映画『生魂』の概要:一斉を風靡し大人気となった『陳情令』のスピンオフ作品第一弾。かつて鬼将軍と呼ばれた温寧が、悪鬼が現れるという扶風城を訪れ甥の思追と共に悪鬼討伐と扶風城を守護していた仙家没落の謎を解明する。
映画『生魂』の作品情報
上映時間:84分
ジャンル:ファンタジー、歴史
監督:チョウ・チョンウェイ
キャスト:ユー・ビン、ジェン・ファンシン、ワン・イーフェイ、ガオ・ハン etc
映画『生魂』の登場人物(キャスト)
- 温寧(ユー・ビン)
- ウェン・ニン。温家の唯一の生き残りで、医術に詳しい。複雑な生い立ちを持ち、死にかけるも陰鉄によって自我を持つ唯一の存在となる。太い鎖を身体に巻きつけ、己の内に秘められる陰鉄の力を封印している。青白い肌と首元に亀裂が入っており不気味な様相だが、心根は優しい。鬼将軍と呼ばれている。
- 藍思追(ジェン・ファンシン)
- ラン・スージュイ。温家の生き残りで藍氏に引き取られる。藍氏の子弟として活躍中。聡明で素直。賢い上に仙師としての能力も次代を継ぐ者として見込まれている。藍氏特有の琴を武器に扱う。
- 簫情(ワン・イーフェイ)
- シャオ・チン。簫氏の長女で美しい才女。灯籠作りに秀でており周子殊と恋仲になるが、簫憶の裏切りにより誤って殺されてしまう。
- 簫憶(ガオ・ハン)
- シャオ・イー。簫氏の次男という名目で現れるが、実は簫家の家僕で本名は趙憶(チャオ・イー)簫情に思慕を寄せ嫉妬と恨みから一族郎党を皆殺しにして没落へ至らしめる。陰鉄の欠片を所持し、簫情を復活させようと目論む。
- 周子殊(フェー・ロンロン)
- チョウ・ズーシュー。寒門の出ではあるが、広い見識を持ち誠実で優れた灯籠師。灯籠により走馬灯を飛ばすという術を創作することで、簫家に招かれる。簫情と恋仲になるも、簫憶によって傀儡とされ、生魂を集めさせられていた。
映画『生魂』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『生魂』のあらすじ【起】
かつて天下は温氏、藍氏、江氏、聶氏、金氏の仙門五大世家によって治められていたが、温氏による恐ろしい力を秘めた陰鉄と呼ばれる石を巡る争いが勃発。温氏はこれにより没落し、隠された陰鉄を生成し陰虎符として操ってみせた人物も争いの中、崖から転落して行方不明となり争いは終結を迎えた。ところが、16年後行方不明となっていた人物が金氏一族の若者により復活。彼は怪事件を解決する中、事件が16年前の内紛とも繋がりがあることに気付く。そうして、全てが解明され現在は藍氏が世家を監督する任に就き問題解決を目指している。
あれから数十年。温氏の生き残りで陰虎符によって特殊な身体を得て復活し、かつて鬼将軍と呼ばれた温寧(ウェン・ニン)はたった一人で旅を続け扶風城の町へとやって来た。かつてこの町は不夜城と呼ばれるほど賑やかしい町であったが、何があったのか酷く寂れてしまっている。聞けば夜に明かりを灯していると悪鬼が現れ、血肉を喰らい生魂を奪われると言う。悪鬼に喰らわれた遺体はミイラのようになってしまうのだった。
そこで、温寧は悪鬼を討伐すべく廃屋にて明かりを灯し、悪鬼の出現を待つことにした。すると、深夜になって悪鬼が現れる。温寧は自らの身に纏った鎖を使って悪鬼との戦いを展開したが、惜しくも逃げられてしまう。その際、甥であり藍氏に引き取られた若き仙師、藍思追(ラン・スージュイ)と再会。彼は邪崇の気配を辿って討伐する夜狩にやって来た様子。仙師は修行の一環として旅をしながら夜狩を行う。温寧と思追は共に調査を行うことにした。
