映画『レヴェナント 蘇えりし者』の概要:実際にあった過酷な大自然の中で繰り広げられるひとりの男の復讐劇を描く。壮大な自然とレオナルド・ディカプリオ渾身の演技は壮絶で圧巻。涙なくしては観られない。第88回アカデミー賞、主演男優賞と監督賞、撮影賞受賞。2015年公開。
映画『レヴェナント 蘇えりし者』の作品情報
上映時間:156分
ジャンル:アドベンチャー、アクション
監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
キャスト:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン、ウィル・ポールター etc
映画『レヴェナント 蘇えりし者』の登場人物(キャスト)
- ヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)
- 実在した人物で野生の熊にも立ち向かえる程の闘志の持ち主。原住民の女性との間に最愛の一人息子がおり、生きがい。山中の名ガイド。妻を少尉に殺害されている。
- ジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)
- 野望を持つ男でヒュー・グラスとは反りが合わない。どんな汚い手を使ってものし上がり、今の生活から逃れようとしている。普段から素行が悪い。
- アンドリュー・ヘンリー(ドーナル・グリーソン)
- 毛皮ハンター一団の隊長。地域に詳しいグラスを信頼しており、良心的な人物。
- ジム・ブリッジャー(ウィル・ポールター)
- 医療技術を心得た若い青年。ホークとは歳が近く、打ち解けていたが腰抜け。
- ホーク・グラス(フォレスト・グッドラック)
- ヒューと原住民の娘との間に出来た愛息子。父を敬愛しており、誠実で年若き青年。
映画『レヴェナント 蘇えりし者』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『レヴェナント 蘇えりし者』のあらすじ【起】
西部開拓時代、極寒地帯。ハンターのヒュー・グラスと息子のホークはとある毛皮ハンター一団のガイドとして狩りをしていた。息子のホークは彼にとっての生きがいで、ただ一人残った最愛の家族だった。大型のヘラジカを仕留めたグラス。彼らを手伝って欲しいと若手のブリジャーが仲間に助けを乞うていると、姿が見えなかった仲間の一人が全裸で背後から矢を受けた状態で倒れる姿が見える。一団は異変を察し一斉に立ち上がった。しかし、どこからか突然矢が飛んで来る。
異変を察したグラス。すぐさま銃の準備を整え、獲物を置いたまま息子と急いで作業場へ戻る。緊迫する一同。雨のように降って来る矢は次々と仲間達の命を奪った。騒然とした中、グラスはすぐさま船へ向かえと叫ぶ。息子へと一番に声をかけ、まずは安全を確保。襲い掛かって来る原住民を躱しつつ、持てるだけの毛皮を持ち船に乗り込だ。作業場に乗り込んできた原住民はどうやら攫われた族長の娘を探しているようだった。
命からがら船へと乗り込んだ一団の一部。船では周囲を警戒しつつ川を下って行く。原住民アリカラ族は戦闘的で残忍な一族だ。恐らく先ほど襲撃してきたのがそうなのだろう。グラスはアリカラ族の土地は危険だ。船を下りようと進言した。時間はかかるが山沿いに砦へ向かう。フィッツジェラルドが不満を漏らしていたが、隊長のヘンリーがそれを制した。
荷物になる毛皮を隠し、アリカラ族を避けて安全に砦へ辿り着く最短のルートを探し出す。川辺ではフィッツジェラルドが不満を垂れている。原住民ポーニー族に属するグラスとホークをも引き合いに出していた。ポーニー族がアリカラ族と敵対している為に襲われたのではないかと邪推。そしてグラス親子に向かって原住民と暮らしていた頃の話を続けた。兵士21人、原住民40人が死亡した中、生き残ったのはグラス本人と息子だけ。奇跡的な生還だったが、その為にグラスは白人の少尉を射殺したという。挑発に乗ろうとした息子を制し、グラスは相手にせず黙々と銃の手入れをする。息子には透明になれ、白人はお前の言葉は聞かない、浅黒い肌の色だけを見るのだと話す。原住民は野蛮人。そういった先見がまだまだ色濃く残る時代だった。
