映画『十二人の怒れる男』の概要:有罪間違いなしと思われた貧困層の少年による殺人事件が12名の陪審員たちの熱い議論により徐々に無罪へと傾いていく。秀悦な脚本による密室劇の名作。1957年公開のアメリカ映画。
映画『十二人の怒れる男』 作品情報
- 製作年:1957年
- 上映時間:95分
- ジャンル:サスペンス、ヒューマンドラマ
- 監督:シドニー・ルメット
- キャスト:ヘンリー・フォンダ、リー・J・コッブ、エド・ベグリー、マーティン・バルサム etc
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映画『十二人の怒れる男』 評価
- 点数:90点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★★
[miho21]
映画『十二人の怒れる男』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『十二人の怒れる男』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『十二人の怒れる男』 あらすじ【起・承】
スラム育ちの18歳の少年が自宅で父親をナイフで刺し殺したとされる事件の裁判で陪審員に選ばれた12名の男たちは、6日間に及ぶ法廷での傍聴を終え審議に入る。もし少年が有罪となれば1級殺人罪で死刑が確定することになっていた。
有罪か無罪かの評決は全員一致していることが原則であり、まずは挙手で有罪か無罪かの投票を行う。すぐに有罪が確定するかに思われたが、陪審員8番だけは無罪を主張する。
有罪派の11名は順番に自分の意見を述べ、8番の説得を試みる。特に自分の息子とうまくいっていない陪審員3番と貧困層に強い偏見を持つ陪審員11番は声高に有罪を主張し、8番を威圧してくる。しかし8番は冷静だった。
事件の夜、少年は犯行時刻には映画館にいたと無罪を主張していた。しかし階下で暮らす老人が“殺してやる”という少年の声と人が倒れる音を聞き、その後階段を駆け下りる少年を目撃したと証言していた。高架鉄道を挟んで向かいの建物に暮らす中年女性も通過する電車越しに少年の犯行を目撃し、警察に通報していた。
8番以外はこの2人の証人の証言を信じていたが、8番は証人が間違えている可能性があると考える。8番の主張を聞いて、まずは高齢の陪審員9番が無罪に意見を変える。
映画『十二人の怒れる男』 結末・ラスト(ネタバレ)
真横を電車が通過しているという騒音の中、階下の老人が本当に少年の声や人が倒れる音を聞くことが可能だったのかという2人の主張に対し、有罪派は老人が嘘をつく必要性がないと反論する。しかし9番は老人が注目されたくて虚偽の証言をしたのではないかと推測する。
さらに議論を進めていくと物音を聞いて寝室から玄関まで移動し、少年が逃げるのを見たという老人の証言も虚偽である可能性が高くなり、無罪派は6名にまで増える。
最初は深く考えようとしていなかった他の陪審員たちも次々と検察側の主張に疑問点を見出し、有能な弁護士のようにその主張を覆していく。これにより9名が無罪派となり、有罪を主張しているのは3番と11番と論理的に動く陪審員4番だけとなる。
4番は中年女性の証言を覆せないと考えていたが、9番が女性の鼻にメガネの跡があったことを思い出す。夜間、近視の人がメガネをかけず、電車越しに18メートルも離れた向かいの建物の人物を識別することは不可能だと考えた4番は無罪派となる。さらに11番も偏見に満ちた意見をみんなに軽蔑され反省し、無罪を認める。
自分の息子への不満を少年にぶつけていた3番もついに反論できなくなり、息子の写真を破いて泣き崩れる。評決は全員一致で無罪となり、12人の男たちはそれぞれの日常へ帰っていく。
映画『十二人の怒れる男』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『十二人の怒れる男』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
完成度の高い密室劇
本作は最初と最後の数分を除いて、12人の男たちがずっと密室で議論をするという構成になっている。それでもしっかりとした起承転結があり、とにかく話が面白い。
12名はランダムに集められた陪審員であり、名前を呼び合うこともない。名前はなくともそれぞれにしっかりしたとした特徴があるので、観客が混乱するようなことはない。一応一貫して無罪を主張する陪審員8番(ヘンリー・フォンダ)が主役で、その対抗馬に最後まで有罪を主張する陪審員3番(リー・J・コッブ)を置いているが、他の10名も話を展開させるきっかけとして重要な役割を持つ。だから舞台はずっと同じ部屋の中でも、物語に躍動感がある。会話だけで繋がっていく物語なのに、驚くほどダレないのだ。
シドニー・ルメット監督作品といえば私は「狼たちの午後」が大好きだが、この長編デビュー作の完成度もすごい。やはり巨匠になっていく人は最初から光るものを持っている。
有意義な議論
最終的にこの陪審員たちは少年を無罪にする。陪審員8番の導きにより検察側の用意した証人の証言や物証の疑問点を次々と暴いていく。それによりしっかりと納得した上で自分の主張を変えていく。有意義な議論というのはこういう議論のことを言うのだろう。逆に何を言われても自分の主張を変える気のない人たちの議論というのは、うるさいばかりで見ていて非常にストレスがたまる。
個人的感情を人に押し付ける3番や、偏見に満ちたことしか言わない11番の主張では誰の意見も変えられない。やはり賛同者を得ようと思うなら8番のように人の意見を聞き、その上で論理的に反論する賢さがないとダメなのだ。国会議員の方々にもぜひ本作を見ていただいて、発展性のある有意義な議論とはどういうものかを学んでいただきたい。
密室劇に関しては、“限られた空間の中でいかに重厚で満足感の仕上がりになっているか”が重要だと思っているのだが、この点に関してはこの作品は100点といえる。
特に、キャラクター描写と集団心理の描き方が秀逸で、評決が終わるまで彼らの名前すら知らなかったことに、映画を観終わってから気が付いた。
それほどまでにあの空間に没入していた。
様々な考察やパロディーがなされているのも納得の、シンプルかつ奥深い面白さ。(女性 30代)
単純にめちゃくちゃ面白かったです。もし、自分が陪審員に選ばれた時何を根拠に、有罪か無罪か決めるだろうかと考えました。提示された証拠品や証言など様々ありますが、そこに個人的な感情は絶対に持ち込んではいけないなと感じました。
12人いたからこそ、様々な意見があり、それを議論することこそが陪審員の役目なのだと思いますが、8番のたった1人の意見だけで、少しずつ考えを変えていき、結果的に全員の意見が覆されると言うのは凄いことだと思います。
議論することの面白さと、奥深さを感じる作品でした。(女性 30代)
映画『十二人の怒れる男』 まとめ
日本では三谷幸喜脚本の「12人の優しい日本人」を先に見て、その元ネタとなっている本作を見たという人の方が多いかもしれない。この2つの作品は笑ってしまうほどよく似ている。というか、「12人の優しい日本人」は本作のパロディといっていいだろう。三谷幸喜ファンなら本作も見ておいて損はない。類似点を探すだけでも楽しめる。
もし脚本の面白い映画を探しているなら迷わずこの作品を見て欲しい。とにかく脚本の秀悦さが際立っている名作なので。
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