この記事では、映画『龍三と七人の子分たち』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『龍三と七人の子分たち』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『龍三と七人の子分たち』の作品情報
上映時間:111分
ジャンル:コメディ、フィルムノワール
監督:北野武
キャスト:藤竜也、近藤正臣、中尾彬、品川徹 etc
※動画の配信情報は2022年5月時点のものです。配信状況により無料ではない場合があります。最新の配信状況は各動画配信サービス(VOD)の公式サイトでご確認ください。
映画『龍三と七人の子分たち』の登場人物(キャスト)
- 龍三親分(藤竜也)
- 元ヤクザの組長で、背中に龍の刺青を入れている。左手の小指と薬指はない。現在は息子夫婦の世話になっており、退屈な日々を送っている。
- 若頭のマサ(近藤正臣)
- 元ヤクザ。賭け事の才能がある。現在は生活保護を受け、団地でひとり暮らしをしている。
- はばかりのモキチ(中尾彬)
- 元ヤクザで、詐欺を得意とする。キャバクラ嬢をしている孫の百合子に小遣いをもらいつつ、今でも寸借詐欺を働いている。
- 早撃ちのマック(品川徹)
- 元ヤクザ。スティーヴ・マックイーンに憧れており、アメリカかぶれの格好をしている。銃の早撃ちが得意。
- ステッキのイチゾウ(樋浦勉)
- 元ヤクザ。刀を仕込んだステッキを愛用する、凄腕の刺客。イメージとしては座頭市。
- 五寸釘のヒデ(伊藤幸純)
- 元ヤクザ。五寸釘を武器にしており、ダーツのようにそれを正確に投げる。
- カミソリのタカ(吉澤健)
- 元ヤクザ。武器はカミソリ。現在は老人介護施設「愛の家」で暮らしている。
- 神風のヤス(小野寺昭)
- 右翼系の元ヤクザ。特攻隊に憧れており、小型機を操縦できる。
- 西(安田顕)
- オレオレ詐欺や悪徳商法で金を稼ぐ京浜連合のボス。暴走族上がりのワルで、やっていることは完全にヤクザだが、暴対法に引っかからないよう賢く立ち回っている。
- 徳永(下條アトム)
- 西の部下。障害者を装って借金の取り立てをしたりする性根の腐り切ったワル。
- 村上(ビートたけし)
- 龍三とは昔馴染みの刑事。暴力団対策担当で、龍三や西の動きに目を光らせている。
- 龍平(勝村政信)
- 龍三の息子。食品会社に勤める堅気のサラリーマンで、妻との間に息子の康介がいる。ヤクザが大嫌いで、龍三ともうまくいっていない。
映画『龍三と七人の子分たち』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『龍三と七人の子分たち』のあらすじ【起】
ヤクザの親分だった龍三は、現役を引退し、息子夫婦の世話になっている。息子の龍平は堅気のサラリーマンで、父親がヤクザだったことを恥ずかしがっていた。龍三は肩身の狭い思いをしていたが、全面的に息子の世話になっているので我慢するしかなかった。
龍平家族が妻の実家で休暇を過ごすことになり、小遣いをもらった龍三はパチンコへ繰り出す。そこでチンピラ風情の徳永と揉めて、店を追い出される。
暇を持て余していた龍三は、昔馴染みのマサへ電話をかける。マサとの電話を切った直後、龍平の上司と名乗る男から“龍平君が会社の金500万円を電車に置き忘れたので、立て替えてくれないか”という電話がある。龍三は息子のピンチを救うため、とりあえず金目のものをかき集めて、待ち合わせ場所へ向かう。
金を用意できなかった龍三は、息子の同僚という男の前で、自分の指を詰めようとする。男は驚いて逃げ出し、マサはオレオレ詐欺を疑う。
蕎麦屋で酒を飲んでいた龍三とマサは、ここでも騒ぎを起こして店を追い出される。夜の街をぶらついていると、寸借詐欺をしているモキチと出くわす。モキチは京浜連合の若者に絡まれており、龍三とマサはモキチを救いにいく。それを見た刑事の村上は、今の警察はヤクザにうるさいから気をつけるよう龍三たちに忠告する。龍三はマサやモキチと話をしているうちに、昔の仲間に会ってみたくなる。
映画『龍三と七人の子分たち』のあらすじ【承】
一方、最近この辺りで幅を利かしている京浜連合の西は、オレオレ詐欺でしくじった部下を叱責していた。西は暴対法の網目をくぐってあらゆる悪事を働いている新手のワルで、古臭い龍三たちのようなヤクザをバカにしていた。
