映画『ムルゲ 王朝の怪物』の概要:朝鮮王朝中宗22年、宮殿の背後に聳える仁王山にムルゲ(怪物)が現れるという噂が都に流れる。中宗王は奸臣の陰謀だと確信し、かつての忠臣で元内禁衛将だった男に事態の収拾と陰謀を明かすよう依頼するが、事態は思わぬ方向へ…。
映画『ムルゲ 王朝の怪物』の作品情報
上映時間:105分
ジャンル:アクション、ファンタジー、歴史
監督:ホ・ジョンホ
キャスト:キム・ミョンミン、キム・イングォン、イ・ヘリ、チェ・ウシク etc
映画『ムルゲ 王朝の怪物』の登場人物(キャスト)
- ユン・ギョム(キム・ミョンミョン)
- 王直属の護衛武士、内禁衛将だった。武芸に長け容姿端麗な者が務める。観察眼が鋭く頭の回転も速い。非常に博識で忠義に厚く、中宋の忠臣でもあった。正義感が強くミョンを守ることにも余念がない。動物をさばくことができない心の優しさを持っている。
- ソン・ハン(キム・イングォン)
- 元内禁衛に所属していた武士でギョムに忠義を尽くしている。ギョムと共に山小屋でミョンを育てている。剣の腕も弓の腕も良く、場を和ませるムードメーカー。
- ミョン(イ・ヘリ)
- ギョムに拾われて育てられた女猟師。ギョムの教育方針により、医術を学び非常に博識。気が強く義父への愛情が強い。いつも義父の後を追いかける習性があり、危険な場所にもついて来る。ホ宣伝官へと好意を持っている。
- ホ宣伝官(チェ・ウシク)
- 調査官。王の命令によるムルゲ調査のため、ギョムの元を訪れる。誠実で勇気のある好青年で中宗王に忠誠を誓っている。ミョンと行動することが多く、好意を抱いている。
- ジン(パク・ソンウン)
- 領議政の私兵、虎狩隊の隊長でギョムを毛嫌いしている。非常に冷酷で横暴。横柄な態度を崩さず領議政の命令に忠実でしつこい。
- 中宋王(パク・ヒスン)
- 先王を廃して王位に就いた王。朝廷を暗躍する奸臣によって忠臣を奪われながら、忠義に厚いギョムを助けるため、王宮から追放する。民のための王になることを目指しているが、ことごとく領議政にしてやられ常に悔しい思いをしている。
- 領議政(イ・ギョンヨン)
- 中宗を廃して自らが王位を簒奪しようと画策している。民心を利用し、中宗を支持しないよう策を弄している。非常に口が上手く腹黒い。
映画『ムルゲ 王朝の怪物』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ムルゲ 王朝の怪物』のあらすじ【起】
1506年、燕山君が廃位され中宗が王位に就くが、反対勢力に押された中宗の脆弱な王制は混乱の渦中にあった。加えて即位して日も浅い当時、国に疫病が蔓延。王は疫病の蔓延を防ぐため、疫病者の始末を命令した。
中宗22年6月25日。中宗王は朝議にて仁王山に出現した獣が民を襲っているとの報告を聞く。その獣は誰も見たことのない様相を呈していたため、民は怪物、ムルゲと呼んでいるらしい。王は反対勢力である領議政が仕組んだものと考え主に調査を行う機関、宣伝官にムルゲの調査を命令した。
山奥の古びた家に住むミョンは、動物もさばけない猟師の父ユン・ギョムともう1人の猟師ソン・ハンの3人暮らし。暮らしは常に貧しく山菜や川魚、庭に作った畑の野菜でどうにか糧を得る毎日。そんなある日、家に宣伝官が訪れギョムがかつて王直属の護衛武士、内禁衛の将軍であったことを知る。しかも、中宗王が自ら足を運びギョムに許しを乞うた。ミョンは驚愕の果て唖然とするしかなかった。