森の中を進んで行く。そうして安全な場所を確保してまた一夜。朝方、一人で偵察へ出たグラスは子熊を見つける。子熊がいるという事は必ず母熊が近くに居るはずだ。警戒したその矢先、突如背後から熊に襲われる。体長2mはありそうな大熊だった。散々に振り回され、至る所を爪で抉られるも息はまだあった。気取られないよう必死に銃を手にした。危険な熊を退治しなければならない。発砲するも再び襲われ爪で首を一掻き抉られる。振り回されるがまま散々にやられ息も絶え絶えだったが、まだ動く右手でナイフを握り再び襲い来る熊へ反撃。その後、絶命した熊の下敷きとなった。
映画『レヴェナント 蘇えりし者』のあらすじ【承】
銃声を聞いた仲間達が死にかけているグラスを発見。医術の心得があるヘンリーとブリジャーによって一命は取り止めたが、傷の深さから見ても明らかに回復は見込めそうにない。警戒しつつもその場で野宿をして今後の相談をした。
死にかけのグラスを運びながら先へと進む。道なき道を進んで川を渡る。ホークは父の傍を片時も離れず、雪のそぼ降る岩山へと辿り着いた。凍りついた急な斜面を、グラスを運びながら進むのは無理だと判断。ヘンリーは苦しませず銃殺しようとするが出来ず。重症の為、高熱を発する彼をここに置いて行く決断をした。ヘンリーは金を上乗せするからグラスの最後を見届けろと命令。ホーク、ブリジャー、フィッツジェラルドが残る事になった。
つきっきりのホークが発熱で朦朧とする父へ語り掛ける。グラスは集落が襲われ生き残った幼い息子へ生きて息をしろ、闘い続けろと囁いた記憶を振り返っていた。そうして妻の面影を、言葉を思い出す。
フィッツジェラルドはグラスが息を引き取るまでに彼の墓穴を掘り続ける。彼は過去、アリカラ族に捕まり頭の皮を剥がされた事があった。だから、奴らの残忍さは良く知っている。見つかる前にこの場から立ち去りたかった。
男は若者2人がいない間にグラスへ息子の為に死ねと話す。そうすれば息子は助かり皆の為になると。暴れないようロープで縛り布を口内へ押し込んで鼻を塞ぐ。息苦しさに身悶えるグラスだったが、そこへ息子が駆け付け男を突き飛ばす。ホークはブリジャーを呼ぶが、彼は川で水を汲んでおり声は届かない。フィッツジェラルドへ銃口を向けて構えるホーク。必死に助けを呼ぶが男に押さえつけられナイフで腹部を一突きされてしまう。グラスは全てを見ているだけしか出来ない。最愛の息子がフィッツジェラルドに殺されてしまったのに。男はホークの死体を木の影へ隠した。
夕方、ブリジャーがようやく戻って来た。フィッツジェラルドはこの後の事を思案。若者はグラスの容態を見て彼を気遣う。グラスは必死にブリジャーへ訴えるが全く察してくれず。ホークが戻らないまま夜が明ける。朝方、男はアリカラが迫っていると言い、ブリジャーを急かしてグラスを墓穴へ投げ込む。必死の抵抗も虚しく形ばかりに土をかけられた。ブリジャーは彼に自分の水筒を譲り、その場を慌ただしく去って行った。
映画『レヴェナント 蘇えりし者』のあらすじ【転】
グラスは痛みに呻きつつ穴から這い出る。地べたを這い蹲って息子の元へと向かった。ホークは絶命しその体はすでに冷たくなっていた。亡骸へと身を寄せ涙するグラス。傍を決して離れない。愛する息子よ。しばしの間別れを惜しんだ後、自分の荷物を身につける。這い蹲って進み骨の髄を食料とする。その後をアリカラ族が追っていた。
川へ辿り着き飲み水を確保。裂かれた喉から水が漏れ出る。火薬を喉に塗り火を熾して喉を焼く。荒治療だが効果的だった。川辺の洞穴でしばらく過ごし体力を温存。やがて、アリカラ族がグラスを追って来た。彼は川へ入り流れに身を任せて奴らから逃れた。しばらく流された後、岸辺へと辿りつき火を熾して休む。気が付いた頃には辺りは暗くなっていた。木の棒を杖に片足を引き摺って丘の上へ。完全に夜が訪れる中、物音がする方向へ進み人影を見つける。グラスは両手を上げ地面へと伏せた。男へ助けを乞う。牛の肝臓を一欠片貰った。男は原住民でグラスの事情を知り、共に行こうと馬に乗せてくれた。何日か2人で旅をする。グラスの傷を見た男は体が壊死し始めていると知らせる。
