映画『寝ずの番』のネタバレあらすじ結末と感想 | MIHOシネマ

「寝ずの番」のネタバレあらすじ結末と感想

寝ずの番の概要:落語好きだった中島らもの同名短編小説を原作とした大人のための人情コメディ映画。ベテラン俳優の津川雅彦が、マキノ雅彦の名で初監督を務めており、キャスト陣も錚々たる顔ぶれ。R15指定になっているが、いやらしいというより粋な作品であり、芸達者な俳優たちの名演技を堪能できる。

寝ずの番の作品情報

寝ずの番

製作年:2006年
上映時間:110分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:マキノ雅彦
キャスト:中井貴一、木村佳乃、木下ほうか、田中章 etc

寝ずの番の登場人物(キャスト)

橋太(中井貴一)
笑満亭橋鶴一門の落語家。橋次、橋弥に続く3番目の弟子だが、まだ売れていない。茂子という美人で気の強い嫁がいる。初体験をエイで済ませたという変わり者。
橋鶴(長門裕之)
橋太の師匠。酒が大好きな無頼派で、数々の面白い逸話を残す人物。落語家としては大家だが、独特の愛嬌があって親しみやすいので、弟子からも愛されている。
志津子(富司純子)
橋鶴の妻。昔は今里新地1番の売れっ子芸者だった。色気のある美人で、歌と三味線もうまい。弟子から「あーちゃん」と呼ばれて慕われている。
橋次(笹野高史)
橋鶴の1番弟子。師匠に負けない酒好きで、独身を貫いている。天然気味で、悪気なく師匠を怒らせることが多い。橋次が独演会をすると悪いことが起こるという因縁がある。
橋弥(岸部一徳)
橋鶴の実の息子であり、弟子でもある。いつまで経っても落語がうまくならず、弟弟子からもバカにされているが、ネクタイを締めるのは得意。多香子という妻がいる。
橋枝(木下ほうか)
橋鶴の4番目の弟子。多くの身内を亡くしてきたので、通夜や葬式の作法にうるさい。金髪で毒舌だが、一門には馴染んでいる。
橋七(田中章)
橋鶴の末っ子弟子。1番下っ端なので、師匠の付き人のようなこともしている。坊主頭の純朴な男。最近出産したばかりの美紀という妻がいる。
茂子(木村佳乃)
橋太の妻。かなり短気だが、義理人情に厚い男前な女性で、お世話になった師匠のために、とんでもないことをやり遂げる。
小田先生(石田太郎)
橋鶴と親交の深かった落語作家。一門の弟子たちとともに、寝ずの番をする。
鉄工所の社長(堺正章)
昔、芸者だった志津子を橋鶴と奪い合った鉄工所の社長。志津子の通夜に現れ、志津子の思い出話をしてくれる。恋のライバルだった橋鶴の大ファンでもあった。

寝ずの番のネタバレあらすじ

映画『寝ずの番』のあらすじを結末まで解説しています。この先、ネタバレ含んでいるためご注意ください。

寝ずの番のあらすじ【起】

とある病院で、落語家の笑満亭橋鶴は、臨終の時を迎えようとしていた。医者から夫の死期が近いことを告げられた志津子は、実の息子で橋鶴の弟子でもある橋弥にそのことを伝える。橋弥から橋次、橋次から橋太、橋太から橋枝、橋枝から橋七と、弟子入りの早い順にそのことが伝言され、一同は悲しみに暮れる。

1番弟子の橋次が代表して、虫の息の師匠に、やり残したことはないかと尋ねると、師匠は「ソソが見たい」と答える。ソソとは京都弁で女性器のことであり、弟子たちは「さすがは師匠や」と感心する。

志津子には失礼だが、この大役は若い女性に務めてもらうべきだということになり、弟子たちで相談した結果、橋太の妻の茂子が適当だろうということになる。茂子はかなりの恐妻であり、橋太はとんでもないと断るが、お世話になった師匠のためだと説得され、覚悟を決める。

橋太が自宅に戻り、師匠の願いを伝えると、予想通り茂子は怒り出すが、「師匠もお前みたいに若くて美人がいいに決まってる」とおだてられ、だんだんその気になってくる。茂子は自宅からパンツを脱いでいくという気合いの入れようで、病院へ急ぐ。

