映画『女は女である』の概要:突然子供が欲しいと言い出す女に、交際相手の男は困惑する。そこへ同じアパートに住む男も入り込み、男二人と女一人の喜悲劇が幕を開ける。ゴダール監督による、哲学満載のラブコメディー。
映画『女は女である』の作品情報
上映時間:84分
ジャンル:ラブストーリー、コメディ
監督:ジャン=リュック・ゴダール
キャスト:ジャン=ポール・ベルモンド、アンナ・カリーナ、ジャン=クロード・ブリアリ、マリー・デュボワ etc
映画『女は女である』の登場人物(キャスト)
- アンジェラ(アンナ・カリーナ)
- ストリップ小屋の踊り子。女優を目指している。エミールとは同棲していて、突然子供が欲しいと騒ぎ出す。情緒の激しい女。
- エミール(ジャン・クロード・ブリアリ)
- 本屋で働く男。アンジェラとは同棲している。子供を作りたいと言い出したアンジェラを邪険に扱う。言葉を真実だと思い、相手の言葉をそのまま受け取ることがある。
- アルフレッド(ジャン=ポール・ベルモンド)
- エミール達と同じアパートに住む男。アンジェラを何度も誘惑する。エミールとも友人関係にある。ある日、アンジェラと関係を持ってしまう。やんちゃで軽薄な男。
映画『女は女である』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『女は女である』のあらすじ【起】
パリの小さな本屋で働くエミールのもとを、アンジェラという女が訪れる。二人は同棲しているのだ。本屋を出たアンジェラに、アルフレッドという男が話しかける。それを軽くあしらい、アンジェラは仕事先へと向かう。
アンジェラはストリップ小屋の踊り子として働いていた。楽屋へ入り、衣装に着替えるアンジェラ。用意した曲を自らセットし、アンジェラのショーが始まる。客が食事を摂る最中にアンジェラが踊り、服を脱いでいく。ショーが終わると、支配人はマルセイユで働く人間を募っていた。アンジェラは、南仏なんかには行きたくないと言うのだった。
外でアンジェラを待ち伏せていたアルフレッド。アルフレッドはアンジェラを口説こうとするが、アンジェラは中々相手にしてくれない。
アンジェラはミュージカルが好きで、家の中でもミュージカル映画の主人公のように振舞ったりするのだった。だから、ストリップ小屋とはいえアンジェラにとってショーはとても大事なものだった。
映画『女は女である』のあらすじ【承】
エミールが家に帰ってくる。すると突然エミールとアンジェラは喧嘩を始める。二人の行動や会話はどこかぎこちなく、噛み合っていない。お互いがお互いの言葉を反復しているのだ。
食事の席で、アンジェラは突然エミールに子供が欲しいと言い出す。エミールはそれに賛成する。じゃあ結婚だと喜び踊るアンジェラに、まだ子供はできていないのだから結婚は先だとエミールは冷たく答えるのだった。
再び言い争いを始める二人。今すぐに子供が欲しいと言うアンジェラは、他の男に頼むと言い出すのだった。そこへ、爆弾騒ぎの調査と言って警察が家に入って来る。
警察が出て行った後、エミールはアンジェラの言葉を真に受け、下の階に住むアルフレッドを部屋へと呼び出す。エミールはアルフレッドに、アンジェラと子供を作ってくれと言い出す。
アンジェラは、エミールが嫉妬するように仕向けようとする。外に出ると言うエミールに、アルフレッドは一緒に行くと答える。アンジェラは二人の男に向かって、ひどい男達だと言うのだった。
映画『女は女である』のあらすじ【転】
ある晩、二人はお互いに背を向けて一つのベッドで眠りにつく。明かりを消すが、アンジェラがすぐに電気スタンドの電気を点け、本棚からケダモノというタイトルの本を持ってベッドに戻り、エミールに見せつける。今度はエミールが同じ行動をとり、出て行けと書かれた本をアンジェラに見せる。その後、何度も同じ行動を繰り返し、無言の会話を続けるのだった。
