映画『さすらい(1975)』の概要:美しいモノクロの風景の中で自由気ままに放浪する男と、妻と離婚し人生に不安を抱えた男が旅をする。ジム・ジャームッシュ監督が贈るロードムービー三部作の集大成。
映画『さすらい』の作品情報
上映時間:176分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ヴィム・ヴェンダース
キャスト:リュディガー・フォグラー、ハンス・ツィッシュラー、リサ・クロイツァー、ルドルフ・シュントラー etc
映画『さすらい』の登場人物(キャスト)
- ブルーノ・ヴィンター(リュディガー・フォーグラー)
- 街を周り、映写機の修理やフィルム運びを仕事にしている。移動続きのため、仕事道具でもある大型ワゴンに寝泊まりしている。野生的な風貌で、正確も穏やか。
- ローベロト・ランダー(ハンス・ツィッシュラー)
- 妻と離婚し、偶然出会ったブルーノと共に旅をする。父親の母親対する態度などに批判的である。
- パウリーネ(リザ・クロイツァー)
- 小さな街の映画館で受付嬢をしている。遊園地で出会ったブルーノに惹かれていく。
映画『さすらい』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『さすらい』のあらすじ【起】
ブルーノ・ヴィンターは、街の映画館を周りながら映写機を修理したり、フィルムを運んだりする仕事をしている。それ故、彼の家は仕事にも使う大型ワゴンの中だった。
川沿いに駐車していたブルーノの横を猛スピードで川へと突っ込む一台の車。ブルーノは車から脱出してくる男の様子を興味津々の顔で見ている。川から上がってきたのはローベルト・ランダーと言う名前の男で、ブルーノは彼に服を差し出すとワゴンへ乗せて一緒に旅へと出る。
途中何度も小さな街に寄って仕事をするブルーノ。一方、ローベルトは街をぶらぶらと散策したり、退屈そうにしている。
シェーニンゲンの公民館で子供達に向け映画を上映する予定だったが、設備不良が原因で上映出来ないでいるブルーノ。先生も段々とイライラし始め困っていると、突然ローベルトがスクリーンの後ろからのライトを利用して影絵を始める。大きなスクリーンで繰り広げられる二人の影絵は、子供達を大いに喜ばせた。
映画『さすらい』のあらすじ【承】
その後も、幾つもの街を周りながら仕事をするブルーノとそれに付き添うローベルト。ローベルトは寄る街々で誰かに電話を掛けている。
車の中で語り合う二人。ローベルトは小児科医のような仕事をしていて、妻と別れたばかりだと言う。先程からの電話も、妻にかけていたのだ。
その夜、寂れた鉱山にワゴンを駐車したブルーノ。夜中に何かの物音に気づいたローベルトが建物の中に入っていくと、そこには立抗に石を投げている一人の男がいる。彼は血だらけのコートを着ている。これは妻のコートであって、妻とは些細な言い争いをし、挙句に車で木に激突して即死してしまったのだと言う。ローベルトはその夜、自分の寝台にその男を寝かせる。
翌日、三人は事故にあった車の回収業者を待っている。その間、ブルーノは近くの眺望台へと登る。車が回収されると昨夜の男はどこかへと去って行く。さらにローベルトは、父の家へ行くと言うメモをワゴンのフロントガラスへと置き、去って行くのだった。
映画『さすらい』のあらすじ【転】
父の職場へと訪れたローベルト。父は新聞を一人で発行していると言う。ローベルトに会えたことを喜んでいる父だが、ローベルトはそれを制止し、過去に父から受けたあらゆる酷い仕打ちや、母に対する仕打ちの事を語り出す。
遊園地を訪れたブルーノの前に、パウリーネという女性が現れる。ブルーノはパウリーネを映画に誘う。映画館で待つブルーノだったが、映画が始まっても現れないパウリーネ。受付嬢に話しかけると、そこにいたのはパウリーネだった。
一人で映画を見ていたブルーノは、ピントが合っていないことに気づいてパウリーネに頼み技師の元へと向かう。そこには怠慢な技師がおり、ブルーノが技師に代わってフィルムを流すのだった。終演後、ブルーノとパウリーネは誰もいない映画館で語り合う。
ブルーノは映画館でパウリーネと共に、ローベルトは印刷屋で父と共に一夜を過ごした。そしてブルーノはローベルトのいる印刷屋へと行く。ローベルトは、夜に自ら書き上げた父に対するメッセージを込めた記事を印刷し父に渡す。ブルーノが到着すると、ローベルトと父は抱き合いブルーノと共にワゴンへと戻って行く。
映画『さすらい』の結末・ラスト(ネタバレ)
再び旅を共にし始めたブルーノとローベルトは、ブルーノの故郷へと寄り道をする。そこにいた知人のパウルからサイドカー付きのバイクを借りる。
川の辺りへとやってきた二人は、かつてブルーノが母親と住んでいた家を訪れる。そこにはすでに誰も住んでおらず、廃屋になっていた。その夜、ブルーノは家の中で、ローベルトは外で一夜を過ごす。いくつかの思い出の品を見つけ、二人は再びワゴンで走り始める。
東ドイツの国境まで来た二人は誰もいないことをいいことに、そこにある監視小屋へと忍び込む。そこでお酒を飲みながら語り合う二人。やがてローベルトはまた妻に電話をかけようとする。いつまでも未練たらしくしているその姿を見て、ブルーノはローベルトを非難する。ローベルトも、ブルーノの自由気ままな生活に対して皮肉を言い、二人は掴み合いの喧嘩をする。
翌朝、ローベルトはメモを残してブルーノのもとを去って行く。
閉館するという映画館で仕事をしているブルーノ。館長は映画の現状を嘆き、ブルーノに語って聞かせるのだった。映画館を出たブルーノは、再びワゴンへと戻るのだった。
映画『さすらい』の感想・評価・レビュー
モノクロで描かれた今作は友情と絆、そして出会いと別れの物語をのんびりとゆったりと描いた作品でした。
映画文化が廃れつつあるドイツでフィルム運びをするブルーノと離婚して旅に出ようとしていたロベルト。この2人の男の出会いから始まるストーリーは多くを語らない男のかっこ良さが滲み出ているような作品です。言葉にするよりも行動で示すという、一見不器用にも見えますが、自分自身の問題はこうやってゆっくりと解決していけばいいのだと教えてくれます。(女性 30代)
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