この記事では、映画『おそいひと』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『おそいひと』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『おそいひと』の作品情報

上映時間:83分
ジャンル:サスペンス、ヒューマンドラマ
監督:柴田剛
キャスト:住田雅清、とりいまり、堀田直蔵、白井純子 etc
映画『おそいひと』の登場人物(キャスト)
- 住田雅清(住田雅清)
- 重い障害を患っており、1人ではほとんど何もできない障害者。ヘルパー達に介護されながら日々を送っていたが、若い女の子のヘルパーがやって来ると知り胸を躍らせる。やがて訪れた彼女にすぐに恋に落ちるが、とある言葉が切っ掛けで彼の中で様々な葛藤と狂気が見え始める。
- 敦子(とりいまり)
- 大学の卒論のために介護に携わろうと、住田の元へ訪れた女子大生。
- タケ(堀田直蔵)
- 坊主頭とガタイの良い体躯が特徴のバンドマン兼住田のヘルパー。気さくな性格で、何かと住田にも気を配ってくれる良い人柄。が、それが災いし敦子ともあっという間に親しくなり、結果として住田に恨まれることとなってしまう。
- 彩(白井純子)
- 敦子の大学の友人。
- 福永年久(福永年久)
- 住田と同じく、重度の障害を抱える寝たきりの男性。住田曰く「人生の先輩」であり何かと彼に相談に行くことが多い。
- ヘルパーのおばさん(有田アリコ)
- 住田の介護をしているヘルパー。敦子の叔母(若しくは伯母)。
映画『おそいひと』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『おそいひと』のあらすじ【起】
重度の脳性麻痺を持つ障害者の男性、住田。彼は言葉を話せないので、トーキングエイドを使って代わりに言葉を伝える。二足で歩くことさえも難しい時があるので、基本的な移動手段は電動の車椅子を用いる。ヘルパーのおばさん、それからバンドマンのタケに介護され生活を送る日々。ある日、若い女の介護士が来ると聞いて少し嬉しそうな住田。その子が来るまでは、町のガチャガチャマシーンで遊んだりかき氷を食べたり、タケと共に家で飲んだりしてその日を過ごす。それでも最近は調子が良かっただけで、時には全身が痛く薬がないと起き上がれない時もある。ヘルパーのおばさんに何とか助けられ動けるようになった住田だったが、またもや女の子はまだなのかと聞き込み呆れられる。
そして遂に住田の元にやって来た、まだ大学生の敦子(のぶこ)。敦子を早々に気に入り、早速明後日に行われるタケのライブに誘う住田。その日は用事があるので済んでからなら、と了承される。ライブ後、タケから敦子と共に打ち上げと称して焼肉へ向かうが、タケと敦子が円滑に会話できることに疎外感を覚える住田。「薬を飲むから帰る」と言いその場から去ってしまう。
住田の敦子への気持ちが恋へと変わるのも早かった。同じく障害を持つ仲間・福永にそれを伝えるとアホか、と言われ「来るものはちゃんと選べ、そうじゃないと潰れる。お前の周りは壁だらけだ」と助言する。住田は言う、彼女に色々教えたいと。しかし人に物を教える前に住田自身が潰れて寝たきりになってはどうしようもないと根も葉もないことを言い返されてしまう。
映画『おそいひと』のあらすじ【承】
ある日、タケに詩の朗読会に呼ばれた住田と敦子。裏ではタケが仲間から、最近住田の様子がおかしいと言われる。何をしでかすか分からない、と呟く仲間に何が言いたいと問い返すタケ。その日の朗読会では、朗読中の私語が気に食わなかった仲間が酔って暴れ出し、集まっていた観客に殴り掛かる。それをどこか遠い目で見つめる住田は、只黙ったままで何を思っているのだろうか。
段々と住田は、タケと敦子が親しくなっていくのを心のどこかで疎ましく思っていた。そんなある時、いつものように介護に訪ねてくる敦子。他愛のない会話を交わしている最中、不意に敦子が問いかける。「住田さんってさ、普通に生まれたかった?」――その何気ない言葉は、住田の心を静かに悪魔へと変えてしまう。彼は笑顔交じりに答える、「コロスゾ」冗談なのか本気なのか判断できないが、それに恐怖を覚えたのか敦子は友人の彩に頼み、卒論の目的もあってか住田を動画で撮影する。しかし、すぐに見つけられ慌てて引き返す彩。
住田の様子はそれ以来どんどんとおかしくなってゆく。タケ達との打ち上げの最中もぼんやりとしたままで心ここにあらずといった具合の住田。先の福永の言葉を借りるならば、住田の周りは「壁だらけ」だ。1人ではほとんど何もできず、何かをしようとすれば潰れそうになってしまうのだから。住田はいよいよ、己の恋慕の情や溜め込んでいた性欲に狂い、周囲の障害を排除しようとし始めるのだった。
