映画『のんちゃんのり弁』の概要:永井小巻は小説家として成り立っておらず家でだらしなく寝ているだけの夫に嫌気がさし、娘を連れて実家に帰った。就職活動を行うが、年齢や働く時間が短いことを理由に断られてしまう。しかも、貯金が底をつきそうで、小巻の不安は増す一方だった。
映画『のんちゃんのり弁』の作品情報
上映時間:107分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:緒方明
キャスト:小西真奈美、岡田義徳、村上淳、佐々木りお etc
映画『のんちゃんのり弁』の登場人物(キャスト)
- 永井小巻(大人:小西真奈美 / 中学:水野絵梨奈)
- 31歳。プライドが高く、世間に疎い。小説を書かずに家でゴロゴロしている夫の範明に嫌気がさし、娘を連れて家を出る。料理が得意。中学生の頃、建夫に思いを寄せていた。
- 永井乃里子(佐々木りお)
- 幼稚園生。通称のんちゃん 。小巻と範明の娘。両親のことが大好き。母親が作ったのり弁が大好物。素直で明るい性格。
- 永井範朋(岡田義徳)
- 28歳。小巻の夫。売れない小説家。親の金で生活をしていた。楽天的で怠惰な性格。
- 川口建夫(大人:村上淳 / 中学:小林拓人)
- 小巻の中学時代の同級生。中学生の頃に小巻に思いを寄せていた。実家の写真屋を継いでカメラマンになるが、経営状態はあまり良くない。
- 玉川麗華(山口紗弥加)
- バツイチ。小巻の友人。のんちゃんが通う幼稚園の先生。服装が派手で、言い方もきついが、子供思いの優しい先生。
- 戸谷長次(岸部一徳)
- 小料理屋「ととや」の店主。考えの甘い小巻のことを、父のように心配している。小巻に対して厳しいことも言うが、優しく見守っている。
映画『のんちゃんのり弁』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『のんちゃんのり弁』のあらすじ【起】
永井小巻はだらしない夫の範朋に嫌気がさし、離婚届を机の上に置くと、娘の乃里子(通称のんちゃん)を連れて実家に帰った。小巻の母のフミヨは、突然帰って来た娘に驚きながらも、だから結婚するときに反対したのにと呆れた。のんちゃんはそんな大人達の会話など気にせず、母が作ってくれたのり弁を取り出した。フミヨはご飯にのりを乗せただけの弁当を見て、もっと栄養のある物を入れないとだめだと小巻を叱った。だが、そののり弁は、ご飯の中にきちんとおかずが挟み込んであった。のりの下は白飯でその下は玉子そぼろ、さらに下がゆかりご飯でその下がほうれん草の胡麻和え、一番下が切干大根とおじゃこの混ぜご飯となっていた。さらに、食べやすいように、のりは細かく千切られていた。
小巻は早く別れるために、夫に慰謝料の請求をしなかった。だが、貯金もなく、働く当てさえなかった。そんな中、のんちゃんのために幼稚園に入園を申し込みに行くが、入園料や毎月の月謝などを含めて9万円を支払わなければいけなくなる。しかも、週4日弁当を作る必要があった。小巻は園長先生に合わせて、微笑むことしかできなかった。
小巻は幼稚園で友人の玉川麗華と再会する。麗華もバツイチで、幼稚園の先生として働いていた。小巻は麗華にどこか働き口はないか尋ねるが、勧められたのは水商売だった。小巻は水商売で働くことを嫌がるが、麗華から30代の子連れが職を選んでいる場合ではないと忠告される。
範明が小巻に会いに来た。小巻は嫌がるが、のんちゃんは父である範明に懐いていたため、仕方なく公園で話し合うことにした。範明は小巻に、離婚に応じる気がないことを伝えた。裁判をしても、範明の親のお金で何不自由ない生活をしていたため、小巻に勝ち目はなかった。小巻はただ範明を睨みつけることしかできなかった。
