映画『シーサイドモーテル』の概要:山奥にあるのに「シーサイドモーテル」と名付けられたナンセンスなモーテルには、訳ありの客が集まり、それぞれに激動の1日を過ごす。コメディタッチの群像劇になっており、11人の男女が騙したり騙されたりの駆け引きを繰り返す。キャスティングはかなり豪華。
映画『シーサイドモーテル』の作品情報
上映時間:103分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:守屋健太郎
キャスト:生田斗真、麻生久美子、山田孝之、玉山鉄二 etc
映画『シーサイドモーテル』の登場人物(キャスト)
- 亀田雅之(生田斗真)
- 103号室に宿泊中のセールスマン。原価200円の美容クリームを定価4万円で売る詐欺まがいの仕事に嫌気がさしている。
- キャンディ(麻生久美子)
- 手違いで103号室へやってきたコールガール。インチキの達人。
- 朝倉陽介(山田孝之)
- 202号室に宿泊中のギャンブラー。ギャンブルで3千万円の借金をして、ヤクザに追われている。かなりの悪党。
- 二宮留衣(成海璃子)
- 朝倉の女。質問魔。ベルギーのイーベルで行われる猫祭りへ行きたがっている。
- 相田敏夫(玉山鉄二)
- 朝倉と幼馴染のヤクザ。組の命令で、朝倉を追っている。熱いハートを持つ男。
- チー坊(柄本時生)
- 相田の子分。ヤクザの見習い修行中。
- ペペ(温水洋一)
- 伝説の拷問士。指の骨を1本ずつ抜き取っていくという残忍極まりない拷問を得意とするが、見た目は善良な農家のおじさん風。
- 太田勝俊(古田新太)
- 205号室に宿泊中の激安スーパー社長。最近男性機能の低下に悩んでいる。
- 太田美咲(小島聖)
- 太田の妻。太田よりはかなり年下でパチスロ好き。嫉妬深い。
- 石塚達也(池田鉄洋)
- 102号室に宿泊する男。職業などは不明だが、キャバ嬢のマリンをものにするため、半年間で2百万円も貢いできた。
- マリン(山崎真実)
- キャバ嬢。長身で体が柔らかい。高級旅館での一泊旅行につられて石塚に付いてきた。
映画『シーサイドモーテル』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『シーサイドモーテル』のあらすじ【起】
「シーサイドモーテル」は、全く海の見えない山奥にある薄汚いモーテルだ。103号室に入った亀田雅之は、社長からインチキ美容クリームを50個も売りさばいてくるよう命じられ、途方に暮れていた。亀田は、自分にはこの仕事が向いていないのではないかと悩む。
そこへ呼んでもいないコールガールのキャンディがやってくる。どうやらキャンディは、受付の人の手違いで、ここへ派遣されたらしい。それでもキャンディはへこたれず、甘い言葉で亀田を口説き始める。“このまま私と海の見える場所へ逃げない?”とまで言われ、亀田もついその気になる。しかしキャンディはキスを寸止めし、続きがしたければ正式にコールするよう告げて帰っていく。
同じ頃。202号室に宿泊して3日目になる朝倉陽介と二宮留衣のカップルは、午後6時までにピザの宅配が来るかを賭けていた。留衣は、もしピザ屋が遅れたら、ベルギーのイーグルで行われる猫祭りへ連れて行って欲しいと朝倉に訴えていた。
5時59分にピザ屋は到着するが、その背後にはヤクザの相田と弟分のチー坊が隠れており、朝倉はいきなり殴られ、留衣とともに拘束される。
また同じ頃。205号室には太田勝俊と妻の美咲がいた。美咲はセクシーコスプレで迫るが、太田の反応は鈍い。太田はある企みを実行するため、美咲の機嫌を取るふりをして、パチスロへ行くよう勧める。美咲は太田に派手な女装メイクを施し、“私が帰るまでにメイクを落としていたら即刻離婚する”と言い残して、パチスロへ出かけていく。太田はすぐにコールガール派遣店舗へ電話して、女の子を頼む。
シーサイドモーテルのすぐ側の道路では、車が故障して石塚達也が困っていた。高級温泉旅館という餌につられて石塚についてきたキャバ嬢のマリンは、猛烈に機嫌が悪くなる。石塚は何とかマリンをなだめ、とりあえずシーサイドモーテルへ入る。
巡回中の警官2名は、国道で衝突事故が発生したという無線連絡を受け、現場へ向かう。
映画『シーサイドモーテル』のあらすじ【承】
太田はコールガールがなかなか来ないのでイライラしていた。その頃、太田の部屋へ行くはずだったキャンディが、受付のミスで亀田の部屋を訪れていたというわけだ。
ようやくブザーが鳴り、太田は喜んでドアを開ける。しかし訪ねてきたのは先ほどの警官2名で、美咲が事故で死んだと報告する。美咲は、太田が経営する激安スーパーの従業員と浮気しており、その従業員の車に同乗していて衝突事故に巻き込まれたようだ。太田は美咲との約束を守り、女装メイクのまま遺体の確認へ向かう。
