この記事では、映画『お父さんと伊藤さん』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『お父さんと伊藤さん』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『お父さんと伊藤さん』の作品情報

上映時間:119分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:タナダユキ
キャスト:上野樹里、リリー・フランキー、長谷川朝晴、安藤聖 etc
映画『お父さんと伊藤さん』の登場人物(キャスト)
- 山中彩(上野樹里)
- 30代半ばで、本屋でバイトをしながら20歳年上の伊藤さんと同棲生活を続けている。兄の所に住んでいるはずの実の父親と突然、一緒に住むことになる。
- 伊藤さん(リリー・フランキー)
- 彩の彼氏。バツイチだが、前妻との間に子どもはいない。今は、小学校の給食センターで仕事をしている。かつては探偵のような仕事をしていたらしいが、謎が多い。
- 山中潔(長谷川朝晴)
- 彩の兄。娘の中学受験のため、一時的に父を預かって欲しいと彩に持ちかける。元々は父の意に反して、同居を決めた経緯がある。
- 山中理々子(安藤聖)
- 潔の妻。義父である、お父さんと暮らすことと、娘の中学受験が重なり、精神的にかなりダメージを受けている。父の姿を見ただけで嘔吐してしまう。
- お父さん(藤竜也)
- 彩の父。かつては教師をしており、頑固なところがある。妻を亡くした後、息子夫婦のところに同居していたが、居心地が良いとは思っていなかった。
映画『お父さんと伊藤さん』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『お父さんと伊藤さん』のあらすじ【起】
彩は、伊藤さんと一緒に暮らしている。ある日彩は、兄の潔から娘の中学受験のため一時的に父を預かってくれないかと頼まれる。彩は断るが、家に帰ると父が来ているのだった。父は、兄と会っただろうと言い、今日からここに住むと宣言するのだった。
緊張した面持ちで父親の前に座る彩と伊藤さん。父から歳を聞かれ、54と答える伊藤さん。彩と20も歳が離れているのだった。翌日、彩は朝から父にバイト生活のことを注意されるが、そのまま本屋のバイトに出かける。バイトが終わり、家に帰ってくると、庭で家庭菜園の手入れをしている伊藤さんがいて、父がいないことを告げられる。兄夫婦の家に帰ったかと思いきや、父の荷物が大量に届いているのだった。彩は、父が持って来た小箱が気になり開けようとするが、伊藤さんに止められる。
夜、帰ってきた父と三人で夕食をとる。父は兄の家の中学受験を批判する。父は、夕飯というのはみんなで一緒に食べるものだというのだった。
翌朝、朝ごはんを食べる彩に伊藤さんのことをあれこれ聞く父。伊藤さんには結婚歴があり、子供がいるかどうかはわからないという彩を心配する父。しかし、彩は今の伊藤さんは伊藤さんなのだから関係ないと言う。その日の夕方、伊藤さんはいつものように家庭菜園の手入れをしながら、子供はいないよとさりげなく彩に伝えるのだった。

映画『お父さんと伊藤さん』のあらすじ【承】
叔母の小枝子が兄の妻、理々子を連れて、彩のバイト先にやってくる。バイトの昼休みに公園で理々子と話す彩。偶然、そこに父が通りすがり、その姿を見た理々子は、その場で嘔吐してしまうのだった。理々子は精神的にかなり追い込まれているのだった。
彩は父が何をしているのか尾行してみることにする。彩は、父が何か性犯罪のようなことをしているのだと疑っていた。それを笑い飛ばす伊藤さん。翌日、彩は尾行を開始する。街を歩く父の後を追いかける。父は、スーパーで弁当を買い公園で食べ、図書館で時間を過ごし、下校時間のチャイムから日が暮れるまで学校の校門の前でじっとしているのだった。
その姿を見た彩は、父を映画、蕎麦屋、ボウリングと連れて行くことにする。日帰り温泉にも行こうとするが、父は帰ると言う。帰り道、伊藤さんが買いたいものがあると言うのでホームセンターに寄る。父と伊藤さんはネジのことで盛り上がる。そして、父はホームセンターで枇杷の木を一本買って帰るのだった。今日は楽しかったと呟く父。家に帰ると父と伊藤さんは、庭で楽しそうに話しているのだった。
映画『お父さんと伊藤さん』のあらすじ【転】
ある日、彩がバイトを終え携帯を開くと、着信歴がいっぱいになっている。警察からの呼び出しもあり、向かう彩。心配をしたが、父はバスで暴漢を取り押さえていたのだった。小枝子さんも駆けつけ、父を見た彼女は、またやったのかと怒鳴るのだった。彩には知らされていなかったのだが、実は父には万引きの癖があるのだった。そして、家に帰ると書き置きがあり、父の姿がいなくなっていた。カバンもあの小箱もなくなっているのだった。
