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映画『スケアクロウ』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『スケアクロウ』の概要:暴力で人を威圧して、孤独に生きてきた大男のマックスは、人を笑わせることが大好きなライオンと出会い、ユーモアと友情の大切さを学んでいく。名優ジーン・ハックマンとアル・パチーノの見事な演技が心に響くヒューマンドラマ 。ジェリー・シャッツバーグ監督の演出も秀悦。

映画『スケアクロウ』の作品情報

スケアクロウ

製作年:1973年
上映時間:113分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ジェリー・シャッツバーグ
キャスト:ジーン・ハックマン、アル・パチーノ、ドロシー・トリスタン、アイリーン・ブレナン etc

映画『スケアクロウ』の登場人物(キャスト)

マックス・ミラン(ジーン・ハックマン)
6年間の服役生活を経て、刑務所から出所してきたばかりの大柄な男。非常に短気で、すぐに喧嘩騒ぎを起こす。人を信用せず、常に警戒心を持って生きている。コツコツと稼いだお金をピッツバーグの銀行に貯金しており、それを元手に洗車屋をしようと思っている。
フランシス・ライオネル・デルブッキ(アル・パチーノ)
通称ライオン。5年前、妊娠中の妻を残して家出し、船乗りをしながら気ままな放浪生活をしていた。妻と5歳になっているはずの子供に会うため、デトロイトへ行こうとしている。人を笑わせることが好きで、偏屈者のマックスにも気に入られる。
コーリー(ドロシー・トリスタン)
マックスの妹。廃品回収をしながら、デンバーで暮らしている。苦労を共にしてきた兄のマックスとは仲が良く、洗車屋をするならデンバーでして欲しいと思っている。
フレンチー(アン・ウェッジワース)
コーリーの同居人。男好きで、マックスを誘惑して肉体関係を持つ。フランス女性のようなので、フレンチーと呼ばれるようになった。
ジャック・ライリー(リチャード・リンチ)
マックスとライオンが入所した刑務農園で、2人と同室になった受刑者。ライオンに目をつけ、自分の仲間に引き入れる。
アニー・グリーソン(ペネロープ・アレン)
デトロイトで暮らすライオンの妻だった女性。妊娠中にライオンが失踪してしまい、心細い思いをしてきた。2年前に再婚し、ライオンからの仕送りを元手に商売をしている。

映画『スケアクロウ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『スケアクロウ』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『スケアクロウ』のあらすじ【起】

アメリカ西部の広大な牧草地を歩いてきたマックスは、ヒッチハイクをするため、道路沿いへ移動する。その様子を見ていた男が、「フランシスだ」と自分の名を名乗り、気さくに声をかけてくる。しかし、マックスは男を無視して、わざと離れた場所に座る。

2人は道路を隔てた対面に座り、ひたすらヒッチハイクを続ける。そのまま5時間が経過し、とうとう日が暮れ始める。マックスはタバコに火をつけようとするが、ライターのオイルが切れていた。それを見た男は、最後の1本のマッチをマックスに譲ってやる。

翌日、2人はトラクターの荷台に乗せてもらい、ようやく町にたどり着く。その後、2人はカフェに入り、朝食をとる。マックスは男に心を開いたようで、彼のミドルネームのライオネルを文字って、ライオンと呼ぶことにする。

乱暴なマックスは、傷害事件を起こし、6年の刑期を終えて出所してきたところだった。今後は、ピッツバーグの銀行に貯金してきたお金を元手に、洗車屋の商売を始めようと考えていた。ライオンを気に入ったマックスは、一緒に商売をしようと彼を誘う。ライオンは、すぐにそれを承知する。

ライオンは、5年前に妊娠中の妻のアニーを残して家出し、船乗りをしてきた。稼ぎは残らず送金してきたが、妻子には悪いことをしたと思っており、まずはデトロイトにいる妻子に会おうと思っていた。我が子の性別がわからなかったので、子供へのお土産は電気スタンドにした。ライオンはマックスにその事情を話し、ピッツバーグで商売を始めるのは、デトロイトへ寄ってからにしてもらう。マックスも、まずはデンバーにいる妹を訪ねる予定だった。2人はそれぞれの用事を済ませてから、一緒に商売を始める約束をする。用心深いマックスは、絶対に裏切るなと何度も忠告して、ライオンの前でフォークを曲げて見せる。それは、裏切ったらタダでは済まないぞという、マックスの脅しだった。

