映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』の概要:驚異の歌声を持つロックシンガーが、声帯ドーピングをしているという事実を知ってしまったストリートミュージシャンのヒロイン。彼との出会いにより、自らの夢と向き合う覚悟を決める。ヒロインの成長を描いたハチャメチャなミュージックムービー。
映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』の作品情報
上映時間:106分
ジャンル:コメディ
監督:三木聡
キャスト:阿部サダヲ、吉岡里帆、千葉雄大、麻生久美子 etc
映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』の登場人物(キャスト)
- シン(阿部サダヲ)
- 驚異の歌声を持つロックシンガー。実は声帯にドーピングを行っている。幼い頃、母親に大声を出すなと厳命され、抑圧されて育った。魂の底から歌を唄うことを教えられ、シンガーになる。普段はとても穏やかで、思いやりのある人物。
- 明日葉ふうか(吉岡里帆)
- 歌声の音量が非常に小さいストリートミュージシャン。幼少期を韓国の釜山にて過ごし、歌手を目指して上京する。親戚のデビルおばさんとザッパおじさんの家に下宿中。非常に内気で天然。自信がなく大声を張り上げたことがない。
- 坂口(千葉雄大)
- シンのマネージャー。言うことを聞かないシンの扱いに困っている。元サラリーマンで、チケットやアルバムの売り上げを上げるために様々な画策を行う。脅しには弱いが、営業手腕には長けている。独立後は事務所を設立し、ふうかを売り出す。
- デビルおばさん(ふせえり)
- ふうかの親戚で、ふうかの面倒を見ている。ぱっつん前髪でロングヘアー。強気な性格で、窓ガラスを割るほどの声量を持つ。かつて夫のザッパと仮面のガラスというバンドを組んでいた。
- 社長(田中哲司)
- シンが所属する事務所の社長。かつてロックバンドを組んでおり、ザッパとデビルとも知り合いだった。禿げ頭なのに長髪で、常に革ジャンを着用。金の亡者で、アルバムやチケットの売り上げを上げるため、坂口と共に画策する。シンに声帯ドーピングをした張本人。
- ザッパおじさん(松尾スズキ)
- デビルおばさんの夫。13デビルアイスクリームというアイス屋さんを経営中。かつてデビと共に仮面のガラスというバンドを組んでいた。
映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』のあらすじ【起】
驚異の歌声を持つ世界的ロックシンガー、シンがステージにて誰もが魅了される歌声を披露した。ところが、ライブ中にシンが大量の吐血。ステージ上にて倒れてしまう。彼は声帯にドーピングを行い驚異の歌声を得ていたのだ。度重なる投薬にてすでに限界を迎えていた喉は、耐えきれずに崩壊したのである。
その頃、ストリートミュージシャンの明日葉ふうかは、バンドのメンバーから歌声があまりにも小さすぎるため、これ以上一緒に演奏できないと最後通牒を叩きつけられてしまう。とぼとぼと帰り道を歩いていた彼女は、工事現場へと差し掛かり工事途中の水道管崩壊の難に遭ってしまう。そこへ、向かい側からバイクに乗って来た人も転倒。ふうかは転倒した人物を目にし、更に驚いてしまう。なんと、バイクで転倒した人物はあの脅威の歌声を持つロックシンガー、シンだった。
シンを助けようとしたふうかだったが、彼は警察も救急車も呼んで欲しくないらしく、もみ合い状態となる。その上で彼は更なる吐血にて意識を失ってしまう。ふうかは仕方なく彼をバイクに乗せて自宅へと連れ帰るのだった。
ふうかは親戚のデビルおばさんとザッパおじさんの家に下宿している。内気で自己評価が低く、自信のない彼女はミュージシャンを目指す夢を諦めようとしていた。シンを近所の怪しい女医の元へ預けていたが、翌日に見舞いへ行くとすでに姿を消している。女医曰く、シンの喉はドーピングの影響で裂けかかっているらしい。
その日の夜も街道へ出て歌を唄っていたふうか。そこへ、消えたと思っていたシンが現れる。彼はふうかの小さすぎる歌声を不燃ごみだと言い捨てる。そして、音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!と叫ぶ。辛辣に詰り続けるシンに対し、怒りをあらわにしたふうか。彼女は大事なギターがトラックに轢かれてしまい一瞬、大声を上げるのであった。