内政が混乱の渦中にあった当時、内禁衛将であったギョムは疫病者でもない村人が無為に殺害された後、生き残っていたミョンを救い追手から逃走を果たして王宮へ戻った。彼は奸臣が王を陥れるため、自分達のような忠臣を排除していると進言。当時、同じ内禁衛であったハンは必死にギョムを庇ったが、中宗は忠臣を庇わず追放を命令。ギョムは王に失望し、ハンと共に王宮を去った。
山小屋を訪ねた中宗はギョムが去った後のことを赤裸々に明かす。ギョムを連れ戻さなかったのは、疫病を利用し忠臣を排除している奸臣に彼が狙われないようにするためだった。そして、疫病の次はムルゲである。中宗は民のための王でいるため、ギョムに内禁衛将の剣をもう一度取って欲しいと望んだ。
一晩、熟考した結果。ギョムはミョンとハンを伴って都・ハニャンへ向かうことに。白湯のような粥を前にした3人の元へ山小屋へも来たホ宣伝官が駆け込んで来る。彼が言うには今朝方早速、ムルゲによる被害が出たらしい。現場は山奥の岩場で巫女共々ムルゲが惨殺したようだ。現場の様子を観察し残される証拠から何者かによる作為的な仕業であることに気付いたギョム。ハンと共に目撃者である少女を尾行することに。すると、少女はムルゲを見たと言えば食べ物をくれると真実を吐露した。
映画『ムルゲ 王朝の怪物』のあらすじ【承】
惨殺遺体には数々の証拠が残されていた。だが、首謀者もしくは実行犯の姿を目撃した者がいない。そんな時、町にムルゲから逃げて来た男が現れる。男はムルゲが出たと言った後、息を引き取ったが、遺体には特徴的な膿疱があった。ギョムはホ宣伝官とミョンに同様の遺体がないか調査を頼む。その後、ギョムはハンと男が襲われた現場へ。遺体には男と同じ膿疱があり、異様な匂いがしていた。
遺体安置所へ向かったミョンとホ宣伝官は検視を行い、他の遺体にも同様に膿疱があることを調べ上げた。
その夜、ギョムは中宗へムルゲが人為的に作り上げられた虚像であること、そして膿疱についても極めて感染力の強い菌によるものと報告。ギョムは恐れる民の心にムルゲがいると告げ、一刻も早く真偽を暴くべきだと告げた。
そこで、中宗王はムルゲ討伐のために軍を動かすと朝議の場で告げる。すると、領議政が軍ではなく自らの私兵でもある、虎を狩ることに特化した隊を出すと言い出す。中宗はそこで、隊の人員は100名とし、捜索隊長にはギョムを指名。朝議へと参内したギョムに中宗は民の負担とならぬようにせよと命令した。
臣下の命により横暴な食糧徴収と徴兵が行われる。領議政は民兵を伴うのだから失敗は許されないとプレッシャーを与えるのであった。
画してムルゲ捜索が開始。領議政の私兵、虎狩隊の隊長ジンとはギョムとも顔見知りだったが、ギョムに対して酷く横柄な態度である。ムルゲは夜に出るとジンが言うため、ギョムは夜を通してジンの隊と二手に分かれて捜索を続行。辺りが暗くなった頃、ギョム達は谷がある場所で獣の足跡を発見した。その場所はかつてギョムがミョンを救った場所でもあった。
その頃、ジンの隊では民兵を皆殺しにしてしまう。その後、ジンは領議政に報告を行い合図の火矢を放った。
同じ頃、谷へ降りようとしていたギョムは放たれた火矢を目撃したが、谷の上で民兵が虐殺されてしまう。殺しているのは虎狩隊の隊員たちだ。ギョムは慌てて谷から這い出て加勢。ホ宣伝官とミョンには王へ報告するよう走らせ、ハンと共に戦い続ける。
