映画『夏の庭 The Friends』の概要:湯本香樹実の同名児童小説を相米慎二監督が映画化。神戸に住む小学生男子3人、木山、山下、川辺は、ある日近所の独居老人が死ぬところを見ようと、喜八の家を訪れる。そこから老人喜八と少年たちの交流が始まる。
映画『夏の庭 The Friends』の作品情報
上映時間:113分
ジャンル:ファンタジー、ヒューマンドラマ
監督:相米慎二
キャスト:三國連太郎、坂田直樹、王泰貴、牧野憲一 etc
映画『夏の庭 The Friends』の登場人物(キャスト)
- 木山(坂田直樹)
- 小学6年3人組の一人。他の二人に比べると、体格的なことも含め、とても平均的な少年である。喜八爺さんを尾行しているうちに、病院の霊安室に紛れ込んでしまう。
- 河辺(王泰貴)
- 小柄でメガネをかけ、一見ひ弱そうに見えるが、実は小学6年3人組のリーダー的存在。母親と二人暮らしをしている。いない父親のことを、色々妄想する癖がある。
- 山下(牧野憲一)
- ふっくらとした体型で、小学6年3人組が所属するサッカーチームのゴールキーパーをやらされている。彼が祖母の葬儀に参列したことから、今回の物語は始まる。
- 傳法喜八(三國連太郎)
- 小学6年3人組の近所に住む独居老人。庭は荒れ果て、少し異臭もしている。3人と出会い、彼らを自宅に招き入れ、彼らを通じて社会と繋がっていく。
- 近藤静香(戸田菜穂)
- 小学6年3人組の担任の先生。老人ホームにいる祖母、古香弥生の世話をしている。両親は事故で無くしている。実は、傳法喜八の孫である。
- 古香弥生(淡島千景)
- 傳法喜八の妻。戦争から帰ってきた夫の変わりようから離婚をして、その後一人で生きてきた。離婚の直後に妊娠が解り、産まれた子供が近藤静香の母である。今は少しボケていて、夫は戦死したと思っている。
映画『夏の庭 The Friends』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『夏の庭 The Friends』のあらすじ【起】
小学生の木山、山下、川辺の3人は仲が良く、いつも一緒に遊んでいる。祖母の葬儀に参列するため休んでいた山下から、話を聞いた川辺は、近くに住む一人暮らしの爺さんの死体の第一発見者になろうと言い出す。死がよく解らない3人は、爺さんの家に行ってみる。塀の外から家の中を覗くと、庭は荒れ放題で、少し異臭もする。そして、テレビを見たまま動かない爺さんが、窓越しに見える。3人は庭に入り、家屋に近づく。突然窓が開き、爺さんが顔を出す。3人は、慌てて逃げるのだった。
別の日、こうもり傘をさして買い物に出かける爺さんを、3人は尾行をする。どうやら爺さんは、3日に一度スーパーに行っているようだった。
夏休みに入り、朝から塾通いの木山は、その行き掛けに爺さんの家を覗くのだった。すると、山下、川辺の二人も来ていた。またもや爺さんに見つかる3人だったが、川辺は死に様を見てやると叫ぶのだった。
次の日、再び尾行が続く。爺さんも、子供たちの尾行に気が付いている。結局3人は、街中で爺さんを見失い、それぞれで探すことにする。爺さんの姿を探す木山は、病院の中で、爺さんの姿を見つけ、追いかける。そして木山は、病院内の不気味なところに迷い込んでしまう。そこは、霊安室だったのだ。
映画『夏の庭 The Friends』のあらすじ【承】
毎日のように、爺さんの家を覗く3人は、同級生にイチャモンをつけられる。言い争いになっているところを、爺さんが家に招き入れてくれる。そして、爺さんの作業を手伝うことになる。ロープを木に結びつけ、爺さんの洗濯物を干す三人。次は、庭の草抜きを手伝う。爺さんは、足が痛いと縁側から三人の作業を見ている。3人は3日間かけて、庭の草取りを完了する。3人は、草取りをして初めてその姿を現した庭に隅にある空井戸を覗くのだった。爺さんは、草取りのお礼にスイカを用意してくれていた。爺さんが、包丁を入れようとした時、山下はそれを制し、家に砥ぎ石を取りに帰る。家から帰ってきた山下は、ボロボロの爺さんの包丁を研ぐ。そして、みんなでスイカを食べるのだった。