202号室では、朝倉と留衣が体を縛られていた。朝倉はギャンブルで3千万円もの借金を重ね、ヤクザから逃げていたらしい。もうすぐ組が依頼した伝説の拷問士ペペがやって来ると聞き、朝倉は相田に“最後の勝負をしよう”と訴える。朝倉と相田は、幼馴染だった。
窓の外を男が連続で5人通ったら朝倉の勝ち、1人でも女が通れば相田の勝ちという賭けをして、2人は窓の外に注目する。最初に窓の外を通過したのは、太田を迎えに来た警官2名。その2名が再び引き返してきて、これで連続4回男が通過したことになる。そして最後に姿を見せたのは、女装した太田だった。
朝倉は“あれは女装したおっさんだ”と訴えるが、相田は“女だ”で押し切る。意見を求められた留衣は、自分の話をまともに聞かない朝倉に腹を立てており、“どう見ても女だった”と、相田に味方する。
賭けに負けた朝倉は、拷問士ペペの壮絶な拷問を受ける。ペペは気弱な田舎のおっさんといった風体の男だが、拷問にかけては超一流で、その残酷さに相田も思わず目を背ける。
同じ頃、103号室の亀田はキャンディのことばかり考えていた。亀田はもう一度キャンディに会いたかったが、プライドが邪魔をして電話をすることができない。思い悩んで部屋をうろついていた亀田は、床にキャンディのネックレスが落ちているのを見つける。
映画『シーサイドモーテル』のあらすじ【転】
102号室に宿泊することになった石塚は、今夜こそマリンをものにしようと脳みそをフル回転させていた。石塚はでかくて体の柔らかい女が大好きで、理想通りの体を持つマリンに2百万円もつぎ込んできた。しかしマリンにその気はなさそうだ。
103号室にはキャンディが戻ってくる。亀田はネックレスを口実に、キャンディを呼び戻したのだ。亀田はキャンディに自分の身の上話をし、本気で南の島へ逃げる気になっていたのだと告げる。亀田はキャンディに仕返ししてやるつもりだった。
キャンディも亀田に話を合わせ、“もう一度あなたに会いたかったから、わざとネックレスを忘れて帰った”と打ち明ける。亀田は思わずその話を信じそうになるが、これも真っ赤な嘘だった。インチキクリームを売る亀田と、インチキな愛を売るキャンディの騙し合いが続く。
あれこれ難癖をつけ続けるマリンに石塚が切れ、ついにマリンも観念する。しかし潔癖症のマリンは薄汚いモーテルのベッドを嫌い、床に直立した状態でやろうとする。無理な体勢でことに挑んだ石塚は、ぎっくり腰になって痛みに悶絶する。マリンは救急車を呼び、自分は石塚の金を奪ってタクシーで帰ってしまう。
もうすぐ深夜3時。ペペは朝倉の中指の骨を全部抜き取り、最後に毒薬入りの注射器をつないだチューブを朝倉の腕に刺す。ペペは組から朝倉を殺すよう依頼されたらしいが、相田はその話を聞いていない。朝倉は、“最後に便所へ行かせて欲しい”と頼む。相田は朝倉のことを信用し、トイレへ行かせてやる。
ところが、朝倉は携帯電話を隠し持っており、トイレにそれを捨てていた。警察へ通報したのではないかと疑われ、朝倉は“最後に田舎のお母さんに謝りたかった”と言い訳する。その時、モーテルにサイレンの音が近づいてくる。相田は朝倉を抱きしめ、泣きながら注射器の毒薬を朝倉に注入する。朝倉はすぐにがっくりと倒れ込む。しかしそれは、石塚を救助に来た救急車のサイレンの音だった。
映画『シーサイドモーテル』の結末・ラスト(ネタバレ)
キャンディは亀田の話を聞いているうちに眠ってしまい、時間を午前4時まで延長すると告げる。しかし亀田は“セックスするために呼んだのではない”と言い張り、キャンディを抱こうとしない。亀田は本気でキャンディを愛し始めていた。キャンディは怒って帰ろうとするが、思い直して戻って来る。2人は盛り上がり、ついにセックスをする。
セックスを終えたキャンディと亀田は、壁の写真を見つめていた。それは、夕日に染まる南の島の海岸で、カップルが肩を寄せ合っている写真だった。キャンディはここのオーナーから写真の撮影場所を聞いており、“その島にモーテルでも建てようかな”と夢を語る。亀田は“俺にも手伝わせてくれ”と申し出る。そしてキャンディは、“水着と日焼け止を持って、朝日が昇る頃戻って来るわ”と言い残し、午前4時きっかりに部屋を出て行く。
亀田は喜び、インチキクリームを外のゴミ箱に捨ててしまう。その時、朝倉の死体を運び出しているペペとチー坊に遭遇するが、まさか朝倉が死体だとは夢にも思わない。
相田は組からの連絡で、朝倉が組の金2億円を奪っていたという事実を知る。その頃、死体の処分を引き受けたペペは、車中で眠りから覚めた朝倉と話をしていた。実は2人は最初からグルで、注射器の中身は強烈な麻酔薬だった。相田を信用させるためにわざと残酷な拷問をし、2人はまんまと2億円を手にする。2億円は車のトランクに入っていた。
相田はこのままでは済まないだろうと考え、思いやりからチー坊を破門にする。そして留衣を連れ、モーテルを出る。レストランに入った相田は、組から“朝倉は生きていたが事故死した”という連絡を受ける。
