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映画『メビウス(2013年・韓国)』のネタバレあらすじ結末と感想

この記事では、映画『メビウス(2013年・韓国)』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『メビウス(2013年・韓国)』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。

この記事でわかること
  • 『メビウス(2013年・韓国)』の結末までのストーリー
  • 『メビウス(2013年・韓国)』を見た感想・レビュー
  • 『メビウス(2013年・韓国)』を見た人におすすめの映画5選

映画『メビウス』の作品情報

メビウス

製作年:2013年
上映時間:83分
ジャンル:サスペンス、ヒューマンドラマ
監督:キム・ギドク
キャスト:チョ・ジェヒョン、ソ・ヨンジュ、イ・ウヌ etc

映画『メビウス』の登場人物(キャスト)

父(チョ・ジェヒョン)
上流階級の家に住む夫。長年、近所の売店で働く若い娘と不倫している。不倫を確信した妻にナイフで性器を切り落とされそうになるが間一髪のところで彼女を蹴り飛ばし、事なきを得る。しかし、罪悪感から自分も性器を切断する。
母 / 売店の娘(イ・ウヌ)
夫の不倫に嫉妬し、情緒不安定気味の女性。精神が狂い果てるあまり夫を襲う。それが未遂に終わると今度は息子に襲い掛かり、息子の性器を切断し更にはそれを飲み込んでしまう。以降、行方をくらませる。

売店の娘は、母親の役者と一人二役。父の不倫相手。性器を失った息子とは紆余曲折の末に歪んだ性的関係で結ばれるようになる。

息子(ソ・ヨンジュ)
不仲の両親の元で一人孤独な、恐らく高校生くらいの息子。狂った母親に、性器を切り取られて失くしてしまう。性的快感を得られなくなったことで、性欲を性的なもの以外で発散しようとしおかしな方向にこじらせていってしまう。

映画『メビウス』のネタバレあらすじ(起承転結)

映画『メビウス(2013年・韓国)』のストーリーをネタバレありの起承転結で解説しています。この先、結末までのネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『メビウス』のあらすじ【起】

とある上流階級の立派な家。そこに住むのは父、母、息子の三人家族。だらしなく足を広げて階段に座り込み、昼間からワインを煽るのはこの家の母だ。その表情にも疲労が見え、ひどく憂鬱げである。その理由は、夫の不倫疑惑にあった。その頃、リビングで不倫相手と思しき相手とスマートフォンで連絡を始める夫。すかさず母が走り飛び込んでいき、馬乗りになりそれを阻止しようとする。スカートの中が見えようが、大股を開こうがなりふり構わず全力で父から電話を奪おうとする母。それに反抗する父。そんな哀れで滑稽とも言える両親の姿を、息子は一人何とも言えない眼差しで見守るよりほかなかった。

父が夢中になっているのは、小さな雑貨店を営む若い女だった。売店の女と、車の中で恥ずかしげもなく情交に至る父。その現場を、息子は目撃してしまっていた。それを見ながら呆れたような目を向ける息子。しかし、そこにいたのは息子だけではない。母もその場面を見てしまうのだった。母の抱いていた疑惑は、とうとう真相へと変わる。これが発端となり、一家の全てはものの見事に狂い始めるのであった。その晩、息子が先の父の情事に興奮し部屋で自慰行為に耽っているのを覗いてしまう母。不倫現場のこともあってか、すっかり病んでいた母の狂気は暴走を極め始める。ナイフを手にし、父(夫)の寝室に侵入する母。性器を切り落とそうとするが、寸での所で気付いた父に突き飛ばされてしまう。無事に去勢されずに済んだ父であったが、母が次に向かったのは何故か息子の部屋であった。やがて、無防備に眠ったままの息子の性器を切り取ってしまう。その上、何と彼女は切り取った性器を食べてしまった。慌てて飛び込んで来た父がそれを吐かせようとするが、吐き出せずに終わる。叫び声を上げる息子を病院へ担ぎ込む父だが、母はその間、夜の街へとふらふらと外へと歩き出していく。裸足のままで彼女は、街の中にいた祈りを捧げる謎の男についていき行方をくらませる。

