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映画『ノーカントリー』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『ノーカントリー』の概要:麻薬の密売に関わる大金を手にした男は、最強に冷酷な殺し屋に追われる。しかし男も逃亡を続け、殺し屋の手によって数多くの人が殺害されていく。コーエン兄弟によるかなり強烈なバイオレンス映画。各国で高く評価され、多くの映画賞を受賞した。

映画『ノーカントリー』の作品情報

ノーカントリー

製作年:2007年
上映時間:127分
ジャンル:アクション、サスペンス、フィルムノワール
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
キャスト:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウディ・ハレルソン etc

映画『ノーカントリー』の登場人物(キャスト)

エド・トム(トミー・リー・ジョーンズ)
テキサス州の西部で暮らすベテラン保安官。近年多発する冷酷な凶悪犯罪が理解できず、最近は自分の無力さを感じている。
アントン・シガー(ハビエル・バルデム)
最高に冷酷非道な殺し屋。自分のルールに従って人を殺す殺人鬼で、家畜の屠殺用に使われるボンベのような武器を愛用する。もちろん銃も使う。寡黙で不気味な男。
ルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)
ベトナム戦争の退役軍人で、サバイバル能力が高い。現在は溶接工をしながら妻のカーラとトレイラーハウスで暮らしている。大金の入ったトランクを手にして、命を狙われる。
カーソン・ウェルズ(ウディ・ハレルソン)
シガーと同業の殺し屋。しかしシガーよりも人間味がある。
カーラ・ジーン・モス(ケリー・マクドナルド)
モスの妻。母親の反対を押し切って貧乏人のモスと結婚した一途な女性。

映画『ノーカントリー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『ノーカントリー』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ノーカントリー』のあらすじ【起】

テキサス州の西部。若い保安官補はボンベを持った殺し屋アントン・シガーの身柄を拘束する。しかし報告の電話をしている途中で後方からシガーに襲われ、絞殺される。

パトカーに乗ったシガーは警察のふりをして前を走る車を止め、家畜の屠殺用ボンベで運転手の額を撃ち抜き殺害。車を奪って逃走する。

地元の溶接工ルウェリン・モスは狩りへ出た先で複数の麻薬密売人の死体と数台の車を発見する。車内でひとりだけ生き残っていた瀕死のメキシコ人は水を欲しがる。しかしモスは水を持っていなかった。

モスは最後に生き残った男がどうするかを想像し、木陰で男の死体を見つける。男のそばには200万ドルの大金が入ったトランクがあった。モスはそれを持って自宅へ帰る。

その夜、モスは水を欲しがった男のことが気になり現場へ戻る。しかし男はすでに死んでおり、モスも追っ手に見つかってしまう。肩を撃たれたものの何とか逃げ延びたモスは、すぐに妻のカーリーを実家に避難させ、金を持って逃亡を始める。

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映画『ノーカントリー』のあらすじ【承】

雇い主から金を取り返すことを依頼されたシガーは、雇い主の部下と密売人の殺害現場を訪れる。金の入ったトランクには発信機が潜ませてあり、それの受信機を探すのが目的だった。シガーは雇い主の部下2名をその場で殺害して受信機を奪う。

一連の事件の捜査を始めた地元保安官のトムは、凄惨な殺害現場を見て憂鬱になる。現場近くには顔見知りのモスの車が乗り捨ててあった。

シガーはモスの行方を追って、モスの自宅を訪れる。しかしすでに自宅はもぬけの殻だった。トムはモスを追っている男がかなり危険な殺人鬼であることを本人に知らせたいと考えていた。

モスは知り合いの中古自動車屋に車を借りるため、国境近くのデル・リオにいた。しかし知り合いは捕まらず、道路沿いのモーテルに入る。部屋にはちょうどいい大きさの排気口があり、モスはその奥深くにトランクを隠す。モスはまだ発信機の存在に気づいていなかった。

一方、シガーもモスを追ってデル・リオに来ていた。モーテル近くで受信機が反応を示し、シガーは金があるらしい部屋の隣に宿泊する。モスは用心深く行動しており、別の部屋の排気口からトランクを引っ張り出していた。シガーは隣の部屋にいた3人のメキシコ人を殺害し、排気口で物を移動させた痕跡を見つける。

映画『ノーカントリー』のあらすじ【転】

シガーの雇い主は、シガーを始末するため新たな殺し屋のウェルズを雇う。ウェルズはシガーの危険さを熟知していた。

安ホテルへ移動したモスは、シガーが正確に自分の位置を把握していたことから発信機の存在に気づく。シガーはすでにドアの外まで来ていた。モスはギリギリで窓から脱出するが、逃亡中に脇腹を撃たれる。しかしモスもシガーの足を撃って反撃し、その場は逃げ切ることができた。