志津子からも感謝され、使命感にかられた茂子はベッドに上がり、橋鶴の頭上でスカートを捲り上げる。橋鶴は驚いたように目を見開いていた。その様子を見届けた橋次と橋太は、なぜか無性に感動し、思わず涙ぐむ。ところが、橋次が「どうでした?」と尋ねると、橋鶴は最後の力を振り絞って「外が見たい言うたんや、アホ!」と橋次を叱る。橋鶴は人生の終わりにとんでもないオチをつけて、3分後に亡くなった。

寝ずの番のあらすじ【承】

「通夜と葬式は密葬で」という遺言に従い、橋鶴の通夜は住み慣れた自宅で執り行われる。茂子と橋弥の妻の多香子、橋七の妻の美紀が志津子を手伝い、料理と酒の準備をする。有名な落語家だった橋鶴の死は、全国新聞でも記事になっていた。

通夜も終わり、大の酒好きだった師匠を偲んで、身内だけの酒盛りが始まる。メンバーは、志津子と弟子一同と3人の嫁、そして落語作家の小田先生だ。「師匠のあの世行きを祝して乾杯!」という橋次のシャレの効いた挨拶で始まった宴会は、自然と師匠の笑い話になる。みんなは大いに酒を飲んで馬鹿話をしながら、師匠のために寝ずの番(蝋燭と線香を絶やさないように見守ること)をしようと目論んでいた。厚かましく居残っていた志津子の遠い親戚の男も宴会の輪に加えてやり、まずは淡路島でのお茶子の話が披露される。

淡路島での公演の時、お手伝いに来てくれた地元の女の子に、「何をしたらいいですか?」と聞かれた師匠は、「とりあえずお茶子でもしてもらおか」と気楽に答える。ところが、淡路島では男女の営みのことをオチャコというらしく、女の子は驚いて逃げ出してしまう。その女の子が、今では橋七の嫁になっていた。

その後も、酒の飲み過ぎで常に下痢気味だった師匠の失敗談がいくつか披露され、みんなは大笑いする。橋太は、エイを相手に初体験を済ませた話をして、師匠に褒められた時の思い出を語る。他にも、一門でハワイ旅行に行った時、師匠の希望で一同は大麻を吸い、全員がハイになったが、実はその大麻がただの芝生だったという話など、笑いのネタは尽きない。

酔いが回ってきた橋太は、死体になってしまった師匠を罵り、「もう1回、なんか言うてくれ!」と叫んで泣き出す。それに触発された橋弥は、師匠の十八番だった『らくだ』に出てくる「死人のかんかん踊り」を、今ここでやってみようと言い出す。一同も今夜は無礼講だからとその気になり、みんなで師匠の死体を担ぎ起こす。

三味線と歌は茂子と橋七が担当し、残りの弟子たちが師匠の死体を抱えて、笑満亭橋鶴最後の落語が始まる。「かんかんのう、きゅうれんす」という歌とお囃子に合わせて師匠の死体を動かしながら、弟子たちは感極まって泣き出す。それを見守っていた志津子も涙が止まらない。一同は号泣しながら、大好きだった師匠との別れを惜しむ。最後は、死体の師匠と肩を組んでラインダンスまで踊り、涙と笑いの夜は更けていく。

寝ずの番のあらすじ【転】

それからしばらくして、橋次が急死する。テレビで活躍していた橋次の通夜は、立派なお寺で執り行われ、多くの有名人が弔問に訪れる。桂三枝、笑福亭鶴瓶、浅丘ルリ子、米倉涼子、中村勘三郎といった錚々たる顔ぶれの有名人が、橋次の死を惜しんでいた。

通夜の後、橋次の寝ずの番をすることになった橋太たちは、志津子が用意してくれた重箱を広げ、また酒盛りを始める。一門の弟子に加えて、今回も石田先生と志津子の遠い親戚の男が寝ずの番に参加する。

思い出話は、橋次がなぜか験の悪い男だったというところから始まる。橋次が寺で独演会をしようとすると、その寺が火事で消失したり、住職が急死したり、近所で大規模なガス爆発が発生し、寺が犠牲者の遺体安置所になったりと、とんでもない事件が起こる。6日連続での独演会の時は、1日目にホテル火災、2日目に飛行機の墜落事故、3日目には志村喬が死亡し、最終日の6日目には江利チエミが亡くなった。さすがの橋次もこれには参ってしまい、何とか験の悪さを変えようと、昭和天皇崩御の日に、あえて高座に上がったという伝説まであった。