その頃、フィッツジェラルドとブリジャーは砦へ辿り着いていた。先に着いていたヘンリーへ事情を説明。フィッツジェラルドは作り話をしてまんまと金をせしめた。
原住民の男との旅は静かなものだったが、確かな絆は生まれていた。進む内に天候が悪化。男はグラスを焚火の傍へ置き木の枝や草で囲って守った。その夜、彼は廃屋の教会でホークと会う夢を見る。目が覚めて外へ這い出る。友の姿が見えない。荷物は置きっぱなしで様子がおかしい。グラスは一人で先へ進む。林の中で友が木の枝にぶらさがっている姿を見つける。その先に集団を見つけて様子を窺った。夜になるまで待つ事にする。その後を確実について来るアリカラ族。グラスは馬を頂く為、こっそりと近寄った。そこで原住民の女を慰み者にする白人を見る。背後から近寄って女を助けた。女はナイフで男を殺して逃走。グラスも馬に乗って逃亡した。
アリカラ族が迫っていた。朝方に突然襲われる。すぐさま馬に乗って逃げた。だが、進んだ先は崖。グラスは馬と共に落ちた。木の枝がクッションとなり命は無事だった。しかし、馬は死んでいた。夜が来る。今日も天候が悪い。馬の腹を裂き内臓を全て取り出してその中で暖を取る事にした。朝、今日は晴天だ。馬の腹から出て衣服を身に着ける。馬に感謝し先を急いだ。杖が無くても、もう歩けるまでに回復していた。
映画『レヴェナント 蘇えりし者』の結末・ラスト(ネタバレ)
雪原の荒野を一人黙々と進む。暗くなったら休み、夜にはフィッツジェラルドへの恨みを募らせた。
砦に一人の男が辿り着く。その男が持っていた水筒はブリジャーがグラスへ渡した物だった。フィッツジェラルドは奴が生きている事を知る。ヘンリーはすぐさま捜索隊を出した。夜半にグラスを発見。彼はようやく助かったのだ。事情を知ったヘンリーはフィッツジェラルドを詰問する為、砦内を探すがしかし奴は見つからない。以前、フィッツジェラルドは事務所の金庫を気にしていた。もしやと思い向かってみると案の定金庫は空。奴は金を持ち逃げしたのだ。
グラスはようやく傷の状態を医師に診てもらう。馬と銃をくれと言うグラスにヘンリーは自分が追うからお前はゆっくり休めと言う。だが、彼は自分がいないと見つけられないだろうと話す。フィッツジェラルドはグラスが追って来ると怯えている。恐らくは森の奥深くに身を隠すだろう。奴には失うものが多く、対して自分には息子だけ。そして、その息子はもういない。死ぬのはもう怖くない。彼の決意を聞いたヘンリーはグラスと共に夜が明けてからフィッツジェラルドの捜索へ向かった。
奴の馬の足跡を追って山の中へ入る。一夜を明かし更に捜索を続けた。山中でグラスが煙の匂いを感知。奴が近くにいる。2人は西と東から回り込む事にした。先にヘンリーがフィッツジェラルドと遭遇。銃声を聞いたグラスは音の方向へ向かう。そこには頭の皮を剥がされたヘンリーの痛ましい死体が転がっていた。彼を馬に乗せて奴を追う。フィッツジェラルドは丘の上からグラスを狙撃。銃弾は命中した。確認の為、警戒しながら近寄ってみる。しかし倒れたのはヘンリーの亡骸だった。グラスは死体の振りをしていたのだ。隙を見て銃を撃つが当たらず、走り去るフィッツジェラルドを再び追って行く。
警戒しつつ山林の中を進んで行く。互いに発砲するも当たらない。急こう配を下り川沿いを尚も追いかける。斧を手に息子を侮辱した男を襲う。相手もナイフを持っている。肉弾戦の近接戦に突入。互いに深手を負いながらも一歩も引かない。疲れ切った男のマウントを取ったグラスに男は俺を殺しても息子は戻らないと言う。グラスは岸の向こうの下流にアリカラ族が来るのを見た。そうして、復讐は神の手に委ねる。俺ではない。呟いてフィッツジェラルドを川へ流した。アリカラ族は流れて来た男を捕まえて息の根を止めた。川を渡って来るアリカラ族。その中に逃がした女の姿を見る。彼らはグラスに礼を尽くしたのだ。グラスは妻が笑顔で去る姿を見る。彼はそれへ微笑み返した。
映画『レヴェナント 蘇えりし者』の感想・評価・レビュー
