この記事では、映画『サラの鍵』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『サラの鍵』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『サラの鍵』の作品情報
上映時間:111分
ジャンル:ヒューマンドラマ、歴史
監督:ジル・パケ=ブランネール
キャスト:クリスティン・スコット・トーマス、メリュジーヌ・マヤンス、ニエル・アレストリュプ、エイダン・クイン etc
映画『サラの鍵』の登場人物(キャスト)
- ジュリア・ジャーモンド(クリスティン・スコット・トーマス)
- 記者の女性。夫と十代の娘の三人暮らし。2009年、リフォーム中のアパートの過去を知って、サラという少女に関心を持つ。サラの消息を調べるうち、自身の人生にも影響が及んでいく。
- サラ・スタジンスキ(少女:メリシューヌ・マイヤンス / 大人:シャルロッテ・ポートレル)
- ユダヤ人少女。パリのマレ地区のアパートに住んでいた。1942年ごろ、市警に家族と共に逮捕される。弟ミシェルを独りにしたことを後悔し、納戸の鍵を生涯持ち続ける。途中で収容所から脱走し、迫害の傷を負って生きていく。
- スタジンスキ夫妻(夫:アーベン・バイラクタライ / 妻:ナターシャ・マシュケビッチ)
- サラの両親。子どもも含め市警に逮捕され、収容所へ連行される。末子のミシェルを置いてきたことを悔やみ、それを実行したサラを厳しく責める。一家は強制収容所にて引き離され、永遠に別れる。
- デュフォール夫妻(夫:ニエル・アレストリュプ / 妻:ドミニク・フロ)
- 収容所から脱走したサラを助けた老夫婦。身寄りのないサラを引き取り、養子として育てる。
- ベルトラン・テザック(フレデリック・ピエロ)
- ジュリアの夫で実業家。愛妻家で夫婦仲は良好だったが、サラの調査やジュリアの高齢妊娠を知って、心が離れていく。
- エドゥアルド・テザック(ミシェル・デュショソワ)
- ベルトランの父で、ジュリアの義父。自身の母は老齢のため、老人医療施設に入居している。サラとある縁で結ばれている。
- ウィリアム・レインズファード(エイダン・クイン)
- サラがアメリカで出会った夫・リチャードとの間に儲けた息子。サラの過去を知らないまま、9歳の時、母を事故で失う。アメリカで育ったが、現在はイタリアで料理家として生活している。
映画『サラの鍵』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『サラの鍵』のあらすじ【起】
1942年7月16日。フランス・パリのマレ地区。市警に連行される直前、サラは弟ミシェルを納戸に隠し、出てこないよう言い聞かせる。訝しがる警察に、サラは、弟は療養のために遠くへ行っていると嘘をつく。そして、納戸の鍵を持ったまま、母と共に逮捕される。
2009年のパリ。ジュリアは家族と共に、マレ地区のあるアパートを下見していた。夫ベルトランの祖父母がかつて住んでいた部屋で、物件ごと買い取ったのだった。ジュリアの職業は記者で、フランスのユダヤ人迫害に関する記事を過去に書いていた。そして、歴史的に知られていない「ヴェルディヴ」という収容所に関心を持ち、調査を始める。
パリで逮捕されたユダヤ人たちは、市内の屋内競輪場―ヴェルディヴに収容されていた。そこはトイレもなく、日常的に人が殺されるという異様な光景が見られた。サラは残してきた弟が気にかかり、両親もサラのしたことを強く非難した。しばらく滞在した後、スタンジスキ一家は強制収容所行きの貨車に乗せられる。車中で出会った老人は、自害用の毒入りの指輪を着けていた。サラの心に、それが強烈に刻まれた。
2009年。ジュリアは、ヴェルティヴの調査をする一方、自身の妊娠に気付く。愛する夫にその事実を知らせるが、ベルトランはこれ以上の育児の負担はごめんだと言った。

映画『サラの鍵』のあらすじ【承】
強制の一歩手前、臨時収容所に連行されたサラ。父とは引き離され、自身が対象区分ではないことから、母を「先に」連れて行かれてしまう。体調を崩したサラは卒倒する。しかし、その手には納戸の鍵がしっかり握られていた。
