映画『南極物語(1983)』の概要:悪天候のため昭和基地に置き去りにされた15頭の樺太犬と、彼らの世話をしていた2名の越冬隊員の苦悩と戦いの日々を描く。実話を基にして作られているが、映画用に脚色された部分も多い。過酷な自然の中で生き抜こうとする健気な犬の姿が心に残る。
映画『南極物語』の作品情報
上映時間:145分
ジャンル:ヒューマンドラマ、アドベンチャー
監督:蔵原惟繕
キャスト:高倉健、渡瀬恒彦、岡田英次、夏目雅子 etc
映画『南極物語』の登場人物(キャスト)
- 潮田暁(高倉健)
- 北海道大学の地質学研究室に在籍する大学講師。第1次越冬隊のメンバーとして昭和基地へ赴き、地質調査と犬係を担当する。南極に同行した樺太犬に詳しく、犬たちをとても可愛がっている。
- 越智建二郎(渡瀬恒彦)
- 京都大学の地球物理学研究室に在籍する研究者。第1次越冬隊のメンバーで、気象観測と犬係を担当する。犬たちのために厳しく接しているが、潮田と同じく、犬が可愛くて仕方がない。
- 北沢慶子(夏目雅子)
- 越智の恋人。越智とは結婚の約束をしている。越智の気持ちを理解し、彼のことを支える。
- 志村麻子(荻野目慶子)
- 越冬隊に飼い犬のリキを提供した少女。幼い妹と共にリキを可愛がってきたので、リキを南極に置き去りにした潮田を責める。
映画『南極物語』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『南極物語』のあらすじ【起】
昭和32年1月、第1次南極観測隊員を乗せた海上保安庁観測船「宗谷」は、暴風圏を越え、南極に近づく。その後、オングル島にある昭和基地で、11名の第1次越冬隊員とメス犬1頭を含めた19頭の樺太犬が、翌年の本観測を成功させるため、越冬生活を送ることになる。
隊員の潮田暁と越智建二郎は、ここで犬係を任され、樺太犬たちの世話をする。潮田と越智は、犬たちに深い愛情を持っていたが、過酷な自然の中で彼らが生き抜いていけるよう、厳しい躾を心がけていた。特に越智の方は、潮田が「鬼の訓練士」と呼ぶほど、犬に対して厳しい。しかし、それも犬たちに強くなって欲しいという願いからだった。
第1次越冬隊の隊長は、南極へ来たからにはどうしてもボツンヌーテンへ行きたいと思っていた。ボツンヌーテンは、昭和基地から陸路で約200キロ離れた岩山で、通常なら雪上車で移動する。しかし、雪上車の調子が悪かったため、15頭の樺太犬が引く犬ぞりで向かうことになる。犬が引ける重量には制限があるため、犬ぞり隊は3名に厳選される。潮田は地質調査と犬ぞり係、越智は気象観測と犬ぞり係を兼任し、登山経験豊富な隊員と共に、昭和32年10月16日、ボツヌーテンを目指して基地を出発する。
犬ぞり隊は、オングル島から氷で繋がった南極大陸に入り、険しい道のりを進む。潮田と越智は、常に犬たちの様子を観察し、調子の悪そうな犬には無理をさせないよう配慮する。そうして苦労しながらボツヌーテンに到着し、3人は目的地に日の丸を立てる。
ボツヌーテンからの帰路。ホワイトアウトの状態が続き、3人は雪目(強い紫外線を長時間浴びることで角膜が傷つく)になってしまう。ほぼ視覚を失った3人は、正確な進路がわからず、遭難寸前の状態になる。重量制限で無線機を積んでいなかったため、助けを呼ぶこともできない。そこで越智は、昭和基地で生まれ育ったタロとジロの兄弟犬を犬ぞりから離し、基地まで行かせてみようと提案する。2人もこれに賛成し、タロとジロの鎖が外される。2頭は無事に基地へ到着し、犬ぞり隊が遭難した場所まで雪上車を連れてくる。そのおかげで、犬ぞり隊は無事に帰還することができた。
映画『南極物語』のあらすじ【承】
昭和32年12月末、第1次越冬隊と交代するため、第2次越冬隊は宗谷で南極に向かっていた。しかし、氷塊に突入したところで悪天候に阻まれ、2月にはアメリカ海軍籍の砕氷艦バートン・アイランド号に援護を求める。この年の南極の気象条件は非常に厳しく、バートン号も立ち往生することを危惧していた。
昭和基地の第1次越冬隊は、第2次越冬隊と交代する準備を進めていた。そんなある日、空輸用の小型飛行機が基地に着陸し、今日中に第1次越冬隊の引き揚げ作業を完了するよう命令が下ったことを告げる。空輸が可能な晴天の日が今日しかないらしい。小型飛行機は3名ずつ隊員を乗せ、ピストン輸送を開始する。潮田と越智は急いで犬たちに餌をやり、お別れを済ませる。犬たちは、すぐに第2次越冬隊に託されることになっていたので、首輪と鎖で繋留場に繋がれていた。
宗谷に到着した潮田と越智は、第2次越冬隊の犬係に犬たちの詳細な資料を渡し、細かい注意点などを伝えておく。第2次越冬隊の犬係2名も、犬たちに会えるのを楽しみにしていた。
