『父 パードレ・パドローネ』のタヴィアーニ兄弟が監督したドラマ映画。第二次世界大戦も終戦間近のイタリアの農村で、生き残りを賭けて村を脱出する人々の姿を描く。『エル・スール』のオメロ・アントヌッティ主演。
映画『サン・ロレンツォの夜』 作品情報
- 製作年:1982年
- 上映時間:107分
- ジャンル:ファンタジー、ヒューマンドラマ
- 監督:パオロ・タビアーニ、ビットリオ・タビアーニ
- キャスト:オメロ・アントヌッティ、マルガリータ・ロサーノ、ミコル・グイデッリ、ノルマ・マルテッリ、クラウディオ・ビガリ etc…
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映画『サン・ロレンツォの夜』 評価
- 点数:90点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『サン・ロレンツォの夜』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『サン・ロレンツォの夜』のあらすじを紹介します。
イタリア中部のトスカーナでは、聖ロレンツォの日の夜に流れ星に願いごとをすると叶うという言い伝えがある。その夜、チュチリアは眠りにつく子供に自分が戦争中にした経験を語り始める。
終戦も間近の1944年の夏、小さな村の教会ではコラードと妊婦のペリンディアの挙式が開かれていた。幸せな時間が流れていたが、村にも戦争の足音が迫る。ドイツ軍は人家の爆破を決定し、村民に教会へ集合するよう通達したのだ。しかしガルヴァーノ(オメロ・アントヌッティ)はこれをドイツの軍の罠と判断し、村を脱出して連合軍と合流することを提案する。これに賛同した人々はこっそりと村を抜け出す。その中にはまだ幼いチュチリアやペリンディアの姿もあった。しかしファシストの追撃やペリンディアの陣痛もあり何名かは村へ引き返してしまう。そんな彼らはドイツ軍の策略で教会の大爆破に巻き込まれ、多くは命を落としてしまうのだった。
引っ返さなかった人々もファシストの一団によって多くが命を落としてしまう。それでも何とか連合軍と合流すると、付近の村を解放したことを知る。住み慣れた村に戻る準備をする人々の中、ガルヴァーノだけは旅先で滞在していた村に残るのだった。そして現代、平和への想いを込めて語ったチュチリアの部屋の外では流れ星が光っていた。
映画『サン・ロレンツォの夜』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『サン・ロレンツォの夜』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
語り手の所在
同じ戦争を描いてもその語り手の所在によって物語は大きく異なる。例えば米兵を主人公に据えれば英雄譚になり得るし、日本兵を主人公に据えれば陰鬱な悲劇になり得る。本作の語り手は僅か6歳の少女である。彼女から見た戦争は理不尽極まりないものであり、それ故物語は彼女のフィルターを通して語られる。即ちファンタジーとして語られるのだ。例えば知り合い同士の殺し合いはローマ時代の戦争という空想に変換される。しかしそれは戦争の悲惨さを隠蔽するものではない。むしろファンタジー化するしかないというその状況こそが、逆説的に戦争の悲惨さを伝えるのだ。
米兵とのやりとり
作中で印象的なのが少女と米兵のやりとりだ。早朝出会ったアメリカ兵は彼女たちに性的な眼差しを向けているように見える。チョコレートのようなものを少女に渡すと、アメリカ兵は自分の指をくわえる動作をした後、自分の股間を指差す。この一連の流れは少女たちに売春を持ちかけたと考えることができるだろう。また少女の服装は派手な柄でピアスもつけており、娼婦を連想することもできるし、アメリカ兵がコンドームを膨らませて渡すことでこのイメージは決定づけられる。もしそうであれば、このシーンは辛い現実から逃れるために作られた夢ということになる。性交渉という残酷な記憶はにらめっこという幼児的な遊びに変換されて、少女の戦争の記憶として残ったのだ。
作品の世界を観客に楽しんでもらおうという監督の意図がひしひしと伝わってくる作品でした。冒頭から美しい映像が流れ、全体的なカメラワークも他の作品とは一味違ったもの。
戦争をテーマにしている事もあり、重めのストーリーかと思いきや、子供たちの描き方がものすごく自然でありのままなので、クスッと笑ってしまうようなシーンもあります。
だからこそ、余計に村を爆破するシーンやアメリカ兵の性を感じさせるような描写が印象的で、ラストはハッピーエンドであって欲しいと願ってしまいました。(女性 30代)
映画『サン・ロレンツォの夜』 まとめ
イタリアののどかな農村を舞台に、立場の違いによって仲間同士で殺し合うという悲惨な現実を描く。しかし戦争の残酷さを、あえて少女の空想の中に落とし込めることによって逆にそれを強調することに成功している。とにかくファンタジックなユーモラスと残酷さの対比が見事だ。同様の手法を用いた作品として『ライフ・イズ・ビューティフル』や『パンズ・ラビリンス』などが挙げられるが、この2作と比べても勝るとも劣らない秀作。
のどかな風景を切り取る撮影も素晴らしい。陽光がふりそそぐ自然は美しく、まるで争いあう人間の愚かさを嘲笑うかのようだ。中でもラストの狐の嫁入りのシーンは息をのむ。残酷な過去と輝く未来が混濁しているかのような素晴らしいシーンだ。
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