映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』のあらすじ【承】
翌朝、ふうかの自宅へとシンが乗り込んで来る。壊れてしまったギターの代わりに新しいギターを持って来てくれた。デビルおばさんとザッパおじさんと仲良しになったシン。ふうかはこの日、オーディションへ向かう予定となっていたが、得意の内気で行かないと言い出す。シンは彼女を強引に連れ出し、オーディション会場へと向かった。
オーディション終了後、裏町を歩いていたシンとふうか。あまりにふうかが不甲斐ないので、憤懣やるかたないシン。怒りのあまり説教した彼はヒートアップした後、喉に不調を訴えてしまう。彼は声帯に更なるドーピングを行い、無理矢理に声を取り戻していたのだった。
女医によると、シンが使っている筋肉増強剤は旧ソ連時代に作られ、かなり強力なもので副作用が酷いらしい。
その頃、シンの事務所では社長とマネージャーの坂口が先日のライブでの失態に奔走していた。シンが吐血して倒れてしまったため、坂口は咄嗟に音響をいじりボーカルを入れてしまったのだ。そのせいで、シンに口パク疑惑が生じていた。彼らはシンが声帯ドーピングしていることを知っており、行方をくらましたシンを探している。そこへ、当のシンが事務所へと顔を出す。彼はこれまで一切、口パクをしたことがない。故に自分が唄えば問題ないと言うのであった。
ふうかとデビルおばさんがよろこびソバというソバに感動で咽び泣いていた頃、レコーディングを行っていたシンは再び吐血していた。彼の喉はドーピングで強化した声帯に引っ張られ裂けかかっている。医者によると次に吐血したら、歌を唄うどころか声そのものが出なくなってしまう恐れがあるとのことだった。
シンが使い物にならなくなる前に荒稼ぎしようと考えた社長と坂口。口パクの次はドーピング疑惑をネット上にリークした。すると、巷ではアルバムやチケットの売り上げが増大。加えて大金を出してでもチケットを購入しようとする者が続出した。
映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』のあらすじ【転】
自分の気持ちを改めて見つめ直したふうかはその後、少しずつ声を出せるようになっていた。前のバンドメンバーと遭遇して褒められた彼女は、ふとビルの上に掲げられた巨大看板へと目を止める。そこでようやく、シンがあの世界的ロックシンガー、シンであることに気付き腰を抜かしてしまうのだった。
口パクにドーピング疑惑、加えて声が出なくなるかもしれないことを知ったシンが、忽然と姿を消してしまう。おじさん、おばさんと3人でニュースを見て唖然としていたふうかだったが、そこへ噂のシンが現れる。どうやら彼は姿を隠したつもりはなかったらしい。シンはしばらく匿って欲しいと言うが、ふうかとの関係を以前から知っていた坂口によって大勢のマスコミがやって来てしまう。
早々に逃げ出したシンとふうか。病院に搬送されてから、彼はドーピングをしていないらしく、今の声が元々の声だと言う。ふうかのギターを鳴らし、シンは美しい高音でアヴェマリアを唄った。幼い頃、大きい声を出すなと母親に厳命されていた彼は、大きな声で歌うことに憧れを抱いていた。ロックバンドとの出会いによって、歌うことを教えてもらい魂で唄う術を知る。そうして、今に至ったのだ。
社長の追手から逃れ対馬から韓国へ。整形大国韓国にて、シンの喉を治すのが目的だった。ふうかは昔、自分が住んでいた釜山の爆竹工場へシンを案内する。技術者であった彼女の父親が技術指導に来ていた場所らしく、工場に住む人々はふうかをお嬢様と呼び、たいそう喜んだ。
その夜、ふうかと共に歌を唄ったシン。彼はふうかが自分の声になればいいと言う。穏やかな雰囲気で一緒に歌を唄っていた2人だったが、敷地内の電気が一斉に消える。社長の追手が辿り着いたようだ。敷地に詳しいふうかがシンを連れて逃走。花火や火薬を備蓄する倉庫へと身を潜めた。
映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』の結末・ラスト(ネタバレ)
