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映画『パリ、テキサス』の感想・レビュー。地味だけど素晴らしい描写が光る、ロードムービーの名作!

この記事では、映画『パリ、テキサス』の感想やレビューを紹介しています。数多くの映画を見てきた映画専門ライターによって、様々な視点で感想・レビューを執筆しておりますので、ぜひご覧ください。

映画『パリ、テキサス』の作品情報


出典:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

製作年 1984年
上映時間 146分
ジャンル ドラマ
監督 ヴィム・ヴェンダース
キャスト ハリー・ディーン・スタントン
ナスターシャ・キンスキー
ハンター・カーソン
ディーン・ストックウェル
製作国 西ドイツ
フランス

映画『パリ、テキサス』のあらすじ

4年前に失踪した中年男トラビスが、テキサスで発見された。弟のウォルトは妻アンヌと暮らすロサンゼルスの自宅に、記憶喪失の彼を連れて行く。そこにはトラビスの7歳になる息子ハンターが同居していた。ぎこちない再会を経て、ふたりの間に次第に親子の感情が蘇る。そしてトラビスは行方不明の妻ジェーンを探すため、ハンターを連れて旅に出る。
(出典:スターチャンネル

映画『パリ、テキサス』の感想・レビュー

言葉を交わさずに描き出す、確かな絆

この作品で印象に残ったのは、主人公の男がずっと会っていなかった小学生の息子を、学校に迎えに行くシーンです。最初は行方不明だった父親と一緒に帰るのを嫌がっていた息子も、主人公が「ちょっといい身なり」をしてきたことで、父親と帰ることにする。しかし、学校を出て父親の元に行くのではなく、道路を挟んで歩道の左右に分かれて歩き出すことに・・・。

この「道路を挟んで並んで歩く、父親と息子の図」が秀逸で、お互いに全く言葉を交わさすことなく、でも道路の向こう側にいる父親の真似をして歩く息子の姿に、2人の間に確かな「絆」が芽生え始めていることを表現する。この演出はお見事だと思いました。

ヴェンダース&ジャームッシュの時代

本作が製作された1980年代に日本でその名が知られ始めたのがジム・ジャームッシュで、本作の監督ヴィム・ヴェンダースと共にロードムービーの名手として紹介され、多くの名作を残しています。

しかし、本作が公開されたのは1985年、この80年代中盤といえば『フラッシュダンス』『トップガン』『愛と青春の旅立ち』など、この時代を代表する大ヒット作が続々と公開された時期でした。そういったヒット作と相対するかのような「派手な見せ場のない、地味な映画」だったのが、ヴィム・ヴェンダースとジム・ジャームッシュが作りあげた作品群で、逆にそういった映画が自分を「映画通」と自負する方々に好まれたのも確かです。今でいう「シネフィル」と呼ばれる映画好きな人の、走りと言えるかもしれません。

美しくも脆く儚い、ナスターシャ・キンスキー

主役を演じたハリー・ディー・スタントンと共に印象に残るのが、主人公の「もと妻」役のナスターシャ・キンスキーです。キンスキーさんはロマン・ポランスキー監督の『テス』、フランシス・コッポラ監督の『ワン・フロム・ザ・ハート』など、名監督と呼ばれる演出家と組んだ作品で脚光を浴びましたが、同時に「恋多き女」としても知られていて、多くの監督や役者との噂がありました。

そして、このキンスキーさんを見出したのが本作の監督・ヴェンダースで、13歳の頃のキンスキーさんを自身の『まわり道』に起用、映画デビューさせています。本作でのキンスキーさんは、美貌の持ち主であるとともに「自分には育てられない」とわが子を手放してしまった女性ですが、そんな「訳あり」な役どころをしっかりと表現し、女優としての実力者であることを証明していると言えます。

映画『パリ、テキサス』の思い出コメント

私がこの映画を見たのは、劇場公開された1985年です。当時はヴェンダース監督は、日本ではまだ「知る人ぞ知る」存在でしたが、私は1970年代に製作された彼の監督作『都会のアリス』などが大好きで、しかもこの作品がカンヌ映画祭でパルムドールを受賞したと知り、これは見ないわけにはいかないなと思いました。そして、映画の出来栄えは期待通りの素晴らしさで、ますますヴェンダース監督のファンになりました。(60代 男性)


私がこの映画を見たのは最近で、サブスクの配信で観賞しました。今年の夏にフランスへ旅行する計画を立てていて、何か参考になればいいなとフランスに関係がありそうな映画を検索し、タイトルに「パリ」が付いている本作を見つけて観賞したのですが、フランスに全く関係ない内容だったのは意外でした。でも映画自体は面白かったので、損したなとは思わなかったです!(20代 女性)


私が本作を見たのは1990年代の始め頃、ビデオレンタルでした。当時はちょうど『略奪愛』などの「不倫もの」が流行っていて、妻と幼い息子という家族持ちだった自分は映画のような不倫に憧れを持ちつつ、現実的ではないよなぁと思っていました。そして、この映画を見て、家族を捨てて放浪する主人公についつい感情移入してしまったのも事実です。しかし、憧れは憧れのままで、家族と共に歳を重ねられたことは今思えばベストの選択だったなと、皺の増えた妻の顔とすっかり大人になった息子を見て感じたりする、今日この頃だったりします。(50代 男性)

この記事の編集者
影山みほ

当サイト『MIHOシネマ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ局の映画番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『シネマヴィスタ』の編集長も兼任しています。

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