マサとモキチは龍三の家で厄介になり、昔の仲間へハガキを送る。龍平の勤務する食品会社では、食品の偽装が発覚し、市民グループが抗議デモを行なっていた。渉外担当の龍平は上司に緊急で呼び戻され、突然家に帰ってくる。龍平はヤクザ仲間を家に連れ込んだ龍三に“出て行け”と告げる。龍三たちはマサの暮らす団地へ移動する。
上野の西郷さんの銅像前には、ハガキをもらったカミソリのタカ、ステッキのイチゾウ、早撃ちのマック、五寸釘のヒデがやってくる。みんなはすっかり老いぼれジジイになっていたが、ヤクザな性分は健在だった。龍三たちは、地上げをしていた京浜連合の部下を追い払い、意気揚々と飲みにいく。
7人は、もう一回ヤクザの組を作って小賢しい若造たちを片付けようと盛り上がる。親分は犯罪歴のポイント制で決めることになり、最も悪事を働いた龍三が親分、次点のマサが若頭になる。組は「一龍会」と命名し、とりあえずマサの団地を根城にする。
翌朝、マサの部屋を訪れた悪徳押し売り業者は、いかつい龍三たちを見て一目散に逃げ出す。この男も京浜連合の人間で、西は自分たちの邪魔をする“ジジイ”に怒りを募らせる。
映画『龍三と七人の子分たち』のあらすじ【転】
龍三たちは、お世話になった榊会長のところへ、一龍会を立ち上げた挨拶へ行く。しかし榊会長は5年前に亡くなっており、2代目の息子は任侠の世界と縁を切っていた。息子は年寄りを騙して高価な羽毛布団や浄水器を売りつける悪徳業者だった。
その帰り、車椅子に乗って借金の取り立てをする徳永を見かけた龍三たちは、徳永から西の存在を聞き出す。最近この辺のシマを荒らしているのが西の率いる京浜連合だと知り、龍三たちは本部のあるビルへ乗り込んでいく。しかし西から通報を受けた村上たちに連れ出されてしまう。村上は暴対法の存在を説明し、自粛するよう龍三を注意する。
龍平の会社前では抗議デモが続いていた。現場ではそのデモと全く関係のない神風のヤスまで騒いでおり、ヤスを見つけた龍三たちは、この会社から金を巻き上げようと考える。龍三はここが息子の会社だとは知らなかった。
龍三たちは、龍平の車を勝手に街宣車仕様にして、会社前で騒ぎ始める。これに目をつけた京浜連合は、会社から金をせしめようと、徳永を行かせる。龍三は徳永を追って会社内に入り、徳永を追い払う。会社から200万円の謝礼をもらった龍三は、子分たちと競馬へ出かけ、有り金を全部スってしまう。龍平は、車の件で上司から誤解され、大迷惑を被っていた。
映画『龍三と七人の子分たち』の結末・ラスト(ネタバレ)
またもや龍三たちに邪魔をされた西は、キャバ嬢をしているモキチの孫をさらってくるよう、部下に命令する。モキチの孫の百合子は京浜連合の下っ端と付き合っていた。彼氏からその話を聞いた百合子は、祖父のモキチに相談する。
百合子を守るため、モキチはひとりで京浜連合のビルに侵入し、西の部下たちに捕まってしまう。モキチはひどい暴行を受け、最後は西にバットで殴り殺される。
モキチの仇を討つため、タカとヤスが小型飛行機でビルに突っ込み、その後龍三たちが西のオフィスへ殴り込みをかけることにする。しかし、飛行機を操縦して興奮したヤスは横須賀の基地へ向かってしまい、仕方がないので5人はモキチの死体とともにオフィスへ乗り込む。西たちは、怖いもの知らずの危険すぎる年寄りたちに恐れをなし、車で逃走する。龍三たちは市バスをハイジャックして、その後を追う。
激しいカーチェイスを繰り広げ、市場へ逃げ込んだ西の車は、市バスと正面衝突して停車する。駆けつけた村上たちは、言い訳がましい西やその部下を殴って全員逮捕する。龍三たちは逃げも隠れもせず、警察車両へ乗り込んでいく。“次は俺が親分だ”というマサに、龍三は“出てくる頃にはみんな死んでら”と言って、笑うのだった。
映画『龍三と七人の子分たち』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
基本的にコント。『3-4×10月』みたいな北野作品ではわりと特殊な部門の子孫と言える。映画の出来は最近のフィルムノワール郡と比べると大きく落ちるのも確かではあるし、コメディとしてもあまり笑えないところも多いのが正直なところだが、それでも大枠は面白いし優しさが妙に溢れている。こういった人間的な自由さが北野武を大物にのし上げたんだろうなという感想を抱く。にしても出演者がどんどん亡くなっている。人生の終盤にこうした作品に参加できたのならそれはそれで幸いだろう。(男性 30代)