ところが、天候回復の見込みが立たず、第2次越冬を諦めざるを得ない状況になる。宗谷の船長も、第2次越冬隊を送るために精一杯の作業をしてくれたが、飲料水や燃料がギリギリの状態になってしまう。やむなく船長は、第2次越冬の断念と宗谷の帰国を発表する。潮田と越智は隊長の所へ行き、犬を救うために飛行機を飛ばして欲しいと訴えるが、燃料不足と悪天候のため、それも叶わなかった。潮田と越智は、鎖に繋がれたまま放置される犬たちのことを考え、言葉を失う。
映画『南極物語』のあらすじ【転】
昭和基地に取り残された犬たちは、空腹と寒さに耐えながら、人間が戻ってくるのを待っていた。しかし、いくら鳴いても誰も戻ってきてくれず、時間ばかりが過ぎていく。そんな中、最初にアンコという犬が鎖を切り、体の自由を確保する。その後、ジャック、リーダー犬のリキ、ジロとシロが首輪を抜け、自由の身となる。5頭は餌を求めて基地を離れ、大陸方面に向かう。その後、風連のクマとタロも首輪を抜け、5頭の後を追う。最後に鎖を切ることに成功したデリーも7頭と合流することができた。しかし、鎖に繋がれたままの7頭は、その場で餓死してしまう。
初夏。日本に戻った潮田は、北海道大学の地質学研究所を辞め、樺太犬の提供者に謝罪する旅に出る。日本では、南極に犬を置き去りにしてきたことへの非難の声が高まっていた。潮田は一切の弁解をせず、心ない誹謗中傷に耐えていた。
京都大学の地球物理学研究室の研究員をしている越智は、恋人の慶子に支えられ、以前の日常を取り戻しつつあった。しかし、内心は置き去りにしてきた犬たちのことが忘れられず、良心の呵責に苦しんでいた。慶子はそんな越智のことを気遣い、南極の話はしないように努めていた。
稚内へ向かった潮田は、樺太犬研究所で育てた犬を提供者に渡し、犬を連れて帰れなかったことを詫びる。ほとんどの提供者は潮田の謝罪を受け入れてくれたが、リーダー犬のリキの飼い主だった姉妹は、潮田に対して辛辣だった。まだ幼い妹は、代わりの犬を潮田に突き返し、どうしてリキを捨ててきたのかと潮田を責める。姉の麻子も、リキの代わりなどいないと思っていた。
稚内で行われた樺太犬の慰霊祭の日。越智が潮田の前に姿を現す。越智は犬のことを忘れようとしてきたが、結局、忘れることなどできなかった。潮田と越智は、もしかしたら何頭かは生きているのではないかと語り合う。
映画『南極物語』の結末・ラスト(ネタバレ)
南極で自由の身になった8頭は、行動を共にして生き延びていたが、デリーは氷の割れ目に落ちて死んでしまう。リキは人間の痕跡を求めてボツンヌーテン方面へ移動を開始し、それにタロ、ジロ、アンコ、シロ、ジャックが従う。群れを嫌う風連のクマは、6頭と離れて単独行動をする。
移動の途中、オーロラに怯えたジャックが姿を消してしまい、リキの群れは5頭になる。ボツンヌーテンに到着後、高所から転落して怪我をしたシロは、潮田たちとキャンプしたクジラの死体がある場所で、静かに息を引きとる。
リキ、アンコ、タロ、ジロの4頭は、大陸から氷塊へと移動し、何とか生き延びていた。厳しい冬が終わる頃、4頭は流氷の間からシャチに襲われ、身をもってタロとジロを守ったリキが怪我をする。流氷に乗ってしまったアンコは、大陸方面へ流されていく。リキは最後まで仲間のことを気遣い、タロとジロにアザラシの死体がある場所を教えた後、ついに力尽きてしまう。
日本では、麻子が潮田を訪ねてきて、代わりの犬を飼いたいと申し出てくれる。潮田は、麻子たちに渡そうと思っていた犬にリキという名前をつけていた。麻子は、南極でもリキは生きているのではないかと思っていた。犬を安楽死させるべきだったと思っていた潮田は、自分の考えが間違っていたことに気づく。潮田は、命を奪う権利は誰にもないのだと思うようになっていた。
2頭になったタロとジロは、生まれ故郷の基地周辺へ戻る。2頭はリキに教えてもらった狩りをして、たくましく生き延びていた。そこへ、風連のクマがアンコを連れて帰ってくる。流氷で流されたアンコは、沿岸部で風連のクマに救われていた。しばらくは4頭で行動していたが、アンコは狩りの途中で海に落ち、死んでしまう。風連のクマも再び大陸方面へ姿を消し、そのまま戻ってこなかった。
日本では、第3次越冬隊の南極行きが決まり、潮田と越智は再びメンバーに加えてもらう。宗谷からヘリで昭和基地へ向かっていた潮田と越智は、上空からジャックの死体を確認する。その後、基地の繋留場で雪に埋もれた犬の死体を確認していた潮田は、犬の遠吠えを聞いたような気がする。まさかと思って向こうを見ると、遠くに2頭の犬が姿を現す。越智は、それがタロとジロの兄弟犬であることに気づき、潮田と共に走り出す。タロとジロはしばらく警戒して動かなかったが、潮田が大声で呼びかけると、尻尾を振りながら、こちらへ走ってくる。潮田と越智は健気に生き抜いたタロとジロを抱きしめ、感動の涙を流すのだった。
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