映画『機動警察パトレイバー THE MOVIE』の概要:東京湾では「バビロンプロジェクト」と呼ばれる土木事業計画の元、埋め立てや大突堤の建設が行われていた。その工事を助けているのは、“レイバー”と呼ばれる人が乗って操作を行う機械だった。だが、そのレイバーが勝手に暴走する事件が多発していた。
映画『機動警察パトレイバー THE MOVIE』の作品情報
上映時間:98分
ジャンル:SF、アクション、アニメ
監督:押井守
キャスト:古川登志夫、冨永みーな、大林隆介、榊原良子 etc
映画『機動警察パトレイバー THE MOVIE』の登場人物(キャスト)
- 篠原遊馬(古川登志夫)
- 特車二課第二小隊・巡査。父親は篠原重工の社長。父との仲は悪く対立している。現場では主に指揮を行っている。上官に対してもはっきりと意見を言うため揉めることもあるが、正義感が強く真面目な性格。
- 泉野明(冨永みーな)
- 特車二課第二小隊・巡査。遊馬と特に仲が良い。自分が乗っているレイバーに「アルフォンス」という名前をつけ、大切にしている。
- 後藤喜一(大林隆介)
- 特車二課第二小隊長・警部補。どこか飄々とした掴みどころのない性格をしているが、実際は頭のキレる人物。今回の暴走したレイバーの異変にもいち早く気づき、独自に調査を行っていた。
- 南雲しのぶ(榊原良子)
- 特車二課第一小隊長・警部補。問題をよく起こす特車二課第二小隊にあまりいい感情を抱いていない。真面目できっちりとした性格。
- 太田功(池水通洋)
- 特車二課第二小隊・巡査。熱血漢。偶に指示を無視し、現場の判断で勝手に行動を起こそうとする。
- シバシゲオ(千葉繁)
- 特車二課整備班長。整備班の主任である榊のことを尊敬しており、榊の教えを忠実に守っている。陽気で明るい性格。
- 榊清太郎(阪脩)
- 特車二課整備班主任。「整備の神様」と言われるほど、機械については詳しい。だが、コンピューターについては疎く、ソフトに重きを置くようになったレイバーについて、複雑な感情を抱いている。
- 松井刑事(西村知道)
- 本庁の刑事。後藤に頼まれ、プログラマー帆場について捜査を行う。
映画『機動警察パトレイバー THE MOVIE』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『機動警察パトレイバー THE MOVIE』のあらすじ【起】
1人の男性が笑みを称えながら、建物から海に飛び降りた。その一方で、自衛隊が暴走した機械、“レイバー”を追っていた。何とか攻撃してレイバーの動きを止めることに成功する。中の操縦席を確認すると、誰も乗っていなかった。
東京湾に巨大な埋め立て地と大突堤が建設されていた。それは、首都圏の用地問題を一気に解決できる、「バビロンプロジェクト」と呼ばれる土木事業計画の要の工事だった。関連官庁の調整に追われ今世紀内の完成も危ぶまれていたが、“レイバーシステム”のお蔭で工事が急ピッチで進んでいた。今回の工事だけでも、大小合わせて3600体のレイバーが稼働していた。レイバーは中の操縦席に人が座り、大きな鉄骨も運ぶことができる機械だった。便利な反面、このレイバーが犯罪に使われることもあった。
特車二課第二小隊の篠原遊馬巡査と泉野明巡査は、海上にある「方舟」と呼ばれる、全工区のレイバーの修理を行うプラットホームを訪れた。遊馬巡査は最新のレイバー(通称「零式」)を見て興奮していたが、野明巡査は何だか悪役みたいに見えると言って怖がっていた。遊馬巡査はレイバーの中身について何も知らない野明巡査に詳細を説明した。篠原重工が開発した「HOS」と呼ばれる最新OSが、レイバーに搭載されるようになった。それは、従来の機体に乗せ換えるだけでも、30%は性能が上がる画期的なシステムだった。けれども、野明巡査と遊馬巡査は、どんなに性能が良くなっても使う者の「知恵と勇気」が一番重要だと考えていた。
特車二課第一小隊は「零式」の訓練を行っていたのだが、その訓練期間の延長が本庁より通達された。その間、問題のある第二小隊が引き続き留守を預かることになった。特車二課第一小隊長・警部補の南雲しのぶはその決定に不服を申し立てた。課長はしのぶ警部補を説得するため、仕方なくこの決定に至った事故について説明した。自衛隊の試作レイバーが風洞実験中に突如暴走し、基地外に暴走する事件が起こった。機体がスクラップ同然に破壊されたため、原因を調査することもできなかった。しかも、その暴走したレイバーが篠原重工製で、「零式」と同じHOSを搭載しているタイプだったのだ。
映画『機動警察パトレイバー THE MOVIE』のあらすじ【承】
街でレイバーの暴走が起こり、特車二課第二小隊が現場へと急行した。野明巡査と太田功巡査がレイバーを操り、遊馬巡査が指示を行った。暴走したレイバーに乗っていた人は無事に救助され、レイバーを止めることに成功する。しかし、止めたはずのレイバーが再び動き始めた。功巡査は咄嗟に銃を撃ってレイバーの動きを止めた。
暴走したレイバーに乗っていた人は、勝手にレイバーが暴走したと証言した。そんなことが今月に入り22件も起こっていた。しかし、しのぶ警部補と後藤喜一隊長はその話を信じておらず、乗員の操作ミスだと思っていた。だが、遊馬巡査はレイバーが勝手に再起動したところを見ており、人員のミスという結果に違和感を覚えていた。
遊馬巡査は独自に調査を行い、暴走を起こした全レイバーが篠原重工のHOSを搭載していることが判野明する。しかも、暴走が起こり始めたのは、HOSが発表された2か月前からだった。そのことを後藤隊長としのぶ警部補に報告した。すると、後藤隊長はHOSのバグではなく、意図的に事件が引き起こされた可能性があることを話し、プログラマーの帆場暎一についての報告書を見せた。そこには、帆場が篠原重工の社員で、HOSの開発者であることが書かれていた。だが、帆場に纏わる経歴や出生などの全てのデータが消されており、帆場自身は方舟から5日前に飛び降り自殺を行っていた。遺体は海に流され上がらなかった。後藤隊長はこの部屋にいるメンバー(遊馬巡査としのぶ警部補、整備班の榊清太郎)以外、他言しないように忠告した。それは、警視庁の全レイバーのOSもHOSに書き換えられており、他の隊員を動揺させないためだった。遊馬巡査が部屋を出ると、なぜかトマトが落ちていた。
映画『機動警察パトレイバー THE MOVIE』のあらすじ【転】
遊馬巡査は榊と共に、実家でもある篠原重工に足を運んだ。そして、そこのシステム管理室に忍び込み、HOSのマスターデータを発見する。だが、HOSのデータを見ている途中でエラーを起こしてしまい、レイバーの生産ラインに異常をきたしてしまう。遊馬巡査は榊と共に急いで逃げ出した。HOSのデータ内を調べることはできなかったが、篠原重工でさえも内部のデータを理解していないことが判明する。
後藤隊長に頼まれ、松井刑事は帆場の調査を行っていた。帆場は自分に纏わる全てのデータを消していたが、転居データだけは唯一残していた。廃墟同然のマンションに、2年間の間で26回も引っ越していた。帆場がなぜ転居データだけを残していたのか意図が分からず、松井刑事は後輩の刑事と共にもう少し家を回ってみることにした。
遊馬巡査は暴走したレイバーの地域を調べ、3カ所のエリアに固まっていることを知る。だが、そこにレイバーを暴走させるどんな原因があるのかは分からなかった。そんな時、野明巡査にトマトを渡された遊馬巡査は、野明巡査が後藤隊長の話を部屋の外で聞いていたことに気づく。デートだと偽って外に連れ出すと、レストランでレイバーの暴走について話しをした。野明巡査は自分が使っているレイバーが暴走して破壊されるのではないかと思い、涙を流して悲しんだ。遊馬巡査はそれを見て、必ず原因を突き止めることを約束した。
遊馬巡査は散歩している犬が人間には聞こえない音に反応しているところを見て、レイバーもビルに当たる風の音に反応していることに気づく。遊馬巡査は祖父に会いに行き、そのことを公表することを勧めた。だが次の日、遊馬巡査は課長から自宅謹慎を命じられる。待機命令中の無断外出や、一般市民への恐喝紛いの自白強要が理由だった。しかも、篠原重工の社長が欠陥について通産省に報告しており、HOSのバージョンアップと偽って旧来のOSへの書き換えが行われることになった。世間のレイバーのイメージが悪化するのを防ぐため、篠原重工の罪は揉み消されることになったのだ。
後藤隊長はOSの書き換えだけで今回の事件が終わるとは思っていなかった。2週間の自宅謹慎を利用して調査を続行するように、遊馬巡査に指示を出した。そんな時、整備班主任のシバシゲオが外国から帰ってくる。遊馬巡査達はレイバーのOSの書き換え申請書類を出してもらおうとするが、実は警視庁のレイバーはHOSに書き換えられていなかった。中身が不明なOSをインストールするのが嫌で、シゲがインストールをしたように誤魔化していたのだ。そのことは、後藤隊長も知っていた。遊馬巡査に今回の件を捜査させるために、後藤隊長は黙っていたのだ。
映画『機動警察パトレイバー THE MOVIE』の結末・ラスト(ネタバレ)
松井刑事は帆場の生まれた家で、壁に書かれた旧約聖書の一文を発見する。そのことを後藤隊長に報告した。松井刑事は帆場についての心証を聞かれ、犯人であることに間違いはないと太鼓判を押した。だが、帆場は既に亡くなっているため、松井刑事ができることはもうこれ以上何もなかった。
遊馬巡査はシゲと共に調査を行い、方舟からの低周波の影響でレイバーの暴走が起こることを知る。しかも、現在首都圏には台風が近づいてきており、その影響でレイバーの暴走が首都圏全体に拡大される恐れがあった。後藤隊長はそのことを本部長達に報告した。OSを書き換えたとしても、一度でもHOSがインストールされていれば意味がない可能性があること、レイバーを停止しても自動で起動する恐れがあることを話した。そして、台風のせいにして、方舟を破壊すればいいと仄めかして進言した。本部長は後藤隊長の話を受け入れた。
台風がくる中、特車二課第二小隊は方舟に向かって出発した。後藤隊長は後のことをしのぶ警部補に任せ、海上保安庁や公安局が出てこないよう、時間稼ぎのために出頭することにした。
方舟ではまず無用な戦闘を避け、制御室を制圧することにした。野明巡査と功巡査がレイバーに乗り、遊馬巡査が指示を行った。そして、残りの2人の隊員が銃を使って、見張り用の機械を倒していった。遊馬巡査は無事に制御室に侵入することに成功する。だが、最上階のサブコントロール室に、人がいるという反応が出ていた。死んだはずの帆場のIDだった。遊馬巡査は野明巡査に確認するよう指示を出した。
HOSの正体が判明したとの知らせが、しのぶ警部補の元に届けられた。中のデータにはウイルスが仕掛けられており、アクセスした対象に侵入するようになっていた。HOSに接触したコンピューターは全て汚染されていると考えて間違いがなかった。その時、しのぶ警部補は方舟のメインコンピューターにも、ウイルスが汚染している可能性があることに気づく。
野明巡査が最上階に向かう中、遊馬巡査は時間がないため、少しずつ方舟を解体していった。しかし、予定よりも早く無人機のレイバーが暴走してしまう。遊馬巡査は野明巡査に最上階に急ぐよう指示を出した。野明巡査がサブコントロール室に行くと、そこには窓を突き破って入ってきた大量の鳥達がいた。しかも、その鳥の1羽の足に、帆場のIDが取りつけられていた。その時、制御室のメインコンピューターがエラー音を出し、制御できなくなる。遊馬巡査はパソコンを経由しないで、結合ブロックのパイプに直接点火する集中点火線のことを思い出す。それは、野明巡査がいるサブコントロール室の真下にあった。