映画『メビウス』のあらすじ【承】

病院では、己の性器がなくなり唖然とする息子。退院後も、それが原因で同級生たちからいじめに遭うようになってしまう。父は罪悪感から、銃で自殺を試みようとするが結局できずに終わる。不倫相手の女との関係も、それを機に解消する。父は悩んだ末に、自分自身も性器を切り落としたのだった。

ある日、不倫相手の女の元を尋ねる息子に、何故か胸を見せて挑発する女。父の代わりにでもしようというのだろうか。そこへ、例のいじめっ子たちが現れる。雑貨店の前でパンツを脱がされそうになる息子だったが、そこへ不良の三人組が現れいじめっ子たちを止めてくれる。以来、不良とつるむようになる息子であったが、この不良たちは売店の女に目を付けてしまったことでまたもや事態は急転する。

不良たちは店に入り込み、女を強姦する。何もできずに見守っている息子に、同じよう彼女を強姦するように言う不良。だが、性器のない彼には挿入と言う行為ができない。泣き続ける彼女と、さも行為をしているかのようなふりをする。その後、すぐに強姦罪で逮捕される彼ら。しかし、父の証言で息子には性器がないことが発覚する。手錠をかけられてままで、怒りと恥ずかしさから父を蹴り続ける息子。彼はそのまま少年院へと送られてしまった。

申し訳なさから自殺を試みる父だがそれもならず、そんな父がせめて息子にしてやれることといったら……、不意にインターネットで何かを調べ始める父。彼は性器がなくても性的快楽を得られる方法について検索していた。辿り着いたその方法とは、「石で手を削り続け、その痛みで絶頂に達する」というもの。早速自分でも実行してみる父。血が滲むまで肌をゴシゴシと擦り続け、やがて快感へと導かれる。しかし、快楽の後には痛みが待っている。すぐに激痛が戻ってきて、悶絶の悲鳴を上げる父。息子も息子で、独房の中で父に教わった方法を試してみる。新たな自慰行為を覚えた息子はどんどんおかしな方向へ性欲をこじらせていく。

映画『メビウス』のあらすじ【転】

出所した息子は、売店の女に会いに行く。性器がないなら、新たな性器を作ればいい。そこで二人が試したのは、痛みを共有することで共に快感を得る方法。抱き合いながら、突然息子の肩をナイフで刺す女。それに興奮した息子は女とキスを交わし、女も女でナイフを更に深く深く突き刺し始める。息子も自ら彼女の刺したナイフに手を添え、傷口をより広げ、抉るように突き刺してゆく。にわには信じがたいが、二人は少なくともこの行為によってエクスタシーを感じることとなる。

痛みを通じて謎の絆が生まれた二人は、同じく出所してきた不良にも痛みを分け与えようとする。不良は不良で、女に下心があって近づくが、女は女で不良の局部を切り落とし、息子にもしたことと同じように肩にナイフを突き刺した。隠れていた息子が出てくると、切り取られた性器を持って逃亡する。が、その性器が車に潰されてしまい不良も息子と同じく性器を失くしてしまった。不良は女を殴りに行こうとするが、息子が背後から刺してしまう。

そんな中、父は切り取った自分の性器を息子に移植する手術を行う。しかし、一向に反応しない。不思議なことに、父の不倫相手であった女にはしっかりと反応を示すのである。息子の意志ではなく、父の下半身が勝手にこの女(若しくは妻)を求めたのだろうか――女と性交し、やがて別れを告げる息子。

映画『メビウス』の結末・ラスト(ネタバレ)

そんな中で、行方不明だった母親が一家の元へと戻って来る。そして母は、今度は父に性器がなく息子に性器が戻っていることに驚愕する。以来、母は夜な夜な息子と関係を持とうとそのベッドへと訪れるようになる。これは息子と、というよりは、父の性器と交わりたいから、という見方もできるが真相は分からない。只、母は息子へと手淫を施しオーガズムへと導いた。遂に、母と息子の関係を知った父。父は妻を取られたのを羨み、自分の性器を己に取り戻したくなったのであろう。奪い返そうとナイフを手にするが母の阻止により失敗に終わる。