朝倉はペペも裏切り、車中でペペを絞殺しようとする。ペペは苦し紛れにアクセルを踏み、暴走した車はキャンディが運転していた車と衝突。朝倉とペペはその事故で死亡し、キャンディは重傷を負う。キャンディの車には、水着や浮き輪が積まれていた。
そんなことは何も知らない亀田は、キャンディに騙されたのだと思い込み、インチキクリームをゴミ箱から拾い出す。その時、相田に破門されたチー坊と知り合い、2人は海へ向かう。
美咲の遺体を確認してモーテルへ帰ってきた太田は、涙でボロボロに崩れたメイクを落とそうとする。しかし節水で水道が止まっており、顔が洗えない。太田は“死んでも嫉妬深い女やな”と泣き笑いし、美咲の喪が明けるまでこのままでいると誓う。
それから4週間後。亀田とチー坊はまだ南の島を渡り歩いていた。亀田は今でもキャンディのことを想い、約束の島を探し続けていた。そして退院したキャンディは、大きなスールケースを持って、どこかへ旅立っていく。彼女は最後にあの写真を見て、幸せそうな笑みを浮かべる。
映画『シーサイドモーテル』の感想・評価・レビュー
ずっと昔に観て、内容は覚えていないけれども面白かったと記憶している。
山奥のモーテルは海もないのに”シーサイドモーテル”なんて名前だし、訳あり客が集結しててんやわんや、といったどこかで見たことがあるようなあらすじ。
何と言ってもキャストが個性的で、へんてこだけど気が付いたら見入っていた。
若き生田斗真演じるインチキ詐欺師と麻生久美子演じる三十路前のコールガールという配役もぴったりで、特に生田斗真のコミカルな小芝居はツボだった。(女性 20代)
「シーサイドモーテル」を舞台に全く関係のない男女の人生が交差していく様子が、絶妙でおもしろい。池田鉄洋さんの明るい演技が見ていて楽しくて、石塚達也とマリンの恋の行方が一番気になった。ハッピーエンドになるのかと思いきや、お金を奪われて見捨てられるのが切ない。麻生久美子さんはどちらかと言えば真面目な役を演じている印象だったので、コールガール役は新鮮で良かった。普通に綺麗で可愛らしかった。(女性 30代)
好きな人には堪らないのかもしれませんが、こういった日本人の演じるコメディチックな作品があまり得意ではない私にはハマりませんでした。生田斗真や山田孝之など豪華なキャストが揃っていて、それぞれのキャラクターもかなり個性豊かなので見ていて飽きませんが、その後に続く展開は無く、心に残るストーリーは特にありません。
意味が分からないと言うのは言い過ぎかもしれませんが、はちゃめちゃで理解しきれない作品でした。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
生田斗真扮する、自称詐欺師のセールスマンが、シーサイドモーテルで明日への希望と愛を見つけるファンタジーです。
役者は良いのだけど、邦画にありがちな、物語のまとめ方がお粗末です。
まず、4組のカップルが織り成すオムニバス形式なのですが、混線しすぎて面白くない!
シンプルに3組のカップルでも良かったのではないか。
加えて、漫画が原作ということもあるのか、ヤクザの2人組の描き方が劇画的でリアリティに欠けています。
見どころとしては、謎の男を演じる温水洋一が、彼の印象とは180度違った怖い男を演じている点が面白い!尋問して爪をはいでゆくなんてゾクッとしますね。
物語を彩る、コール・ガールのキャンディ役の麻生久美子がキュートで小悪魔的な魅力を振りまいています。こんなかわいい女の子だったら、きっと心を許しちゃう。
なぜか目が離せないという俳優がいます。それが、本作で主人公を演じた生田斗真。
ジャニーズ出身で、独自の俳優道をまっしぐらに進んでいます。
舞台で培った演技力と感性の良さが光っています。生田斗真の魅力は、イケメンであることに加えてコミカルな演技が素晴らしいところ。劇中で、麻生久美子演じるキャンディに心惹かれてゆく過程がいい。
実際にコール・ガールと客が恋愛関係になることはないだろうけど、“悩める青年像”を演じさせたらピカイチなのだ!
また、本作が公開された2010年には、「人間失格」、「シーサイドモーテル」、そして「ハナミズキ」の3作品に主演しているのも注目ポイントだろう。
本作は、設定や展開は面白いのに全体として観ると、まとまりきれなかった印象があります。
例えば、ヤクザの2人組に借金を抱えたギャンブラーの男が襲われる展開もリアリティがなく、雑な演出で終わってしまう。
加えて、麻生久美子演じる、コール・ガールのキャンディはメルヘンな女の子。普通なら恋に落ちないハズの2人が落ちるのは夢の中のよう。
まさに、“インチキでも、いつか本物になる”と信じたいファンタジーだろう。
どこかに行きたいけれど、行けない夏に観るのもいいかもしれない。