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映画『スケアクロウ』のあらすじ【承】

2人は日銭を稼ぐため、皿洗いのアルバイトをする。しかし、マックスが従業員と喧嘩を始めてしまい、すぐに店を追い出される。

ライオンは暴力的なマックスに、「殴るより笑わせろ」と助言し、カカシ(スケアクロウ)の例え話(カカシはユニークな風貌でカラスを笑わせ、カラスに「ここの農夫はいい奴だから、よその畑に行こう」と思わせている)をする。ライオンは、人生にはユーモアが必要だと思っていた。マックスは馬鹿馬鹿しいと思いつつも、ライオンを相棒にした理由を聞かれて、「最後のマッチをくれたし、俺を笑わせたからだ」と答える。

2人はヒッチハイクを繰り返し、旅を続ける。その道中、寂れた酒場で気の強い女に絡まれたマックスは、喧嘩騒ぎを起こしそうになる。ライオンは咄嗟に道化を演じ、場の空気を和ませる。ライオンのおかげで大笑いしたマックスと女は、すっかり意気投合し、そのままベッドになだれ込む。

2人は日雇いのアルバイトや野宿をしながら旅を続け、マックスの妹のコーリーが暮らすデンバーに到着する。コーリーは兄との再会を喜び、ライオンのことも歓迎してくれる。コーリーは廃品回収をしながら、親友のフレンチーと暮らしていた。フレンチーは、マックスに一目惚れしたようで、彼のために手料理を作り始める。

結局、フレンチーは料理を焦がしてしまい、テイクアウトのチキンが夕食になる。お酒の入ったマックスは、ライオンと始める商売について熱く語っていたが、フレンチーの誘惑に負けて、2人で寝室へ行ってしまう。ライオンと2人になったコーリーは、デンバーで洗車屋をして欲しいと話す。マックスは融通が利かないところがあり、貯金している銀行があるという理由だけで、ピッツバーグでの商売に固執していた。

翌日、コーリーの誕生日プレゼントを買いに行ったマックスは、ライオンに協力させて、店の商品を盗もうとする。盗みが嫌だったライオンは、店内を走り回り、店員とマックスが唖然としている間に店を出てしまう。マックスも仕方なく、ライオンに続く。

その夜、マックスたち4人は、コーリーの誕生祝いとライオンのお別れ会を兼ねて、町の酒場へ出かける。そこでマックスと踊っていたフレンチーは、元彼らしき男に絡まれる。マックスと男は喧嘩になりそうになるが、その場に警官がいたので、一旦は休戦する。ライオンは不穏な空気を変えるため、店中の客を巻き込んで大騒ぎを始める。お祭り騒ぎは店の外でも続き、その騒ぎの中で、マックスと男が再び喧嘩を始める。その結果、マックスとライオンが逮捕されてしまう。

映画『スケアクロウ』のあらすじ【転】

2人は1ヶ月間の強制労働を命じられ、刑務農園へ送られる。また刑務所生活に戻ってしまったマックスは、ライオンのことを逆恨みし、この1ヶ月は口を利かないと宣言する。そんな2人に、同室のジャックが声をかけてくる。マックスは無視していたが、ライオンは愛想良く接する。

ジャックは刑務官に賄賂を渡し、囚人の任務割りを任せてもらっていた。ライオンを気に入ったジャックは、彼に楽な洗車の仕事を回してやる。一方、反抗的なマックスは、みんなが嫌がる豚小屋勤務にされてしまった。

ライオンはジャックに付き合いながらも、常にマックスのことを気にかけていた。しかし、頑固なマックスは、ライオンを無視し続ける。温厚なライオンもさすがに腹を立て、「俺の責任じゃないとわかった日には後悔するぜ」と言っておく。

ジャックに誘われ、2人で酒を飲んでいたライオンは、彼から性行為を迫られる。ライオンは必死で抵抗して、ジャックにひどい暴力を振るわれる。半殺しの目にあったライオンは、フラフラになって部屋の入り口まで戻り、マックスの名前を呼ぶ。マックスはベッドから起き出し、血まみれになったライオンを介抱してやる。

ジャックはライオンに暴力を振るった罰として、豚小屋勤務に回される。マックスはジャックを痛めつけ、ライオンの仇を討ってやる。

マックスとライオンは刑期を終え、一緒に刑務農園を出る。マックスは、まだ痛々しい傷跡の残るライオンの顔を見て、心配だからデトロイト行きはやめておこうと言い出す。ジャックの一件以来、ライオンの表情は暗かった。しかし、ライオンはアニーに会って、きちんと謝罪しておきたかった。マックスはライオンの意思を尊重し、デトロイトまで付き合うことにする。

映画『スケアクロウ』の結末・ラスト(ネタバレ)

デトロイトへ旅立つ前、2人は酒場に入る。マックスは元気のないライオンを気遣い、明るく振る舞っていた。ライオンは、マックスが笑うことの大切さに気づいてくれたのだと思っていた。しかし、マックスはそこでも男に絡まれ、喧嘩を始めようとする。