その日の晩もタケのライブへ呼ばれ、会場へとタケと共に向かう住田。何故か住田は全身を防護服のようなスタイルで身を包み、ゴーグルを掛けて電動車椅子に乗り会場へと上がり込む。普段のようにライブを鑑賞するのかと思いきや、住田は突如車椅子のまま暴れ出し、次々と電気系統を壊し始めた。灯りが故障し、その日のライブは中止せざるを得なくなってしまう。その後、住田の家で夕飯の面倒を見るタケだったが怒ったりはせずに「まぁ、盛り上がりましたけどね」と、どこか皮肉っぽく呟く。そんな彼の言葉を聞いているのかいないのか、住田の視線は自分が服用している薬の方へと向いていた。タケがトイレに行っている間、住田は足とテーブルを使い錠剤を取り出す。戻って来るなりタケは、住田のために風呂を沸かしに向かう。トーキングエイドの無機質な人工音声が語り始める、「オソイマスヨ、オソイマスヨ」――何と住田は、タケのビールの中へ先程の錠剤を混ぜてしまう。勿論そんなことは知らずに、ビールを飲み干すタケ。洗い物を済ませてからお風呂を奨めるタケに、住田は自分は後で入ると伝える。薬が回り始めたのかどこかしんどそうにしつつも風呂へと入るタケ。やがて静かになった風呂場を覗きに行くと、そこには浴槽に沈んだまま息絶えたタケの姿があった。彼が死んでいるのを確かめると、住田はその蓋を閉じてしまうのだった……。
映画『おそいひと』のあらすじ【転】
ある日、住田が公園のベンチで座っている所へ敦子がビールを持ってやって来る。敦子は住田の横に腰かけると、「人って簡単に死ぬんですね」と呟く。すると住田は、砂地に棒で「ちがう」と書く。何が違うのか、と問う敦子に何かを言いたげな目で見つめる住田。しかし彼の訴えたいことが分からず、敦子は只見つめ返すことしかできない。住田は会話を中断させると、電動車椅子に乗ってその場を去って行ってしまう。
またある晩の日、敦子は友人の彩含む仲間達と住田を盗撮していた動画を見ながら彼についての談義を交わしていた。その時、敦子の携帯に住田から着信が入る。上手く言葉で伝えられない彼に、敦子はファックスの番号を教える。電話が切れるや否や、ほぼ同時に送られてくるファックス。そこに書かれていたのは「一発ヤラせて下さい」という住田からのメッセージであった。いつか言われたコロスゾ、の言葉が脳裏をよぎり戦慄する敦子。
それから敦子は仲間にも黙って、突然沖縄へと旅立つ。それ以来、住田の元には敦子に代わり彼女の仲間達がヘルパーとして訪れるようになる。しかし敦子とは違い、どこか住田のことを見下し馬鹿にしているようにも見える彼女達。姿を消してしまった敦子とは何もかもが全く違う――、払拭されない思いを抱えたまま住田は福永の元へと訪れる。いつものように何か相談ごとでもしていたのか、話を終えて立ち上がる住田。「気を付けて帰れよ」と言葉を投げる福永に、住田は突如振り返り持っていたナイフを福永の首元へ突き付ける。福永は怯えることもなく「殺すんなら殺せや」と言うだけで、結局住田はそのナイフを床へと投げ捨てるのだった。
住田は突如、筋肉トレーニングを始めたかと思うと片手に包丁を持ちそれを振るうような真似をし始める。そしていつかのあの防護服に身を固め、電動車椅子で外の世界へ飛び出す住田。何をするのかと思えば、通りすがりの人を刺殺してしまう。翌朝、住田の起こした事件は通り魔による殺人としてニュースで報道されていた。
映画『おそいひと』の結末・ラスト(ネタバレ)
それからも、敦子の友人らは住田を動画に収めたり写真に映したりと彼を追いかける。住田はその日も出会った男性を殺し、返り血を自宅の浴槽で洗い流す。一方で、敦子の友人・彩は住田の自宅を撮影し続ける。それから彼の幼少期の写真を見つけ、「46年9月30日誕生日」と書かれているのを知る。彼の誕生日を知った彩は、その日がもうすぐであることからサプライズパーティーを仲間達に提案する。
一方、身も心も狂気の底へと沈んでいた住田。飛空帽と防護服のスタイルで電動車椅子に乗り、たまたま出会った人を追いかけ、そして笑いながら殺す。何度も何度もナイフを突き刺して。
その頃、サプライズパーティーの準備をせっせとしていた仲間達。楽し気に飾り付けケーキを作り、料理などを持ち寄る。クラッカーを準備し、住田の帰りを待つ一同。玄関に彼と思しき影が見えると、それぞれが慌てて持ち場へついた。扉を開いた住田を歓迎する彩達だったが、住田が返り血まみれであることに唖然とし言葉を失う――同時に家へと駆けこんでくる警察達。福永にナイフを突きつけたが結局殺せなかったあの直後、福永が通報していたのだ。取り押さえられ、手錠を掛けられながらも住田はトーキングエイドに言葉を打ち込み続ける。彼が何と伝えたかったのかは分からない。しかし、住田の家から遠ざかって行くカメラの中で車椅子を押されている福永の姿が見える。そのまま彼は振り返ることなく遠ざかっていき、画面も暗転する――スタッフロールの合間、それまで全編通してモノクロだった映像がカラーとなり、住田の家を映し出す。そして、そこには誰もいなかった。
映画『おそいひと』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
