映画『リアリティのダンス』の概要:アレハンドロ・ホドロフスキーの少年時代を幻想的に描く。独特の色彩と登場人物が映画を彩る。厳しい父親から、少年は愛を求めた。心の中の少年に送る現実と空想のファンタジー。
映画『リアリティのダンス』の作品情報
上映時間:130分
ジャンル:ファンタジー
監督:アレハンドロ・ホドロフスキー
キャスト:ブロンティス・ホドロフスキー、パメラ・フローレス、イェレミアス・ハースコヴィッツ、アレハンドロ・ホドロフスキー etc
映画『リアリティのダンス』の登場人物(キャスト)
- 息子(イェレミアス・ハースコヴィッツ)
- アレハンドロ・ホドロフスキーの少年時代。繊細で優しい少年。父の愛を求めるが暴力を振るわれる。
- 父親(ブロンティス・ホドロフスキー)
- 激高しやすく、暴力的。常になにかに怒っている。母と息子に独裁的で、反論は暴力で制す。大統領の暗殺を計画するが、失敗してしまう。
- 母親(パメラ・フローレス)
- 愛に溢れた人。不条理な父親の行いに耐え続ける妻。その愛で父親のペストを治す。
映画『リアリティのダンス』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『リアリティのダンス』のあらすじ【起】
あるサーカス団がいた。そこに金髪のカツラをかぶった少年(イェレミアス・ハースコヴィッツ)が、ピエロ達に囲まれていた。寂れた街に住んでいる少年。海に石を投げたら海が怒り、魚を打ち上げた。カモメがそれに群がる。貧しい街は久しぶりの食料に歓喜する。
腕が無い浮浪者に親切にすると、父親(ブロンティス・ホドロフスキー)に怒られた。父はずっと怒ってばかりだ。母(パメラ・フローレス)は優しく、怯えた息子にあなたは父の生まれ変わりだと、歌う。あなたが金髪なのは理由があるのよと。しかし厳しい父親は、男の子なのに金髪の長い髪をした息子が気に入らず、その髪を短くしてしまう。その姿を見て、母はまた歌った。お前はもう私の息子ではないと。
父は息子を厳しくしつけるようになった。羽でくすぐり笑うなという。思いっきり殴る。何発も殴る。殴りすぎて歯が折れてしまう。
歯医者で、息子に麻酔なしで治療をしろと言った。痛みは自分で制御できると、父は自分の手にたばこを押し付けた。麻酔なしの痛みに耐えた息子は父親に受け入れられた。彼が我慢したのは父親に愛されたかった。それだけだった。
映画『リアリティのダンス』のあらすじ【承】
全身に不思議な模様を刻んだ男が現れた。男は神をモチーフにしたペンダントを3つ、少年に与えた。これを溶かせばひとつになる。いい子だと頭をなでる。しかし父はそのペンダントをトイレに流してしまった。突発的に怒りだす父親。少年はそれでも、父を愛そうと努力していた。
父親は夜どこかに出かけていった。謎の男女の会議。彼らは同性愛者の集まりで、彼らを排除しようとする動きについて、会議していた。杯に火をつけ全員で飲んで歌った。
ある日、父親に連れられて、消防団に連れて行かれた。そこのマスコット犬が死んでいた。彼は犬の代わりにマスコットになれと父に命じられる。
彼は父から新しい靴を与えられる。貧乏な友達はそれを見て、自分は一生そんな靴は履けないと泣いた。憐れに思った息子は、少年に靴をあげた。それを知った父はまた激怒し、取り返してこいと命じる。寒さに震えながら息子は少年を捜す。そこへ、少年が死体となって運ばれているのを目撃する。少年は自分が与えた靴が滑って海に落ち、死んでしまったのだ。
映画『リアリティのダンス』のあらすじ【転】
ある日、スラムで火事が起こる。しかし火を消しに来た消防団の持ち物を盗もうとする住人。それに加えて、団長が火事で焼け死んでしまった。弔いのパレードが開かれるが、息子は団長の亡霊に幻を見せられ、気絶してしまう。
丸2日寝込んだ息子を町の人は笑う。マスコットの衣装を燃やす父親だった。ある日移民が現れた。父は彼らに水を与える。しかし、無粋な移民は、父のロバを食べてしまう。移民をかばった父はペストにかかり、住民は彼を迫害する。母は神に祈った。すると父の病は治り、今まで母にしてきた数々のひどい事を悔いた。
父は貧しい人を迫害する自国に怒り、暗殺を計画した。母は父の無事を祈り髪を切る。ドッグレースに大統領が現れた。しかし父は暗殺に失敗、仲間も死んでしまう。
大統領の馬の世話をすることになった父。彼は馬に、自分が愛情に飢えていた事を語り始めた。大統領は自分の愛馬に会いに来た。父が想像していたよりも、愛情にあふれている大統領に、父は混乱し始める。ある日、馬が突然病気になり、そこに大統領が駆けつける。その隙を狙い、大統領を殺そうとする父だが、引き金を引けない。暗殺は失敗した。
映画『リアリティのダンス』の結末・ラスト(ネタバレ)
気が狂った父は記憶喪失になり、ある女性に匿われていた。暗殺に失敗したショックで、手は握られたまま固まっていた。
父は家具屋に拾われ、仕事を与えられる。彼は体を洗い、新しい服を与えた。家具屋は有り金全部を父にあたえ、故郷に帰る道を造った。椅子を納品し終わると、家具屋の命も終わった。彼にもらったお金を葬儀のために寄付し、帰る道は断たれた。荒れ狂った父はナチスに逆らい、拷問されてしまう。
独裁政権が終わり、家に帰る父。母は歌った。それでも愛していると。でも同時に彼女は父を責めた。あなたはこの独裁者とそっくりだと。怒りで母と息子を支配するあなたは、そっくりだと。
この物語は、この作品の監督の幼少期の物語である。作品に昇華させたが、心の中に少年はまだ、残っている。
映画『リアリティのダンス』の感想・評価・レビュー
アレハンドロ・ホドロフスキーの子ども時代の自伝的映画。
政治や権力、歴史的な描写もありつつ、独裁者のような父とソプラノ歌手のような母と過ごしたホドロフスキーの少年時代を、現実と空想を交えたファンタジックな世界観で描いている。
色々な要素が入り組んでいて、ミュージカルを見ているような不思議な気持ちになった。
特に序盤、権威的で暴力的な共産主義者の父が、ホドロフスキーに厳しく接しているシーンは印象深かった。
しかし、時代が進み、そんな父が兵糧攻めに遭うシーンがショッキングだった。(女性 20代)
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