裏道を通って逃げようと相談したが、そこへも追手がやって来る。暗闇に身を潜め追手をやり過ごしたところで、花火に火を点したシンが追手へと攻撃。更なる追手から逃れた2人は、リヤカーをサイドに取り付けたバイクの流星号を発見。ふうかが幼い頃、父がそのバイクで小学校へ送迎していたと言う。ハチャメチャなシンによって、溜まりに溜まったふうかはとうとう激怒。怒りに任せてバイクのエンジンをかけ、シンを乗せた。
騒動により出動した警察をやり過ごし、工場の住民たちの助力を得て走り続ける。警察が工場のゲートを封鎖したため、2人は協力してバイクを進ませたが、テンションが上がって叫んでしまったシンがまたも吐血。バイクはトップスピードを保ったままパトカーと激突した。
激突の衝撃で吹っ飛ばされたふうかはそのまま意識を失い、気が付いた時には朝だった。慌てて立ち上がった彼女は、シンが逮捕されている姿を目撃する。ふうかはパトカーへと走り寄って彼を助けようとしたが、辛うじて窓を開けたシンが叫ぼうとしたため、口づけをして声を封じた。車が走り出し気付いた警官によって引き離されてしまう2人。シンは大量に鮮血を吐き出しながら叫び、ふうかも大声で彼の名前を叫ぶのだった。
数年後、坂口が立ち上げた事務所にて、絶叫の歌姫として人気を博すようになったふうか。シンは火薬取り締まり法によって釜山の刑務所に収監されてしまい、日本へ戻ることができずにいた。そこで、坂口が対馬から唄えば彼に聞こえると軽口を言ったことで、ふうかは対馬でコンサートを開くことに。
一方、シンは叫んだせいで喉が崩壊してしまい逮捕以降、一言も言葉を発しない生活を送っていた。何をされても言葉を話さない彼に他の囚人は話させようと日々、何かと罠を仕掛けている。
そんなある日、運動の時間で外へ出た彼は、ふと音を聞きつけこれまでにない異常な行動をとった。とても楽しそうに運動場を走り回り、演台へと立って両手を広げる。
同じ頃、ふうかは大勢のファンの前に立ち、シンに言われた言葉を復唱して絶叫。歌声を届ける相手は海の向こうにいる。彼女は魂の底から声を張り上げ、釜山の刑務所に収監されているシンへと向けて歌を唄うのだった。
映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』の感想・評価・レビュー
声帯ドーピングにて驚異的な歌声を披露するのは俳優であり、ミュージシャンでもある阿部サダヲ。彼が歌う代表曲『人類滅亡の歓び』は作曲HYDE、作詞いしわたり淳治が手掛けており、非常にダークでかっこいい曲に仕上がっている。ライブでは気性の激しさを前面に押し出し普段はハチャメチャではあるが、非常に穏やかな性格のシン。阿部サダヲの良さがとてもよく引き出されている。
随所に笑いのネタが仕込まれ、楽しませつつもほろりとさせる三木聡監督の手腕が光る。脚本も監督自身が書いており、作中には何度も「やらない理由を探すんじゃねぇ」というセリフが繰り返される。現代社会において、送り出したいメッセージなのだろうと感じた。かっこよくて切なく、笑いもあってほろりとさせる良作。(MIHOシネマ編集部)
始めに注意すべきは意外にもこの作品は、血や吐血が苦手な方にはしんどい作品でした。基本的にはコメディー作品。前半謎に怖めに作ってあるのがよくわかりませんでしたが、結果オチもぶっ飛んでいたので、それを考えれば、まあ許容範囲内かと。しかし無駄に阿部サダヲに吐血させすぎでは?となりますね。最後の方は不快通り越して何故か笑っている自分がいました…。怖いです。メッセージ性もなんというか深すぎなくて、スッと入ってきます。コメディーですから。忘れてはならないのはこれはコメディーということだけです。(女性 20代)
三木聡監督の『イン・ザ・プール』がすごく好きなので期待して鑑賞しましたが、あまりにも内容がぶっとんでいるので驚いてしまいました。
阿部サダヲが演じるのは声帯にドーピングをしているロックシンガー。彼に出会ったストリートミュージシャンの女が成長するストーリーなのですが、阿部サダヲの演技が凄いです。『木更津キャッツアイ』や『舞妓ハーン』を彷彿とさせるハチャメチャな役柄はとても印象的でした。
ストーリーよりも雰囲気で楽しむ作品だと思います。(女性 30代)
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