まずミイラとなった遺体に手がかりがないか探ったが、遺体には魂の欠片である霊識も残されていない。通常ならば霊識や殺された怨念などが残っているはずだが、空っぽとは奇妙である。藍氏では霊識を探る技が優れているため、思追が墓場で過去の記憶を探ってみたところ、悪鬼に襲われずに亡くなった人には霊識が残っていた。魂を残さず吸い取る仕業は、まるでかつての陰鉄のようである。陰鉄は魂を吸い取り傀儡を作って操る恐ろしい石である。隕鉄は過去の紛争で砕かれたはずだが、欠片が残っている可能性は高い。
2人はその可能性も含め調査を進めることにしたが、深夜にも関わらず墓場を訪れる老婆と遭遇。老婆は扶風城を守る仙門であった簫(シャオ)氏の墓にお参りに来ていたらしい。簫氏は扶風城の灯籠祭りを一手に担い守護する世家であったらしいが、50人もいた一族郎党は昨年7月に起こった大火事で全員が死亡し没落したと言う。そして、悪鬼が現れたのはその直後であった。
映画『生魂』のあらすじ【承】
町民は簫氏を供養するため、立派な衣冠塚を建て墓石には亡くなった50名の名を刻んだ。しかし、老婆の話によると大火事以来、簫氏の邸の門が開かなくなってしまい、邸からは夜な夜な一族の叫び声が響くので誰も恐ろしくて近づけないとのことだった。
2人は簫氏の邸へ。邸には結界が張ってあったため、解呪して中へ侵入した。門を入ると広場があり、広場の中央には焼け落ちた巨大灯籠。そして、罠が仕掛けられている。温寧は咄嗟に甥を庇ったが、罠による精神攻撃を受けてしまう。彼は四肢を囚われた自分と対峙。負の感情に追い詰められつつもどうにか罠から脱した。
邸には唯一の生き残りがいた。悪鬼に閉じ込められたと言う男は酷く怯えた様子で悪鬼の名前は周子殊(チョウ・ズーシュー)だと言う。男は簫氏の次男で簫憶(シャオ・イー)と名乗った。彼の話では、簫氏は1年前まで灯籠作りの名家として栄華を誇っており、長女の簫情(シャオ・チン)は美しく心根も素晴らしい才女であった。簫憶は庶子であったため、子弟や主母から嫌われていたが、そんな彼をも簫情は庇い様々なことを教えてくれた。
そんな時、優れた灯籠師として当主に見出されたのが周子殊である。彼は灯籠で走馬灯を飛ばす術を開発した優れた仙師であった。寒門の出でありながら広い見識を持ち傑出した才能で簫氏の灯籠師となった彼に簫情が思慕を寄せるのは当然のこと。2人は共に灯籠を作るなど、間柄は急接近。当然、子弟はそんな彼を容易に受け入れるはずもない。簫憶は周子殊がいびる子弟を、邪術を使って池に沈める様子を目撃した。
そこで簫憶は姉に危険を知らせるべく周子殊の部屋を探り陰鉄の欠片の在り処を記した書付を証拠として見つけ出す。当主は激怒し周子殊を捕縛。破門を言い渡した。ところが、簫情は異議を唱え簫憶に助けを求める。しかし、怒り狂った周子殊は一族郎党を皆殺しにしてしまう。簫情は必死に周子殊を止めたが、彼の本性に裏切られ燃え盛る広場の巨大灯籠に投げ込まれ焼死。簫憶もまた彼によってやられてしまった。それが1年前の事のあらましである。
映画『生魂』のあらすじ【転】
その後、生き延びた簫憶は怯えながらひっそりと過ごした。周子殊は酷く残忍で冷酷な悪鬼と成り果て人々を襲っている。彼は書付を隠した簫憶から在り処を聞き出すべく生かしていると言う。奴が陰鉄を所持しているのは明白で、書付を手に入れようとするのは邪術を極めていないからと思われる。そこで、温寧と思追は簫憶から書付を入手。ところが、その書付は陰虎符を生成した人物が書いたもので、かつて金氏が隠し持っていたが、その後行方が分からなくなっていたものだった。周子殊は陰鉄を再生し傀儡を操る気だったのだろう。