全員を始末したギョムとハンだったが、ギョムに放たれた矢をハンが庇ったせいで網縄に捕らえられてしまう。ジンが現れ捕縛されたホ宣伝官とミョンも連れられて来る。ジンが言うには、ムルゲは領議政が私兵を都に移すために作り上げられた計略で、13年前の疫病騒動も領議政による計略であった。その話を聞いて幼い頃のことを思い出したミョンだったが、彼女とホ宣伝官は谷底へと突き落とされてしまう。怒り心頭となったギョムはジンに復讐を誓い襲い掛かろうとしたが、意識を奪われてしまうのだった。
谷底へ落ちはしたものの、縄が途中に引っかかりどうにか命拾いしたミョンとホ宣伝官。
その頃、ジンは領議政へムルゲが現れて捜索隊が壊滅したと報告し、ギョムとハンを殺そうとする。ところが、谷底へ矢を放ったせいで本物のムルゲが現れてしまう。その異様な姿は意識を取り戻したギョムも目撃。ムルゲは次々に虎狩隊に襲い掛かり、恐れを成したジンたちは早々に退却した。
映画『ムルゲ 王朝の怪物』のあらすじ【転】
茫然としてその様子を見ていたギョムだったが、ハンと共に谷底へ。幸いにしてミョンとホ宣伝官は無事だった。谷底は本物のムルゲのねぐらのようで、感染力の高い菌が蔓延している。急いで王へ知らせなければ、本物のムルゲが都を襲うかもしれない。そんな時、谷底の横穴から老人と民兵の1人が現れる。老人はムルゲの唾液を塗れば疫病の予防になり、人間の匂いも消せると言う。更に奴の血を浴びれば疫病に感染する。一行は老人の言うことに従い谷底へ帰って来たムルゲを観察することに。
一頻り餌を貪り眠りについたムルゲ。一行は横穴から逃げようとするが、ムルゲが起きてしまう。ギョムは囮となって仲間を先に逃がし、一行はムルゲに襲われながらもどうにか逃走を成功させた。
都へ戻り領議政へ本物のムルゲがいることを報告したジンだったが、領議政は信じようとしない。その上、都へ火を放ち壊滅させろと言う。ジンは疫病の感染源はムルゲだと宣言。民は恐れ戦き王への不信感を募らせる。都と仁王山は火の海となり逃げ場を失った民が王宮へと押し寄せた。
同じ頃、横穴から川へ身を投じ助かったギョム一行は、川が王宮へと繋がる暗溝へ続いていることに気付く。暗溝とは王宮の地下水路で王宮内の蓮池に繋がっている。ギョムは老人からムルゲについて詳細を聞くことに。老人は暗溝から調隼坊と呼ばれる檻のある部屋へ。そこは先代の王、燕山君が珍獣を飼育していた場所だった。
調隼坊では異種交配によって生まれた変わった動物が飼育されており、老人は動物に餌をやる仕事をしていたと言う。彼はここで幼獣だったムルゲも養育しており、ムルゲは輝く瞳・チョロンと呼ばれていた。ところが、燕山君が廃位した日、反勢力が調隼坊にも乗り込んで来たため、老人はチョロンを密かに逃がした。しかし、逃げた先にあった疫病者の遺体を食べたチョロンは凶暴化してしまったと言う。
チョロンが一行を追って来たため、調隼坊の上階へ逃げたギョム達。しかし、老人は幼獣だった頃、餌を与えるための合図であった鈴を鳴らしチョロンを一時的に足止めする。チョロンは老人のことを思い出し言うことを聞き檻へ入ったが、罠と気付き老人を殺してしまった。
その頃、領議政は助けを求める民に救済を施すと宣言。これにより王は更に窮地へと落とされる。調隼坊から王宮へ逃げ延びたギョム達は急いで中宗へ事の真相を報告。ところが、すでに王宮は領議政の兵で包囲されており、中宗は矢に倒れてしまう。ギョムはたった1人で奴らに対峙したが、多勢に無勢。領議政は王こそが民にとっての怪物だと告げるのだった。
領議政は捕らえた中宗とギョムを処刑しようとするが、そこへムルゲが床を破壊して登場。ジンが戦っている間、隙を突いて中宗とギョムはその場から逃走した。
