映画『素晴らしき哉、人生!』の概要:アカデミー監督賞を3度も受賞しているフランク・キャプラ監督の後期の代表作。1946年の公開当時は興行的に失敗したが、1970年頃からテレビ放送によって人気が出始め、今では“アメリカのクリスマス映画といえばこの作品”と言われるまでになった名作。
映画『素晴らしき哉、人生!』の作品情報
上映時間:130分
ジャンル:ヒューマンドラマ、ファンタジー、コメディ
監督:フランク・キャプラ
キャスト:ジェームズ・スチュワート、ドナ・リード、ライオネル・バリモア、ヘンリー・トラヴァース etc
映画『素晴らしき哉、人生!』の登場人物(キャスト)
- ジョージ・ベイリー(ジェームズ・ステュアート)
- 自分のことより人の幸せを優先する町の人気者。将来は町を出て、世界中を旅行し、大学を卒業して大きな仕事をしたいという夢があったが、住宅金融会社を経営していた父親が急死し、後継者となる。12歳の時から左耳が聞こえない。
- メアリー・ハッチ(ドナ・リード)
- ジョージの妻。幼い頃からジョージのことが大好きで、ジョージと結婚するのが夢だった。美人で聡明。二男二女の良き母親でもある。
- ヘンリー・ポッター(ライオネル・バリモア)
- 町を支配する強欲な富豪。貸家業をしているのでジョージの住宅金融が目障りで仕方がない。何とかジョージを支配しようと圧力をかけ続ける。
- クラレンス(ヘンリー・トラヴァース)
- 293歳になる2級天使。信仰深く純真な男だが、あまり要領が良くないので、200年間翼がもらえない。自殺を図ろうとしたジョージの守護天使として、ジョージを救いにくる。
映画『素晴らしき哉、人生!』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『素晴らしき哉、人生!』のあらすじ【起】
クリスマスの前夜。ベッドフォード フォールズという小さな町では、ジョージ・ベイリーという男のために、大勢の人々が祈っていた。その祈りが天に届く。
ジョージは、今夜10時45分に投身自殺をすることになっており、クラレンスという2級天使が守護天使としてジョージを救いに行くことになる。クラレンスは落ちこぼれの天使で、200年間も翼がもらえないままだった。先輩天使たちは、成功すれば翼を与えると約束し、クラレンスにジョージの今までの人生を見せる。
1919年、12歳のジョージは、冷たい池に落ちた弟のハリーを助け、風邪がもとで左耳の聴覚を失う。その後、元気になったジョージは、ガウワーの経営する薬屋でアルバイトを始める。
息子が死んだという電報を受け取ったガウワーは、ショックで平常心を失い、子供に配達する薬に間違えて毒を入れてしまう。配達を頼まれたジョージは、薬を届けないまま薬屋へ帰り、ガウワーに殴られる。ジョージは“中に入れたのは毒だよ”と説明し、このミスを誰にも言わないと約束する。ガウワーは、ジョージの思いやりに深く感謝する。
1928年、21歳になったジョージは、自分でお金を貯めて欧州旅行へ旅立つ準備をする。旅行の後は、自分で稼いだ学費で大学へ通う予定だった。ガウワーは、名前入りの大きな旅行カバンを、ジョージにプレゼントしてくれる。
明るくて思いやりのあるジョージは、町の人気者で友人も多い。町の低所得者のために小さな住宅金融会社を経営している父親は、ジョージに後を継いで欲しがっていた。この町にはヘンリー・ポッターという強欲な賃貸業者がおり、ポッターは、貧しい人間にマイホームを持たせる住宅金融を目の敵にしている。父親はポッターの圧力に悩まされながらも、私欲を捨てて町の人に尽くしている立派な人間だ。ジョージはそんな父親を尊敬していたが、彼にも大学を卒業して都市計画などの大きな仕事がしたいという夢がある。父親は息子の気持ちを理解し、“この町を出ろ”と言ってくれる。
高校の同窓パーティーへ出席したジョージは、久しぶりに友人の妹のメアリーと再会する。18歳になったメアリーは、美しい女性に成長しており、ジョージは彼女とダンスを踊る。メアリーは、幼い頃から、ずっとジョージのことが好きだった。
帰り道、2人はワルドルフ屋敷という廃屋の前で立ち止まる。この屋敷には、石を投げて窓が割れたら願いが叶うという迷信があった。ジョージは窓を割って“世界に飛び出したい”と願う。メアリーも窓を割るが、何を願ったのかは教えてくれなかった。2人がいい雰囲気になった時、ジョージの父親が発作で倒れたという知らせが入る。
映画『素晴らしき哉、人生!』のあらすじ【承】
父親は亡くなり、ジョージは欧州旅行を諦めて、会社の事務処理をこなす。父親の死後3ヶ月目の株主総会で、ポッターは会社を解散し、資金と負債を管理者に委任するよう要求してくる。ポッターから父親を侮辱され、ジョージは彼に反論する。他の株主たちは、ジョージが次期社長になるという条件で、会社の存続を決める。ジョージは、大学進学を諦めて会社を継ぎ、自分が貯めた学費でハリーを大学へ行かせてやる。
