこへ、使用人からケンイチと思われる人物からの手紙を受け取る。待ち合わせ場所へ案内されて行くと、待っていたのはケンイチではなくロックだった。
映画『メトロポリス』の結末・ラスト(ネタバレ)
ロックに問い掛けられたティマは、自分のことをロボットではないと否定、ケンイチは自分の親だと言った。思わず失笑するロック。彼女はいずれ超人として崇められる存在となるはずだったが、それすらもバカバカしいと感じる。彼は帰ろうとしたティマを羽交い絞めにし、彼女の電源を強制的に落とした。
ティマを解体して秘密を知ろうとしたロックは、尾行して来たヒゲオヤジに倒されてしまう。ヒゲオヤジは工場の火事場でロートン博士から手帳を受け取っていた。ティマの秘密を知ったヒゲオヤジは、彼女を救出して電源を復旧。彼はケンイチを助けるため、少女にジグラッドの情報網へ侵入し、居場所を突き止めるよう要請。
ティマは電話回線を通して、ケンイチの居場所を突き止めた。だが、あまりにも強いエネルギー波であったため、すぐに逆探知されてしまい追手がかかる。ヒゲオヤジとティマは連行された。
ジグラッドの中枢。そこへは、意識を奪われ人形のようにされたケンイチも連れて来られる。ティマはレッド公に自分の存在を問い掛ける。自分は人間なのか、ロボットなのか。レッド公は彼女を崇高で絶対的存在である超人だと言う。しかし、ジグラッドと一体化してしまったら、彼女は感情も記憶も全て失ってしまうのだった。
そんな中、使用人に扮したロックが姿を現し、ティマを銃で撃ってしまう。だが、ティマは撃たれても平気だった。胸の傷を目にしたティマは、自分の存在を認識。意識が戻ったケンイチが目にしたのは、感情を失いそうになったティマだった。
彼女は内部装置に意識を乗っ取られ、ジグラッドと一体化してしまう。
膨大な情報を蓄えたティマは暴走を始め、人類を滅亡させようとする。ケンイチはティマを救うために、彼女の元へ向かった。電撃で攻撃されても諦めず、一体化を深めるティマの体を引き剥がす。彼女の体はボロボロだった。ジグラッドの屋上へケンイチを投げ出すティマ。
その時、レッド公を救おうとしたロックがジグラッド崩壊のボタンを押す。次々に崩壊していく中、支配から逃れたティマをケンイチが助けようとする。記憶を取り戻したティマだったが、私は誰かと問いだけを残して、彼女は落下して行った。
後日、ビルの残骸へティマを捜しに来たケンイチ。ロボット達からティマの心臓を受け取る。涙した彼は帰国せず、メトロポリスに残ることにした。
映画『メトロポリス』の感想・評価・レビュー
「マトリックス」や「ブレード・ランナー」もびっくりの、深淵な世界観を持つアニメ映画。原作のマンガは1949年発表という。映画は原作をそのままなぞったものではないが、それにしてもその当時に人工生命体の話というのは衝撃だったのではないだろうか。映像の雰囲気やキャラクターの独特の動きなどのレトロフューチャー感も味わい深い。ロボットに人間の名前をつけてはいけないという設定を始め、細かいところに気が配られているので作品の世界観に浸りきることができる。結末は少し悲しいが、世界に誇れる一本。(男性 40代)
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