モスは国境の検問所付近で川沿いの草むらにトランクを隠し、メキシコへ入る。しかし脇腹の怪我は自力でどうすることもできず、メキシコの病院に入院する。シガーの怪我もひどかったが、シガーは自力で怪我の治療をしてしまう。

入院中のモスをウェルズが訪ねてくる。ウェルズはシガーの恐ろしさを語り、金を渡せばモスを守ってやると取引を持ちかける。しかしモスは即答しない。ウェルズはトランクの在りかも突き止めていた。その夜、ウェルズは宿泊先のホテルでシガーに殺害される。

ウェルズのホテルへ電話をしてきたモスに、シガーは“金を渡せば女房を見逃してやる”とチャンスを与える。しかしモスはそれを断る。

映画『ノーカントリー』の結末・ラスト(ネタバレ)

モスは無理をして退院し、カーラにエル・パソへ来るよう連絡をする。トムからシガーの危険性を聞いていたカーラは、トムに連絡する。シガーは自分の殺害を依頼した雇い主を始末してからエル・パソへ向かう。

トムもエル・パソのモーテルへ急行するが、一足遅かった。モスは無残に殺害され、金もなくなっていた。その夜、トムは地元のベテラン警官と凶悪犯罪の横行する今の世の中を嘆き合う。トムはふと思い立ってモスの殺害現場へ戻るが、シガーとは会えなかった。

西部へ帰ったトムは元保安官の叔父を訪ね、自分の無力さを訴える。トムは引退の意思を固めていた。

後日。カーラは母の葬儀を終えてひとりで帰宅する。そこにはシガーがいた。カーラはシガーが来るのはわかっていたが、お金もないし、自分を殺しても無意味だと語る。しかしシガーはモスに殺すと約束したから殺すのだと自分のルールを説明する。シガーはコイン投げの賭けで決めようとコインを投げるが、カーラは断固として賭けに応じない。

カーラの家から出てきたシガーは、よそ見運転をして事故を起こす。目撃者の少年は骨の突き出ているシガーの腕の怪我を心配するが、シガーは警察に自分のことは話すなと告げてその場から立ち去っていく。パトカーがすぐ近くまで来ていた。

引退したトムは暇を持て余していた。そして妻に昨夜見た夢の話をする。

映画『ノーカントリー』の感想・評価・レビュー

まずハビエル・バルデム演じる殺し屋シガーが怖すぎる。
見た目の不気味さはもちろんのこと、マイルールを決して侵さない律儀さ、感情のない冷酷さ。彼じゃなければクスッと笑えると思われるシーンも逆に背筋が凍りつきます。

観終わったあと、コーエン兄弟は完璧な映画を撮ったのだと激しく感動しました。
すべてのシーンが何かに繋がり、すべてのシーンがつじつまを持つ、ひとつの無駄なシーンもない完璧な映画だと断言します。(女性 40代)


コミックから飛び出してきたような表情を撮影することがコーエン兄弟の特技の一つであるが、その一つの完成形がこの作品の殺し屋シガーだろう。空気ボンベという特異な武器を持たせたハビエル・バルデルは映画史上でも有数の殺し屋といえる。ストーリーはいつもの利害関係の絡み合いから多人数が殺し合うものだが、その中を自在に動き回るジョーカー的な殺し屋がいることで他作品を圧倒している。(男性 30代)


緊張感と不思議さの漂う作品だった。音がなく、静かでチャカチャカしたやかましさがない分、足音や空気の音がクリアーに聞こえ、研ぎ澄まされた状態で見ることができた。シガーの異常さとモスのハンターであるがゆえ、考えが分かった上で行動することによってうまくぎりぎりをすり抜ける攻防戦。結局はモスは異常さに負けて狩られてしまったが、静かでスリル満点だった。
最後は本当に意味が分からなかったけど、そこで張り詰めた空気が緩んだのかなと思う。(女性 20代)


ギャングのお金を横取りした男、殺し屋、警官…普通の追跡劇としても緊迫感もあり楽しい。とりあえず一本糸の切れた殺し屋役のハビエル・バルデムは見物だし、日本ではCMでもおなじみのトミー・リー・ジョーンズ扮する警官も渋い。しかし追跡劇はだんだんおかしなことになりだし、ラストはもはや緊迫感とはかけ離れたおだやかな会話のシーンで終わっていく。となるともしかしてこれは追跡劇は「おまけ」なのではないかという気がしてきた。おかしな事件の起こる外の世界と自分の家の中の世界の乖離の話なのかもしれない。(男性 40代)