ジョージは、ハリーが大学を卒業したら社長の座を譲り、自分が大学へ行くつもりだった。しかし、ハリーは卒業してすぐにガラス工場の経営者の娘と結婚し、その会社で働くことになる。ジョージは弟夫婦のために、今回も自分の夢を諦める。
ニューヨークへ出ていたメアリーが、地元へ帰ってくる。メアリーは、今でもジョージのことを想い続けており、彼からのプロポーズを待っていた。頑固なジョージは、なかなか素直になれなかったが、ある晩ついにメアリーに愛を告白する。
結婚式を挙げたジョージとメアリーは、新婚旅行へ旅立つため、タクシーに乗り込む。ところが、町は大恐慌で混乱しており、ジョージの住宅金融にも人が押し寄せていた。ジョージは会社へ行き、事情を聞く。副社長のビリー叔父さんは、銀行から返済を迫られ、現金を全て渡していた。ポッターは、大恐慌を利用して銀行を乗っ取り、住宅金融の顧客の株券を買い占めようと動いていた。“すぐに現金を渡せ”と顧客に迫られ、ジョージはメアリーの許しを得て、新婚旅行の資金2000ドルを使う。そのおかげで何とか会社は倒産をまぬがれたが、新婚旅行には行けなくなってしまう。
メアリーやジョージの友人は、ワルドルフ屋敷を新婚の部屋に改装し、疲れ果てたジョージを温かく迎えてくれる。感動するジョージに、メアリーは“窓を割った時、こうなることを願った”と伝える。メアリーという最高の伴侶を得て、ジョージの仕事も軌道に乗り始める。
映画『素晴らしき哉、人生!』のあらすじ【転】
ジョージは、「ベイリー公園」と呼ばれる敷地に住宅を建設し、低所得者でも自分の家を持てるという夢の手助けをしていた。そのせいでポッターの貸家は空き家が増えており、危機を感じたポッターはジョージを呼び出す。
ポッターは年収2万ドルという破格の報酬で、ジョージを雇いたいと申し出る。社長とはいえ、儲けの薄い商売をしているジョージの収入は低く、メアリーにも苦労をかけていた。メアリーのことを考え、ジョージは一瞬迷うが、すぐに思い直してはっきりと断る。後悔するのではないかと不安を感じていたジョージだったが、メアリーの妊娠を知って、明るい気持ちを取り戻す。
その後もジョージは町を離れることなく、町の人々のために尽くす。戦争が始まり、ハリーや友人たちは徴兵されて戦地へ向かったが、耳に障害のあるジョージは徴兵を免れ、そのぶん町で頑張っていた。ジョージとメアリーは二男二女に恵まれ、貧しいながらも幸せな家庭を築いていく。
そしてクリスマスの前日。新聞は、戦争で大活躍したハリーが、大統領から名誉勲章を授与されたというニュースを大きく報じていた。そのハリーが帰還するというので、町中が歓迎の準備を進める。
会社の現金8000ドルを預金するため、銀行を訪れていたビリー叔父さんは、ポッターに新聞を見せて、ハリーの自慢をする。その時うっかり、新聞の上に現金の入った封筒を置いてしまい、新聞ごとポッターに持ち去られる。ポッターはすぐに封筒の現金に気づいたが、それをビリー叔父さんに返すようなことはしない。ビリー叔父さんは真っ青になってそこら中を探し回るが、当然現金は出てこない。
ビリー叔父さんからそれを聞いたジョージは、一緒になって必死で現金を探す。もしそのお金がなければ、会社は破産し、ジョージは刑務所行きになってしまう。
現金は出てこず、ジョージは絶望して帰宅する。家ではメアリーと子供たちが、ハリーの歓迎会の準備を進めていた。ジョージはどうしようもなく苛立ち、メアリーや子供たちにまで当たってしまう。いたたまれなくなったジョージは、家を出ていく。メアリーはすぐビリー叔父さんに電話をして事情を聞き出す。
ジョージは、恥を忍んでポッターに借金を頼みにいく。しかしポッターは、ジョージを散々いたぶり、州にジョージの逮捕状まで要求すると言い出す。
ジョージがマーティの店で酒を飲んでいると、先ほど口論をした男にいきなり殴られる。ジョージは口から出血したまま店を出て、車で事故を起こす。そのまま雪の中をさまよい、橋から川へ飛び込もうかと考える。その時、クラレンスが先に川へ飛び込み、助けを呼ぶ。ジョージは川へ飛び込んでクラレンスを助け、橋の管理人小屋に保護される。
映画『素晴らしき哉、人生!』の結末・ラスト(ネタバレ)
クラレンスは自分がジョージの守護天使として天から来たことや、ジョージを救えば翼をもらえることなどを説明する。しかし、そんな話が信じられるはずもなく、ジョージは“生まれなければよかった”と口走る。それを聞いたクラレンスは、ジョージが存在しない世界を本人に見せることにする。
ジョージが存在しない世界では、事故を起こした車もなくなり、町の名前も「ポッターヒルズ」に変わっていた。マーティの店はニックの店となり、タチの悪い酒場になっていた。成功したはずのガウワーは、子供を毒殺した罪で20年も刑務所暮らしをした末、ヨボヨボの老いぼれになっており、ジョージは驚く。