橋次には優しいところがあり、いつまで経っても落語がうまくならない橋弥は、さりげなく励ましてもらっていた。一方で、橋次は師匠に対して横柄なところがあり、師匠にこっぴどく仕返しをされたことがあった。橋次の横柄さに腹を立てていた師匠は、「どうか弟子をやめて下さい」と言って、橋次に土下座する。橋次はそれを嫌味だと受け取らず、「師匠!そないに辛抱してくれはったんですか、すんません」と泣きながら師匠に詫びたのだ。

生涯独身だった橋次は、女よりも酒が好きな男で、ほとんど浮いた話がない。ところが、亡くなる前の晩、橋太と飲んでいた橋次は、セクシーな泥酔女に誘惑され、色っぽい一夜を過ごしていた。翌朝、橋次は熱っぽく昨夜のことを橋太に語っている最中、クモ膜下出血で倒れて帰らぬ人となった。ある意味、橋次らしい最期であった。

寝ずの番のあらすじ【結】

それからまたしばらくして、志津子と橋太は師匠の墓参りに行く。橋太は毎月必ず来ていたが、心臓の悪い志津子は、墓地までの坂がきつくて、思うようにお参りできていなかった。橋太は師匠の墓に手を合わせ、「姐さんのこと、ぼくらに任せて下さい」と言っておく。

墓参りの帰り、橋太は師匠の家に寄り、丁寧に掃除をする。昔、今里新地で売れっ子芸者だった志津子は、三味線を弾きながら「俺の心はトタンの屋根よ、瓦ないの見ておくれ」という座敷歌を歌っていた。どうやらその歌は、志津子の思い出の歌らしい。その後、志津子は、窓拭きをしていた橋太に艶かしく近寄り、「うち寂しいねん」と甘えた声を出す。志津子はちょっとからかっただけだったが、橋太は驚いてトイレに逃げ込む。志津子は何度かトイレの戸を叩いていた。そして、恐る恐る出てきた橋太の目の前で、志津子は心臓発作を起こして倒れ、そのまま息を引き取る。まだ66歳だった。

自宅での通夜の後、志津子の死に責任を感じていた橋太は、早々に酔いつぶれる。実の息子の橋弥は、もともと心臓が悪かったのだからと、橋太を慰める。志津子は、弟子たちから「あーちゃん」と呼ばれて慕われており、橋鶴一門にはなくてはならない存在だった。橋太は、橋七たちが知らない志津子の過去について語り始める。

40年前、師匠は芸者だった志津子に惚れ込み、今里新地に通いつめる。志津子は1番人気の芸者だったので、師匠には大勢のライバルがいた。その中でも、尼崎の鉄工所の社長が1番のライバルで、志津子も2人の間で随分と悩んだらしい。そんな話をしていると、隣の座敷に残っていた男が、自分がその社長だと声をかけてくる。橋太たちは、社長を仲間に迎え、当時の思い出話を聞かせてもらう。

妻を早くに亡くした社長は、志津子に惚れ込んで足繁く彼女の元へ通い、結局はそのツケで鉄工所を潰してしまった。それからはタクシー運転手として苦労を重ねてきたが、橋鶴と志津子との思い出は忘れがたく、2人には感謝していた。社長は「今夜は歌をお返ししようと思って来ました」と言って、器用に三味線を弾きながら、志津子に教わったという座敷歌を披露する。それは、びっくりするような下ネタの座敷歌だった。

橋太は、歌の好きだった志津子のために、社長と下ネタ座敷歌の歌合戦を始める。社長は素人とは思えない健闘ぶりで、歌合戦は大いに盛り上がる。社長が次の歌に困ると、茂子たちが参戦して、社長をフォローする。社長と橋太の白熱の下ネタ歌合戦は、社長が倒れるまで続けられた。最後に社長は志津子の死顔を拝ましてもらい、「お弟子さんたちとの愛情合戦にも負けました」と報告する。

社長も交えて酒盛りを始めた一同は、芸者姿の志津子が艶やかに舞う幻想を見る。その後、橋太は志津子がなぜ師匠を選んだのか社長に尋ねる。社長は、志津子が師匠から贈られた美しい歌に心を奪われたのだと説明し、みんなのリクエストに応えて、その歌を披露する。それは、「俺の心はトタンの屋根よ」という志津子が最後に歌った歌だった。橋太は師匠夫婦の深い愛情を改めて感じ、思わず涙する。その後、一同は倒れ込むまでどんちゃん騒ぎをして、朝を迎えるのだった。

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