映画『モーテル』の概要:ニムロッド・アーントル監督のハリウッドデビュー作。山奥のモーテルで繰り広げられる、不気味でスリリングな一夜の物語。グロテスクな映像は使わず、観る人の恐怖心を掻き立てる手腕が見事。
映画『モーテル』の作品情報
上映時間:85分
ジャンル:サスペンス、ホラー
監督:ニムロッド・アーントル
キャスト:ケイト・ベッキンセイル、ルーク・ウィルソン、フランク・ホエーリー、イーサン・エンブリー etc
映画『モーテル』の登場人物(キャスト)
- デイヴィッド・フォックス(ルーク・ウィルソン)
- 息子を亡くした事故がきっかけで、妻のエイミーと離婚寸前。常識的で気遣いもできるが、エイミーの前では、つい嫌味を言ったりムキになったりしてしまう短絡的な所も。
- エイミー・フォックス(ケイト・ベッキンソン)
- デイヴィッドの妻。息子の死に責任を感じ、うつ病の治療中。心配性だが、勘は鋭い。抗うつ剤の副作用で、すぐに眠くなってしまう。
- メイソン(フランク・ホーエンリー)
- モーテルのフロントマン。下品な冗談を好み、陽気な男を装うが、実際は冷酷で狡猾な男。
映画『モーテル』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『モーテル』のあらすじ【起】
一組の夫婦が、夜の山道に車を走らせている。運転席のデイヴィット・フォックスは道に迷い、高速を降りたことを後悔していた。悪い事は続き、飛び出してきた動物をよけて車の調子がおかしくなるし、助手席でリンゴを剥こうとしたエイミーは手にけがをしてしまった。それが無くても社内の空気は悪く、二人はお互いに嫌味を言い合っている。特に、亡くした子供のチャーリーの話題は厳禁だ。
不幸中の幸いか、車は古いガソリンスタンドに辿り着く。廃墟かと思ったら、整備士の男が車をのぞき込んできた。もう店仕舞いして帰るところだと言うのに、親切にも、ボンネットを開けエンジンの様子を調べてくれた。音は出るが、問題なく走れるだろう。次の街までの道も教えてくれる。遠慮する男にお礼の金を渡すと、代わりに一本の花火を渡された。出発し、窓から花火を出して流れる火花を眺めるエイミー。せっかく機嫌が良くなったのに、夫の嫌味でまだ火のついた花火を道に投げ捨てた。
しばらく車を走らせても、男が言っていた目印は見当たらない。それどころか、エンジンは完全に故障し車は動かなくなってしまった。言い合いながら、先ほどのスタンドまで2km程の山道を歩いて戻る二人。しかし、時間が遅すぎて、既に整備士はいなくなっていた。
スタンドの隣のモーテルに向かうデイヴィッド。すると、フロントは無人で奥の部屋から女の悲鳴が聞こえる。車に戻りたがるエイミーを黙らせ、呼び鈴を鳴らす。女の悲鳴はピタリと止み、眼鏡のフロントマンが現れた。手にはリモコンを持っている。暇つぶしに、テレビか映画でも観ていたのだろう。
デイヴィットは、30km先にあるというスタンドに電話するため、小銭に両替をしてもらう。しかし、フロントマンのメイソンはこんな深夜じゃ誰もいないと指摘する。思い直したデイヴィッドは、このモーテルで一晩明かすことにした。IDカードを預け、「ハネムーン・スイート」の鍵を渡される。エイミーは薄汚れたモーテルにも下品なフロントマンにも、既にうんざりしていたが、デイヴィッドは部屋へ向かってしまう。二人がフロントを去るのを見届け、奥の部屋に戻るメイソン。再び、甲高い女の悲鳴が響き渡った。
映画『モーテル』のあらすじ【承】
通された部屋は、スイートと名が付くだけあり、広く調度品も豪華なものだった。しかし、何年も使われていないのか、汚れはひどく虫が出て、水道の水は赤茶けている。エイミーは、抗うつ剤の薬を水なしで飲む羽目になった。
この日の二人は、エイミーの両親の結婚記念日を祝うパーティーに出席した帰りだった。離婚寸前であることを隠し、仲良し夫婦を演じてきた二人。突然、すまなかったと謝るデイヴィッド。何のことかと思えば、帰り道で高速を降りた事だった。最期の冒険だと笑い、服を着たまま埃だらけのベッドで何とか休もうとするエイミー。
その瞬間、部屋の電話がけたたましく鳴り響いた。フロントからだと思ったら、無言電話だ。そして受話器を置くと、部屋のドアが外からバンバン激しく叩かれる。開けても、外には誰もいない。今度は隣の部屋に繋がるドアが叩かれ、またしても無言電話がかけられる。電話は、こちらからはどこへも繋がらないようだ。
隣室からのイタズラだと思ったデイヴィッドはドア越しに文句を言うが、反応はない。しびれを切らし、フロントに苦情を入れた。すると、今日の宿泊者は自分たちだけだと言う。しかし、ホームレスや学生が忍び込むこともあるからと、メイソンが見回りを約束した。怒りの収まらないデイヴィッドは、フロントに飾ってあるピストルを持って行けと勧めるが、あれはカラス対策らしい。
部屋に戻ると、すっかり静かになっていた。やはりイタズラだったのだろう。気を取り直して、テレビを付ける。どのチャンネルも砂嵐で、諦めてビデオを試すデイヴィッド。一本目は、悪趣味にも、男がホテルかどこかで強盗に襲われている映画だった。エイミーが嫌がり、二本目に入れ替える。するとこれも、女性が殺される映像だ。それも、よく見ると部屋の様子がこのスイートルームにそっくりだ。
