映画『死の王』の概要:『ネクロマンティック』で痛烈な悪夢のような世界を描いた、ユルグ・ブットゲライト監督による「死」の3部作・最終章。月曜日から日曜日まで、「死の王」により様々な「死」を迎える人々の姿を、1週間に渡り映し出す異色作。
映画『死の王』の作品情報
上映時間:80分
ジャンル:ホラー
監督:ユルグ・ブットゲライト
キャスト:ヘルマン・コプ、ニコラス・ペッチェ、アンジェリカ・ホッホ、ミヒャエル・クラウス etc
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映画『死の王』の登場人物(キャスト)
- 月曜日の男(ヘルマン・コプ)
- 月曜日に、友人に遺書を残し突然の自殺を図る男。彼の死を皮切りにして、月曜日から日曜日までの「死の王」による伝言ゲームが開始される。
- 火曜日の男(ニコラス・ペッチェ)
- 火曜日に出てくる、残虐な映画を観るのが趣味の男。月曜日に自殺した男とは友人だった模様。
- 水曜日の女(アンジェリカ・ホッホ)
- 水曜日に、雨の中を彷徨う女性。
- 水曜日の男(ミヒャエル・クラウス)
- 水曜日に、雨の中ベンチに座り込んでいる男性。
- 土曜日の女(エヴァ・クルツ)
- 土曜日に、無差別殺人を行った末に殺害される女。
- 日曜日の男(ハインリッヒ・エーベル)
- 最後の日曜日に自殺を図る男性。
映画『死の王』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『死の王』のあらすじ【起】
冒頭、男性の真新しい遺体と思しき映像が映し出される。場面は移り、少女が何かの絵を描いている。再び映像は、男性の死体へ。そこへ流れる文字――「我が死によって、秘密は守られた」。
始まりは月曜日。とある男が、何やら熱心に手紙を書いている。書き終えてから、男は勤めているのであろう会社に電話をかけ、人事部に繋ぐよう伝える。それから、男は唐突に会社を辞めたいと伝える。その後、男はまるで身辺を整理するように部屋を綺麗に掃除し、金魚に餌を与え、丁寧に髭を剃る。浴槽で男は風呂を沸かし、服を脱ぐと浴槽へと浸かる。同時に男は、大量の薬を摂取し始める。動機は不明のまま、男は風呂場で服役自殺を図った。そしてほぼ同じ頃、金魚も後を追うようにして息絶えてしまうのだった。
火曜日。また別の男の元に、手紙が届く。男は手紙を受け取りながら、贔屓のレンタルビデオ屋へと向かった。男は1本だけビデオを借りると、レジへと持っていき先程の手紙をレジの男に見せる。「あいつ、自殺したみたいだ」。それは月曜日の男が書いていた手紙だった。
男は帰宅するなり、借りてきた残虐なビデオを見て楽しむ。内容はナチス軍による残虐な拷問が収められた内容だった。そこへ同居中と思われる女性が帰宅し、呑気にビデオを見ている男を叱る。男はそれに腹を立てたのか、突然持っていた拳銃で女に発砲する。辺りに散乱する鮮血。しかし、それは劇中劇であった。男が女を射殺した映像が、また別の誰かの部屋で流れている。その室内では、部屋の主であろう人物が首を吊って死んでいた。
映画『死の王』のあらすじ【承】
死の連鎖は続いていく。再び、ぐずぐずに腐敗していく男の遺体が映る。そして、水曜日。雨の中を1人の女性が歩いている。女性の手からは手紙が滑り落ちて行く。女性は1人の男が座っているベンチの隣に腰掛ける。男は俯いて、どこか落ち込んでいるような様子だ。男は女が腰かけると、自ら話し始める。自分は妻を愛しているのに、性行為をすると大量に出血させてしまう。男はそれが気がかりなようだが、妻は「あなたのせいじゃない。私は幸せだからそれでいい」と言う。だが、男は何故かその言葉を聞く度に苛立ってしまう。昨日は結婚記念日だったそうだ。特別な日にしようと思い、男は会社を休み妻との休暇を楽しんだ。博物館へ行き、映画館へ行き、レストランへも行った。そして、今度こそは上手く結ばれると思いベッドへと入った。だが、妻が泣き出してしまった。男はそれに怒りを抑えきれなくなり、彼女を深く突き刺したと言う。男の懺悔を聞いた後、女は無言のまま、鞄から拳銃を取り出した。拳銃を受け取ると、男はそれを使い自殺する。こうして、また1つの死が完成した。
映し出される男の腐乱死体は、進行が進んでいる。蛆虫も湧き出している状態にまでなっていた。
木曜日。映し出されるのはどこかの鉄橋のような風景。淡々と誰かの人名と年齢、そして職業がテロップとして、次々に流れていく。性別も年齢もどれも皆バラバラで統一性はない。恐らく、ここは自殺の名所なのだろう。自殺者達の名前が羅列されてゆき、鉄橋の全貌を映し出してから、木曜日は終わる。死の王による連接は、断ち切られることがないのだろうか。
映画『死の王』のあらすじ【転】
次いで画面に現れる男の遺体は、ほとんど腐敗が進み所々腐り落ち、ぼろぼろになっている。虫が死体を食い散らかし、四肢は荒らされている。
