映画『さようなら』の概要:俳優とアンドロイドが共演した、平田オリザの舞台作品の映画化。日本中の原発が爆発炎上し、国土のほとんどが放射能汚染されてしまう。アンドロイドのレオナと暮らす難民のターニャは避難できずにいた。
映画『さようなら』の作品情報
上映時間:112分
ジャンル:SF、ヒューマンドラマ
監督:深田晃司
キャスト:ブライアリー・ロング、新井浩文、村田牧子、村上虹郎 etc
映画『さようなら』の登場人物(キャスト)
- ターニャ(ブライアリー・ロング)
- 両親とともに南アフリカから逃げて来た難民。父の買ってくれたアンドロイドのレオナと暮らしている。持病があり、家に引きこもりがちである。
- サトシ(新井浩文)
- ターニャの恋人。原発が近くあった静岡に両親と住んでいる。ターニャと結婚の口約束をするが、両親とともに国外に非難することになる。
- レオナ(ジェミノイドF)
- ターニャの父が買い与えたアンドロイド。足が壊れてしまい、電動車椅子に乗って移動する。演じるのは本物のアンドロイドである。
- 佐野さん(村田牧子)
- ターニャの友人。引きこもりがちなターニャを誘って、外に連れ出してくれる。ネグレクトで、自分の子どもを殺してしまった過去を持つ。
映画『さようなら』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『さようなら』のあらすじ【起】
日本の13カ所の原子力発電所が爆発炎上する。テレビでは、ラストディジャパンのテロップが出て、避難のため国を出ていく人たちをレポートしていた。
ターニャは、アンドロイドのレオナと暮らしている。レオナは、電動車いすに乗って買い物に出かける。買い物を済ませて帰ってきたレオナはターニャに、塩の値段が上がったことや、小林さんがフィリピンに避難することなどの町の情報を話す。いつも買い出しに行っていた店は避難で閉店していまい、レオナは隣町まで行っていた。レオナの足は壊れていて、人が少なくなってしまった日本では直す方法がなかった。
ある日、レオナは玄関先で太陽を浴びて充電をしていた。そこへ知人の佐野さんが訪ねてくる。一緒に、番号を確認しに行こうと誘われ、自転車で出かけるターニャと佐野さん。抽選で避難できる人が決まるのだが、二人とも番号はなかった。
庭先でレオナは谷川俊太郎の「さようなら」という詩をつぶやいている。それを聞いているターニャ。レオナは今日の風は放射能を運んでくるから家に入った方がいいとターニャに言うのだった。
バイクで、サトシが訪ねて来る。彼は静岡の実家に戻っていた。原発の近くだった静岡は誰もいなくなっていて、誰もいない街をサトシは自転車で走ったのだった。話し終わると二人はキスし、そして愛し合うのだった。
映画『さようなら』のあらすじ【承】
二人は散歩をする。途中、ターニャは疲れてサトシにおぶってもらう。そして、サトシに結婚したいと話し、サトシもそうしようと言うのだった。
薬を飲み横になっているターニャの所に、佐野さんが訪ねてくる。佐野さんは友人から車をかりてきていて、その車で出かける二人。途中でカップルを乗せる。カップルは市役所に婚姻届を出すために街へ行くという。大きな災害の後は結婚が増えるのだが、彼らは番号を連番にするために婚姻届を出すのだった。二人を降ろし、本来の目的地へと向かう。道中、佐野さんは子供をネグレクトで殺してしまったことを告白する。だから番号はこないかもしれないと話す。今日は、佐野さんのもう一人の子どもの避難が決まり、その子に会いに行くのだという。一人では逃げ出してしまいそうでターニャについて来てもらったのだった。
息子に会う佐野さん。息子はマスクをしたまま佐野さんと話していた。そのマスクをとってもらい頬に触れる佐野さん。しかし父親が近づいて、息子にマスクをかけ、連れて帰るのだった。
映画『さようなら』のあらすじ【転】
ターニャは原発が燃えている時に、子どもの頃、まだ南アフリカに暮らしている時に、隣の牛小屋が燃えていた時のことを思い出したとサトシに話す。そして、サトシに言ってなかったことを告白する。南アフリカではアパルトヘイトの後、多くの白人が殺されていた。ターニャの家族は、それから逃げるように日本に来たのだった。つまりターニャは難民なのだった。それを聞いたサトシは突然帰ると言い、出ていくのだった。
ターニャはなぜ、自分は難民になってしまったのか解らない。自分は被害者なのか、加害者なのか解らないのだった。かつて家族と一緒に撮った映像を見るターニャ。そこには父、母が写っている。映像に自分の手の影を落とすターニャ。突然映像は途切れる。バッテリーが切れたようだった。残りの電力は少なくなっていた。
中止となった盆踊りが避難所内で開催される。佐野さんと一緒に観にいくターニャ。突然、外から激しいロックが聞こえてくる。人々は外に出て音楽に合わせて体を動かすが、電気が切れる。ドラムの音だけが響く中、若者たちは、屋外の盆踊り会場にあった櫓に火を放つ。佐野さんは、その火を呆然と見ていた。そして、叫びながら火に飛び込み、死んでしまうのだった。
自宅に帰り、レオナに佐野さんのことを報告するターニャ。レオナは、ターニャがいない間にサトシが来て、家族と避難が決まり、「またどこかで会おう」と伝言を残し帰っていったことを伝える。ターニャはどこかってどこ?と泣き崩れるのだった。
映画『さようなら』の結末・ラスト(ネタバレ)
ターニャはレオナの車椅子を押して、父とよく訪れていた竹林に向かう。竹が数百年に一度、一斉に花をつけることを父から聞いたことを話す。父はそれを見たことがあった。だからターニャは毎日竹林を見にきているのだった。
レオナのひざまくらで横になるターニャ。若山牧水に似た詩を思い出す。途中まで諳んじてみるが、残りはレオナが話す。ドイツのカールブッセの詩だった。日本人は寂しさのない国を探し、ドイツ人は幸せのある国を探すのですねと、レオナは話す。ターニャは牧水の方が好きだった。
ターニャの体調は悪化しているようだった。横になりながら、あなたは、寂しさを亡くしてくれるの?幸せをくれるの?どっちと、レオナに問う。レオナは、アンドロイドにはわからないと答える。寂しさがなくなれば幸せではないのかとも話すのだった。
ターニャは、眠ると言い目を閉じる。そして、ごめんねとつぶやく。レオナの体を早く治してあげればよかったと話す。レオナに眠るまで詩を読んでほしいというターニャ。レオナは詩を読む。ターニャは眠り、そして二度と起きてはこないのだった。
朽ちていくターニャの肉体をレオナはずっと見続けるのだった。白骨になったターニャの頬にレオナはそっと触れる。そして、レオナは動き始める。制御の聞かなくなった車椅子は坂を下り、レオナは投げ出される。這いずりながら林の中を進み、竹林にたどり着く。そこには赤い花が咲いているのだった。
映画『さようなら』の感想・評価・レビュー
見ているのが苦しくなるほど暗く、重い作品でした。日本の全土が放射能で汚染され、国外退避をせざるを得なくなった日本国民。避難できる人間が抽選で決められるなど、困難な状況が続く中で、逃げることも出来ずにただ生きるだけの難民の女性とアンドロイドを描き出したストーリーは、日本で暮らす私にとってなんともやるせない気持ちになりました。
もう一度見たいとは思いませんが、忘れることの出来ない作品です。(女性 30代)
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