アニーのことを考え、ずっとナーバスになっていたライオンは、今までのようにマックスを笑わせる元気が出ない。そして、同じ過ちを繰り返すマックスにも怒りを感じ、1人で店を出ようとする。マックスは、そんなライオンを呼び止め、陽気にストリップショーを始める。店中の客は大笑いして、マックスのショーを楽しんでいた。ライオンは、そんなマックスを静かに見守る。

2人は貨物列車を乗り継ぎ、デトロイトへ移動する。マックスは列車の中で、店の名前を「カカシ(スケアクロウ)」にすると嬉しそうに話す。ライオンは、長旅でボロボロになってしまったプレゼントの箱を抱え、物思いにふけっているようだった。

デトロイトに到着したライオンは、身支度を整え、妻子が暮らす家へ向かう。しかし、家の前まで来ると、急に足がすくむ。5年も放置していたのだから、アニーが再婚していてもおかしくはない。ライオンは先に電話をすることにして、電話ボックスに入る。マックスは思いつく限りのことを言って、ライオンを励ます。

幼い息子と自宅にいたアニーは、ライオンからの電話に動揺する。アニーは2年前に再婚し、ライオンの仕送りを元手にして、新しい夫と商売を始めていた。ライオンは冷静に話を聞き、会いたいという自分の気持ちを伝える。しかし、アニーはそれを拒絶し、ライオンのことを責め始める。ライオンは何も言い返さず、子供のことだけ尋ねる。腹の虫が収まらないアニーは、子供は妊娠8ヶ月の時に流産したと嘘をつく。さらに、「男の子だったけど、洗礼もなしに死んだので天国へも行けない、あなたは自分の子供を闇から闇へ葬ったのよ」と言って、ライオンを責める。ライオンはショックのあまり、そのまま電話を切ってしまう。しかし、マックスの前では明るく振る舞い、再婚していたので会わずに帰るとだけ伝えておく。

マックスとライオンは噴水のある公園へ移動し、酒を飲む。ライオンは賑やかに『宝島』の芝居をして、公園にいた子供たちを喜ばせる。マックスは、そんなライオンに不自然さを感じていた。嫌な予感は的中し、ライオンは1人の子供を抱きかかえたまま、噴水の中へ入っていく。その子の母親が騒ぎ出したので、マックスは急いでライオンから子供を引き離し、母親に返す。ライオンは「洗礼するんだ!」と叫び、噴水の中で暴れまわった後、意識を失ってしまう。

ライオンを診察した医師は、かなりひどい錯乱状態に陥っているので、このまま州病院に移送するとマックスに告げる。鎮静剤で眠るライオンは、ベッドに手足を拘束されていた。マックスはどうしても医師の言うことが信じられず、ライオンの拘束具を外し、「俺1人じゃダメなんだ!」と必死で呼びかける。しかし、ライオンは無反応だった。

マックスは銀行で金を下ろし、また戻って来るつもりで、ピッツバーグ行きの往復チケットを買おうとする。しかし、ポケットのお金では足りず、靴の踵に隠していたお金を取り出す。マックスは、お金を出すのに外した踵を直すため、靴底をカウンターに叩きつける。周囲の人が呆れる中、マックスは孤独と不安を振り払うかのように、靴底でカウンターを叩き続けるのだった。

映画『スケアクロウ』の感想・評価・レビュー

アル・パチーノとジーン・ハックマンが見ていて痛い男たちなんだが、2人の切なくてみすぼらしい友情にすっかり夢中になって観ていた。観終わってから気づいたけどこれはアメリカン・ニューシネマの部類だったのか。

臆病で優しくてどこか純粋なようなフランシスが社会の不条理に傷ついていく様子が虚しさと喪失感の中に表現されていた。人間なんて片っ端から信用できない男が、不器用なフランシスには心を許し友情が築かれていくところはこの理不尽に見えた社会での少しばかりの希望に思えるほど温かいものでとてもよかった。(女性 20代)


『スケアクロウ』は案山子のこと。どういう意味なんだろうと考えながら鑑賞しましたが、作中で案山子について話す2人の考え方の違いが、それぞれのキャラクターの性格を表しているようで、なるほどなと納得してしまいました。
怒る人と、それを茶化す人って物凄く相性が悪いように思えますが、お互いに影響されて考え方や行動が変わっていく部分もあるのだなと人との出会いや繋がりに感動させられました。
カンヌ映画祭でパルム・ドールを取っている作品ですが、それだけの魅力をしっかり感じられました。(女性 30代)

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