どんな感想を述べても誤解に繋がってしまいそうで、難しい作品だ。恋に落ちた障害者が殺人を犯す、という内容は外国の映画で『フリークス』という作品があるがああいった物とも趣が違う。こちらは障害者の抱える性欲や狂気も余すことなく、生々しく描いている。本作の音楽を担当した『world’s end girlfriend』のノイズや悲鳴の混ざったBGMがまた本編のモノクロ映像にマッチングしていて非常に冷たく突き刺してくるような感じが酷く辛い。差別とは果たして一体、何なのだろう。(MIHOシネマ編集部)
この作品を見てどんなことを思うのが「正解」なのか分からないほど、人間の汚さや愚かさ、脆さが全面に押し出されている作品でした。
主人公は重度の障害者。自分ではほとんど「何も出来ない」。出来ない事をサポートする人たちと、サポートされることに感謝しつつも「自分」を抑えきれない主人公。この人間関係が複雑で、サポートする側は何を思っているのか?される側は何を感じているのか?自分がやっている事は本当に「正しい」のか?色々なことを考えさせられました。
かなり過激な内容ではありますが、私の身近にも簡単に「有り得る」ストーリーでゾッとしました。(女性 30代)
この映画を観終えた後、しばらく動けなかった。障害を持つ主人公・弥生が、自らの手で復讐を遂げるという展開は、ただの衝撃では済まされない。社会から見放された“おそいひと”が、理不尽な暴力に立ち向かう姿は痛々しくも力強い。暴力描写は確かに過激だが、それ以上に「人間の尊厳」と「社会の歪み」を突きつけてくる。観る者を選ぶ作品だが、決して目を逸らしてはいけない現実を描いた傑作だと思う。(20代 男性)
重度の障害を持つ主人公が、社会の中で生きる苦しみと怒りを爆発させていく――その描写に息を呑んだ。福祉の名のもとに存在する“偽善”を容赦なく暴き、暴力でしか抵抗できない現実を突きつけてくる。ラストで彼が血まみれになりながら笑う場面は、救いではなく、絶望と自由の入り混じった瞬間だった。観終わったあと、しばらく静寂が頭を支配する。圧倒的に痛く、しかし真実に満ちた作品。(30代 女性)
映画『おそいひと』は、弱者の視点で社会を撃つ映画だ。主人公・弥生は“おそい”だけで社会から排除されていく。その積み重ねが彼の怒りとなり、最終的に暴発する。彼の行動を正義とも悪とも断じられない。むしろ、我々が作った社会の歪みが生み出した“結果”なのだと思う。暴力の連鎖を見せつけられた後に残るのは、後味の悪さではなく、確かな問いかけだ。観る勇気を試される一本。(40代 男性)
主演・住田雅清の存在感が圧倒的だった。セリフが少ない代わりに、彼の身体の動きと表情がすべてを語っている。介護施設での虐待や、障害者を“弱者”として扱う社会の無関心――それらを真正面から描く勇気に心を打たれた。終盤の復讐シーンは衝撃的だが、そこに至るまでの静かな積み重ねがあるからこそ、単なる暴力ではなく“人間の叫び”として響く。観てよかったと心から思う。(20代 女性)
「おそい」という言葉が、これほど重く響いた映画はない。彼の“おそさ”は社会にとっての“効率の悪さ”であり、“排除される理由”になっている。そんな理不尽な現実に対して、主人公は暴力という最も原始的な方法で抵抗する。恐ろしくも、その怒りの根には人間らしさが確かにある。観ていて心が苦しいが、それこそが本作の真価だ。これは暴力の映画ではなく、“生きる痛み”の映画だ。(30代 男性)
あまりに静かで、あまりに激しい映画。障害者を主人公に据えること自体が挑戦的だが、脚本も演出も一切の遠慮がない。彼を“かわいそう”と見る視点を壊し、むしろ彼の暴力を通じて観客に問いを突きつける。最後に弥生が流す涙は、悲しみでも喜びでもない。社会から解き放たれた“孤独の自由”なのだろう。正直、何度も観たい映画ではないが、人生で一度は観るべき一本だと思う。(40代 女性)
福祉社会の裏側をここまでリアルに描いた作品は珍しい。施設の職員の無関心、社会の差別構造、そしてそれを見て見ぬふりをする人々――すべてが現実の延長線上にある。主人公が暴走していく過程は痛ましいが、そこに「彼を責められるか?」という問いがある。彼の復讐は、私たちへの報復でもあるのかもしれない。暴力よりも、その背景の“沈黙”が怖い映画だった。(50代 男性)
序盤の淡々とした日常描写があるからこそ、後半の暴力が際立つ。施設の虐待や差別を受け続け、ついに人を殺める――その瞬間は恐怖でありながらも、奇妙な“カタルシス”がある。監督・柴田剛の演出は冷たくも詩的で、血の匂いの中に人間の尊厳を見出そうとしている。弥生の生き方を否定できないのは、誰もが心のどこかで彼の怒りに共鳴しているからだと思う。(20代 男性)
映画『おそいひと』を見た人におすすめの映画5選
独裁者になった男(原題:The Man Who Became a Dictator)
この映画を一言で表すと?
