映画『紀子の食卓』の概要:2006年に公開された、鬼才、園子温監督のサイコホラー映画。2001年公開の「自殺サークル」に登場した掲示板“廃墟ドットコム”を使うなど、共通する場面や謎解きに関わる要素のある作品。
映画『紀子の食卓』 作品情報
- 製作年:2005年
- 上映時間:159分
- ジャンル:サスペンス、ホラー
- 監督:園子温
- キャスト:吹石一恵、つぐみ、吉高由里子、並樹史朗 etc
映画『紀子の食卓』 評価
- 点数:75点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★☆☆
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映画『紀子の食卓』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『紀子の食卓』のあらすじを紹介します。
高校生の島原紀子は、地元新聞の記者をしている父、専業主婦の母、妹のユカの4人家族。
一方で、インターネット掲示板「廃墟ドットコム」の住人“ミツコ”でもあった。
2001年の冬、東京の大学に進学することを反対されていた紀子は、家が停電になった隙に、衝動的に家出をする。
東京へ行き、「廃墟ドットコム」のリーダー的存在である“上野駅54”ことクミコに出会った彼女は、紀子を捨てて「レンタル家族サービス」の一員、“ミツコ”になっていく。
紀子の家出から半年後、東京で54人の女子高生が電車に飛び込み、謎の集団自殺を遂げるという出来事があった。
姉、紀子の行方を追っていたユカは「廃墟ドットコム」にたどり着き、“ヨウコ”と名乗って入り浸るようになる。
そして姉の後を追うように、ユカも家出をする。
クミコの「レンタル家族」の一員“ヨウコ”になったユカは、“ミツコ”になった姉と再会する。
残された母は追い詰められ、自殺した。
父は娘たちに家出を唆した「廃墟ドットコム」の“上野駅54”の正体を暴くことに執念を燃やす。
やがてクミコの誕生の秘密や、「廃墟ドットコム」に集っていたメンバーの行方が明らかになっていく。
娘たちの消息をつかんだ父は、ひとつの賭けに出ようとしていた。
映画『紀子の食卓』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『紀子の食卓』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
2時間半でも飽きない設定
chapter1.紀子、chapter2.ユカ、chapter3.クミコ、chapter4.徹三、とそれぞれの章ごとに、ナレーションと目線が変わっていく。
紀子の章では紀子がナレーションをしているのだが、それぞれのキャラクターの持ち味、雰囲気、背景などがそこにも投影されていて飽きがこない。
2時間半という長い作品で、説明にも似たナレーションばかりだが、章ごとに目線も変わるのであっという間に終わってしまう。
停電の間に荷物をまとめ、誰にも気づかれずに家出ができるのかという、ストーリー上のツッコミどころはある。
また、ユカがシュミレーションした父の姿も、母が自殺するまでの半年以上が無駄になっているのに、その空想シーンを入れる必要はあったのだろうか、と悩まされる。
演技派クミコの恐怖
クミコ役のつぐみの迫力は鬼気迫るものがあり、時間を知らせるアラームが鳴ると人格が変わって、娘役から戻りたくないという紀子を罵倒したりする。
コインロッカーベイビーだった自分の実の母親が会いに来ても、感動の演技が下手過ぎると言い演技指導をし始めるのには、恐怖すら覚える。
本当の名前が“ミツコ”というのにも驚かされる。
紀子役の石吹一恵は17歳には見えず違和感を感じるが、徹三がレンタル家族に娘役として依頼する頃になると、家出から数年が経過したかのような錯覚と共に、年齢も関係なく思えてくるから不思議だ。
若手女優の吉高由里子のみずみずしさや、どんな役も幅広く演じる光石研という中堅どころの出演には安心感を覚える。
「自殺サークル」のコミック化を行った、漫画家の古屋兎丸がゲスト出演しているというコアなシーンもある。
映画『紀子の食卓』 まとめ
家族の形をテーマにして、子供から見た家庭の居心地の悪さや、親が求める家族の形の違いをさりげなく提示している作品。
2001年に公開された「自殺サークル」の裏側や、謎解きのような一面も少しだけ見せている。
また「自殺サークル」で使われた、54人の女子高生の集団自殺シーンが再利用されていて、その血しぶきに再び驚くことになる。
世界観などは多少共通しているものの、原作になったのが園子温監督自ら執筆した「自殺サークル 完全版」という小説なので、「自殺サークル」を見ていなくても楽しめる内容になっている。
東京の大学に進学すると妊娠するという偏見や、“みかんちゃん”というあだ名の由来が、尊敬するのはみかんだと子供のころに言ったからだというのは、田舎にありがちな話で笑ってしまう。
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前作 自殺サークル
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