改めて部屋を探ると、通気口や家具の陰にビデオカメラが仕込まれている。作動中だ。慌てて三本目のビデオの内容を確かめる。やはりこの部屋で、自分たちと同じ夫婦が怯えている。先ほどと同じくドアを叩かれ、部屋の照明が落ちる。そして、仮面をつけた男たちに押し入られ、TV画面の中の夫婦は襲われた。再び部屋のドアが叩かれ、停電になるスイートルーム。パニックになるエイミーとデイヴィッド。すると、部屋には突然静寂が訪れ、何もなかったかのように明かりもついた。
すぐに逃げ出そうとする二人。ビデオを見たことは音でバレているはずだから、正面から出るのは危ない。バスルームの小窓に目を付けるが、窓は釘で打ちつけられていた。ふと、洗面台に車内で食べていたリンゴが置いてあることに気が付くエイミー。手を切って付いた血もそのままだ。やはりこの部屋にはいられない、と、二人は部屋をでて森の茂みまで走る。しかし、ビデオと同じ仮面の男たちに行く手を阻まれ、部屋に立てこもるしかない。
デイヴィッドは、公衆電話から助けを呼ぶことに心を決めた。エイミーがバスルームの窓辺で囮になる。無事に、緊急センターへ電話がつながった。オペレーターに、必死に情報を伝えるデイヴィッド。電話の向こうから「フォックスさん」と呼びかけられ、我に返る。名前はまだ伝えていない。ハッと電話ボックスの外に目を向けると、車のヘッドライトが猛スピードで近づいてくる。デイヴィッドは咄嗟にボックスを飛び出し、部屋に駆け戻った。大破したボックスを見て、生還を喜び合うエイミーとデイヴィッド。車で嫌味を言い合っていた二人の姿は、もはや無かった。
映画『モーテル』のあらすじ【転】
たくさんのモニターや電子機器が並んだ部屋。メイソンが、スイートルームの監視カメラ映像を眺めている。武器代わりに割った鏡を握りしめ、怯えて座り込む夫婦が写っていた。
エイミーは、薬の副作用でそのまま眠り込んでしまっていた。カメラに妻を映し続け、敵を油断させている間にこっそりとビデオの内容をもう一度確認するデイヴィッド。複数のカメラ映像が編集され、作品として完成されている。そして、仮面の男たちはドアから入っておらず、気が付くと部屋の中にいるようだ。怪しいのは、バスルーム。カメラの死角に入り、バスマットの下に隠し扉を見つけたデイヴィッド。通路は地下に長く続いている。
すると、モーテルの駐車場に新たな車がやって来た。窓から助けを求める二人。車から出てきた男も二人に気づき、こちらに近づいてくる。助けてもらえるかと思いきや、男は殺人ビデオを買いに来た客だった。メイソンに新作を渡され、帰っていく男。
デイヴィッドとエイミーは、隠し通路を進むことを決意する。狭い横穴に裸電球がぶら下がり、不気味な雰囲気だ。ネズミにも耐えトンネルを抜けると、そこはモニタールームだった。老人が殺される様子が編集中だ。戦わなければ自分たちの番だと思い、必死で武器を探すデイヴィッド。エイミーは本物の緊急センターへの電話に成功するが、そこへメイソンたちが戻って来てしまった。再びトンネルに逃げ込み、入り組んだ横穴をうまく使って売店に辿り着く。隠し扉をふさぎ、一息つく二人。生きて戻れたら、二人でもう一度やり直そうと誓う。
映画『モーテル』の結末・ラスト(ネタバレ)
通報を受けたパトカーがやって来た。メイソンは誤魔化すが、その様子や壊れた電話ボックスを不審に思った警官は、一人で客室を捜査する。スイートルームで流したままのビデオを見て、事件を確信する警官。銃を構えて部屋を飛び出す。その様子を窓から見ていたエイミーたちは、今度こそ信用できる相手だと思い、売店から出て助けを求める。3人はパトカーで逃げようとするが、捜査中に壊されていたらしく、エンジンがかからない。ボンネットを開けに行った警官は、仮面の男に殺されてしまった。
またしても、スイートルームに逃げ帰るデイヴィッドとエイミー。小窓から逃げたかのように工作し、天井裏にエイミーを隠すデイヴィッド。自分は、フロントまで銃を奪いに行くと言う。心配する妻を残し、そっと客室の扉を開けるデイヴィッド。すると、その瞬間、潜んでいた仮面の男に腹を刺され、デイヴィッドは倒れ込んだ。苦しむ彼の様子を、ハンディカメラで撮るメイソン。少しだけ撮影すると、すぐに妻を探しにかかる。幸い、天井裏には気が付かず、小窓の工作だけ見て部屋を去っていく男たち。
声を殺して潜んでいたエイミーは、いつしか眠ってしまっていた。気が付くと、夜が明けている。下に降り、血を流して倒れたままの夫に駆け寄るが、すぐに仮面の男が現れ逃げるしかない。停まっていた車を奪い、仮面の男ともみ合いながらも車で建物に突入するエイミー。図らずも、二人の殺人鬼を倒すことになった。仮面が外れた男の顔を見ると、昨夜手を貸してくれた、あの整備士だった。
エイミーは車を捨て、フロントで武器を探す。銃を手に取ったところで、メイソンに捕まってしまった。必死に抵抗するも、殴られ床にたたきつけられてしまう。しかし、偶然にも床に落ちた銃の上に倒れ込んだエイミー。メイソンに発砲し、殺人ビデオの製作者は息絶えた。
エイミーは、ようやく夫の元へ戻る。夫の体にしがみついて泣いていると、気絶していたデイヴィッドが息を吹き返す。エイミーはメイソンの遺体から電話線を奪い、今度こそ緊急センターに助けを求め、愛する夫と共に救助を待つのだった。
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