その後、何度か性的接触を試みようとする夫婦。しかし、性器のない父にそれが叶う筈もない。

ある日の晩、息子はいよいよ寝室で母親と性交してしまう。怒り狂った父が拳銃を持って入ってくると、銃声が響き渡る。……どうやらそれは息子の見ていた夢だったらしい。息子は起き上がり、廊下に出て見ればそこには血の海が広がっていた。その中で倒れる、父と母。夢の中で聞いた銃声は、夫婦の無理心中の音だったらしい。息子はその切望的な光景に座り込み、やがて自分も拳銃で股間を撃ち抜いた。

夜。息子は一人、かつて母がそうだったように、ふらふらと街を徘徊している。偶然見つけた店には、神像のようなものが祀られており彼はそれに祈りを捧げる。その姿は、かつて母が最初の悲劇の際についていった男の姿とまるで同じであった。微笑みを浮かべる息子は、何を思っているのだろう?

映画『メビウス』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)

ギドク監督はよく狂った家族を描く。そんなアホなと思いつつ監督はきっと大真面目に撮っている。本作も文字に起こすと凄惨に見えるが映像で見るとブラックなギャグ映画にも見える。勝手な考察だが、最後の心中の光景から言ってこの一連の出来事は息子の妄想が半分程混ざっている、とも感じた。題名のメビウスとはこの乱雑した性欲の連鎖の輪を意味しているのだろうか。断ち切れないループ状の輪が巡り、夫婦は自ら命を絶つことでその輪から抜け出せた……のか?(MIHOシネマ編集部)


言葉を一切使わず、暴力と性的衝動、家族の歪みをここまで濃密に描いた映画は他にありません。息苦しく、痛々しく、そして妙に美しい。不倫、去勢、倒錯というキーワードが飛び交う中で、これは愛を巡る物語だったのだと思い知らされました。キム・ギドク監督の狂気と執念が全編からにじみ出ています。(30代 男性)


観終わってしばらく動けませんでした。台詞がない分、登場人物の表情や行動から感情を読み取るしかなく、それがより一層狂気を感じさせる仕掛けになっている。母親の狂気、父親の罪悪感、そして息子の成長と受容――観ているこちらも痛みに耐えるような映画体験でした。好き嫌いは分かれますが、強烈です。(20代 女性)


正直、何度も目を背けたくなるシーンの連続でしたが、それでも最後まで観てしまった。この映画には「衝撃」という言葉では足りない、底知れぬ闇と人間の本質が詰まっている。暴力と性がこんなにも生々しく、そして象徴的に描かれるとは。韓国映画のタブーを攻める姿勢に感服しました。(40代 男性)


私はキム・ギドク監督作品の中でも本作が最も印象に残っています。セリフがないからこそ、映像と音だけでここまで感情が揺さぶられるという稀有な体験ができました。家族という最も安全であるはずの場所が、ここまで崩壊すると逆に哲学的ですらあります。苦しいけれど、目を背けられない作品です。(30代 女性)


最初から最後まで不快感と背徳感に満ちた一本。でも、それを“芸術”として完成させてしまうのがキム・ギドク監督のすごさ。痛々しい描写も多いけれど、その裏にあるテーマは「愛のゆがみ」や「罪の循環」。人間はどこまで赦せるのか?という問いを突きつけられた気がしました。忘れられない映画です。(20代 男性)


観る人を選ぶ作品なのは間違いないですが、観る価値のある映画です。個人的には、言葉を使わない演出がこんなにもパワフルだとは思っていませんでした。去勢という衝撃的な行為を軸に、性と暴力、愛情と赦しがループしていく様はまさに“メビウスの輪”。タイトルの意味が最後にズシンと来ました。(40代 女性)