金曜日。とあるアパートの一室、オールドミスの女性が百合の花を飾りながら窓を開く。近くの部屋で、若い男性が窓を開けて外を覗き込んでいる。その男を見つめていると、やがて、男の恋人と思われる女性が姿を現し抱き合いキスし始める。嫉妬のような、孤独のような、何とも言いようのない気持ちになったようそれを眺める女性。女性がアパートの外に出ると、扉の前には手紙が落ちていた。女性はそれを拾い、先程のカップルのいる部屋を覗き込みに行く。嫌がらせのつもりか、女性はカップルの部屋に電話をかけるが繋がらず。女性は自分のしていることに呆れたようソファーに座り込み、ふと、先程の手紙を開く。
中にはこう書かれている――「我々は生と喜びを放棄する。このチェーンレターには長い戦いを終わらせるための最期のメッセージが記されている。貴方がこの手紙を手にする時、我々は既にこの世にはいない。君も仲間にこの手紙を送ってからためらいを捨て自分の申請に向き合うのだ。我死ぬ、故に我あり。人生は幻想であり無意味なものだと認めよ。我々の声明は常に死に向かっている。我々は“彼”に向かい、“彼”と契約するまではただ苦痛と不条理のみ。人は常に孤独だ、人生は終わりなき戦い。いにしえの欲望、甘い囁きに逆らう。だが、その手からは逃れられない。死の王の死の欲望、それを満たして欲しい。今がその時だ、生など時代遅れだ。神は6日で天地を創造し7日目に自分の命を絶った。死を迎えよ。“7日間の兄弟”による福音書」……女性はそれを読んだ後、興味も無さそうに破り捨て、ソファーに横たわる。オルゴールを流しながらまどろむうち、女性は幼少期の記憶を思い出す。寝室で隠す気配もなく、自分の両親が性行為に励む姿を子供時代の女性は何とも言えない気持ちで眺めていた。そういった出来事がトラウマになり、女性は今も孤独を貫いているのかもしれない――。
一方、先程のカップルはベッドの上で何故か死んでいた。幸せそうだった2人の筈が、シーツを血に染めて横たわっている。これも、「死の王」の欲望を満たすための尊い犠牲だと言うのだろうか。
そして、腐敗死体は食い荒らされあちこちから骨が露出するまでに腐り落ちていた。どんどん崩壊し、土へと還って行く遺体が早回しで映し出される。
映画『死の王』の結末・ラスト(ネタバレ)
土曜日。どこかの試写室で、誰かがフィルムをスクリーンに再生している。その映像の中では、女性が座り込んでいる少女に殺人や死に関する本を読み聞かせる。「死んだ生から、生きている死へ。少なくとも数日間は世間の注目を集めるのだから。それは非存在の人生より濃密だ」――女性は立ち上がると、部屋へと戻り身体にカメラや撮影器具を装備する。更には二挺の拳銃を持ち、女性はライブハウスへと向かった。ここで視点が女性の主観に変わり、女性はまずライブハウスのカウンターの男を射殺する。女性は更に会場へと進んで行き、無差別に人々を撃ち殺していく。しかし、観客の内の1人の男が女性を撃ち、フィルムはそこで終わる。
そして日曜日。ベッドの上で男が唸り声を上げながら悶え転がっている。男は叫びながらのたうち回り、奇声と共に壁に何度も何度も頭を打ち付け、出血しながらその内動かなくなる。
腐乱死体はほぼ骨と化していた。どこからともなく聞こえてくるのは、子供達の牧歌的な笑い声。映像は冒頭の少女へと戻り、少女がスケッチしている絵を映し出す。少女が描いていたのは、骸骨に王冠を被った謎めいたイラストである。少女は語る。「死の王様は生きるのを止めさせる」――少女が描いていた絵こそ、死の王であった。
映画『死の王』の感想・評価・レビュー
とにかく気の滅入る作品。落ち込んでいる時に観るのは、追い打ちを掛けられる。監督は作品を通して、死の哲学を伝えたかったのかもしれない。「死の王」という謎めいた存在を巡り、次から次へと連鎖していくそのデスゲームは、まるで「死ぬのは怖くないよ。幸せなことなんだよ」と優しくこちらを誘っているかのような気持ち悪さ。死の王の正体が明かされないままなのも、話が進むにつれ腐敗していく遺体の様子も、全編通じてとても気味の悪い余韻を残す映画だ。(MIHOシネマ編集部)
本作は、死に向かう人々の1週間を描いたユング・ブットゲライト監督による死の三部作の3作目となるホラー作品。
月曜日から日曜日までの1週間、1日1人自殺する様子が映し出される。
冒頭シーン、床に横たわる死体が腐敗し虫が湧いて骨になっていく様子が生々しくて衝撃的だった。
劇中に自殺する人々は皆心が病んでいて生きることに苦しんでいる。
80分という短さの中に死がギュッと凝縮されていて、監督の哲学を感じられる非常にインパクトのある作品。(女性 20代)
死に対する自分の考え方を否定されるような作品で、かなり衝撃的な描写が続くので元気な時に見るのをオススメします。落ち込んでいる時に今作を見てしまうと、死に対する「恐怖」を感じにくくなってしまうような気がしました。
まるで死ぬのは幸せなこととでも言うかのように死の世界へ導こうとする死の王とそれにまんまとハマってしまう男女の姿。この作品の世界が正しいとは言いませんが、こういう世界があると死に対する考え方が大きく変わるだろうなと感じました。(女性 30代)
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