3人は、草を抜いた庭にコスモスの種子を植える。次は、家の中の整理が始まる。古い畳を捨て、入れ替え、障子を張り替える。窓ガラスも綺麗に吹き、割れたガラスは入れ替え、屋根も塗り替え、爺さんの家は見違えるようになるのだった。
映画『夏の庭 The Friends』のあらすじ【転】
3人は、爺さんに「結婚したことある?」と聞く。爺さんが、結婚した相手は弥生というらしく、今は古香弥生という。二人の間に、子供は授からなかったようだった。
台風がきた夜、木山は自分の植えたコスモスが気になり、カッパを着て爺さんの家へ向かう。爺さんの家には、川辺も山下も来ていた。そして、木山が来るかどうか賭けをしていたのだった。賭けに勝ったのは爺さんだった。
台風情報を見るためテレビをつけると、戦争が始まったニュースをやっている。戦争に行ったかと爺さんに聞く3人。戦争では、ただ逃げて歩いていただけという爺さん。そして、女と子供を皆殺しにした上、身重の女を殺したこと告白するのだった。
3人は、古香弥生さんを探し出す。そして老人ホームに会いにいくと、そこには近藤先生がいるのだった。古香弥生の孫が近藤先生だったのだ。3人は、爺さんの似顔絵を弥生に見せ、爺さんのことを話す。しかし弥生は、自分の夫は死んだと言うのだった。
映画『夏の庭 The Friends』の結末・ラスト(ネタバレ)
近藤先生は、爺さんの家を訪ね、部屋に上がり込み、古香弥生のことを話すのだった。そして自分が、あなたの孫だと告白する。ただ、近藤先生の母親はすでに事故で死んでしまっていた。弥生は、その頃から少しボケ始め、自分の夫は、爆弾を抱えて突っ込んだ兵隊だと思うようになったのだった。「傳法喜八」が自分の祖父で、それは、あなたでしょうと問い詰めるが、爺さんは同姓同名の人違いだと答え、近藤先生を帰すのだった。
そしてまた、爺さんの家の窓は閉めがちになってしまう。爺さんはそれでも、弥生のいる老人ホームを訪ねると言いだす。その日、3人はサッカーの試合が終わり、爺さんの家に駆けつけると、庭にはコスモスが咲いていた。爺さんは昼寝をしているようだった。声をかけても動かない。抱きかかえても、動かない。弥生に会うことなく、爺さんは死んでしまったのだった。
爺さんの葬式の時、甥と名乗る男が、3人に弥生のことを聞く。爺さんは、弥生に遺産を残していたのだった。最後のお別れの時、焼かれる直前、近藤先生と弥生がやってくる。弥生は、爺さんの死に顔を見て、「おかえりなさいませ」と三つ指をつくのだった。
爺さんの家はコスモスで覆われていた。空井戸に、蝶の死骸を弔うため放り込む3人。すると、井戸の中から、幻想的な光とともに色々な生き物が溢れ出てくる。3人は、それを爺さんがさよならの挨拶をしてくれたと理解し、井戸の蓋をしめ、花を添え、その場をさるのだった。3人が去った後、井戸から水が染み出し、爺さんの家はかつての荒れ果てた状態でそこに立っているのだった。
映画『夏の庭 The Friends』の感想・評価・レビュー
本作は、近所の独居老人の死ぬところを観察しようと試みた神戸の小学生3人と老人の交流を描いた同小説原作のファンタジーヒューマンドラマ作品。
学生の頃、小説を読んだのが懐かしくて鑑賞した。
子どもたちの純粋な冒険心が孤独だった老人に生きる活力を与えていく様子や、子どもたち自身の成長、戦争体験による心の傷など、リアリティーある描写に心揺さぶられ、涙なしには観れなかった。
死とは何か考えさせられ、生きることの尊さを感じられる作品。(女性 20代)
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