映画『なくもんか』の概要:2009年公開のヒューマンコメディ。行き別れた兄弟が再会し、それを喜ぶ兄と、戸惑う弟。そして2人の周りにいる、個性豊かな人たちの姿。コメディ要素が強いものの、しっかりと感動する作品である。
映画『なくもんか』の作品情報
上映時間:134分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:水田伸生
キャスト:阿部サダヲ、瑛太、竹内結子、塚本高史 etc
映画『なくもんか』の登場人物(キャスト)
- 下井草祐太(阿部サダヲ)
- 幼い頃に父親に捨てられ、下町のお店「やまちゃん」の店主に育てられた。店主の後を継ぎ、2代目となる。人から頼まれたことは断らず、笑顔で引き受ける人柄で、周りからの人気者。
- 徹子(竹内結子)
- 初代経営者のひとり娘。大人になり、すっかり美しい女性になっていた。現在は2人の子供を持つシングルマザーで、祐太と結婚をする。
- 金城祐介(瑛太)
- 祐太の弟。「金城ブラザーズ」というお笑いコンビを結成している。このコンビは相方の大介と兄弟であるという設定から、実の兄が現れたことで戸惑ってしまう。
- 金城大介(塚本高史)
- 祐介の相方であり、設定上、兄弟である。祐介にとっては、兄貴分のお笑い芸人。
映画『なくもんか』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『なくもんか』のあらすじ【起】
幼い頃、不出来な父親は妊娠中の母と別れ、祐太を連れて家を出ていった。父が頼ったのは、下町で惣菜屋を営む「山ちゃん」。心を入れ替えて、一生懸命働くと言ったものの、その日の晩に売上金を盗み失踪。それ以来、祐太は山ちゃん宅で実の子のように育てられた。頼みごとを断らず、常に笑顔で人のために働く祐太。そんな祐太を見て、山ちゃんは2代目として祐太に店を任せた。その後、山ちゃんは亡くなり、長女の徹子も家を出ていき、家には祐太と認知症になった山ちゃんの奥さんのみとなった。
父と祐太が家を出たあと、母は弟、祐介を出産。すくすくと育っていったが、幼い頃に事故で亡くなってしまった。祐介は、親戚の家をたらい回しにされ、転校を繰り返していた。祐介は、転校先でいじめられないよう、皆を笑わせた。そんな経緯から、祐介はお笑い芸人になった。しかしなかなか売れずにいた頃、同じ芸人の金城大介と出会い、兄弟という設定で「金城ブラザーズ」を結成。コンビは売れるようになり、レギュラー番組を抱えていた。
映画『なくもんか』のあらすじ【承】
ある日、祐太のお店に容姿端麗な美女がやってくる。いつもどおり接客する祐太だったが、その美女が徹子だと知り驚愕。家を出る前の徹子は太っていて、決して綺麗とは言えなかったからである。祐太と近所の人たちは、彼女が本当に徹子だと信じることができなかった。しかし、認知症で祐太のことを先代山ちゃんだと思い込んでいる徹子の母は、徹子だと分かり、「よく帰ってきた」と歓迎。その様子を見て、祐太は泣くのを我慢して神社に逃げ込んだ。そこは、昔よく泣いていた場所だった。
その後、徹子に子供がいることが発覚。しかし、祐太はそんなことは気にかけず、2人は結婚することになった。婚姻届を提出するため、自分の戸籍謄本を取り寄せたところ、自分の弟が金城ブラザーズの祐介であることを知った。早速、祐太は祐介に会いに行った。しかし、祐介には全く相手にされなかった。祐介は、実の兄が現れたことに戸惑いを感じていた。コンビを組んでいる相方とは、兄弟という設定でコンビを結成していたからだ。
映画『なくもんか』のあらすじ【転】
突然、祐介が祐太の店にやってきた。祐介は、産まれてからこれまでの、自分の生い立ちを祐太に語った。そして、相方の大介のためにも、二度と現れないでほしいと頼むのだった。その話を聞いていた徹子は、納得ができず祐介を責め立てる。そして、せめてハムカツを食べて行きなさいと言い、祐太がハムカツを揚げる。先代から引き継いだタレをかけようとすると、壺の中身は空。徹子の2人の子供が、臭いからと捨てていたのだ。激怒した徹子だが、娘は弟が学校でいじめられていることを話し「ソースなんか何でもいい!」と言って、給食用のソースを投げつける。そのとき、祐介は祐太が揚げたハムカツに給食用のソースをかけ、食べ始めた。あまりの美味しさに感動した祐介は、泣きながらハムカツを頬張った。秘伝のタレよりも、給食用ソースが美味しいと気づいた祐太は、その後ソースを変え、お店には行列が出来ていた。
その後、祐太の元に突然、失踪していた父親から連絡が入り、祐介も交えて食事をすることになった。重苦しい雰囲気の中、祐太は明るく振る舞っていた。しかし、祐太を捨てて出て行った父のことを許すことができなかった祐介は、父親に対し、祐太に謝れと言った。しかし、祐太は謝罪を拒否。そして、積もり積もった感情が露見し、父が死ねばよかったと暴言を吐いてしまう。
祐介は父を車で送った。帰り際、父は「父親らしいことをさせてくれ」と言うも、祐介は戸惑い、何もしなくて言いと言って2人は別れた。しばらくして、父は週刊誌に金城ブラザーズが本当の兄弟ではないことを暴露。祐介と大介のコンビは、窮地に追い込まれてしまった。
映画『なくもんか』の結末・ラスト(ネタバレ)
窮地に追い込まれていた祐介は、久々に営業先でネタをやり、金城ブラザーズを復活させようとする。しかし、金城ブラザーズの兄である大介が行方不明になってしまった。さらに窮地に追い込まれた祐介は、なんとか1人でネタをしようと舞台に立つものの、ピンでは全くウケなかった。その時、マスコットに扮した祐太が現れ、即興で漫才を始めた。祐介がピンで舞台に立っていたときの重苦しい雰囲気は吹き飛び、観客を笑わせることができた。こうして本物の兄弟で行われた漫才は、大成功を収めた。
その後も祐太は山ちゃんでハムカツを揚げ、祐介は大介と共にテレビに出演。いつも通りの日常が戻っていた。しかし、その日常は、それまで以上に笑いと幸せに包まれた日常だった。
映画『なくもんか』の感想・評価・レビュー
阿部サダヲの魅力が満載の作品。不遇な生い立ちながら、満面の笑みを浮かべて明るく祐介の姿は、観る者全てを明るい気持ちにさせてくれる。同じく複雑な生い立ちを持つ祐介も、芸人として活躍する一方、心から笑うことはできなかった。しかし、窮地に追い込まれてから気付いた祐太の優しさと、お兄ちゃんらしさは、まさに兄弟愛とも言える。兄弟のみならず、家族に会いたくなるコメディであり、感動作だ。(MIHOシネマ編集部)
阿部サダヲさんのテンポの良いセリフ回しと、コミカルな動きや表情が本当に素晴らしい。思わずふっと笑ってしまう。
生い立ちがなかなかハードなのに、心優しい性格の主人公。下井草祐太が本当に良い人で、自然と応援したくなるキャラクターだった。彼のような人が傍に居たら、元気をもらえそう。基本的におもしろいのだが、うるっとしてしまうところもあった。祐太と祐介がそれぞれの場所で成功を収め、幸せな日常を送ることができて良かった。ほっと安堵する終わり方だったと思う。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー