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映画『リアル 完全なる首長竜の日』あらすじとネタバレ感想

映画『リアル 完全なる首長竜の日』の概要:「回路」「トウキョウソナタ」などで高い評価を得る黒沢清監督作品。主演に綾瀬はるかと佐藤健を迎え、かつてないほどのメジャー路線で作製された作品である。

映画『リアル 完全なる首長竜の日』 作品情報

リアル 完全なる首長竜の日

  • 製作年:2013年
  • 上映時間:127分
  • ジャンル:サスペンス
  • 監督:黒沢清
  • キャスト:佐藤健、綾瀬はるか、中谷美紀、オダギリジョー etc

映画『リアル 完全なる首長竜の日』 評価

  • 点数:65点/100点
  • オススメ度:★★★☆☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

[miho21]

映画『リアル 完全なる首長竜の日』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『リアル 完全なる首長竜の日』のあらすじを紹介します。

漫画家である淳美(綾瀬はるか)は連載に行き詰まり、ある日突然、自殺を図った。結果、なんとか一命は取り留めたものの昏睡状態となる。彼女と幼い頃から一緒に過ごし、いつしか恋人となった浩市(佐藤健)は、淳美が自殺を図った理由がわからず茫然自失とした日々を送っていた。

彼女を救うために、浩市は「センシング」と呼ばれる機器を使って、淳美とコンタクトを取ろうとする。「センシング」は、昏睡状態にある患者と脳波で意思疎通ができる手法である。

センシングを繰り返すうちに、浩市の脳と淳美の意識がまざりあうようになり、浩市は現実と仮想が入り乱れる虚実ないまぜの世界へと足を踏み入れることとなった。そんな中、淳美は意識の中で浩市に「子供の頃に描いた首長竜の絵を持ってきて欲しい」と依頼する。絵を探し続ける浩市であったが、実家にもその絵は無かった。

浩市はこの絵が淳美が意識を取り戻すキーとなっているはずと考え、浩市は二人がかつて過ごした飛古根島を訪れる。そこで、浩市は、記憶を封印していた15年前の事件に触れ始める。そして、浩市はある事実に気付いてしまう。

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映画『リアル 完全なる首長竜の日』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『リアル 完全なる首長竜の日』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

観るものを選ぶ作風

たびたび述べている事でもあるが黒沢清監督が描いている作品は、見る者を選ぶ映画であると言ってしまっても良い。というのも、彼の作品の中には必ずと言っていいほど哲学的な思考を観客に促そうとすることが多く、時に見る者に難解な印象を与えてしまうことがあるからである。それでも黒沢清監督が高く評価されているのはその作品自体が持っている雰囲気に魅了されるファンが多数いるからである。本作もご多分にもれずそういった黒沢清監督ならではの破壊的でホラー的な映像表現に飛んでいるという点においては、ファンにとってはたまらないものであると言っていい。だが、本作においては監督の持ち味であった哲学的なモチーフとも言うべきものがほとんど登場しない。そういう意味において黒沢清映画というものを知らない観客にとってはただ単に難解な映画になってしまい、黒沢清映画のファンである人々にとってもそこの浅い話に見えてしまうというのは残念な点であると言うほかないだろう。

不自然、ということ

本作を鑑賞した人の意見において度々聞かれるものは、主人公たちが車を運転している風景の表現が不自然であるということである。しかし、これは監督による意図的な映像表現なのだ。こういった映像の撮影手法はスクリーンプロセスと呼ばれるもので、かつての古典映画においてよく使用されていた撮影方法なのだ。ここにも監督の哲学が現れていて、映画と言うものはつくりものなのだから不自然で当然であると言う彼の考え方が見てとれる。作風は全く違うが、映画と言う制度に対するアプローチの仕方としては大林宣彦監督のそれと非常に似た手法であると言っていいだろう。

映画『リアル 完全なる首長竜の日』 まとめ

これまでの黒沢清監督作品の中ではもっともメジャーな作品となった本作であるが、誰の方を向いて作った作品なのかがはっきりしなくなったことは明らかな失敗である。最新作の「岸辺の旅」は、黒沢監督の持ち味全開となった作品であるようなので、再びこれまでのモードに回帰したということになるのであろう。

黒沢監督史上もっとも多くの人々に観られるであろう作品は間違いなく本作であろう。もし、本作が湛える不気味な雰囲気に魅了されたのであれば、ぜひ監督の過去作を視聴していただきたい。きっと黒沢ワールドに引き込まれること間違いなしである。

しかし、本作にも映画にそれほど興味のなかった観客を映画ファンにするような可能性を秘めているというあたりは監督の気概を感じる点である。

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