映画『オー・ルーシー!』の概要:平栁敦子監督による桃井かおり主演で製作した同名短編映画を基に、日米合同で制作された一作。刺激のない日々を送る独身OLが英会話教室でアメリカ人講師に恋をして、大きな変化を起こす様子を追う。
映画『オー・ルーシー!』の作品情報
上映時間:95分
ジャンル:コメディ、ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:平柳敦子
キャスト:寺島しのぶ、南果歩、忽那汐里、役所広司 etc
映画『オー・ルーシー!』の登場人物(キャスト)
- 節子 / ルーシー(寺島しのぶ)
- 友人はおらず、家族とも疎遠の状況である独身女性。仕事でも充実感は得られず空っぽな日々を送っていたが、ある日英会話教室に出向きアメリカ人講師からのハグで新たな刺激を受ける。
- 綾子(南果歩)
- 節子の姉。若い頃に節子が交際していた男性と結婚して以来、節子とは疎遠になっていた。娘・美花が連絡を取れなくなり、節子と会うようになる。
- 美花(忽那汐里)
- 綾子の一人娘。天真爛漫な性格。メイド喫茶でバイトをして生計を立てていた。綾子の反対を押し切って、恋人と逃避行するため節子を利用する。
- 小森 / トム(役所広司)
- 節子が通うことになった英会話教室の仲間。妻を亡くしてから英会話教室に通い始めている。偶然知り合った節子にもとても親切に接する男性。
- ジョン(ジョシュ・ハートネット)
- 節子が通うことにした英会話教室の講師。「ハグ」を大事にした授業の方針で、節子の心を開放する。
映画『オー・ルーシー!』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『オー・ルーシー!』のあらすじ【起】
何事にも無関心な独身OLの節子。電車の飛び込み事故に巻き込まれても、表情一つ変えず喫煙室へ向かう。咳き込む節子に上司は「タバコ止めた方がいいんじゃない?」と忠告する。甘い物には目もくれない、ヘビースモーカーである。
姪の美花に呼ばれ、バイト先のメイド喫茶に向かった節子。美花の頼みは「一括で授業料を払ってしまった英会話教室に代わりに通ってほしいい」というものだった。渋々無料体験だけでも受けてみることにした節子。いかにも胡散臭いたたずまいに疑いを抱く節子だが、教室で迎え入れてくれたアメリカ人教師のジョンの勢いに圧倒されてしまう。「脱力」するように諭すジョン。くじ引きで名前を決めるジョンの方針で、節子は英会話教室では「ルーシー」と名乗ることになった。
アメリカ人になりきるという授業に魅了され始めた節子は、金髪のカツラを返し忘れ教室に戻った。そこで「トム」と名乗るサラリーマンを紹介された節子は、一緒に授業を受けることになる。挨拶の一つとしてハグを求められる節子は、抵抗心を失い徐々にジョンを受け入れるのだった。
トムこと小森と帰路に就いた節子はジョンの虜であり、美花の払った授業料を立て替え教室に通う決心をするのだった。少しだけ心が晴れやかになった節子は、同僚のヨシコが定年を迎え挨拶する姿も笑顔で見守ることができた。
映画『オー・ルーシー!』のあらすじ【承】
しかし、教室に行くとジョンは急遽帰国することになったと聞かされる。さらに目の前で美花とジョンがキスする瞬間を見てしまった節子。美花に騙されたことに気付いた節子は、ヨシコの送別会に向かいこれまで溜まった鬱憤をぶつけてしまうのだった。
会社での居心地がより悪くなった節子。さらにジョンの代わりの女性講師はみつかったものの、トキメキを失った節子には英会話教室に通う理由はなくなってしまった。幸運なことに姉・綾子から美花に騙された金額は戻って来た。美花からポストカードが届いていたことを伝えると、綾子は住所をメモして帰宅するのだった。
美花に会うためロサンゼルスに行くことにした節子。突如有給休暇を申請し綾子に伝えに行くと、予想外にも綾子は一緒に行くと言い出すのだった。全く波長の合わない二人は、出発前からケンカばかりしている。それは綾子に恋人を奪われた経験のある節子のトラウマが影響しているのだった。
ロサンゼルスのジョンの家にたどり着いた二人。しかしそこに美花の姿はなかった。必死に部屋の中を探し回る綾子。ジョンは「一目惚れだった」と節子に話すのだった。綾子を置いて食事に向かった節子は、ジョンに別れた理由を聞きぎゅっとハグをした。