野明巡査が導火線を点火させると、方舟は次々と倒壊していった。遊馬巡査達は倒壊に巻き込まれ、鉄筋に押し流されていった。何とか皆無事に生還するが、野明巡査は他の隊員が乗っている暴走した零式のレイバーに襲われる。野明巡査はワイヤーを使って零式の動きを止めると、プログラムがある首の後ろを撃って活動を停止させた。そこに、後藤隊長達が乗ったヘリコプターが迎えに現れる。
映画『機動警察パトレイバー THE MOVIE』の感想・評価・レビュー
人気SFアニメーションの劇場版第一弾。近未来、ロボット型重機が活躍する日本でそれを取り締まる警察の専門部署の活躍を描く。
先んじて発表されていたOVAシリーズを引き継ぐ形でストーリーが構成されている。公開当時まだ普及し始めたばかりのコンピューターであったが、早くもコンピューターウイルスに着目したストーリーは斬新であり、技術により社会が発展していく反面、技術の悪用、あるいは人間の想像を超える弊害を生み出す恐れがあるというテーマを色濃く表現している。(男性 20代)
TVシリーズを見ていなくても導入部分で問題なくこの世界に入っていける。
個性的で魅力的なキャラクターたちと関係性のおかげで、仲間になりたい、と思えるところも、このアニメの良さ。
80年代に描かれた近未来だけれど、箱型のパソコンやフロッピーディスクなど、何よりも東京の下町の描写はノスタルジックで、テクノロジーの進んだ今見ても、現実とアニメ世界のリアルの差などを比べられる面白いと思える映画。
最後の戦いはこの作品が好きな人にすれば、ノアと同じように辛いよね、と感じる。(女性 30代)
ストーリーの肝はコンピューターウイルスによる犯罪だが、一般にパソコンが普及するきっかけの一つとなったWindows95の登場前の作品ということを考えると、その先見性に唸るばかりだ。
見所は高層建築と対照的に描かれる、昭和の香り残る未開発の東京の風景だ。取り壊された銭湯の跡、木造アパート。それらと未だ実現出来ていない二足歩行可能な巨大作業ロボが、一つの画面に収まっている。
この現実をちょっとだけずらした世界観が魅力的。(男性 40代)
天才プログラマー帆場英一が残した恐怖の遺産である、レイバー搭載用高性能OS「HOS」が招く、恐怖の計画を前に、特車二課が立ち向かう。
最先端の技術が乱立する東京で、よくわからずに新しいものに飛びついてしまう人間の弱点を利用した、帆場の計画は実に緻密だが、その謎の究明と解決に、最後まで挑んでいく遊馬たちが格好いい。
「HOS」が生み出された時点で、彼らはすでに負けているかもしれない。かといって、正義の戦いは終わるわけではないからこそ、最後まで戦ったのだ。(男性 20代)
1980年代に作られた「1998年」のお話。大量生産された人型ロボット「レイバー」が誤作動を起こし、暴走してしまう事件が多発したため、警官型ロボットの「パトレイバー」が事件に立ち向かうというストーリー。
驚いたのが、1989年に公開された作品だということです。美しい映像と完璧に作り込まれた世界観が本当に素晴らしく、見れば見るほど好きになる作品でした。
こう言ったロボット作品にそれほど興味はありませんでしたが、今作をきっかけにハマったと言っても過言ではありません。(女性 30代)
僅かな手掛かりをもとに、陰謀へと迫る推理展開は非常に惹き込まれます。後半失速気味になったのがストーリーとしては惜しいと感じてしまいます。驚きな点はこの作品が作られた時代です。アニメの雑然とした雰囲気は時代を感じさせますが、ここぞという場面はどれも現代アニメと張り合えるほどのクオリティになっています。ちょっとした動作による光の変化など、細やかな現象までしっかり表現出来ていて、今の日本アニメを築いたであろう製作陣の努力に脱帽です。(男性 20代)
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