伊藤さんは、父を探しにいかない彩を咎める。父がいなくなり、やっと平穏な生活が戻ったのに変だと言う彩。翌日、友達と会うから遅くなると、伊藤さんからメールがくる。夜遅く帰ってきた伊藤さんは、彩にメモを一枚渡す。そこには、その日の正午に父の携帯があった場所の住所が書いてあるのだった。伊藤さんは、昔のツテで違法行為ではあるが調べてもらったのだった。
2人は、兄も連れて父を探しにいくことにする。伊藤さんが調べた住所は、かつての実家の近くで、そこに向かう3人。3人が実家に車を乗り付けると、父がタクシーで帰ってくるのだった。父は、東京には戻らないと言う。家族に気をつかい、いやいや一緒に住みたくはないと言う。父は、伊藤さんにここで一緒に住まないかと提案するが、あっさり断る伊藤さん。伊藤さんは、寝袋などを車からおろし、今夜は3人でよく話しなさい、明日の朝迎えにくると、出ていくのだった。
映画『お父さんと伊藤さん』の結末・ラスト(ネタバレ)
翌日、昼になっても伊藤さんは迎えにこない。電話も繋がらない。台風が近づいており雨風が強くなる中、父は散歩に出ていく。父の持っていた小箱は、兄も何が入っているか知らなかった。2人は開けようとするが、やはりやめようと兄に止められるのだった。
伊藤さんが、散歩に出た父を連れて帰ってくる。父は、伊藤さんの説得で今日は何とか東京に帰ると言う。帰る準備をしているとき、大きな雷鳴が轟き、庭の柿の木に雷が落ち、火があがる。そして、その火が家に燃え移ってしまうのだった。父は、例の小箱を探しに燃える家に入っていく。箱を見つけ持ち出そうとしたとき、箱の中身が散らばる。中には父が万引きしたスプーンがいくつも入っていたのだった。
家は焼け落ち、焼け跡には燃えて黒焦げたスプーンがあった。彩の家に戻った父は、ふさぎこんでいた。伊藤さんは、3人で住める所に引っ越そうかと彩に提案する。
火事のことを聞きつけ、かつての生徒が父を訪ねてくる。生徒たちに会っている時の父は、いつもの父に戻っていた。その日の夜、父の食欲は旺盛だった。
数日後、外出から帰って来た父は、介護付老人ホームに入ることを決めていた。翌日、家を出て行く父。父はホームセンターで買った枇杷の木のことと、彩のことを伊藤さんに頼み、出て行くのだった。伊藤さんは、「俺は逃げないからさ」と言い、彩の背中を押す。彩は、父を追いかけ、走り出すのだった。
映画『お父さんと伊藤さん』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
年の離れた男女と父親のぶつかり合いが描かれているのかと思いきや、親子の物語で衝撃を受けた。これからそんなに遠く離れていない未来、山中彩の立場は自分にとってそんなに他人事ではなくなると思う。
お父さんの気持ちもよく分かる。きっと家族に邪険にされていることが、さりげない言動から伝わってくるのだろう。ずっと一緒に居ると鬱陶しくて、でもいなくなると寂しくて、そんな普通の家族の姿が描かれていた。少し俯瞰した場所から家族の間を取り持つ、伊藤さんの落ち着いた態度が良い味を出していた。(女性 30代)
彼氏と同棲中の愛の巣に、いきなり「お父さん」が同居する事になったら…。しかも、彼氏の「伊藤さん」は20歳も年上。有り得ない展開ですが、クスッと笑ってしまうストーリーはとても温かく、面白かったです。
家族の揉め事に他人が口を挟むのは、野暮な事ですが「お節介」も心地良いと思えるほど優しい世界観で、見終わった後スッキリした気持ちになりました。
難しいことを考えずに、のんびり見たい作品です。(女性 30代)
上野樹里とリリー・フランキーの穏やかな同棲生活に、藤竜也演じる“お父さん”が転がり込んでくる。最初は笑いを誘う同居騒動だが、次第に「家族とは何か」「愛するとは何か」というテーマが浮かび上がる。特に、父が去る終盤のシーンで、娘がようやく父の孤独を理解する瞬間には胸が締め付けられた。静かで深い余韻が残る人間ドラマ。(30代 女性)
最初はコミカルな同居劇かと思いきや、終盤にかけて静かな感動が押し寄せた。お父さんの不器用な愛情と、娘・彩と伊藤さんのぎこちない関係性がリアル。特に、最後にお父さんが何も言わずに去る場面は涙なしでは見られなかった。リリー・フランキーの自然体の演技が素晴らしい。(40代 男性)
一見地味な映画だが、セリフの一つ一つに生活の重みと優しさがある。お父さんが孫のように伊藤さんに干渉し、娘がその間で揺れる姿がなんとも人間臭い。家族の形は一つじゃないというメッセージが、ラストで静かに伝わる。余韻のある終わり方が心地よい。(20代 女性)