ジュリアはホロコーストの研究者を訪ねる。マレ地区がユダヤ人居住区だったことを知り、アパートには祖父母の前に誰が住んでいたのか知りたがる。研究者の分析によって、四人家族―サラの一家が暮らしていたことが判明する。
目を覚ましたサラは、一人の少女と出会う。サラは、収容所から逃亡しようと、彼女に提案する。二人は頃合いを見て脱出を図るが、警官ジャックに阻止されてしまう。ジャックは何かとサラと接触し、彼女に心が揺れていた。弟の話を聞くと、ジャックは鉄条項の網を開けて、サラたちを逃がした。
ジュリアはサラの消息を追い始める。しかし、アパートの前持主であるテザックからの連絡は拒んでいた。
一目散に逃げ、サラたちは小さな村にたどり着く。友達は体調を崩し、サラは老夫婦の家に助けを求める。老人―デュフォール氏は最初二人を拒むが、受け入れる。ほっとするのも束の間、友達の体調は悪化し、感染症によって命を落としてしまう。デュフォール夫人は独りぼっちのサラを憐れみ、養子として引き取る。
映画『サラの鍵』のあらすじ【転】
予想通り、ジュリアは義父のテザック氏から、アパートの過去を嗅ぎ回らないよう止められる。しかし、ジュリアがサラの話をした途端、テザック氏は目を泳がせる。テザック氏は少年の頃、ミシェルを求めて家に来たサラに会っていた。
サラがデュフォール夫妻とマレ地区に来た時、アパートにはテザック一家が越して来ていた。テザック少年を押し切り、サラは納戸のある部屋へ急ぐ。納戸の扉を開けた時、サラが目にしたのは弟の腐敗した遺体だった。
ジュリアは、銀行の貸金庫からサラの身辺書類を入手する。その中には、テザック氏の父親宛に、デュフォール氏からの手紙があった。テザック氏の父親は、スタンジスキ一家の存在を秘密にする一方、デュフォール家に支援金を送り続けていた。手紙には、成長したサラはいつも「遠い国」を求めていて掴めない、と書いてあった。
ベルトランから強い反対を受け、ミシェルは堕胎手術を受けることにした。後悔の念に苛まれる中、デュフォール氏のひ孫を名乗る女性から、連絡が入る。ミシェルは手術を中断してその女性に会いに行く。ひ孫曰く、1953年に、サラはデュフォール家から突然姿を消した。その2年後、アメリカ・ブルックリンで「リチャード・レインズファード」という男性と結婚したという。
ジュリアはアメリカに渡る。現地に暮らす姉に手伝ってもらって、ブルックリン市内の「レインズファード」を訪ね歩く。サラと思しき女性の家に行き着くが、それはリチャードの後妻だった。1966年、サラは当時9歳になる息子ウィリアムを残して、事故死―自殺していた。そのウィリアムは、現在イタリアで生活しているという。
映画『サラの鍵』の結末・ラスト(ネタバレ)
ジュリアは、イタリアに渡ってウィリアムと対面する。何と、ウィリアムはサラの少女時代を知らなかった。ジュリアがサラの子どもの頃の写真を見せると、彼は「母はユダヤ人ではない」と否定する。そして、ジュリアにこれ以上踏み込んで来ないようきつく言った。
パリに戻ったジュリアは、ベルトランに子どもを産むつもりだと話す。ベルトランはマレ地区のアパートを売る予定だと話し、夫婦の心の距離はすっかり離れてしまっていた。
ウィリアムはアメリカのリチャードを見舞っていた。リチャードは重篤な状態にあるものの、サラとの思い出は鮮明に記憶していた。サラとはダンスホールで知り合い、リチャードは彼女の美貌に惹かれ、同時に秘められた悲しみも見抜く。サラを癒そうと努力していたが、妻は晩年に調子を崩してしまった。初めて母の過去を聞いたウィリアムは、父からサラの日記を受け取る。そこには、納戸の鍵が挟まれてあった。
2年後。ジュリアはベルトランと離婚し、娘を連れてアメリカに移住していた。女の子を産み、彼女にサラと名付けた。ある日、アメリカに来たとウィリアムから連絡が入り、ジュリアはサラを連れて会う。ウィリアムは2年の間、デュフォール家を訪ねていた。ジュリアとウィリアムは和解し、小さなサラの背中を見つめる。小さな命には、大きな希望が宿っていた。
