映画『マイ・マザー』の概要:ユベールは、母と二人暮らし。毎日口論が絶えず、ユベールは母に愛されていないと思っていた。心の拠り所は、恋人の傍らと芸術に自己を見出すこと。若手グザヴィエ・ドラン監督・製作・主演の、傷ついた母子をめぐる物語。
映画『マイ・マザー』の作品情報
上映時間:100分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:グザヴィエ・ドラン
キャスト:グザヴィエ・ドラン、アンヌ・ドルヴァル、フランソワ・アルノー、スザンヌ・クレマン etc
映画『マイ・マザー』の登場人物(キャスト)
- ユベール・レミング(グザヴィエ・ドラン)
- 16歳。絵画と詩に才能がある、芸術家肌の高校生。真面目で繊細だが、他人とのコミュニケーションは得意でなくクラスでは浮いている。母に親愛とは違うねじ曲がった愛情を抱く。
- シャンタル・レミング(アンヌ・ドルヴァル)
- ユベールの母。ユベールが7歳の頃に夫と離婚し、女手一つで息子を育てた。自分磨きに余念がなく、着飾ることや美しく見せることへの関心が強い。ユベールとは衝突が絶えない。短気で感情的。
- アントナン(フランソワ・アルノー)
- ユベールの唯一親しい男子学生で、密かに恋愛関係にある。成績優秀で芸術の才にも恵まれている。ユベールの心の拠り所ともいえるべき存在で、お互いに支え合っている。母子家庭で、母には同性との交際を認められている。
- ジュリー(スザンヌ・クレマン)
- ユベールのクラスの担任教師。謙虚で思慮深い女性。ユベールの母との不和を理解し、彼のもう一つの居場所となる。父親と長年確執がある。
映画『マイ・マザー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『マイ・マザー』のあらすじ【起】
カナダ、フランス語圏。ユベールは、母シャンタルに車で高校に送ってもらっているところだった。母子の仲は決して和やかなものではなく、狭い車内には怒声や罵声が飛び交う。そんなユベールにとって心休まる空間は、絵を描く時間と恋人アントナンの隣にいるときだ。
ユベールは、アントナンを自宅に招く予定だったが、シャンタルの友人の訪問日と重なってしまう。翌日、シャンタルが怒り心頭で学校に乗り込んできた。クラスで、ユベールが教師に「母親は死んだ」と嘘をついたことが母の耳に入ったからだ。
ユベールの担任教師ジュリーは、彼の不安定な家庭環境を心配する。ジュリーの優しさに触れ、ユベールはジュリーに心を開いた。基本的にユベールは自己否定が強く、そのために母にも否定的な感情を抱いてしまうのだった。
ユベールは、シャンタルと距離を置くために一人暮らしすることを決める。早速シャンタルに許可を請うと、母は意外にもすんなり許してくれた。好物件も見つけ、ユベールが引っ越しを実行に移そうとした時。シャンタルは、一転して「まだ子どもだから駄目だ」と反対する。
映画『マイ・マザー』のあらすじ【承】
ユベールは、アントナンの母からオフィスの内装に絵を描いてくれるよう頼まれる。アントナン親子は仲が良く、ユベールもシャンタルに素直になろうと試みた。シャンタルの友人ドゥーニーズの来訪日、ユベールは率先して家事を担って母を驚かせる。
シャンタルはドゥーニーズと日焼けサロンに出かける。その先でアントナンの母と出会い、ユベールとアントナンが付き合っていることを聞かされる。それ以前からシャンタルは、息子に同性愛の傾向があったことを薄々感づいていた。
夜、シャンタルの買い出しについてユベールはレンタル店に立ち寄る。DVD選びに時間がかかり、外にいたシャンタルは待ちきれずにかんしゃくを起こした。繋がりかけた親子の心は、再び裂かれる。感情が爆発するままに、二人は激しく言い争った。車から無理やり降ろされたユベールは、バスでアントナンの家へ向かうが、本人は不在だった。