北野武監督らしいユーモアと暴力の絶妙なバランスに、思わず笑ってしまいました。引退した元ヤクザのじいさんたちが、現代のオレオレ詐欺グループに立ち向かうという設定が最高に痛快。特にラスト、龍三が自らの“仁義”を貫いて戦う姿には、涙と笑いが同時に押し寄せました。老いてなお現役、そんな彼らに拍手!(30代 男性)
正直、観る前は高齢の元ヤクザって設定にあまり期待していなかったんですが、予想を裏切る面白さでした!龍三や子分たちが繰り広げるドタバタ劇のテンポも良く、セリフの間や表情でしっかり笑わせてくれます。特に病院での大乱闘シーンは最高。最後までじいさんたちの粋な生き様に魅せられました。(20代 女性)
ヤクザ映画でありながらも、どこかハートフルで、北野監督の人間観察眼が光る作品でした。現代の犯罪に、昭和のアウトローが仁義で挑む展開が爽快。ラストで龍三が命を賭して抗争に挑む姿には胸が熱くなりました。派手なアクションではなく“顔”で語る演技も見事で、俳優陣の力に圧倒されました。(50代 男性)
昔ながらの“筋の通し方”が、今の社会では通じなくなっている現実を、笑いと哀愁で包んだ作品。世の中に居場所をなくしたおじいちゃんたちが、再び“自分の生き方”を取り戻していく様子は、どこか泣けてしまいます。暴力もあるけど、それ以上に人間らしさに溢れた、優しい映画でした。(40代 女性)
どこか「必殺仕事人」的な魅力がある映画でした。年老いたけれど“気概”は衰えていない元極道たちが、悪に立ち向かう姿が小気味よくて、観ていてスカッとします。特に龍三と悪徳詐欺師との対峙シーンは緊張感がありながらもどこかコミカルで、北野作品らしさを感じました。娯楽映画として大満足です。(30代 男性)
久しぶりに映画館で爆笑した一本でした。老人たちが主役というユニークな視点でありながら、テンポよく進む展開に飽きがこない。派手なアクションやCGに頼らず、演技力と脚本で見せてくれる北野監督の職人技を感じました。シリアスな場面もどこかユーモラスで、最初から最後まで楽しめました。(60代 男性)
世代交代が進む中、まだまだ現役でいたい“男たち”の物語として胸に刺さりました。特に龍三の「筋を通す」生き様が、昔ながらの人情を思い出させてくれてじーんときました。今の時代にこそ、こういう作品が必要なんじゃないかと思えるほど、どこか温かくて懐かしい映画でした。(40代 女性)
若い世代にとっては“異世界”のように見える昭和のヤクザ像ですが、それが逆に新鮮でした。テンポよく笑いを交えながらも、最終的には「義理人情とは何か」を問いかけてくれる構成に感心。自分の祖父世代と重ねて観ると、より一層グッとくる作品でした。クライマックスの決意には思わず涙。(20代 男性)
北野映画の中でも、ここまで明るくコメディに振り切った作品は貴重です。とはいえ、ただ笑わせるだけでなく、年を重ねることへの寂しさや孤独も描かれていて、考えさせられる部分も多かったです。龍三の最期の台詞が、とても潔くてかっこよかった。笑って泣ける、大人のためのエンタメ映画。(50代 女性)
映画『龍三と七人の子分たち』を見た人におすすめの映画5選
マックQ
この映画を一言で表すと?
老いてなお現役!ダンディな元刑事の大逆転劇が炸裂するアクション映画。
どんな話?
退職した元警察官が、腐敗した組織と対決するため再び拳銃を握る。組織の闇に単独で立ち向かう男の姿が、冷静な判断力と熱い正義感を伴って描かれる、骨太なクライム・アクション。ハードボイルドな雰囲気も魅力。
ここがおすすめ!
主人公の熟年ならではの渋さが際立つ本作は、『龍三と七人の子分たち』の「老いても闘える」テーマと親和性が高い作品。武力ではなく経験と信念で立ち向かう姿が胸を打ち、見応えたっぷりの展開に引き込まれます。
RED/レッド
この映画を一言で表すと?
引退した最強の元スパイたちが再び集結!型破りなシニア・アクション。
どんな話?
引退生活を送っていた元CIA工作員が命を狙われ、昔の仲間たちと再びチームを結成。高度なスキルと無敵の絆で黒幕を追い詰めていく。ユーモアと迫力のあるアクションが融合した、痛快でスタイリッシュな娯楽作。
ここがおすすめ!