アカデミー賞狙いの作品と揶揄されることもあるが内容は質実剛健そのもの。アメリカ建国にいたる生存競争をミニマムな視点から描いた作品であり、そこには新天地という言葉から想像するような楽園はなくどこまでも血みどろの死闘であり、生存本能のぶつかり合いである。過酷な現実との闘争こそが生きる道ではなかったのかと現代人に問いかける作品といえよう。今もなおその闘争は続いているがうまく表面をおおわれて見えにくくなっただけに過ぎない。(男性 30代)
今作を劇場で初めて観た時は今まで観た何百もの作品よりも一番衝撃を受けた。過酷な環境の中でも生にしがみついて必死に地を這い復讐を試みようとする姿には目を見張ってしまう。脚本は史実に基づいているので単純なものだが、今作で何よりも素晴らしいのは主演レオナルド・ディカプリオの迫真の演技だ。終始セリフは少しかないが、その息遣いと表情でオーディエンスに見せる演技は一流だ。グロテスクなシーンが多いので人にオススメする映画ではないかもしれないが、現代の人間の本質と環境問題などが描かれた素晴らしい作品だと思う。(男性 20代)
原作は作家マイケル・パンクの小説『蘇った亡霊:ある復讐の物語』で、アメリカ西部開拓時代に実在した罠猟師ヒュー・グラスの半生と壮絶なサバイバルに復讐劇を描いている。
実在した人物を描いているという点と、今作でのリアルさを追求したサバイバル旅の壮絶さに息を飲む。実際はもっと酷かったのかもしれないとも思う。熊と戦い深手を負うシーンなどは本物かと思えるほどのリアルさ。死ぬほどの傷を負っても生き残るしぶとさも凄いし、彼がケガのせいで動けない時に最愛の息子を殺されるシーンなども切なさに襲われる。主人公を演じたレオナルド・ディカプリオの演技も素晴らしくアカデミー賞主演男優賞を受賞するのも頷ける。加えて壮大な美しい風景と自然の恐ろしさをも描き出した監督のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの手腕も素晴らしい。一度は観おいても損はない作品。(女性 40代)
できるだけ大きな画面で、できるだけ良い音質で視聴したい一本。広大な自然のシーンはどこを切り取っても美しく写真作品のようだし雨や水の音などと合わせ、空気感や温度まで伝わってくるようだ。自然の中で人々の営みというものは小さなものだなとあらためて感じる。だが、その人々の営みについては奥が深そうで深くは描かれていないような印象を受けてしまった。それぞれの登場人物の背景がもう少し分かれば違ってくるのかもしれないが。(男性 40代)
ノンフィクションのサバイバルアクションを創造するのは普通のフィクション映画を作るのとは違ったリアリティが求められるため難しいはずなのに、熊との戦闘シーン・草や生魚を食べるシーンなどリアルすぎてグラスの「復讐心」や人間の「生きることへの必死さ」が身に染みて感じた。息子を殺す必要はあったのか、隊長が殺される理由は何なのか。ただただ味方に殺人鬼が紛れ込んでいたという恐怖が植え付けられ、それがノンフィクションだと思うとこの作品の視点は様々なところに向けられると思った。(男性 20代)
今まで観た作品の中で、最も映画館で観なかったことを後悔した作品。
撮影は全て自然光で行われており、9か月費やしたという。そのこだわりも納得の映像美で、大きなスクリーンで観たらどれだけ感動的であっただろうと後悔してしまう。
クマと格闘するシーンなど、迫力が凄まじく観ているだけで緊張してしまうシーンの連続で、最初から最後まで目が離せない。あらすじももちろんのこと、レオナルドディカプリオの演技が素晴らしい見応えのある作品。(女性 20代)
自然の雄大さ過酷さ。家のテレビで鑑賞したが、それでも圧倒されてしまう迫力と映像美であった。壮絶な環境を生きる人間や動物の姿を、ここまで画面で表現した製作陣には脱帽である。レオナルド・ディカプリオの演技力も文句なし。物語は少々物足りなさを感じ、暗い雰囲気のままセリフも少ないため淡々とした展開である。ここまで極端に映像と演技に全振りした作品は珍しい。再鑑賞するなら、劇場のスクリーンで観たい。(男性 20代)
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