この記事では、映画『三度目の殺人』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。
映画『三度目の殺人』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 2017年 |
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上映時間 | 125分 |
ジャンル | サスペンス ミステリー ドラマ |
監督 | 是枝裕和 |
キャスト | 福山雅治 広瀬すず 満島真之介 市川実日子 |
製作国 | 日本 |
映画『三度目の殺人』の登場人物(キャスト)
- 重盛朋章(福山雅治)
- 勝ちに強い拘りを持つ弁護士。独立して自らの事務所を開いている。父親は元裁判長であり、30年前の三隅の事件を担当していた。三隅と関わることで、勝ちに拘るよりも弁護士としての使命を全うすることに重きを置くようになる。
- 三隅高司(役所広司)
- 食品加工工場の雇い主を殺害した犯人。30年前にも殺人の前科を持つ。息子と娘がいるが、疎遠になっている。殺害については自供しているが、動機や証言が毎回変わる。
- 山中咲江(広瀬すず)
- 三隅に殺された工場主の娘。生まれつき左足が悪く、引き摺って歩いている。実の父親から性的虐待を受けており、酷く恨んでいる。三隅を助けようと秘密を明かしてくれる。
- 山中美津江(斉藤由貴)
- 三隅に夫を殺された工場主の妻。夫が行っている不正や、実の娘に性的虐待を加えていることを見て見ぬふりをしている。
- 摂津大輔(吉田鋼太郎)
- 重盛と同じ事務所の弁護士。元は三隅の弁護をしていたが、証言が二転三転するため、手に負えないと判断し重盛に助けを求める。
映画『三度目の殺人』のネタバレ・あらすじ(起承転結)
映画『三度目の殺人』のあらすじ【起】
同僚の摂津から助力を乞われ、殺人事件の犯人である三隅高司の弁護をすることになった重盛朋章。彼は自分の事務所を持つ弁護士で勝つことに強い拘りを持っていた。
摂津の話では犯人の三隅は30年前にも殺人の前科があり、しかも会う度に証言を二転三転と変えるらしく手に負えないと言う。
実際に面会してみると、摂津の話通り殺人に関しては認めているものの、動機や方法に関しては信用性に欠けるようだった。
三隅は世話になっていた食品加工工場の社長を、金銭目的にて殺害している。三隅の自供通りであれば前科もあるため、死刑判決は確実だが、犯人の弁護士としては無期懲役にまで罪を軽減したい。重盛は事務所を上げて三隅の事件について調査することにした。
調査を進める内に被害者の妻、山中美津江との不倫疑惑が浮き上がったため、重盛は怨恨の線で情状酌量を得ようと計画。だが、調査が進むほど美津江との接点は少なく、どちらかと言うと娘の山中咲江との接点の方が多い。重盛は三隅の犯行の動機は金銭目的なのではなく、別にあるのではないかと思い始める。
山中咲江は高校3年生の大人しい子だった。産まれつき左足が悪く、補助具を着け引き摺って歩く。友達がいないのかいつも1人で、北海道大学を目指して勉強しているようだった。
この少女について調査をすると、足については生まれつきであるにも関わらず、屋根から転落した時のものだと説明していたらしい。
映画『三度目の殺人』のあらすじ【承】
重盛は三隅の前科を調べ、彼の生い立ちを知るため、故郷である北海道へも向かうことにした。北海道には三隅の息子がいる。当初、北海道への旅費は実費になるとのことだったので、行かない方向で考えていた重盛だったが、三隅が証言を二転三転してまで隠す、本当の動機が何なのか知りたいと思ったのである。
昭和61年、三隅は借金取りを2人殺害し金を奪った挙句、現住建造物の放火にて逮捕。その時に彼を担当した裁判長が重盛の父親であった。父親は三隅のことを悪党と呼びつつ、怨恨にて情状酌量を行い、死刑を回避したのである。