町の雰囲気もすっかり変わってしまい、住宅金融はとっくに潰れていた。顔なじみの友人たちもジョージのことがわからず、パニック状態になったジョージは、家族がいるはずの自宅へ帰る。しかしそこは廃屋のワルドルフ屋敷のままで、メアリーも子供たちもいない。母親もジョージがわからず、ハリーは9歳で溺死していた。クラレンスは“ひとりの命は、大勢の人の人生に関わっている”とジョージを諭す。メアリーにも拒絶され、警察に追われたジョージは、橋まで戻って“妻と子供のところへ戻してほしい”と祈る。
そこへ警察官のバートがやってくる。バートはジョージを心配し、町中を探していた。ジョージは、元の世界に戻れたことに歓喜し、“メリークリスマス!”と叫びながら、町中を走る。今のジョージには、何もかもが愛しかった。
自宅へ帰ったジョージを、銀行の監査官や逮捕令状を持った検事が待ち構えていた。それでもジョージの喜びは変わらず、子供たちを強く抱きしめる。そこへメアリーが帰ってくる。
メアリーは、“すぐにみんなが来るわ”といって、ジョージをツリーの前に立たせる。そこへ、たくさんのお金が入った大きなカゴを持ったビリー叔父さんが入ってくる。
町の人々は、ジョージが困っていると知り、すぐにお金を寄付してくれた。寄付金を持った人々の列は絶えず、ジョージの家は町中の人で溢れる。ロンドンにいるガウワーからは、“君の会社へ2万5千ドル融資する”という電報が届く。この光景に胸を打たれた検事は、ジョージの逮捕状を破き、監査官までお金を寄付する。
兄の窮状を知ったハリーも急いで帰ってきて、ジョージを囲んでみんなの大合唱が始まる。寄付金の中には、クラレンスの愛読書「トム・ソーヤの冒険」があり、本の裏表紙には“友こそ宝物だ 翼をありがとう”と書かれていた。その時、天使が翼をもらった時に鳴ると言われているベルの音が鳴り響く。それは、ジョージの家のツリーのベルの音だった。
映画『素晴らしき哉、人生!』の感想・評価・レビュー
まるでおとぎばなしのような始まりを観た瞬間、絶対に好きな作品だと確信した。
映画を観る前は大げさすぎると思っていたタイトルが、観終わった後ではこれ以上ないくらいぴったりに思えるから面白い。心の底からそう叫ぶ主人公の声が聞こえてくるようだ。
決して押し付けがましくなく、今そこにある幸せに気付かせてくれる、まさに名作だと思う。
ただでさえ幸せな気持ちになるエンディングに、だめ押しのように鳴るクリスマスベルが最高。(女性 30代)
生きることは難しいが、素晴らしいという力強いメッセージに心打たれた。正に人生の教訓的な映画である。若きジェームズ・スチュワートも輝かしい。自分はどんな人間なんだろうと考えたくなる。
そして人生に少し絶望している誰にでも響く名作中の名作だと思う。観た後は家族や友達に対して何故か感謝の気持ちでいっぱいになった。生きるのが辛くなった時、またこの作品を思い出してみようと思う。(女性 20代)
私がこの作品を知ったのは『ホーム・アローン』です。家族みんなでこの『素晴らしき哉、人生!』を見るのがアメリカのクリスマスの大定番だと言うことを知り、鑑賞してみましたが日本人の私の心にもしっかりと響いてくる作品で、長年愛され続けている理由がよくわかりました。
クリスマス映画だからと言ってハッピーなだけではなく、生きていくのは辛くて大変なこともあるのだと描くところがリアルで、ファンタジーになりすぎていなくて良いなと思いました。悲しいこと、辛い事があるから幸せや喜びを感じられるのだと優しく教えてくれる素敵な作品でした。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
日本ではあまり知られていないけど、アメリカではクリスマスの代名詞になっている大傑作映画でした。日本には「この時期に皆が観る映画」はないですよね。羨ましい風習です。アメリカではテレビ放送から人気に火がつくケースが日本よりも多いみたいですね。もう民法の映画番組が減りに減っている有り様ですから、今後テレビ放送がキッカケで人気に火がつく映画なんて出てこないんでしょう。それにしても、このような大傑作が公開当初全くヒットしなかったというのは不思議です。監督はフランク・キャプラだし、ヒットしない理由がないように思えるんですが……。
感動的なお話ですね。悲惨な現実を目の当たりにして人生に絶望した若者が、自分が存在しない世界を見せられて、人生の素晴らしさを知るという。受動的なストーリーはあまり好きではないんですけど、それはそれで。まあ、とにかく元気が出る映画ですよね。社会で生活する中で、自分が存在する意味を見失ってしまう人は多いと思うんです。特に不景気だとね。そういう時にこういう映画を観るんですよ。絶望の淵で嘆いている男が生きる活力を得て復活する。絶望の淵に追い込まれる前よりもはるかに良い状態で復活するというのは、励まされますね。