映画『のんちゃんのり弁』のあらすじ【承】
小巻は就職活動を行うが、年齢や働ける時間が短いことを理由に断られてしまう。預金通帳を見ると、残高が7万6000円程しかなかった。小巻は危機感を募らせ、麗華に仕事を紹介してくれと頼んだ。麗華は笑顔で了承した。園児達の傍には、カメラマンの男性がいた。その人は川口建夫で、中学時代小巻が思いを寄せていた人物だった。小巻はのんちゃん・建夫・麗華と食事に出かけ、建夫と連絡先を交換した。
のんちゃんの幼稚園ではのり弁が流行し、他の園児達ものり弁を持ってくるようになった。麗華達幼稚園の先生も、小巻が差し入れで作ってくれたのり弁に舌鼓を打った。一方、小巻は麗華から紹介してもらった、小料理屋の「小雪」で働いていた。「小雪」のママは客達の心を掴むため、小巻のことを馴染の忘れ形見だと紹介した。小巻は何とか話を合わせて働くが、酔っ払い達の相手をするのは大変だった。セクハラに耐えながら接客をしていたが、口にキスをされてしまい、思わず突き飛ばしてしまう。客達は怒って帰って行った。ママは小巻を叱り、金を稼ぐのに甘い考えしか持てないなら帰れと怒鳴った。
小巻は酒を飲んで酔っ払い、建夫に電話を掛けた。だが、そこに範明が現れ、途中で電話を切られてしまう。範明は小巻が水商売で働いていることを知り、世間知らずで危ないから止めろと忠告した。それは小巻自身も自覚していることだった。小巻はプライドが高く、真面に働くことができない自分自身に苛立っていた。範明は落ち込む小巻を見て復縁を迫りキスをしようとするが、股間を蹴られ拒まれる。小巻は母親に入園料を貸してくれと頼んだ。そして、ティッシュ配りの仕事を行った。だが、大きな声を出すことができず、誰も受け取ってはくれなかった。
映画『のんちゃんのり弁』のあらすじ【転】
小巻は建夫に会いに行き、現像した写真の配達に一緒に行くことになった。大手の写真屋とは違い個人経営の小さな店のため、サービスの一環として配達を行っているのだ。その途中で、建夫はホテルに立ち寄った。小巻はドギマギするが、写真を配達に来ただけだった。小巻は呆れながらも安堵し、「どうして君はこう意表を突くかな」と言った。それは昔、建夫が小巻に言った言葉だった。小巻は建夫が覚えていないと思っていたが、建夫はそのときのことを覚えていた。
最後の配達場所は、小料理屋の「ととや」という店だった。小巻は店主に勧められ、サバの味噌煮を御馳走になる。小巻はその味に感動し、弟子にして欲しいと頼んだ。だが、店主の戸谷に断られる。小巻は家に帰って、サバの味噌煮を研究した。母達に食べてもらうが、飽きたと言われたため、幼稚園の先生・建夫の家族・バイト仲間に食べてもらって感想を聞いて回った。すると、麗華がお金を持って小巻の家に来た。あまりにも美味しかったため、タダで頂くのは申し訳ないと思ったのだ。小巻はそのことに感動し、お弁当屋を開くことを決心する。
小巻は戸谷に会いに行き、お弁当屋を開きたいから修行させてくれと頼んだ。戸谷はそれでも頷かなかった。小巻はサバの味噌煮を食べてやっと目標ができたのだと訴え、お金はいらないから学ばせてくれと頼んだ。後から話を聞いたフミヨは、娘の行動に呆れ果てた。だが、小巻は戸谷に料理のコツを聞きながら、生き生きと働いた。
映画『のんちゃんのり弁』の結末・ラスト(ネタバレ)
小巻は料理を持って建夫の家を訪ねた。中学生の頃のアルバムを見ながら昔を懐かしみ、小巻は建夫の頬にキスをしてからかった。すると、建夫に腕を捕まれ口にキスをされる。小巻もそのキスを受け入れていると、建夫の父が帰宅して鉢合わせしてしまう。小巻は気まずい思いのまま、慌てて家を飛び出した。