30年前の事件で当時、三隅を逮捕した警官と話すことができた。三隅の犯行の動機は怨恨となっているが、元警官の話では今と同じように証言が二転三転としていたらしい。その当時は炭鉱が閉鎖したため、失業者が溢れ金に困った人々に目を付けた輩が高利で金貸しを行っていた。故に、誰もが借金の返済で困っていたと言う。しかも、三隅自身からは憎しみや恨みの念を感じることはなく、どこか虚ろで空っぽな印象を持ったと話すのだった。
元警官から話を聞いた後は三隅の息子の元を訪れたが、息子は父親のせいで妹が町に住めなくなったと恨みを抱いていた。犯罪者の子供に罪はないが、父親のせいで阻害され酷い扱いを受けたのだろう。結局、娘の居場所も分からずに東京へ戻った。
今回の裁判は裁判員制度である。故に重盛は三隅の娘の証言にて、裁判員の同情を得ようと考えていたが、勝手に息子へと会いに行ったせいで三隅が酷く怒ってしまう。普段は温厚な彼だったが、その姿はまるで人が変わったかのようだった。
映画『三度目の殺人』のあらすじ【転】
学校帰りを狙って咲江の元を訪れた重盛。彼は三隅の娘が咲江と同じように足が悪かったことを話し、2人が仲良くなったきっかけになったのではないかと推論を明かす。しかし、咲江は三隅の娘の話までは知らないようだった。
その後、重盛は公判前の打ち合わせで三隅との面会へ。法廷戦略としては、美津江から夫の殺人を依頼されて犯行を行ったことにする予定である。普段は温厚で従順、人当たりの好い三隅。打ち合わせが済んだ後、彼から自分が犯行を行った本当の理由を当てて欲しいと言い出す。重盛は三隅の動機は相手を裁くのが目的だと思っていたが、それはどうやら違うらしく、三隅は被害者が受ける理不尽に酷く憤りを感じているようだった。
そうして、いよいよ公判が開廷。三隅は打ち合わせ通りの証言を行い、重盛は美津江を共犯者に仕立て上げようと流れを作った。
しかし、公判終了後、咲江が重盛の元を訪れ衝撃的な事実を明かす。彼女は14歳の頃から実の父親により性的虐待を受けていたと言うのだ。河川敷でたまたま会った三隅と会話したことで、その秘密を三隅が知り恐らくは、咲江を救うために被害者の殺害を行ったと思われる。
重盛は咲江に対し、法廷に証人として立つには恥ずかしいことも隠しておきたいことも、全てを明らかにする覚悟がなければならないことを話す。すると、咲江は全てを覚悟の上で三隅を救いたいのだと言う。彼女は父親がやっていることを見て見ぬふりをする母親のようにはなりたくないからと話すのだった。
三隅は捌いたのか、救ったのか。見る者の視点によって、物事とは変わって見えるものである。そこには恐らく、見る者の心情も関わってくるため、理由はいくらでもこじつけられるのだ。
映画『三度目の殺人』の結末・ラスト(ネタバレ)
第2公判前、再び三隅と面会。重盛は咲江との関係について三隅に確かめた。すると三隅は、咲江は嘘つきだからと関係を否定。次に重盛は被害者を河川敷へ呼び出した理由を問う。
普通ならば前科持ちで解雇した従業員の呼び出しに、のこのこついて行く者などいない。その理由に関して、三隅は食品加工工場にて行われている不正を明らかにした。月に1度、工場には出所の分からない小麦粉が入荷してくる。それを三隅が正規の小麦粉とこっそり入れ替えていたと言うのだ。汚い仕事に対する報酬として50万円という大金を受け取っていたのだった。
50万円は美津江が用意した夫の殺害依頼の手付金だったのではないかと法廷で匂わせていた重盛。まさか不正に関与した報酬だったとは予想だにせず。更に三隅は事件があった日、被害者から財布は盗んだが、河川敷には行っていないと言い出す。三隅曰く、自分は無実だと逮捕時から言っていたが、警察も検事も弁護士も、前科があるために彼の言うことを信じなかったと言う。自供すれば死刑を免れると検事に言われ、仕方なく殺人の自供をしたと言うのだった。
