映画『みんなのいえ』の概要:三谷幸喜がマイホームを建てた時の実体験をヒントにして、家を建てる際に巻き起こる騒動のあれこれをホームコメディにした。バラエティに富んだキャストが楽しい2001年公開の日本映画。
映画『みんなのいえ』 作品情報
- 製作年:2001年
- 上映時間:115分
- ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
- 監督:三谷幸喜
- キャスト:唐沢寿明、田中邦衛、田中直樹、八木亜希子 etc
映画『みんなのいえ』 評価
- 点数:75点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★★☆
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映画『みんなのいえ』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『みんなのいえ』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『みんなのいえ』 あらすじ【起・承】
放送作家の飯島直介(田中直樹)と美術教師の民子(八木亜希子)夫婦は、念願のマイホームを建てることにする。民子はおしゃれな家にしたくて設計をインテリアデザイナーの柳沢英寿(唐沢寿明)に依頼する。そして建築は親孝行も兼ねて民子の父で大工の棟梁をしている岩田長一郎(田中邦衛)に任せることにする。
柳沢は売れっ子で店の内装なども手がけていたが建築士の免許はなく、家の設計は初めてだった。そのため長一郎は馴染みの建築士の須賀(白井晃)に手助けを頼む。最近は下請け仕事しかしていなかった長一郎は、久々の大仕事に張り切っていた。
ところがモダニズムを追求する柳沢と昔気質の大工である長一郎の意見はことごとく対立し、なかなか図面が仕上がらない。長一郎は勝手に柳沢を見限って娘夫婦には内緒で須賀に家の設計を頼む。
それを知った民子は“これは私たちの家でお父さんの家ではない”と激怒し、さすがの長一郎も反省する。直介も自分のこだわりを捨てたくないと言ってなかなか図面を仕上げない柳沢に“期日を守れないなら辞めてもらう”とはっきり忠告し、柳沢も反省する。
映画『みんなのいえ』 結末・ラスト(ネタバレ)
やっと双方が納得のいく図面が仕上がり、いよいよ建築が始まる。しかし長一郎は和室へのこだわりだけはどうしても捨てられず、図面では六畳しかない和室を勝手に二十畳にして基礎工事を終わらせていた。
その後も現場では柳沢の主張がことごとく却下され、柳沢は妥協ばかりを強いられる。長一郎は柳沢が今風のカタログにはない古き良きものへこだわっていることがわかってきて、彼を見直し始めていた。しかし柳沢の我慢は限界に達しており、2人は決裂する。
そんな中、ひどい嵐が来て長一郎は家が心配で様子を見にいく。するとそこに柳沢もやってくる。ところが用もないのに直介まで現場に向かい、帰ろうとしていた柳沢の車と事故を起こしてしまう。幸い大事には至らなかったが、柳沢の車に積んであった得意客のアンティーク家具がバラバラに壊れてしまう。
投げやりになる柳沢を長一郎がなだめ、3人は家具の修復作業を始める。長一郎は職人技で家具を見事に修復し、実は似た者同士の柳沢と長一郎はすっかり打ち解ける。
多くの困難を乗り越え、ついに直介と民子のマイホームが完成する。お披露目会には多くの人が集まってくれ、直介と民子は幸せだった。長一郎と柳沢は高台から新築の家を見つめながら“いい家になったな”と互いの労をねぎらう。
映画『みんなのいえ』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『みんなのいえ』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
少々中途半端なホームコメディ
本作は「ラジオの時間」で初監督を務めた三谷幸喜の2作目の監督作品だ。当然脚本も三谷幸喜が書いている。彼は自分の体験をコメディとして作品にしてしまう能力に優れており、本作も実際に自分が家を新築した経験を生かした作品だ。しかし仕事場での実体験を生かした「ラジオの時間」と比較すると、残念ながら少々面白みに欠ける。
原因はいろいろあると思うが、ひとつにはコメディはコメディでもホームコメディというのは三谷があまり得意としないジャンルなのではないだろうか。ホームドラマというのはどうしても生活感を出さなくてはいけない。しかし彼は作品に生活感を出すのが好きではない人という気がする。
人間描写はうまいがリアリティを追求するような作風では彼の面白みがあまり生きない。あくまで架空の世界での生活臭のしないコメディでこそ三谷幸喜の本領は発揮される。そのため本作は何となく中途半端なホームコメディになってしまっている。
小ネタの面白さ
全体にはいまひとつだが、サービス精神旺盛な小ネタとキャスティングは楽しめる。長一郎を演じた田中邦衛は存在そのものに唯一無二の魅力があり味がある。建築中の家を高台から見て妙な踊りを披露する田中邦衛はくる。長一郎の浮かれた気持ちを表現したあの踊りは最高だった。
他にも“自分の問題ですから”を連呼するバーテンダー役で真田広之が登場し、その客は「ラジオの時間」を見た人にはわかる千本のっこ(戸田恵子)と適当なマネージャー(梅野泰靖)だ。さらにプロデューサーの堀ノ内(布施明)も登場し、飯島家の新築祝いにキーボードを持ってきている。こういう小ネタが三谷作品ファンとしては嬉しい。
ち空回り気味のキャラと小ネタもいくつか見受けられたが、現場は楽しかったことだろう。
三谷幸喜の作品にしては、あまり笑いどころがなかったように感じる。マイホームを建てるというテーマが現実的すぎるのだろうか。職人気質の人間は嫌いじゃないけれど、デザイナーの柳沢の話を全く聞こうとしない職人たちにはちょっとうんざりしてしまった。
職人の意地がぶつかり合い、最後はお互いを認め合うという熱いストーリーはコメディ向きじゃないのかも。三谷幸喜作品はもっと軽快に楽しめるものが多いので、この作品以外もぜひ観て欲しい。(女性 40代)
映画『みんなのいえ』 まとめ
“マイホームができるまで”のあれこれを三谷幸喜が腕力で映画にしてしまった感は否めない。多くの人が経験することを映画にしてしまうという発想は伊丹十三監督の「お葬式」で“大いにあり!”だと思ったが、実際にそれを面白いエンターテイメント作品に仕上げるのは至難の技なのだろう。
とはいえ、悪人の出てこない終始ゆるくて和やかなコメディなのでまったりしたいときにはこういう作品もいい。そういえば三谷作品には珍しく全裸の女性が出てくる。しかし全くエロくない。“柳沢のような荒々しい男の彼女は黒人女性”という人物設定に三谷の細かいこだわりを感じた。この人はそういうところでクスッとさせるのがうまい。
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