映画『しあわせの雨傘』の概要:スザンヌは亭主関白な夫の支配の元、家事も仕事もせずに家で優雅な生活を送っていた。ある日、夫が社長を務める雨傘工場でストライキが起こり、夫が社長室に閉じ込められてしまう。スザンヌは夫を助けるため奔走することになる。
映画『しあわせの雨傘』の作品情報
上映時間:103分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:フランソワ・オゾン
キャスト:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、ファブリス・ルキーニ、カリン・ヴィアール etc
映画『しあわせの雨傘』の登場人物(キャスト)
- スザンヌ・ピュジョル(カトリーヌ・ドヌーブ)
- 雨傘工場創業者の娘。毎朝ジョギングを行うのが日課で、詩を考えるのが趣味の優雅な生活を送っている。夫のロベールに何もさせてもらえないのを皮肉り、陰で“飾り壺”と噂されている。
- モリス・ババン(ジェラール・ドパルデュー)
- 市長であり共産党議員でもある。労働者の味方をするため、ロベールからは毛嫌いされている。若い頃にスザンヌと一度だけ関係を持ったことがあり、その頃からずっとスザンヌのことが好き。
- ロベール・ピュジョル(ファブリス・ルキーニ)
- スザンヌの夫。雨傘工場の社長。独裁主義者で、会社でも家でも周りの意見に耳を傾けない。経営手腕はなく、業績は悪化している。心臓に持病を抱えている。性に奔放で浮気を繰り返している。
- ナデージュ(カリン・ビアール)
- ロベールの秘書。仕事を得るため、ロベールと愛人関係になる。だが、スザンヌの下で働くようになり、自分の力で純粋に働きたいと思うようになる。
- ジョエル(ジュディット・ゴドレーシュ)
- スザンヌの娘。ロベールに考え方が似ており、労働者を優遇する必要はないと思っている。夫が仕事で頻繁に出張するため、離婚を考えている。2人の息子がいる。
- ローラン(ジェレミー・レニエ)
- スザンヌの息子。スザンヌが浮気をしていたときに誕生したため、誰が父親か分からない。有力候補は、スザンヌの父の遺産を整理した公証人の男。ロベールとは考え方が正反対で、会社は労働者に恩恵を与えるべきだと思っている。
映画『しあわせの雨傘』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『しあわせの雨傘』のあらすじ【起】
1977年春、サント・ギュデュル。スザンヌは日課のジョギングを終えた後、夫のロベールのために朝食の用意をした。使用人に休暇を与え、自ら家事を行っているのだ。スザンヌは家事や経営の手伝いを率先して行いたかったが、ロベールがそれを許さなかった。
ロベールは雨傘工場の経営が忙しく、イライラしていた。ニュースでは、複数の組合がストを宣言していることが報道されていた。市長であり共産党議員のババンは、経営陣が抜本的な改善処置をしなければいけないとのコメントを発表した。ロベールは労働者の味方であるババンのことが好きではなかった。
スザンヌの娘のジョエルが家を訪ねてきた。ジョエルは出張続きで、家のことにも自分のことにも構わない夫に愛想を尽かしており、離婚を考えていた。スザンヌは止めようとするが、ジョエルの離婚への意思は固かった。スザンヌのように陰で“飾り壺”と噂されるような、何もできない女性になりたくなかったのだ。
スザンヌの息子のローランが結婚を考えていた。相手はケーキ店の一人娘のフロリアンだった。ロベールはスザンヌからその話を聞かされ、フロリアンと会う前から家の格が違うと激怒し、結婚に反対した。スザンヌは会ってみたらどうか提案するが、ロベールはスザンヌの意見を聞こうともしなかった。
映画『しあわせの雨傘』のあらすじ【承】
