映画『龍三と七人の子分たち』の概要:現役を引退した高齢のヤクザたちが集結し、オレオレ詐欺や悪徳商法で荒稼ぎをする姑息な悪党どもを締め上げにいく。北野武監督が藤竜也や近藤正臣といったベテラン俳優をキャスティングし、高齢化した昔気質のヤクザたちをどこまでもコミカルに描く。
映画『龍三と七人の子分たち』の作品情報
上映時間:111分
ジャンル:コメディ、フィルムノワール
監督:北野武
キャスト:藤竜也、近藤正臣、中尾彬、品川徹 etc
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映画『龍三と七人の子分たち』の登場人物(キャスト)
- 龍三親分(藤竜也)
- 元ヤクザの組長で、背中に龍の刺青を入れている。左手の小指と薬指はない。現在は息子夫婦の世話になっており、退屈な日々を送っている。
- 若頭のマサ(近藤正臣)
- 元ヤクザ。賭け事の才能がある。現在は生活保護を受け、団地でひとり暮らしをしている。
- はばかりのモキチ(中尾彬)
- 元ヤクザで、詐欺を得意とする。キャバクラ嬢をしている孫の百合子に小遣いをもらいつつ、今でも寸借詐欺を働いている。
- 早撃ちのマック(品川徹)
- 元ヤクザ。スティーヴ・マックイーンに憧れており、アメリカかぶれの格好をしている。銃の早撃ちが得意。
- ステッキのイチゾウ(樋浦勉)
- 元ヤクザ。刀を仕込んだステッキを愛用する、凄腕の刺客。イメージとしては座頭市。
- 五寸釘のヒデ(伊藤幸純)
- 元ヤクザ。五寸釘を武器にしており、ダーツのようにそれを正確に投げる。
- カミソリのタカ(吉澤健)
- 元ヤクザ。武器はカミソリ。現在は老人介護施設「愛の家」で暮らしている。
- 神風のヤス(小野寺昭)
- 右翼系の元ヤクザ。特攻隊に憧れており、小型機を操縦できる。
- 西(安田顕)
- オレオレ詐欺や悪徳商法で金を稼ぐ京浜連合のボス。暴走族上がりのワルで、やっていることは完全にヤクザだが、暴対法に引っかからないよう賢く立ち回っている。
- 徳永(下條アトム)
- 西の部下。障害者を装って借金の取り立てをしたりする性根の腐り切ったワル。
- 村上(ビートたけし)
- 龍三とは昔馴染みの刑事。暴力団対策担当で、龍三や西の動きに目を光らせている。
- 龍平(勝村政信)
- 龍三の息子。食品会社に勤める堅気のサラリーマンで、妻との間に息子の康介がいる。ヤクザが大嫌いで、龍三ともうまくいっていない。
映画『龍三と七人の子分たち』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『龍三と七人の子分たち』のあらすじ【起】
ヤクザの親分だった龍三は、現役を引退し、息子夫婦の世話になっている。息子の龍平は堅気のサラリーマンで、父親がヤクザだったことを恥ずかしがっていた。龍三は肩身の狭い思いをしていたが、全面的に息子の世話になっているので我慢するしかなかった。
龍平家族が妻の実家で休暇を過ごすことになり、小遣いをもらった龍三はパチンコへ繰り出す。そこでチンピラ風情の徳永と揉めて、店を追い出される。
暇を持て余していた龍三は、昔馴染みのマサへ電話をかける。マサとの電話を切った直後、龍平の上司と名乗る男から“龍平君が会社の金500万円を電車に置き忘れたので、立て替えてくれないか”という電話がある。龍三は息子のピンチを救うため、とりあえず金目のものをかき集めて、待ち合わせ場所へ向かう。
金を用意できなかった龍三は、息子の同僚という男の前で、自分の指を詰めようとする。男は驚いて逃げ出し、マサはオレオレ詐欺を疑う。