それが真実なら、大変なことである。しかし、三隅の証言は信用性が低い。彼の言動に翻弄される重盛。真実はどこにあるのか。三隅は泣きながら、自分の話を信じてくれるかと問う。重盛は彼の弁護士である。依頼人の意見を尊重するのが弁護人の仕事だが、現段階で容疑を否認するのは、戦術的にもかなり状況が悪い。だが、戦術はともあれ自分の言うことを信じて欲しいと言う三隅。重盛は彼の話を信じることにした。
事務所へ戻った重盛は三隅の否認証言について、仲間内で相談。現段階での否認証言は無意味としか言いようがなく、犯人性を問うにしても勝訴を得るにはかなり厳しい。だが、重盛は勝ちを取るよりも、依頼人が望むことを叶えるのが依頼を受けた弁護士の仕事だと、仲間を説得した。
そして、第2公判。咲江に三隅が望むことを話し、性的虐待の件についての証言を彼女の意志に任せた結果、咲江は虐待の件を証言しなかった。そうして、三隅は最終陳述にて、殺人はやっていないと証言。法廷内は騒然となり、公判は一時中断。検事と弁護士、裁判長間で話し合いを持つことになる。検事側は裁判のやり直しを要求したが、それぞれに思惑があり、やり直しをするには余計な手間がかかるとのことで、犯人性を問うことにして公判を続けることになった。
だが、判決の結果は覆らず。三隅高司は死刑の判決を言い渡されてしまうのだった。
春、三隅の面会に訪れた重盛。彼は公判終了後からずっと三隅の証言について考えていた。虚ろな器のような三隅。過去の例から見ても、彼は恐らく強い恨みを持つ者の願いを聞き受け理不尽と感じた時、その人物が恨みを抱く者に手をかける。今回はそれが咲江だった。つまり、彼は咲江の恨みを受け、咲江となって父親を殺したのである。だが、それが真実かどうかは最早、分からない。死刑が決定した三隅はどこか清々しく、これで偽りなく過ごせると安堵しているかのようであった。
映画『三度目の殺人』の考察・解説(ネタバレ)
映画『三度目の殺人』の、真犯人は誰?
『三度目の殺人』という映画では、主人公の三隅が殺人の罪を認めているものの、本当に彼が犯人なのかどうかは曖昧なまま物語が進んでいきます。観客は、真相を探るべく考えを巡らせることになるのです。
三隅には前科があり、過去にも殺人を犯したことがありました。今回の被害者は、彼が以前働いていた会社の社長でした。弁護士の重盛が事件を調べれば調べるほど、三隅の動機や背景が複雑になり、真実が見えにくくなっていきます。
三隅自身も幾度となく証言を変え、どれが本当のことなのか分からなくなります。被害者の娘、咲江との関係も怪しく、彼女が事件に関与している可能性が示唆されています。咲江は父親から虐待を受けていた過去があり、そのことが事件と関連しているのかもしれません。
結局のところ、この映画は犯人を特定することなく終わります。三隅が真犯人なのか、あるいは咲江や他の人物が関わっているのか、観客それぞれの解釈に委ねられているのです。「真犯人は誰か」という問いに明確な答えは与えられず、物語は進んでいきます。
映画『三度目の殺人』は、実話を基にしている?
『三度目の殺人』は、特定の実話がベースになっているわけではありませんが、現実の司法制度や裁判の過程を反映したテーマを扱っています。監督の是枝裕和は、人間の内面や社会問題を深く掘り下げる作品作りで知られており、この映画でも司法制度の不完全さや、真実追求の過程で生じる曖昧さがテーマとなっています。
物語の中心となるのは、三隅が犯したとされる殺人事件と、それを巡る法廷での攻防です。弁護士の重盛が三隅の弁護を引き受けますが、事件の真相は次第に不明瞭になっていきます。証言が変わったり、動機が曖昧になったりと、現実の司法制度でもよく見られる不確実性が描かれています。
是枝監督は、実際の犯罪や裁判の報道を入念にリサーチし、それを参考にしてストーリーを構築しました。そのため、映画に登場する出来事や人物の感情には、現実味がありますが、具体的な実話に基づいているわけではありません。『三度目の殺人』は、フィクションでありながら、現実社会の問題に対する深い洞察を込めた作品なのです。
映画『三度目の殺人』で、咲江の足が悪い理由とは?