従業員がストライキを起こし、第4工場が操業を停止したため、数百万の損失が発生することになった。ロベールはイライラしながら会社に向かった。その夜、スザンヌの誕生日をジョエル達と祝っていると、秘書のナデージュが慌てた様子で訪ねてきた。ロベールが職工長と殴り合いを行い、社長室に監禁されてしまったのだ。スザンヌは従業員の要求を聞こうとするが、ジョエルから一度要求を呑めばつけ上がるだけだと反対される。話を聞いていたローランは、父の代わりに人質になることを決め、会社へと向かった。
スザンヌ達も家の窓から会社の様子を確認するが、想像していたよりも緊迫した雰囲気だった。しかも、「ロベールはヒトラーだ」と壁に書かれているのを見てしまう。ジョエルはあまりにひどい言葉に絶句した。そこに、ボロボロになったローランが帰ってくる。父に交渉に応じるように説得しようとしたのだが、拒否されて殴られてしまったのだ。
スザンヌは状況を打破するため、ババン市長の元に相談に向かった。ババンは快くスザンヌを部屋に招き入れた。スザンヌは市長の権力で夫を助けてもらおうとするが、ババンはそれを拒否した。ロベールが労働者達ときちんと話し合うべきだと考えていたのだ。スザンヌは過去の話を持ち出し、助けてくれないババンを非難した。スザンヌは若い頃に車がパンクして困っていたところをババンに助けられ、一度だけ体の関係を持ったことがあった。
ババンはロベールを助ける見返りとして、スザンヌに工場の改革を任せた。このままストが続発すれば工場が閉鎖し、労働者が失業してしまうからだった。次の日、ババンによってロベールは助け出されるが、心臓発作に加えて肺水腫の恐れもあり、精密検査のために1週間ほど入院する必要があった。ロベールは自宅のベッドで医師の診断を聞いた後、スザンヌにローランの結婚を反対している本当の訳を話した。それは、フロリアンの母親と浮気をしたことがあり、フロリアンが実の娘かもしれないからだった。フロリアンの母は既に亡くなっているため、確かなことは分からなかった。スザンヌはショックを受けるが、ロベールは謝罪しようとはしなかった。
映画『しあわせの雨傘』のあらすじ【転】
ババンがスザンヌの家を訪ねてきて、ロベールと口論になってしまう。ロベールは相変わらず労働者と話し合う気はなく、強制的にストを排除しようとしていた。だが、委員会がロベールの口座を調べる決定が下された聞き、言葉を失くす。スキー場の別荘や使用人の給料の支払いなど、会社の経費で賄われていたのがバレてしまったのだ。その時、ロベールは心臓発作を起こし、倒れてしまう。
労働者との交渉の席に、スザンヌが着くことになった。ババン市長はスザンヌが出掛ける準備をしている間、ローランと会話をしていた。ローランは父とは違い平和主義者で金銭に執着しておらず、絵画が好きな青年だった。ババンはローランに興味を抱き、飲みに行く約束をした。
市長が交渉の席にいる訳にはいかないため、スザンヌはナデージュと共に労働者との会談を行った。スザンヌはロベールに対して不満を抱く気持ちが理解できるため、労働者達の要求を前向きに検討することを約束した。その夜、スザンヌはジョエルとローランに仕事を手伝って欲しいと頼んだ。
スザンヌはババンと「バダブン」を訪れ、ストの終結を祝った。その店はロベールが客の接待に使う、女性が働く店だった。スザンヌは一度行ってみたいと思っていたため、ババンと訪れたのだ。2人は見つめ合いながらダンスを踊り、楽しい時間を過ごした。その帰り、ババンはスザンヌを口説き、一緒に暮らそうと提案するが、スザンヌはロベールを見捨てることはできなかった。いい友達でいようと約束し合いキスをした。
映画『しあわせの雨傘』の結末・ラスト(ネタバレ)
ローランは芸術的センスを生かし、カラフルでかわいい傘を開発した。ジョアンは夫に経営管理についてレポートを書いてもらい、スザンヌに見せた。だが、スザンヌは工場に調和を取り戻したいと考えていたため、人員削減やチュニジア移転などが書かれたレポートは受け入れられなかった。亡き父のように、労働者から愛される経営者になりたかったのだ。