ユベールは、ジュリーに連絡を取って家に転がり込む。シャンタルに電話をした時、明日は帰らないと告げた。そのまま、ジュリーの家で一晩明かす。優しいジュリーに、ユベールは自身が抱える心の闇を打ち明けた。一日が経つと、別れた父親から久々に会おうとユベールに連絡が入った。
映画『マイ・マザー』のあらすじ【転】
ユベールは、数か月ぶりに父親の家を訪ねる。しかし、そこにはシャンタルが待ち構えていた。両親は、ユベールを田舎の寄宿学校に転入させることを話し合っていた。本人に真意を問わずに決めたものだから、ユベールはひどく憤慨する。
ユベールはジュリー宅を再訪した。両親の転入案を拒否できぬまま、今夜町を発つことをジュリーに話す。ジュリーは、ユベールの詩の才能を見出しており餞別に詩集を贈った。シャンタルは、ユベールをバス停まで送る。二人は、緊張した雰囲気のまま別れた。
寄宿学校に転入した後も、ユベールは一人だった。クラスメイトのエリックがユベールを気に入り、二人は親しくなる。ある休日の夜、ユベールは、エリックに誘われてドラッグ・パーティーに参加する。クスリの影響でユベールはエリックと過ちを犯しかけるが、咄嗟に逃げ出した。
ユベールが向かった先は、自宅だった。就寝中のシャンタルを起こし、ユベールはいつになく饒舌に母への思いを告げる。ハイな状態のユベールに、シャンタルは優しく寄り添った。翌日、正気になったユベールは、アントナンと彼の母のオフィスを彩色する。自由に絵を描きながら、ユベールは恋人と愛を交わした。
映画『マイ・マザー』の結末・ラスト(ネタバレ)
両親の意向で、ユベールは来年も寄宿学校に在籍することが決まってしまう。ユベールは、憤怒するどころか母に「縁を切る」と宣言する始末だった。シャンタルは、仕返しのように息子の同性愛を揶揄する。シャンタルも内心我慢が限界にきていた。ユベールが学校に戻った後、シャンタルはユベールの自室でビデオカメラを見つける。そのテープには、息子の母への複雑な感情が記録されていた。
ユベールは、シャンタル宛の置き手紙を残して、学校から失踪する。学校から連絡を受けたシャンタルには、息子の行き先が分かっていた。ユベールは、アントナンの協力を得て以前暮らしていた森の家へ向かう。アントナンは、ユベールの言動に振り回されて苛つきもしたが、愛情が冷めることはなかった。
シャンタルが森の家へやって来る。ユベールは、一人岩場に腰かけていた。母は息子に無言で寄り添う。二人の頭には、幸せな過去の記憶が過っていた。
映画『マイ・マザー』の感想・評価・レビュー
誰でも親の愛は絶対で、一番の理解者だと心の中で思っているのだと思う。だからこそ許せなかったり、小さなことで裏切られた気持ちになってしまう。どこにでもいる思春期の子供とその親の関係を、とても詩的で芸術性高く仕上げていると感じた。メッセージ性としては少し難しい作品だが、親子の関係がとても素朴に描かれている作品。
主人公や母親の感情の起伏、二人の距離感がとても生々しく、ドキュメンタリーのような自然なタッチだからこそ、心打たれるものがある作品である。(女性 30代)
本作は、反抗期の息子とその母親という傷付いた母子をめぐるヒューマンドラマ作品。
恋人や教師が彼の心の拠り所であるが、結局最後に寄り添うのは家族である。
母親と距離を置き、周囲の優しい人たちに触れることで、母親の大切さを改めて知ることができる。
息子は母親を愛しているにもかかわらず分かり合えない、そんな愛憎の感情に振り回される気持ちも共感できる。
グザヴィエ・ドランの自伝的な部分も含まれていると思うが、自分のことのような気がしてきた。(女性 20代)
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