映画『真実(2019)』の概要:日本を代表する映画監督の一人、是枝裕和が初めて国際共同製作で手がけた長編作。ランスを代表する女優カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュを迎え、母娘の間にできた心の溝を埋めていく一作。
映画『真実』の作品情報
上映時間:108分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:是枝裕和
キャスト:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホーク、リュディヴィーヌ・サニエ etc
映画『真実』の登場人物(キャスト)
- ファビエンヌ・ダジュヴィル(カトリーヌ・ドヌーヴ)
- フランスの映画界で数々のキャリアを積んできた大女優。傲慢な振る舞いが多く、家庭も顧みずに女優として人生を全うしてきた。パートナーはいるが、どこか寂しい生活を送っている。
- リュミール(ジュリエット・ビノシュ)
- ファビエンヌの一人娘。幼いころからファビエンヌは女優業を優先していたため、叔母・サラに面倒をみてもらい育つ。女優を諦め、ニューヨークで脚本家として活動している。
- ハンク・クーパー(イーサン・ホーク)
- リュミールの夫。テレビドラマ中心に活躍するアメリカの俳優。アルコール依存症を抱え、治療を受けていたため俳優業は少し休んでいる中ファビエンヌと会うこととなる。
- マノン・ルノワール(マノン・クラヴェル)
- ファビエンヌの姉・サラとよく似ているため「サラの再来」と称されている若手女優。ファビエンヌと共演することとなり、ぎこちない空気感で主演を演じている。
- リュック(アラン・リボル)
- ファビエンヌの秘書。40年の付き合いであり、わがままなファビエンヌをずっと支えてきている。自伝に自分の存在が登場しないことに不満を抱えている。
映画『真実』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『真実』のあらすじ【起】
フランス映画界きっての大女優、ファビエンヌ・ダジュヴィルは、長いキャリアを振り返るためにも「真実」というタイトルの自伝を出版することとなった。出版祝いに一人娘のリュミールが夫のハンクと娘のシャルロットを連れ、帰郷する。
リュミールはニューヨークで脚本家として活躍し、ハンクは俳優である。お城のような豪邸に一人で住むファビエンヌ。家政婦も辞めてしまい、家の中は煩雑な状態になっていた。わがままなファビエンヌに愛想をつかしていたリュミール。幼い頃、女優業を優先され一緒に過ごした思い出がないことも相まって、リュミールの中で母親としてのファビエンヌの印象は良いものではなかった。
シャルロットとファビエンヌが穏やかな会話を繰り広げる中、リュミールは知らない間に出版された自伝を読み腹立てていた。事実とはかけ離れ、ファビエンヌがとてもよく映るように絵が描かれた内容と、叔母のサラの存在が一切出てこないことに納得がいかなかったのである。
リュミールの話を聞こうとしないファビエンヌ。リュミールは秘書のリュックに自伝の内容について尋ねると、ファビエンヌはサラについて意識しているからこそ撮影中の作品に出演を決めたと聞く。
映画『真実』のあらすじ【承】
ファビエンヌが出演を決めたSF映画には「サラの再来」と称される若手女優・マノンが出演しているという。ファビエンヌの撮影に同行したリュミール。ファビエンヌとマノンが台本の読み合わせる様子を見たリュミールに、リュックは様子を伺う。そして辞職を申し出るのだった。
週末にはニューヨークに戻るつもりだったリュミールだが、リュックの代わりにファビエンヌの付き人をすることとなる。さらに翌日、ファビエンヌの元夫・ピエールが突如実家を訪ねてくるのだった。
自伝の中で、ピエールはとうに亡くなっていることにされていた。さらに庭で飼っている大きな亀に「ピエール」と名付けていたのだ。以前ファビエンヌが魔女を演じていたことから、ファビエンヌは本当に魔法が使えると信じ込んでいたシャルロット。前の使用人を亀に変えたというファビエンヌの冗談を信じ切っていたファビエンヌはピエールの存在に驚くのだった。
リュミールはマノンと距離を縮めていた。ファビエンヌが寂しそうに「娘は髪を触らせてくれなかった」と話していたと、リュミールは聞かされる。その夜、ファビエンヌの恋人・ジャックの手料理を振る舞ってもらい皆で食卓を囲んだ。しかし、ファビエンヌの些細な一言をきっかけにリュミールはサラの死について口火を切る。「私はママを絶対に許さない」と言い放ったリュミールに対して、ファビエンヌもきつい言葉で返すのだった。
映画『真実』のあらすじ【転】
ファビエンヌの女優論に付き合ってワインをたんまりと飲んだハンク。実はハンクはアルコール依存症の治療を受けていた。リュミールはお酒を飲んだハンクに八つ当たりをしてしまったが、「ファビエンヌは寂しそうだった」とハンクから諭されるのだった。
翌朝、亀のピエールと遊ぶシャルロットの声で起きたファビエンヌ。ピエールは夜の間に帰宅してしまっていた。ファビエンヌは亀にピエールと名付けたのはリュミールだとジャックに話す。父親を追い出したことの当て付けだと思っていたファビエンヌだが、ジャックは寂しさの象徴だと諭すのだった。
この日はファビエンヌの撮影にハンクとシャルロットも同行した。どこか浮かれた様子のファビエンヌだったが、撮影中は本調子が出ず苦戦する。何が気がかりなのか聞き出そうとするリュミールに対して、ファビエンヌはリュックに謝るための脚本を書いてほしいと申し出るのだった。
「周りの人をもう少し大切にした方がいい」とジャックから助言を受けたファビエンヌ。リュックに謝るためにリュックの家族も含め食事に誘った。長年ファビエンヌを支えたリュックはすぐに悟り、「何かお話があるのでは?」と切り出す。ファビエンヌはリュミールの脚本に頼らず自身の言葉で本音を述べるのだった。
映画『真実』の結末・ラスト(ネタバレ)
台本を録音していたデータが消えてしまったと寝ぼけまなこでファビエンヌがリュミールの寝室に入ってきた。ファビエンヌが酒におぼれ大量の胃腸薬を服用していると、リュミールはこの時初めて知る。亡きサラへの後悔を募らせるファビエンヌは、マノンと対峙するのが怖くなっていた。リュミールはそんなファビエンヌに喝を入れ撮影へと連れ出すのだった。
リュミールが見守る中、ファビエンヌは見事な演技を披露する。ようやく心からマノンを称えることができたファビエンヌ。マノン自身も「サラの再来」と称されることにプレッシャーを感じていたと知り打ち解けあうのだった。
自宅に戻り、ゆっくりと話をする時間を設けたファビエンヌとリュミール。リュミールが女優として活動していた時期、実はファビエンヌは芝居を見に行っていたことや本音を明かしたファビエンヌ。リュミールもまた本音を明かし、長年の溝を埋めあった。
「真実」出版記念パーティーでは、リュックも秘書として参加した。シャルロットはリュックに手作りの金メダルをプレゼントし穏やかな時間が流れる。リュミールは活躍するファビエンヌを見守ってからニューヨークへと戻っていくのだった。
映画『真実』の感想・評価・レビュー
是枝監督の描く家族の物語には国境はないと感じさせる一作であった。とても穏やかな時間が流れるが、言葉の節々に溢れる哀愁がぐっと感情を掴んでいく前半。徐々に母娘の気持ちのズレがかみ合っていくような後半。物語の展開にいい味付けをする男性陣の演技が実ににくい。「真実」というタイトルが秀逸であり、物語の芯をしっかりと掴んでいた。「魔法」という言葉が幾度も出るが、登場人物の様々な表情を引き出してくれる良いキーワードであった。(MIHOシネマ編集部)
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