序盤の展開でもう心が折れかけましたが、そこから目が離せなくなるのがこの映画の恐ろしいところ。倫理や常識なんて通用しない世界の中で、それでも家族を描こうとする意志に圧倒されました。ラストの展開には“希望”すら感じてしまったのは、私がこの世界に取り込まれてしまったからかもしれません。(30代 男性)


母親の行動があまりにも突飛で、最初は理解不能でした。でも物語が進むうちに、それが単なる狂気ではなく、ある意味での“浄化”や“再構築”の儀式であったように感じられてきた。不安定で恐ろしいのに、どこか感情移入してしまう…。その感覚自体がこの作品の魅力だと思います。(20代 女性)


こんな映画があるとは思いませんでした。セリフが一切ないのに、物語が手に取るように伝わってくる不思議な映画体験。家族の崩壊を描く中で、欲望と赦し、肉体と精神が絡まり合う様がとにかく凄まじい。嫌悪感すらも“感動”に変えるような力を持っている稀有な作品です。(50代 男性)

映画『メビウス』を見た人におすすめの映画5選

累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『メビウス』を見た人におすすめの映画5選を紹介します。

嘆きのピエタ(2012)

この映画を一言で表すと?

暴力と赦しが交錯する、キム・ギドク監督の衝撃的愛憎劇。

どんな話?

冷酷な借金取りの男が、ある日「自分の母親だ」と名乗る謎の女性と出会い、戸惑いながらも絆を築いていく。しかしその関係には、想像を超える真実が隠されていた――。

ここがおすすめ!

『メビウス』と同じく、キム・ギドク監督による痛みと愛の物語。暴力的で倒錯的な描写の奥に、母と子の関係性が潜んでおり、観る者の感情をかき乱します。ラストの余韻も強烈です。

アンチクライスト(2009)

この映画を一言で表すと?

死と性が混ざり合う、美しくも残酷な心理ホラー。

どんな話?

子どもを失ったショックから立ち直ろうと、森の山小屋で過ごす夫婦。そこで露わになるのは、妻の異常な精神状態と、自然がもたらす恐怖と破壊だった。

ここがおすすめ!

ラース・フォン・トリアー監督による、視覚的・感情的に強烈な体験。『メビウス』同様、暴力・性・沈黙が主軸にあり、人間の原始的な感情をむき出しにします。観る覚悟のある方におすすめ。

ドッグトゥース(2009)

この映画を一言で表すと?

「家族という檻」に閉じ込められた若者たちの異常な日常。

どんな話?

外界から完全に隔絶された家で育てられた三人の兄妹。親の作り上げた偽りの世界の中で過ごす彼らは、少しずつ外の世界への興味と反抗心を抱くようになる――。

ここがおすすめ!

ギリシャの奇才ヨルゴス・ランティモスが描く、狂気のファミリー劇。『メビウス』と同じく、家族の中で起こる歪みを極端な形で描いており、不快とユーモアの境界線を曖昧にしています。

告白(2010)

この映画を一言で表すと?

美しく冷酷な復讐が導く、哀しみの連鎖。

どんな話?

中学校教師の娘が死んだ。彼女はある日、クラス全体の前で語る――「犯人はこの中にいる」と。そこから始まる心理戦と報復の連鎖が、登場人物すべての運命を狂わせていく。

ここがおすすめ!

中島哲也監督による静かな語りと衝撃の展開。『メビウス』同様、家族と罪、許しと破壊がテーマ。抑制された演出の中に潜む狂気が、観る者に深く突き刺さります。

冷たい熱帯魚(2010)

この映画を一言で表すと?

善良な市民がゆっくりと地獄に堕ちていく、狂気の実話ベースドラマ。

どんな話?

真面目に熱帯魚店を営む男が、カリスマ的な同業者と出会ったことで、次第に猟奇的な犯罪へと引きずり込まれていく。

ここがおすすめ!

園子温監督による衝撃の実話インスパイア作品。日常が壊れていくスピード感と、暴力のリアリティは『メビウス』と通じるものがあります。倫理を超えた世界を体感したい人に。

この記事の編集者
影山みほ

当サイト『MIHOシネマ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『シネマヴィスタ』の編集長も兼任しています。

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