ロベールは3月の休暇を終え会社に戻るが、スザンヌは社長の座を降りる気はなかった。ロベールは今度は自分が飾り壺になることに気づき、憤慨した。しかも、ローランが自分の息子ではない恐れがあるとスザンヌから聞かされ、頭を抱えるハメになる。
ロベールはジョエルからスザンヌのロケットペンダントを渡され、スザンヌの浮気相手を知ることになる。ロケットペンダントには、若かりし頃のスザンヌとババンの写真が入っていた。ロベールはババンに会いに行きその事実を突き付け、ストを先導してスザンヌを社長の座から下ろさないとマスコミに情報を売ると脅した。
ババンはロベールが自分の息子である可能性を知り、浮かれた気持ちでスザンヌに会いに行った。だが、スザンヌはローランの父親はババンでもロベールでもないと否定した。父の遺産を管理した公証人やテニス教師など様々な浮気相手がおり、誰が父親か分からなかったのだ。
傷ついたババンはストを先導し、スザンヌを失脚させようとした。ロベールは取締役会の開催を開き、スザンヌから社長の座を奪還しようと画策した。ロベールにジョエルが賛同したため、スザンヌの退任が決定してしまう。その夜、スザンヌはなぜ自分を裏切ったのかジョエルに問い掛けた。ジョエルは涙ながらに、夫が役職に就けるよう取り計らってくれると父が約束してくれたことを話した。ジョエルは妊娠しており、夫とこれ以上離れることが耐えられなかったのだ。
数か月後。スザンヌはババンに対抗して国会議員選に出馬することを決める。ローランに手伝ってもらいながら、チラシを配り地道に選挙活動を行った。その時、ローランはフロリアンと別れたことを母に話した。
スザンヌは見事議員に当選した。父の思い出に誓い、街ために善行を行うこと、女性に権力を復活させることを約束した。ナデージュは秘書を辞め、スザンヌの元で議員秘書として働くことを決意する。
映画『しあわせの雨傘』の感想・評価・レビュー
本作は、優雅に暮らしていたスザンヌが夫から「飾り壺」だと思われていても、諦めずに高見を目指し奮闘する姿を描いたコメディーヒューマンドラマ作品。
衣装やインテリア、傘の色使いがポップで観ていてテンションが上がった。
1970年代のブルジョワ社会を舞台としており、劇中の台詞に男尊女卑や差別的な言葉がサラッと出てくる。
そんな時代に社会進出していく彼女の強く逞しい上品な姿に勇気と元気を貰えた。
女性や、悩みを抱える人に見て欲しい作品。(女性 20代)
何気なく見た作品ではあるが、想像以上におもしろかった。1970年代ならではのおしゃれな服装も見ていて楽しい。主人公のスザンヌ・ピュジョルが優雅でとても可愛らしい人。「飾り壺」と皮肉られる人物ではあるが、社長としての手腕を発揮したり、議員に出馬したり、素晴らしい才能を秘めていたことが明かされていく。可愛いだけではなく、カッコ良い女性だなと思った。カトリーヌ・ドヌーブがスザンヌを演じていたのも、雰囲気がキャラクターに合っていて良かった。(女性 30代)
スザンヌが本当に素敵で愛すべきキャラクターでした。夫に何もさせて貰えないと言っても、周りから見ればそれは優雅な暮らしで羨ましいと妬まれてしまうこともあったでしょう。しかし、スザンヌは自分の意思ややりたい事のビジョンをはっきり持っていて、それを行動に移した時の実現力は素晴らしいものでした。彼女のような人が会社を経営すれば、自ずと労働者や周囲の人も応援してくれて繁栄するはずなのに、そうさせない男たちの「女卑」の気持ちは根深いのだなと感じました。
色使いがとても綺麗で、ストーリーはもちろん映像でも楽しませてくれる作品でした。(女性 30代)
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