藤竜也の存在感が圧倒的だった。頑固で、うるさくて、でも憎めない“昭和の父親像”が見事に再現されている。彩と伊藤さんのゆるい生活の中に入り込み、やがて彼らの絆を深めていく構成が巧み。ラストでお父さんが一人電車に乗るシーンには、切なさと温かさが同居していた。(50代 男性)
恋人との穏やかな日常に、父親という“他者”が加わることで見えてくる本音と成長。お父さんの言葉が時に鬱陶しく、時に痛いほど正しい。そのリアルさが観る者の心を突く。ラストの去り際の父の後ろ姿には、親子の絆の深さが滲んでいた。静かな傑作。(30代 女性)
上野樹里の自然な演技に引き込まれた。彩の不器用な優しさや、伊藤さんとのゆるい距離感がとてもリアル。お父さんが二人の暮らしをかき乱すようで、結果的に彼らの関係を強くしていくのが面白い。特にラストの「いってらっしゃい」という言葉が心に残った。(20代 男性)
お父さんが娘の部屋に転がり込むだけの話なのに、ここまで感情を動かされるとは思わなかった。三人の不器用な共同生活が、観る者自身の家族関係を思い出させる。特に、父が娘の成長を見届けて静かに去る描写は涙を誘う。優しいけど、胸に刺さる映画。(40代 女性)
伊藤さんの“何も変わらない自由人”っぷりが、最初は頼りなく見えるけど、最後には一番誠実に見える。彩との関係が父親の介入でどう変化するのか、静かな会話の積み重ねがリアル。ラストの余白が多いのも、この映画の魅力。日常の中にある愛を丁寧に描いている。(30代 男性)
映画『お父さんと伊藤さん』を見た人におすすめの映画5選
東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜(2007)
この映画を一言で表すと?
親と子の愛のかたちを静かに描いた、涙と優しさに満ちた家族ドラマ。
どんな話?
自由奔放に生きる息子が、母親の病気をきっかけに家族の絆を見つめ直していく物語。派手な演出はないが、日常の中にある親子の愛情と時間の尊さを丁寧に描く。親を想う気持ちが、誰の心にも響く温かな作品。
ここがおすすめ!
オダギリジョーと樹木希林の演技が胸を打つ。母と子の関係が繊細かつリアルに表現されており、『お父さんと伊藤さん』で感じた家族の距離感やぬくもりをより深く味わえる。静かに泣ける日本映画の傑作。
かもめ食堂(2006)
この映画を一言で表すと?
“何も起きないのに満たされる”、人生を優しく包み込むヒューマンドラマ。
どんな話?
フィンランドで小さな食堂を営む日本人女性と、そこに集まる人々との交流を描いた物語。特別な事件は起きないが、異国の地で見つける「つながり」や「自分らしさ」が心を癒してくれる。
ここがおすすめ!
ゆったりとした空気感と温かな映像が魅力。人と人が寄り添う瞬間の美しさが際立ち、『お父さんと伊藤さん』の穏やかな空気感や日常の尊さに共鳴する。観終わった後、静かな幸福感に包まれる。
舟を編む(2013)
この映画を一言で表すと?
地味だけど深く染みる、“言葉”と“人生”のドラマ。
どんな話?
辞書作りに情熱を注ぐ編集者たちの姿を通して、言葉の奥にある人の想いを描く。恋愛や友情、人生の選択などが静かに交差し、仕事を通じて人間が成長していく過程が美しい。
ここがおすすめ!
松田龍平と宮崎あおいの落ち着いた演技が光る。派手さはないが、心に残る余韻が心地よい。人間関係の微妙な距離感や、誠実に生きる姿が『お父さんと伊藤さん』の静かな人間模様と響き合う。
海よりもまだ深く(2016)
この映画を一言で表すと?
“理想の自分になれなかった”大人たちの切ない現実を描く家族ドラマ。
どんな話?
元小説家で今は探偵をしている男が、離婚した妻と息子、そして母親との関係を通して自分の人生を見つめ直す。過去の栄光や夢を手放せないまま、現実に向き合う姿が痛々しくも愛おしい。
ここがおすすめ!
是枝裕和監督らしいリアリズムと温もりが心に響く。阿部寛、樹木希林らの演技が秀逸で、『お父さんと伊藤さん』同様に“家族の形”と“再生”を静かに描く。人生の機微を味わいたい人におすすめ。
そして父になる(2013)
この映画を一言で表すと?
「血」と「愛情」、どちらが本当の家族を作るのかを問う感動作。
どんな話?
出生時に取り違えられた子どもをめぐり、二組の家族が“親であること”を問われる物語。正しさよりも、感情の揺れを丁寧に描き、観る者の心を揺さぶる。
ここがおすすめ!
福山雅治の父親像が印象的。価値観の異なる家族同士の葛藤を通じて、“家族とは何か”を深く掘り下げていく。『お父さんと伊藤さん』が好きな人なら、この作品の静かな人間ドラマにもきっと共感できる。






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