映画『三度目の殺人』の登場人物、咲江は足に障害を抱えています。彼女が歩くときには補助器具を使っており、何らかの事故が原因でこうなったことが示唆されています。
咲江の過去には、父親からの虐待があったことも明らかになります。彼女の抱える苦しみや複雑な家庭環境が、この足の障害に影響を与えているのかもしれません。
映画の中では、事故の詳細や、それが咲江の足にどのような影響を及ぼしたのかは明確に描かれていません。しかし、父親との関係が彼女に大きなトラウマを残していることは確かです。
この足の障害は、咲江の脆さや心の傷を象徴する重要な要素となっています。彼女が父親に対して抱く複雑な感情や、三隅との関係で見せる不可解な態度は、彼女の過去の傷と深く関わっているのです。咲江の足の障害は、物語全体を通して、彼女の苦しみを表す象徴的な存在として描かれています。
映画『三度目の殺人』はなぜつまらないと言われるのか
『三度目の殺人』がつまらないと感じる人がいるのは、そのゆったりとしたペースや、はっきりとした結末が用意されていないことが理由かもしれません。法廷を舞台にした物語は、事件の真相を追う中で、登場人物の証言が二転三転し、言動が曖昧になることが多いのです。これは観客に多くの考察を要求することになります。物語が進んでも明確な答えが示されないことに、不満を感じる人もいるでしょう。
また、映画全体を通して、不確実性や真実追求の過程での混乱が意図的に描かれています。アクションや派手な展開を期待する観客にとっては、物語の進展が遅く感じられるかもしれません。事件の真相が曖昧なまま残されたり、弁護士の重盛と被告の三隅との対話が哲学的で難解だったりすることも、一部の観客にとっては退屈に映るのかもしれません。
さらに、この映画は人間の内面や感情の複雑さを重視しているため、派手な展開やわかりやすい解決策が提示されません。これが「つまらない」と感じさせる要因になっている可能性があります。特に、すっきりとした結末を期待していた観客にとっては、映画の曖昧さや謎めいた終わり方が物足りなく感じられるかもしれません。
映画『三度目の殺人』はなぜ意味不明と言われるのか
『三度目の殺人』が意味不明だと言われるのは、物語が複雑で明確な答えが提示されないためでしょう。この映画は殺人事件の裁判を中心に展開しますが、被告の三隅が真相について曖昧な証言を繰り返すため、観客は何が本当なのかを見極めるのが難しくなります。三隅の証言は状況によって変化し、事実と嘘の区別がつきにくいのです。
また、この映画は法廷ドラマでありながら、哲学的なテーマを含んでいます。事件そのものの解決が目的ではないのです。弁護士の重盛が事件を追究する中で、三隅や被害者の娘である咲江との対話を通して、人間の本質や真実の曖昧さについて考えさせられます。しかし、これらのテーマは明確に説明されるわけではなく、観客の解釈に委ねられます。そのため、映画の核心が何なのかわかりにくいと感じる人もいるでしょう。
さらに、映画の結末でも、犯人や事件の真相が完全に明らかにされることはありません。観客に解釈を委ねる形で物語が終わるのです。このような曖昧な結末は、一部の観客にとっては理解しがたく、結果的に「意味不明」だと感じられるのかもしれません。
映画『三度目の殺人』で、なぜ「三度目」と言われるのかその意味は?
映画『三度目の殺人』のタイトルには、いくつかの意味が込められています。まず、物語の中心人物である三隅は、過去に二度の殺人を犯しています。20年以上前に最初の殺人を行い、そして今回の事件で再び殺人を犯したとされているのです。つまり、「三度目の殺人」というタイトルは、三隅がさらに別の殺人を起こす可能性を示唆しているのかもしれません。
さらに、このタイトルは、映画のテーマである「司法制度の役割」や「人間の本質的な罪」とも関連しています。三度目の殺人が実際に行われるのか、あるいは行われなかったのか、そのことが観客に問いかけられているのです。映画全体を通して、真実の在り処が曖昧に描かれるため、「三度目の殺人」は実際の殺人行為だけでなく、司法制度や人々の判断によって下される「裁き」そのものを象徴しているとも解釈できます。
また、「三度目」という言葉は、三隅が物語の中で何度も異なる証言をし、真相が揺らぐ状況とも関係しています。最終的に何が真実なのかが明らかにならないまま物語が終わるのは、この「三度目」という言葉に象徴されているのです。映画は、三度目の殺人が起こるかどうかだけでなく、「真実とは何か」という根本的な問いを投げかけているのです。
映画『三度目の殺人』における、咲江と三隅の関係は?