“年寄りが主役”でここまでカッコよくて笑える映画はなかなかない!『龍三と七人の子分たち』と同じく、引退した男たちが再び立ち上がる物語にワクワクさせられます。老いをポジティブに描く点も非常に魅力的。
テルマエ・ロマエ
この映画を一言で表すと?
古代ローマの男が現代日本にタイムスリップ!?温泉コメディの傑作。
どんな話?
古代ローマの浴場設計士ルシウスが、ある日突然現代日本にタイムスリップ。日本の風呂文化に驚きながらも、その知識を古代に持ち帰って活用していく。真面目すぎるルシウスのリアクションが爆笑を呼ぶ異文化コメディ。
ここがおすすめ!
『龍三と七人の子分たち』のようにシリアスと笑いを絶妙にブレンドした作品。非現実的な設定を本気で演じきる阿部寛の存在感も抜群で、クセになる世界観。シュールで知的な笑いが好きな方に特におすすめです。
アウトレイジ
この映画を一言で表すと?
裏切りと報復が渦巻く、極限まで削ぎ落とされたバイオレンス群像劇。
どんな話?
暴力団同士の権力闘争を描いた北野武監督のバイオレンス・ドラマ。義理も人情も通じない世界で、誰が誰を裏切るか予測不能の展開が続く。徹底したリアリズムと緊張感に満ちた映像がクセになる作品。
ここがおすすめ!
『龍三と七人の子分たち』の“ヤクザとしての美学”を、よりダークでシリアスに描いた一作。コメディタッチではなく骨太な極道ドラマを求める方には特に刺さるはず。暴力と静寂のバランスも見どころ。
グラン・トリノ
この映画を一言で表すと?
偏見に満ちた頑固な老人が、隣人との交流で変わっていく感動の傑作。
どんな話?
戦争帰還兵で偏屈な老人ウォルトが、移民の隣人少年タオとの交流を通して、自らの心を開いていくヒューマンドラマ。やがて少年を救うため、彼は思いもよらない行動に出る。イーストウッドの名演が光る一作。
ここがおすすめ!
『龍三と七人の子分たち』と同様、“老いてもなお守るべき信念”が物語の軸になっています。静かな中に情熱を宿す主人公の姿に、誰もが心を動かされるはず。笑いよりも深い余韻を味わいたい方にぴったりです。
みんなの感想・レビュー
今作は、北野作品には珍しく、徹頭徹尾コメディタッチです。
本職は芸人の北野監督ですから、本来コメディこそのはずですが、彼の作品で印象深いものと言えば、現代の任侠映画ともいうべき、フィルム・ノワール。「キタノブルー」と評される、青のフィルターや冷たい印象の画面構成が多く、説明的な台詞が少なく、暴力描写に容赦がないという特徴があり、まるでヨーロッパの映画のような洗練された、ある意味ではとっつきにくい作風が特徴です。
そんな中、今作は、派手なBGMに往年の人気俳優を集め、随所に笑いをちりばめた、明るい色調の映画。暴力表現でさえ、かなり控えめです。
劇場も笑いに包まれ、年齢層も広く、興行収入も奮いました。
わたしには、悲劇でした。
彼の、これまでの映画を愛してきた映画ファンは裏切られる形になりました。
理由は、その笑いの、あまりの親切さ。
例えばバナナで足を滑らせるような、そんなベタで優しい笑いに満ちている今作。とても、残念です。
彼のこれまでの映画だって、ユーモアはあったのです。たとえば「菊次郎の夏」で、タイヤをパンクさせタクシーを転ばせるシーンや、「ソナチネ」で、アロハシャツでくつろぎながら拳銃を磨くシーン。「これ、笑っていいの?」と観客が不安になるブラック・コメディこそ、彼の映画の「笑い」だったはずです。
今作は警察をはじめとする「オレオレ詐欺撲滅キャンペーン」の一環でもあるそうです。だからこそ、こんなにも世直し風なのかもしれませんが、そのようなスポンサー事情が透けて見えてしまうことで、テレビ映画のような風情になってしまうことが否めません。
これまでの北野映画ファンが求めるレベルは、残念ながら突破できていなかったように思えて仕方ありません。
今作がもし、まったく別の監督の作品であったとしたら、わたしはきっともう少し高い点数をつけ、皆さんにもお勧めしていたと思います。
しかし前提として、わたしは北野映画ファンなのです。だからこそ、どうしても、今作への期待も高まってしまいました。
今作には、往年の一流の演技派俳優が数多く出演します。内容も分かりやすく、とても易しい作品でした。今作をお勧めするとしたら、間違いなく年配の方に向けてです。心の若い映画好きのあなたはぜひ、北野作品の初期を鑑賞してみてくださいね。