社会に押しつぶされた“弱者”が暴力でしか抵抗できなかった、悲しき現代寓話。
どんな話?
極貧の生活を送る中年男が、社会の不条理や差別に追い詰められ、次第に過激な思想に染まっていく。彼は権力に反抗するどころか、やがて自らが小さな“支配者”へと変貌していく――。孤独と怒りが爆発する人間ドラマ。
ここがおすすめ!
『おそいひと』と同様、社会の底辺で生きる人間の苦しみを容赦なく描きます。主人公の暴力的な行動は衝撃的ですが、その根底にある「人間としての尊厳への渇望」に心を掴まれます。観る人に不快さと同時に、深い共感を与える作品です。
楢山節考(1983年版)
この映画を一言で表すと?
老いと死を“自然の掟”として受け入れる人々を描いた、日本映画史に残る傑作。
どんな話?
貧しい山村で「70歳になったら山へ行く」という掟が存在する。生きることと死ぬことを等しく見つめながら、老人・おりんは静かにその日を迎える準備を始める――。人間の生と死を圧倒的な自然描写で描いた名作。
ここがおすすめ!
『おそいひと』の「生きる意味」を問うテーマに通じます。暴力的ではないが、社会の理不尽と生の尊厳を冷静に見つめる視点が共通。深い静寂と映像美の中に、人間の“生”の力強さと悲しさが宿ります。
ヒミズ
この映画を一言で表すと?
絶望の中でも必死に「普通に生きたい」と願う少年の物語。
どんな話?
震災直後の日本。暴力と無関心の中で育った少年が、社会の歪みと向き合いながらも、自分の生きる意味を見つけようとする。絶望の中にも微かな希望が射す、園子温監督の代表作。
ここがおすすめ!
『おそいひと』が突きつけた“社会に見放された人間の叫び”を、若者の視点で描く。破壊的なまでにエネルギッシュな演出と、主演の染谷将太の鬼気迫る演技が圧巻。痛みと希望の同居が強烈な印象を残します。
誰も知らない
この映画を一言で表すと?
静かで残酷な「無関心の社会」に生きる子どもたちの物語。
どんな話?
母親に捨てられた4人の子どもたちが、助けを求めることもできずに生きていく。貧困、孤立、そして社会の無視。小さな手が必死に“生きる”ことを選ぶ姿に、涙が止まらない。是枝裕和監督による実話ベースの感動作。
ここがおすすめ!
『おそいひと』と同じく、“見えない存在”として社会に置き去りにされた人々を描いています。感情を煽る音楽も説明もなく、淡々と現実を映し出す演出が心に刺さる。観終わったあと、深い無力感と祈りのような感情が残ります。
下妻物語
この映画を一言で表すと?
孤独な少女たちが、自分の“生きる場所”を見つけるまでの友情物語。
どんな話?
ロリータ趣味の少女とヤンキー少女という、正反対の二人が偶然出会い、奇妙な友情を育む。社会に馴染めない二人が、お互いを通じて“生きる力”を取り戻していく。笑いと涙が絶妙に混ざる青春ドラマ。
ここがおすすめ!
『おそいひと』が描いた“孤独と社会の断絶”を、まったく違うトーンで包み込んだ一作。極端なキャラクター設定の裏に、社会に居場所を持てない人間たちへの優しい視線があります。絶望を希望に変える力を感じられる映画です。






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