映画『ムルゲ 王朝の怪物』の結末・ラスト(ネタバレ)
その頃、捕まったミョン達はどうにか兵を倒して逃れたが、そこへムルゲが登場。王宮は騒然となったが、ギョムと中宗は謁見の間から逃れることができた。領議政は私兵に命じてムルゲを攻撃したものの倒すことができない。そこで今度は縄をかけてムルゲの動きを封じることにした。外へ逃れたギョムは護衛兵に中宗を宮殿の外へ避難させるよう命じる。それから、追手の足止めをしながらミョン達と合流した。
捕らえたムルゲを使って領議政は民心を得て王になろうと考える。しかし、ムルゲは感染病の源でもある。兵が怯んだ隙にムルゲは拘束から逃れてしまった。
そこで、ギョムは調隼坊にムルゲを誘き寄せ、討伐しようと考える。ミョンは宮殿からムルゲが出ないよう門を閉めるために向かったが、門には逃げて来た民がひしめき合っていた。ミョンは必死にムルゲを閉じ込めたいと言い募り、民と協力して門を閉めようとする。ところが、そこへ逃げて来た領議政が現れ門を閉めずにムルゲと戦えと怒鳴る。ミョンは反論して奴の悪事を民に明かした。都に火を放ったのもムルゲ討伐隊を壊滅させたのも領議政の計略だと。民は激怒して領議政に武器を向け、奴を宮殿へ押し返し門を閉めてしまった。
そこではムルゲが待っている。追い詰められた領議政は民の目前でムルゲに殺されてしまう。恐ろしいムルゲの姿に恐怖した民が宮殿から逃げ惑う。屋根から外へ出る前にギョムが弓矢を放ちムルゲを宮殿へ戻した。そして、物音を立てつつ調隼坊へ。
その頃、ホ宣伝官とハンは調隼坊に火薬を設置していたが、現れたジンのせいで火薬の設置が進まない。ハンは二階から突き落とされて重傷を負い、どうにかホ宣伝官が動きを止めたが、決め手がない。ミョンが駆け付けてくれたことでジンを倒すことに成功した。
時間稼ぎのため、ムルゲと対峙したギョムは隙を突いて調隼坊へ。予想通りムルゲも追って来たため、ギョムは後のことをハンに託し、ムルゲと再び対峙。彼は火薬の元へ辿り着き、ムルゲと睨み合い自ら犠牲となりながら火薬に火を放った。
爆発にてムルゲが息絶える。夜が明けた頃、都には雨が降った。雨が降りしきる中、民と共に中宗も宮殿へ戻る。爆発跡地へ民が辿り着いた頃、ミョンがようやくギョムを見つけ出す。幸いにして彼はまだ生きており、無事助け出されるのだった。
ムルゲの一件で中宗は昌徳宮へ居所を移し、本来の居所となる景福宮へ戻るまで3年の時を要した。中宗25年7月16日、朝鮮王朝実録にはそのように記されている。
その後、ミョンは医術の腕を買われ宮殿に残ることになり、ギョムとハンは中宗から許しを得て元の山小屋へ戻ることにしたのだった。
映画『ムルゲ 王朝の怪物』の感想・評価・レビュー
前半の早い段階でムルゲは奸臣による陰謀で実在しないと判明するが、実は実在していて大事になるという内容。
二転三転するので見応えは充分ある上に内容が非常に濃い。奸臣の陰謀と前王の負の遺産に疫病と三つ巴になり、かなり複雑化。それでもきちんと始末をつけ終結に導くのだから凄い。陰謀説で擦った揉んだするかと思ったら、本物が出てきたのでびっくりしたというのが正直な感想。しかも、終盤は怪物との大捕り物をする。そのせいで王様の存在がかなり気薄になったが、仕方ない結果だろう。(MIHOシネマ編集部)
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