だが、憎むべき簫氏は滅んだのに未だに書付を手に入れようとするのはなぜか。疑問は残るが、周子殊の襲撃によりうやむやに。奴の狙いは簫億だったが、彼が振り回した剣によって周子殊が死んでしまう。加えて周子殊は簫情の姿絵を後生大事に持っていた。どうにも、簫憶の話と違う。そこで、改めて問い質すと簫憶は真実を明かした。一族郎党を殺害した周子殊を必死に止めた簫情は誤って殺されたのだと。
悪鬼であった周子殊は死んだ。これで扶風城を脅かす邪崇はなくなった。翌朝、温寧と思追は周子殊の遺体を簫氏の衣冠塚に埋葬しようとする。簫憶は生存中であるため、衣冠塚に記された名前を削除しようと考えた2人だったが、衣冠塚に奴の名前が無い。そこで、温寧は改めてこれまでの出来事を振り返る。
簫氏が滅びた7月7日。周子殊は簫情に姿絵を贈っている。だが簫憶の話では、周子殊は当主に捕縛されているため、絵を贈っていたら皆殺しにする時間がない。簫憶はまだ嘘を吐いている。そこで、再び衣冠塚の名前を見た温寧は、簫憶は簫氏の次男ではなく家僕だったことを突き止める。奴の本名は趙憶(チャオ・イー)だったのだ。彼こそが陰鉄を所持し、一族郎党を皆殺しにした張本人である。恐らく、超憶は誤って簫情を殺してしまい彼女を生き返らせるために陰鉄を使って生魂を集めている。
映画『生魂』の結末・ラスト(ネタバレ)
温寧と思追は再び簫氏の邸へ。周子殊が死の間際に指差していた方向に東屋があった。東屋を探ると地下への隠し扉を発見。地下には簫情の遺体が安置されていた。更に変装用の衣装もあったが、そこで趙憶の攻撃を受けてしまう。温寧は再び囚われた自分と対峙。陰虎符によって特殊な身体となった温寧の体は陰鉄の邪術を受けやすい。だが、温寧には他と違って唯一自我がある。彼は自らの枷を破り罠から脱すると思追を助け、陰鉄を操る趙憶と対峙する。
2人は激しい戦いを展開し趙憶を倒したが、幻術であった。本体は地下室にて簫情の復活を行っていた。温寧は自分と簫情は違うと趙憶を説得したが、どういうことか簫情が見事に復活。かつての美しい姿の彼女に趙憶は泣きながら真摯に謝罪。しかし、簫情は趙憶の謝罪を受け入れると消えてしまう。そこで、改めて趙憶に罪を悔い改めるよう説得したものの、奴はこの期に及んで抵抗しようとする。温寧は奴に精神攻撃をかけ、殺さずに生かしながらも永遠に脱せないよう術を施した。
そうして、扶風城の悪鬼討伐と簫氏没落の謎を解明し、陰鉄の欠片を入手した温寧と思追は藍氏へ陰鉄を届けるべく再び旅を続けるのであった。
映画『生魂』の感想・評価・レビュー
中国時代劇ファンタジードラマ『陳情令』のスピンオフ作品の第一弾である今作では、鬼将軍の温寧と甥の思追の活躍が描かれている。
『陳情令』ではどちらかと言うと弱気でおどおどした青年だった温寧だが、今作では年を経て大人になり冷静に物事を判断し、思考を巡らせる姿が描かれている。それでも度々、小心者であった自分を律する様子があり、まだ成長中なのだと分かるシーンも多い。甥の思追は本編だと後半から登場するが、素直で聡明且つ心根の清い青年だ。彼が勇敢に戦う姿も描かれるので、2人の活躍が見られる。温寧が鎖を使って戦う姿は中々に圧巻。本編を知らなくても分かる構成となっているので謎解きとアクションと見どころは満載である。(MIHOシネマ編集部)
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