蕎麦屋で酒を飲んでいた龍三とマサは、ここでも騒ぎを起こして店を追い出される。夜の街をぶらついていると、寸借詐欺をしているモキチと出くわす。モキチは京浜連合の若者に絡まれており、龍三とマサはモキチを救いにいく。それを見た刑事の村上は、今の警察はヤクザにうるさいから気をつけるよう龍三たちに忠告する。龍三はマサやモキチと話をしているうちに、昔の仲間に会ってみたくなる。
映画『龍三と七人の子分たち』のあらすじ【承】
一方、最近この辺りで幅を利かしている京浜連合の西は、オレオレ詐欺でしくじった部下を叱責していた。西は暴対法の網目をくぐってあらゆる悪事を働いている新手のワルで、古臭い龍三たちのようなヤクザをバカにしていた。
マサとモキチは龍三の家で厄介になり、昔の仲間へハガキを送る。龍平の勤務する食品会社では、食品の偽装が発覚し、市民グループが抗議デモを行なっていた。渉外担当の龍平は上司に緊急で呼び戻され、突然家に帰ってくる。龍平はヤクザ仲間を家に連れ込んだ龍三に“出て行け”と告げる。龍三たちはマサの暮らす団地へ移動する。
上野の西郷さんの銅像前には、ハガキをもらったカミソリのタカ、ステッキのイチゾウ、早撃ちのマック、五寸釘のヒデがやってくる。みんなはすっかり老いぼれジジイになっていたが、ヤクザな性分は健在だった。龍三たちは、地上げをしていた京浜連合の部下を追い払い、意気揚々と飲みにいく。
7人は、もう一回ヤクザの組を作って小賢しい若造たちを片付けようと盛り上がる。親分は犯罪歴のポイント制で決めることになり、最も悪事を働いた龍三が親分、次点のマサが若頭になる。組は「一龍会」と命名し、とりあえずマサの団地を根城にする。
翌朝、マサの部屋を訪れた悪徳押し売り業者は、いかつい龍三たちを見て一目散に逃げ出す。この男も京浜連合の人間で、西は自分たちの邪魔をする“ジジイ”に怒りを募らせる。
映画『龍三と七人の子分たち』のあらすじ【転】
龍三たちは、お世話になった榊会長のところへ、一龍会を立ち上げた挨拶へ行く。しかし榊会長は5年前に亡くなっており、2代目の息子は任侠の世界と縁を切っていた。息子は年寄りを騙して高価な羽毛布団や浄水器を売りつける悪徳業者だった。
その帰り、車椅子に乗って借金の取り立てをする徳永を見かけた龍三たちは、徳永から西の存在を聞き出す。最近この辺のシマを荒らしているのが西の率いる京浜連合だと知り、龍三たちは本部のあるビルへ乗り込んでいく。しかし西から通報を受けた村上たちに連れ出されてしまう。村上は暴対法の存在を説明し、自粛するよう龍三を注意する。
龍平の会社前では抗議デモが続いていた。現場ではそのデモと全く関係のない神風のヤスまで騒いでおり、ヤスを見つけた龍三たちは、この会社から金を巻き上げようと考える。龍三はここが息子の会社だとは知らなかった。
龍三たちは、龍平の車を勝手に街宣車仕様にして、会社前で騒ぎ始める。これに目をつけた京浜連合は、会社から金をせしめようと、徳永を行かせる。龍三は徳永を追って会社内に入り、徳永を追い払う。会社から200万円の謝礼をもらった龍三は、子分たちと競馬へ出かけ、有り金を全部スってしまう。龍平は、車の件で上司から誤解され、大迷惑を被っていた。
映画『龍三と七人の子分たち』の結末・ラスト(ネタバレ)
またもや龍三たちに邪魔をされた西は、キャバ嬢をしているモキチの孫をさらってくるよう、部下に命令する。モキチの孫の百合子は京浜連合の下っ端と付き合っていた。彼氏からその話を聞いた百合子は、祖父のモキチに相談する。
百合子を守るため、モキチはひとりで京浜連合のビルに侵入し、西の部下たちに捕まってしまう。モキチはひどい暴行を受け、最後は西にバットで殴り殺される。