『三度目の殺人』における咲江と三隅の関係は、物語が進むにつれて複雑で曖昧なものへと変化していきます。咲江は事件の被害者である平田の娘であり、三隅は平田を殺害した犯人として逮捕されました。当初、二人の間には特別な関係はないように見えますが、物語の展開とともに、彼らの間には一種の感情的なつながりがあることが示唆されるのです。
咲江は過去に父親から虐待を受けていました。そのため、父親を殺害した三隅に対して、ある種の感謝の念を抱いているようにも見えます。さらに、咲江自身が父親の死に何らかの形で関与していた可能性も浮上します。彼女が三隅に父親の殺害を依頼したのではないかという疑惑も生じるのです。このように、咲江と三隅の関係は、単なる被害者と加害者の関係を超えた、複雑で曖昧なものとして描かれています。
また、咲江は物語の中で、三隅に対して奇妙な信頼感や親近感を抱いているように見えます。彼女が三隅に語りかけるシーンでは、彼女自身の心の中にある怒りや悲しみが投影され、三隅との関係を通してその感情が表面化しています。この関係は物語の重要なテーマの一つであり、咲江と三隅の間に何が本当で、何が嘘なのかは最後まで明らかにされません。
映画『三度目の殺人』における「器」の意味のネタバレ
映画『三度目の殺人』で「器」という言葉は、重要な象徴として使われています。三隅が法廷での証言や弁護士の重盛との会話の中でこの言葉を使うことで、「器」は物語の核心に触れる重要なテーマとなっているのです。
「器」は、登場人物たちが抱える内面の空虚さや、隠された感情を表しており、人間が本質的に何を抱え、どのように生きているのかを暗示しています。
例えば、三隅が「人は器に過ぎない」と語るシーンがあります。ここで彼は、人間の存在や行動が何かに操られているかのように無意味であることを示唆しているのです。これは、彼自身が過去に犯した罪や現在の罪に対して責任を感じていないというよりも、自分の存在や行動を無価値なものと捉えていることの表れだと言えます。つまり、三隅は自分自身を、何か大きな力に左右される「器」のような存在だと考えているのです。
この「器」という概念は、重盛や他の登場人物にも当てはまるテーマです。映画全体を通して、彼らが真実を追求しながらも、実際には自分たちの感情や行動をコントロールできていないことが描かれています。人間が何を信じ、どのように行動するかは、外部の力や運命に左右されているのかもしれない。そんな哲学的な問いかけが、この「器」という言葉に込められているのです。
映画『三度目の殺人』における事件の真相とは?
『三度目の殺人』という映画の中で、事件の真相は物語が進むにつれてより一層の謎に包まれていきます。一見すると、三隅が被害者の平田を殺害したことは明らかです。しかし、彼の動機や、本当に彼が犯人なのかどうかは次第に疑問視されるようになります。
さらに、被害者の娘である咲江が事件に関わっている可能性が浮上し、真相はさらに不透明さを増していきます。三隅は物語の中で何度も異なる証言をします。最初は金銭目的だと言い、その後また別の動機を語り始めるのです。
彼が本当に殺人を犯したのか、それとも別の誰かが関与しているのか、観客には判断が委ねられます。特に、咲江と三隅の関係が事件の鍵を握っているようです。咲江が父親に抱いていた憎しみや、三隅との不可解な信頼関係が、事件にどう関わっているのかが重要なポイントとなります。
結局のところ、この映画は真相を完全に明らかにすることはありません。観客はそれぞれの解釈を持つことになるのです。事件の真相そのものよりも、人間の本質や真実の意味といった哲学的なテーマが強調されています。だからこそ、真相はあえて曖昧にされ、物語の結末でも謎のままなのです。
映画『三度目の殺人』は、どんな話なのか?
『三度目の殺人』は、ある殺人事件を巡る法廷劇を通して、人間の本質と真実の意味を探求する物語です。主人公の三隅は、20年以上前に殺人を犯し、服役を終えた後、再び殺人の罪で逮捕されます。今回の被害者は、かつて三隅が働いていた工場の社長・平田です。三隅は当初、金銭目的で平田を殺したと自白します。
三隅の弁護を担当するのは、弁護士の重盛です。彼は事件の真相を追求すべく、三隅や事件関係者との対話を重ねます。しかし、物語が進むにつれ、三隅の証言は二転三転し、真実は見えにくくなっていきます。
さらに、被害者の娘・咲江が父親から虐待を受けていたことが明らかになり、彼女も事件に関与している可能性が出てきます。
この映画が描くのは、単なる殺人事件の真相解明ではありません。登場人物たちの内面の葛藤や、人間が信じるべきものは何かという深遠なテーマが織り込まれているのです。三隅は自分の存在や行動を「器」になぞらえ、真実や罪の意味を問います。
物語の結末では、事件の真相は明確に示されません。観客は登場人物たちの抱える感情や、真実の意味について思いを巡らせることになるのです。
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