小巻は弁当屋を開くために店舗を探すが、中々良い物件は見つからなかった。そんな時に、戸谷から試しに、「ととや」を使って販売してはどうかと提案される。だが、小巻は自分自身でやりたかったため、その申し出を断った。すると、戸谷は小巻に今までのバイト代を渡した。戸惑う小巻に、戸谷は働いてお金を貰うことは悪いことではないと伝えた。
範明がのんちゃんを勝手に幼稚園から連れ出してしまう。その頃、小巻は食品衛生責任者の資格が取れたことを建夫に報告していた。すると、建夫から写真屋を畳む予定のため、そこで一緒に弁当屋を開かないかと提案される。それは、建夫なりのプロポーズだった。小巻が動揺していると麗華から電話がかかってきて、のんちゃんがいなくなったと言われる。
小巻は範明に連絡を入れるが、電話の電源が切れていて繋がらなかった。幼稚園の先生や建夫達と共に、手分けして捜索を行った。小巻が仕事に遅れることを伝えるため「ととや」に連絡を入れると、範明達が来ていた。小巻達は急いで「ととや」に向かった。そこで、建夫の姿を見た範明はいちゃもんをつけるが、小巻に殴られてしまう。範明も平手打ちを仕返し、2人は激しい取っ組み合いの喧嘩をした。
その日の夜、範明は小巻との離婚を承諾した。小巻はそのことを皆に報告し、戸谷に店を間借りさせて欲しいと頼んだ。戸谷は承諾するが、交換条件として小巻の手を「大人の手」にすることを望んだ。一部始終を見守っていた建夫は、小巻に自分の存在は必要ないのだと悟る。のんちゃんは大人達の話を聞いて父と離れ離れになることを感じ取り、泣きじゃくった。小巻はそんなのんちゃんに、範明が父親なのは一生変わらないのだと伝えた。
のんちゃんの卒園式の日、建夫は小巻の前から去っており、別のカメラマンが写真を撮っていた。小巻はそれを悲しそうな表情で見ていた。範明はこっそり幼稚園の門のところに来ると、小巻に離婚届を渡した。それから3週間後の夜、小巻はお店でお弁当の準備を行っていた。すると、いつの間にか、お弁当が机の上に置いてあった。それは、料理下手な母が作った物だった。次の日、小巻は弁当の仕上げをするため、のりを千切っていた。すると、いつの間にか涙が溢れ、嗚咽が止められなくなった。そこに、小学生になったのんちゃんが訪ねて来る。小巻は娘の姿を見て笑顔になり、のんちゃんの手を握り締めた。のんちゃんは小巻の手をすり抜け、元気に学校に登校した。
映画『のんちゃんのり弁』の感想・評価・レビュー
離婚届を机の上に置いたきり、娘ののんちゃんを連れて実家へ戻った小巻が、生活のために就職活動を始め小料理屋で働いたり、中学時代に思いを寄せていた建夫との再会など、状況は変わったものの懐かしい風景や気持ちが伝わり、同じような気持ちになった。のんちゃんが父親の範明と離れるのが悲しく、泣きじゃくってしまうシーンがとても辛く、小巻の気持ちも察することができ、虚しくなった。最後の終わり方もとても印象的であり、小巻の様々な苦労や悩みなどがあったからこそ、乗り越えてきたのだと感じた。(女性 20代)
永井小巻の不器用でがむしゃらなところが、心にグッとくる物語だった。大人だからと言ってあれもこれもできるわけじゃないし、迷いなく生きられる人はいないと思う。小巻の生き方に勇気をもらえたり、突っ込んだりしながら、いつの間にか明るい気持ちにさせてくれる作品だった。
小巻の師匠として厳しくも優しく見守っている戸谷長次の存在が良かった。小巻に言うセリフに説得力があり、見ている自分の心にまでグサッと突き刺さった。(女性 30代)
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