ある朝、アンジェラのもとに電話がかかってくる。それはエミールからだった。二人は電話で言い争いをする。アンジェラは怒って電話を切ってしまう。その後、アンジェラが目玉焼きを作り始めたときに今度はアルフレッドから電話がかかってくる。そして二人は会う約束をする。電話を切ったアルフレッドの横にはジャンヌ・モローがいるのだった。
バーでアルフレッドと待ち合わせたアンジェラ。二人はお酒を飲み、他愛もない会話をする。アルフレッドはアンジェラに、愛していると伝える。壁に頭をぶつけたらこの愛を信じてくれるかとアルフレッドは意味のわからないことを言い出し、頭を壁にぶつける。それを見てアンジェラは、信じると軽く答えるのだった。
映画『女は女である』の結末・ラスト(ネタバレ)
ある日、アンジェラとエミールが二人で街に出る。アンジェラは未だに子供が欲しいと何度も繰り返しエミールに訴えている。街を歩く二人。エミールは通り過ぎる人達に片っ端から、アンジェラと子供を作ってくれないかと質問をする。通行人達は、今忙しいから無理だと答えるのだった。
いつのまにかエミールのもとからいなくなってしまったアンジェラ。それにヤケを起こし、エミールは売春宿へと行く。エミールは売春婦に、出来心だと繰り返し言うのだった。
一方アンジェラはある人物の部屋を訪れる。それはアルフレッドの部屋だった。アルフレッドとアンジェラはとうとう関係を持ってしまうのだった。
その晩、家に帰ったアンジェラはエミールに全てを打ち明ける。しかし、エミールはそれを信じようとしない。子供が欲しかったからだとアンジェラは言う。喜劇か悲劇かわからなくなったとカメラに向かってエミールは言う。ベッドに入った二人。エミールは突然思いついたと言い出す。それは、今から子供を作ればもし子供ができても二人の子供になるじゃないかという考えだった。じゃあ始めましょうと言って二人は明かりを消すのだった。
映画『女は女である』の感想・評価・レビュー
1960年代フランスのセンス溢れるファッションやインテリア、ヘアスタイルなど、目に映るもの全てがお洒落で、素敵な世界観を醸し出している。
アンナの赤いタイツや赤いカーディガンも可愛らしいが、何よりアンナの雰囲気のそのものが魅力的だ。
”子どもが欲しい”というのは、人間の本質的で自然な欲求であるが、女性目線で描かれていると思った。
仕事と子どもを両方とることの重任やその厳しさといった女性の価値観に着目している作品だと言えよう。(女性 20代)
60年代初頭の作品にも関わらず映像はいつ見ても新鮮で、なんといっても主演のアンナ・カリーナの表情、話し方、ファッション、インテリア、全てがセンス抜群で本当に可愛い。ゴダールらしく難解で唐突な作品でもあるし、コロコロ気が変わったり、とりとめもない話をしたりする魅力的な主人公アンジェラには、ゴダール自身の好みや女性観が反映されているのか…?と想像しながら観るのも楽しい。(女性 20代)
油断をすると置いていかれてしまうテンポの速い展開で、思わず「えっ?」と声に出してしまう様なストーリーはかなり斬新で面白かったです。
「子供が欲しい」と騒ぎ出すアンジェラ。彼女と付き合っていながらも「子作り」 は鬱陶しいと感じるエミール。そしてアンジェラを誘惑するアルフレッド。2人の男と1人の女の心模様を描いたストーリーですが、かなりハチャメチャで笑ってしまいました。
アンジェラを鬱陶しいと感じるエミールが通行人に「彼女と子作りしてくれ」と頼むシーンは衝撃的でした。(女性 30代)
全てのシーンを一時停止して、写真を撮りたくなる程でした。赤い花、赤い服、真っ白な壁。配色がお洒落な絵画のようでした。それと、音楽が急にブツリと切れたり、わざと途切れ途切れに流したりと音の使い方が不思議で斬新です。ミュージカルのようですが、実際のところは会話劇です。本のタイトルで言い合いをするなんて、可愛すぎます。編集をあえて雑にしている点にも、作り手の遊び心を感じます。批判を恐れず、やりたい事を存分にやりきった傑作なのでしょう。(女性 30代)
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