映画『サラの鍵』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
ユダヤ人迫害に関する映画です。とはいっても、フィクションよりなので辛辣なシーンが多いわけではありませんでした。
ただ、収容所から逃げ出したサラが、面倒を見てくれた夫妻の力をかりて元居たアパートに弟を助けに来るシーンは悲痛です。サラたちがいなくなった部屋には、新たな家族が住んでおり、ミシェルがいるはずの戸棚を開けると、変わり果てた姿の弟がいるのです。
そのシーンのサラの表情と、亡骸となっている弟のことを思うとぞっとするし、この映画で何よりも印象に残りました。(女性 20代)
サラの幸せな表情で笑っていた顔と、迫害に苦しみ怯えた表情が忘れられない。納戸に一人で閉じ込められたミシェルと、生涯に渡って納戸の鍵を手放さなかったサラの気持ちを思うと、悲しい気持ちが込み上げてくる。ユダヤ人迫害がなければ、そう思わずにはいられない作品。ウィリアムが息子として母の真実の姿を理解し、受け入れてくれたのは良かったと思う。ジュリアが娘にサラと名付けたことを明かしたところは、自分もうるっとしてしまった。(女性 30代)
好奇心旺盛な女性が大嫌いな私は、今作のジュリアの行動に全く共感できませんでした。今回はたまたま勝手に調べだしたことの真実が分かり、サラの息子にも理解して貰えたから良かっただけで、こういう過去の記憶や傷跡は放っておいて欲しいと思う人も居るはず。しかも、全く関係の無い赤の他人に根掘り葉掘り詮索されても不快に思うだけでした。
自分の家庭を犠牲にしてまでサラの真実を突き止めたジュリアですが、私には理解できませんでした。(女性 30代)
サラが弟を隠して鍵をかけ、そのまま収容所へ送られたときから、胸が締めつけられました。過去の悲劇と現代のジャーナリストが向き合う構成がとても効果的で、物語に引き込まれました。特に弟の遺体を見つけたときの衝撃と、サラのその後の人生が重く心に残ります。静かだけど強い作品でした。(30代 女性)
サラが鍵を握りしめて帰宅したとき、あまりに遅すぎたという事実にただただ絶句。歴史の影に埋もれた小さな命と、それを追いかけたジュリアの物語が交差して、涙が止まりませんでした。ユダヤ人迫害というテーマに、個人の物語を丁寧に重ねたことで、よりリアルに感じました。(40代 男性)
終始静かなトーンで進みながら、感情が爆発する瞬間がとても強く印象に残りました。特にサラの生涯を知ったジュリアが、自身の人生を変えていく決断をする流れは感動的でした。歴史の悲劇と今を生きる人とのつながりを描いた、美しくも切ない映画だと思います。(20代 女性)
サラという少女の“選択”があまりにも過酷で、観ていて息が詰まりました。収容所に送られたユダヤ人の中に、こんなにも苦しんだ子どもたちがいたと思うと、歴史の重さを改めて痛感しました。現代パートも秀逸で、過去の記憶がいかに現在に影響を及ぼすかを丁寧に描いています。(50代 男性)
サラの人生があまりに辛すぎて、観終わったあともしばらく放心状態でした。弟を死なせたことを一生背負い続ける彼女の苦しみが、最後の自死という形で描かれていて涙が止まりません。ジュリアがその記憶を継いで、希望へとつなげようとする姿勢が救いでした。強く心に残る映画です。(30代 女性)
当時のフランス政府がユダヤ人迫害に加担していたという事実も、恥ずかしながらこの映画で初めて知りました。少女サラが必死に鍵を守る姿は、希望を手放さない人間の強さの象徴のようでした。ジュリアの探究心が導いた真実が、次の世代への記憶の橋渡しになっているのが印象的でした。(60代 男性)
戦争映画というよりは、記憶と贖罪の物語という印象でした。サラの鍵は、単なる物理的な道具ではなく、心の扉を開く象徴だったと思います。過去を追体験するジュリアの旅路と、彼女が出産を通して未来に進む姿が対比的で美しかった。静かだけど魂に響く作品でした。(40代 女性)
映画『サラの鍵』を見た人におすすめの映画5選
縞模様のパジャマの少年
この映画を一言で表すと?