本作は、メキシコの悲惨な麻薬取引現場から現金を盗んだ通りすがりの男が殺し屋に追われる様子を描いたアクションサスペンス作品。
純粋な趣味趣向や生きがいで殺す人、留まることのない暴力の連鎖は観ていて辛かった。
特に殺し屋のバルデムは見た目やその仕事ぶりの異常性が恐怖でしかなく、彼がいる空間の張り詰めた緊張感に息が詰まりそうになった。
最後まで上手く吸収できなかったけれど、メッセージ性を感じられる作品だった。(女性 20代)


コーエン兄弟の作品の集大成と言えるべきクライムスリラーである。『ファーゴ』を追求した形がこの作品であるような、そんな感じだ。道理にかなわなくて説明できない犯罪を、正面から描いた純粋な事件である。そしてこの映画にはヒーローも居ない。

単に解明できない恐ろしい人間の心理と行動が本当にゾッとするような映画だった。ハビエル・バルデムのトラウマレベルの殺戮と、オカッパ頭は一生忘れることが出来ないだろう。この恐怖をぜひ体験してほしい。(女性 20代)

みんなの感想・レビュー

  1. 匿名 より:

    ①理由なき殺人鬼アントン・シガーと元ベトナム帰還兵ルフェリン・モスを追う、老保安官ベルの追跡劇

    神出鬼没で無情な殺人鬼アントン・シガー。彼の欲しいものは、麻薬でも金でもない。ただ無表情でエア・ガンをぶっ放すのだ。”暴力の連鎖”は永遠に止められない。コーエン兄弟は、本作でもテキサスという”地域性”に深くこだわっています。出演した役者のほとんどが西テキサス出身。また西テキサス訛りで話すことや1980年代の時代背景にも注目して下さい。
    アントン・シガーは何も考えていないように見えて、時々コインの表と裏で人の命を量ろうとします。それがまた怖い。対する、元ベトナム帰還兵のルフェリン・モスは最強の市民代表です。軍で鍛えられた戦闘能力を発揮して、最後まで逃げ切れるかと思ったのに意外とあっけなく死んでしまう。2人を追う、無気力な老保安官ベルはだらだらとしていて頼りない。
    保安官だった父のように殉職したくないと思っているのだろう。この物語は、”死んだように生きる男たちの姿”を描いていると思う。彼らは現実を生きているのではない、架空の主人公のように誰とも交わらず、どこにも帰属しないのです。

    ②コーエン節に酔いしれる!極上の映像美

    追う者と追われる者。元ベトナム帰還兵のルフェリン・モスが、銃撃現場に夜戻った際、朝まで執拗に追われるシーン。彼だけにパンがあてられ、トラッキング・ショットで追いかけてゆきます。臨場感あふれる映像に彩度が高めの自然描写が重ねられ、朝になったのだと感じた時、追跡も終わります。途切れることのない時間経過が表現されていて、好きなシーンです。
    また血の表現が上手で、テキサスの砂漠の大地に点々と落ちた血をたどってゆくシーンや、記憶力抜群の賞金稼ぎウェルズの死体は見せないが、カーペットに流れる血で分かるシーンなどなかなか細かいです。ドラマの全体的流れとしては、とてもゆっくりなのに殺人シーンはほんの一瞬だけというテンポの良さにもハマります。殺された人に共通する言葉として、”殺しても無駄よ。”という台詞があり、深い哀しみを感じます。
    コーエン映画の魅力に、殺人シーンにおけるコメディ要素を挙げてみたい。酸素ボンベがついた先で額を撃ちぬくシーン。それで死ぬの?とびっくりするが、実は鉛のボルト弾らしい。またエア・ガンがサイレント付というのもなにかおかしい。保安官補を絞殺するシーン以外は死体も見せないという徹底ぶりに観客は一層の笑いと想像力をかきたてられるのです。

  2. 匿名 より:

    「ノーカントリー」は不思議な映画だと思う。暴力と無力感に襲われるのに観終わると、やっと現実に戻れたような安心感に包まれます。老保安官の夢語りで終わるのが、影響しているのかもしれません。突然、夜の帳が下りてきたような幕切れにも驚くが、それは原作小説「血と暴力の国」を読んだ時にコーエン兄弟が感じたものを映画にも取り入れたらしい。映画を観て、疑問部分が多かった人はぜひコーマック・マッカーシーの原作小説を読んで下さい。
    映画は原作を忠実に再現しており、人物造形をより膨らませてスリルと笑いを含んだノワール風サスペンスを完成させました。”原作を読んだ時、映画の脚本みたいだった”とコーエン兄弟がメイキングで語っているほどです。なによりも、テキサスの乾いた空気と澄んだ空が美しくて、空っぽな心に沁み渡ります。