映画『オー・ルーシー!』のあらすじ【転】
部屋に戻ると綾子は美花から届いたであろうポストカードを見つけていた。タイミング悪く、家賃の取り立てを受けるジョンの姿を見てしまい節子は思わず立て替えてしまう。どうしようもない二人の姿を見て、綾子はポストカードの発送元のモーテルに行こうと連れ出すのだった。
モーテルにも美花の姿はなかった。そこに泊まり美花が戻ってくるのを待つことにした三人。慣れない環境に眠れない節子は、トムに宛てた手紙を出すついでに夜中一人で散歩に出た。偶然にも駐車場で一人物思いにふけるジョンと鉢合わせる。ドラッグでハイになった二人は、車中で一線を越えてしまう。「美花には言わないでくれ」とジョンは呟くのだった。
夜探れた節子は、徐にタトゥーショップへ出向きジョンと同じく「愛」と左腕に彫ってもらった。すぐにジョンに報告するもあしらわれてしまい、やるせない気持ちのまま部屋に戻るのだった。待ち構えていた綾子は心配を上手く表現できず、怒鳴り散らしてしまう。つかみ合いの喧嘩になった二人は言葉も交わさずに眠りに就いた。
映画『オー・ルーシー!』の結末・ラスト(ネタバレ)
翌朝、綾子と朝食を食べに行ったジョンは、自分には妻子があることを告白した。一緒にジョンの妻子を訪ねた綾子。一方で、節子は一人町を歩いていると偶然にも美花と出くわす。ジョンに家庭があったことを美花に教えられる。さらに美花の左腕にも「愛」のタトゥーがあることに気付くのだった。
ジョンとの思い出を話す美花に嫉妬した節子。思わずジョンとの秘密を明かしてしまった。絶望から身を投げ出した美花。一命は取り留めたものの、美花と綾子そしてジョンから拒絶され節子は一人になってしまうのだった。
帰国した節子は珍しく土産を用意していた。しかし、上司から「総務部付け」の異動を命じられる。それはクビ同等の扱いである。プライドから自主退社した節子だったが、職場を出ると早々に歓喜の声が聞こえ絶望するのだった。
帰宅し、睡眠薬で自殺を図った節子。意識が朦朧とし始めた矢先に小森が様子を見に来てくれるのだった。自分が厳しくしたせいで、息子を亡くしたという小森。「Let’s hug」と手を広げた小森の胸に、節子は飛び込むのだった。
映画『オー・ルーシー!』の感想・評価・レビュー
主演・寺島しのぶ、そのうち出しで作品への期待値は膨れ上がる。それは、壊れるような役どころを期待してしまうからだ。追い詰められる人間の暴走を描く今作。はっきりと自分の意見を伝える文化の強い米欧では高い評価を経ている。「声なき声をスクリーンに」と掲げる今作の監督・平柳敦子は初の長編作品ではあるが、統一された世界観を貫いていた。ニューヨーク大学在学中に制作した短編映画をさらに卒業作品として再構築。念願の長編映画化であったが、ブラックなコメディ要素に加え人間の弱さを忠実に描いているように思えた。(MIHOシネマ編集部)
寺島しのぶが好きな方は大満足の作品でしょう。私は彼女の癖のある演技が苦手なので節子のキャラクターにイライラしっぱなしで楽しんで見ることができませんでしたが、こんなにも見る人の心を良い意味でも悪い意味でも揺さぶってくる彼女の演技は素晴らしいなと感じました。
人付き合いが苦手な人が1つの大きなきっかけを見つけ、それを掴んでしまうと自分でも想像していなかったような大事になってしまうことって実際にも意外とあるような気がします。
節子に感情移入は出来ないと思っていましたが、自分にも彼女のような危うい一面があるのかもしれません。(女性 30代)
寺島しのぶ主演の今作は、海外で高評価を得たようだが、個人的にはあまり受け入れがたい内容だった。高い評価を受けるだけの深みやストーリー、寺島しのぶの演技力は分かるし、確かにそうなのだろうと思う部分は多い。ただ、主人公ルーシーの足掻きが何とも見ていて辛かったのだ。みっともないと言ってしまえばそれまでだけれど、まるで縋りつくかのように暴走するエネルギーは凄いと思うし、実際に行動できる日本人はあまりいない。それだけ、主人公の飢えが酷かったというのもあるだろう。これだけのエネルギーがあるなら、鬱屈している自分を解放する方法を探せなかったのかとも思う。自分はどうにも主人公のような性格の人とは、相容れないようで。そういう意味で受け入れがたかった。(女性 40代)
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