ナチス収容所の柵を隔てて芽生える、少年同士の無垢な友情がもたらす衝撃の結末。
どんな話?
第二次世界大戦下、ナチス将校の息子ブルーノが、収容所に囚われたユダヤ人の少年シュムエルと出会い、友情を育む。しかし彼らの無邪気な行動が、やがて取り返しのつかない悲劇を招く。純粋な心と戦争の残酷さが交錯する感動作。
ここがおすすめ!
戦争の悲劇を子どもの目線から描くことで、「無知」や「無垢」が時に引き起こす悲劇を際立たせています。最後の衝撃的な展開は、観る者の心に深く刻まれること間違いなし。サラのような子どもたちの物語に心を動かされた方には必見です。
ライフ・イズ・ビューティフル
この映画を一言で表すと?
ユダヤ人父子の命がけの“嘘”が、戦争の中で笑いと愛を生み出す奇跡の物語。
どんな話?
ナチス政権下、ユダヤ人の父親が息子に現実の悲惨さを伝えぬよう、強制収容所での生活を「ゲーム」として演出し続ける。息子を守るため、命をかけてユーモアを貫いた父の姿を描くヒューマンドラマ。
ここがおすすめ!
戦争の悲劇を真正面から描きつつも、笑いや愛を通して希望を描く異色の作品。『サラの鍵』のように親子や家族、そして命の大切さに触れた方におすすめです。心を打つセリフと演技に涙が止まりません。
シンドラーのリスト
この映画を一言で表すと?
一人の実業家が命を救うために立ち上がった、史実に基づく人間ドラマの金字塔。
どんな話?
ナチス占領下のポーランドで、ドイツ人実業家シンドラーが、ユダヤ人労働者たちを雇用することで1,000人以上の命を救った実話に基づく物語。モノクロ映像が一層のリアリティを添える。
ここがおすすめ!
『サラの鍵』同様、歴史の闇に踏み込む勇気ある作品。壮絶な内容ながら、最後には人間の尊厳と希望が感じられる不朽の名作。深い余韻が残る作品を求める方には間違いなくおすすめです。
ある子供
この映画を一言で表すと?
無責任な若者が“父”になるまでを描く、静かで力強い贖罪のドラマ。
どんな話?
無計画に子どもをもうけ、簡単に手放してしまった青年が、愛と責任を学びながら“人間”になっていく姿を描く。子どもとの再会と向き合いを通じて、彼が自分の過去とどう折り合いをつけるかが見どころ。
ここがおすすめ!
静謐でリアルな映像が観る者の感情を揺さぶります。『サラの鍵』のように、子どもにまつわる“罪”や“後悔”を抱える登場人物が、どう生き直すかを描いた作品です。観終わった後に、温かい余韻が残るでしょう。
ヒトラー 〜最期の12日間〜
この映画を一言で表すと?
独裁者ヒトラーの崩壊と周囲の人間模様を、極限状態の中で描いた圧巻の群像劇。
どんな話?
ベルリン陥落直前、総統地下壕でのヒトラーと側近たちの最期の12日間を描いた実録劇。狂気と忠誠、希望と絶望が入り混じる中、人間の本性があらわになっていく様子が描かれる。
ここがおすすめ!
サラの物語で感じた“歴史の重み”や“無力な個人”というテーマを、別角度から深掘りできます。実際の人物の視点を通じて、歴史の裏側をのぞき見るような緊張感ある作品です。リアルな戦争の空気を感じたい方に。
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