モキチの仇を討つため、タカとヤスが小型飛行機でビルに突っ込み、その後龍三たちが西のオフィスへ殴り込みをかけることにする。しかし、飛行機を操縦して興奮したヤスは横須賀の基地へ向かってしまい、仕方がないので5人はモキチの死体とともにオフィスへ乗り込む。西たちは、怖いもの知らずの危険すぎる年寄りたちに恐れをなし、車で逃走する。龍三たちは市バスをハイジャックして、その後を追う。
激しいカーチェイスを繰り広げ、市場へ逃げ込んだ西の車は、市バスと正面衝突して停車する。駆けつけた村上たちは、言い訳がましい西やその部下を殴って全員逮捕する。龍三たちは逃げも隠れもせず、警察車両へ乗り込んでいく。“次は俺が親分だ”というマサに、龍三は“出てくる頃にはみんな死んでら”と言って、笑うのだった。
映画『龍三と七人の子分たち』の感想・評価・レビュー
基本的にコント。『3-4×10月』みたいな北野作品ではわりと特殊な部門の子孫と言える。映画の出来は最近のフィルムノワール郡と比べると大きく落ちるのも確かではあるし、コメディとしてもあまり笑えないところも多いのが正直なところだが、それでも大枠は面白いし優しさが妙に溢れている。こういった人間的な自由さが北野武を大物にのし上げたんだろうなという感想を抱く。にしても出演者がどんどん亡くなっている。人生の終盤にこうした作品に参加できたのならそれはそれで幸いだろう。(男性 30代)
みんなの感想・レビュー
今作は、北野作品には珍しく、徹頭徹尾コメディタッチです。
本職は芸人の北野監督ですから、本来コメディこそのはずですが、彼の作品で印象深いものと言えば、現代の任侠映画ともいうべき、フィルム・ノワール。「キタノブルー」と評される、青のフィルターや冷たい印象の画面構成が多く、説明的な台詞が少なく、暴力描写に容赦がないという特徴があり、まるでヨーロッパの映画のような洗練された、ある意味ではとっつきにくい作風が特徴です。
そんな中、今作は、派手なBGMに往年の人気俳優を集め、随所に笑いをちりばめた、明るい色調の映画。暴力表現でさえ、かなり控えめです。
劇場も笑いに包まれ、年齢層も広く、興行収入も奮いました。
わたしには、悲劇でした。
彼の、これまでの映画を愛してきた映画ファンは裏切られる形になりました。
理由は、その笑いの、あまりの親切さ。
例えばバナナで足を滑らせるような、そんなベタで優しい笑いに満ちている今作。とても、残念です。
彼のこれまでの映画だって、ユーモアはあったのです。たとえば「菊次郎の夏」で、タイヤをパンクさせタクシーを転ばせるシーンや、「ソナチネ」で、アロハシャツでくつろぎながら拳銃を磨くシーン。「これ、笑っていいの?」と観客が不安になるブラック・コメディこそ、彼の映画の「笑い」だったはずです。
今作は警察をはじめとする「オレオレ詐欺撲滅キャンペーン」の一環でもあるそうです。だからこそ、こんなにも世直し風なのかもしれませんが、そのようなスポンサー事情が透けて見えてしまうことで、テレビ映画のような風情になってしまうことが否めません。
これまでの北野映画ファンが求めるレベルは、残念ながら突破できていなかったように思えて仕方ありません。
今作がもし、まったく別の監督の作品であったとしたら、わたしはきっともう少し高い点数をつけ、皆さんにもお勧めしていたと思います。
しかし前提として、わたしは北野映画ファンなのです。だからこそ、どうしても、今作への期待も高まってしまいました。
今作には、往年の一流の演技派俳優が数多く出演します。内容も分かりやすく、とても易しい作品でした。今作をお勧めするとしたら、間違いなく年配の方に向けてです。心の若い映画好きのあなたはぜひ、北野作品の初期を鑑賞してみてくださいね。