映画『きらきら眼鏡』の概要:恋人を事故で失った喪失感から立ち直れずにいる青年が、一冊の本を通じてある明るい女性と出会う。パートナーを失う恐怖と孤独を介して、人の繋がりを描いた一作。原作は森沢明夫の同名小説。
映画『きらきら眼鏡』の作品情報
上映時間:121分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:犬童一利
キャスト:金井浩人、池脇千鶴、古畑星夏、杉野遥亮 etc
映画『きらきら眼鏡』の登場人物(キャスト)
- 立花明海(金井浩人)
- 千葉県を北習志野駅の駅員である青年。同じような繰り返しの毎日にうんざりとしつつ、高校生の頃の恋人を失った喪失感を引きずり生活している。些細なこともきらきらとしたフィルターをかけるあかねに惹かれていく。
- 大滝あかね(池脇千鶴)
- 大切にしていた本を通じて明海と出会った女性。日々の出来事全てを「きらきら眼鏡」を通してみるようにしている。癌で余命宣告を受けている恋人の看病に勤しんでいる。
- 安藤政信(木場裕二)
- あかねの恋人。癌で余命1年の宣告を受けているが、仕事へ復帰する希望を捨てていない男性。明海の存在に少し嫉妬しつつ、大人な振る舞いをしている男性。
映画『きらきら眼鏡』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『きらきら眼鏡』のあらすじ【起】
駅の仮眠室で浅い眠りから覚めた立花明海。愚痴の多い上司と支度をしながらたわいない会話をする明海だが、その表情は浮かなかった。いつも通り勤務をこなす明海。同僚の用意したカレーを昼食に食べ、よく駅に訪れる迷惑な乗客の話に耳を傾けながら一日は過ぎていった。
読書が唯一の趣味である明海は「死を輝かせる生き方」という本と出会う。仮眠の合間にその本を手に取った明海は「京葉総業庶務 大滝あかね」という名刺が挟まっていることに気付いた。恋人からの最期の連絡を見返していた明海は、名刺の連絡先にメールをしてみるのだった。
本の持ち主だった大滝あかねと直接会うことになった明海。喫茶店で落ち合ったあかねは深く感謝を伝えお礼にお茶をご馳走したいと言い出した。丁寧に接するあかねは明海が駅員であると知ると「いつも見守ってくれてありがとうございます」と笑顔で感謝を伝えてくれた。初めてのことに表情がほころぶ明海。小説の同じ一文に惹かれ合った二人だが、明海は自分の生き方を見いだせずにいることを打ち明けるのだった。
駅で再会した明海とあかね。駅員たちが困っている迷惑な乗客の対応をしていた明海の同僚・やよいの対応を見ていたあかねは咄嗟に乗客に声をかけた。親切なあかねの姿に呆然とする明海とやよい。あかねは明海に休みを聞き出し、職場を案内する約束をするのだった。
映画『きらきら眼鏡』のあらすじ【承】
あかねの職場に出向いた明海。「見たものを全部輝かせるために“きらきら眼鏡”をかけることにしている」と無垢に話すあかねに明海は惹かれ始めた。一緒に過ごす時間も増えたある日、明海は高校時代から付き合っていた恋人を海の事故で亡くした経験を明かした。慰めるあかねに対して、強がる明海。あかねは何か言いたそうにしていたが、別れ際まで言葉を濁すのだった。
やよいの誘いは冷静に断る明海だが、あかねとの約束には浮かれて出向いていた。ある日浜辺へ出かけた二人。行くところがあるというあかねは、恋人の裕二の存在と彼が余命宣告を受けていることを明かすのだった。
二人を引き合わせてくれた自己啓発本を買った古本屋にあかねを連れ出した明海。あかねが持っている本を借りるため自宅に招かれた明海は、友人からの誘いの電話を嫌そうに受けていた。その様子を見たあかねは「時間は命と同じ」と明海の背中を押すのだった。
避けていた友人たちと久々に再会した明海。亡くなった恋人のことで気を遣われるのに明海は嫌気がさしていた。事故の日一緒に海に行った女友達は強がる明海の姿を見て、明海だけが被害者ではないと怒るのだった。
映画『きらきら眼鏡』のあらすじ【転】
明海は裕二と会うことになった。37歳の裕二は余命1年と宣告を受けながらも、仕事に復帰することを諦めていなかった。あかねのことを「感動の天才」と褒める裕二に対して、明海は「あかねは今にも壊れてしまいそうだ」と本音をぶつけた。一方であかねは気丈に振る舞うが裕二の病状は悪化していく。すでに手遅れだと担当医に宣告され、あかねも裕二も互いに受け止めきれずにいるのだった。
病に負けそうになった裕二は、明るく振る舞うあかねに八つ当たりをしてしまう。明海の名前を出し、あからさまに嫉妬して見せるのだった。裕二の状態を知った明海は「本当に付き合っちゃいますか?」と口にするが困惑したあかねの表情にすぐに否定した。あかねは話題を変えようと、お盆に明海の恋人の墓参りに行こうと提案したのだった。
明海の故郷に訪れたあかね。旅行気分で楽しむあかねだが、明海は恋人の面影を思い返してしまい不意に泣いてしまった。ようやく感情を出した明海を前に、あかねは「大事な人を失っても時間が経てば乗り越えられるのか知りたかった」と本音を打ち明けるのだった。墓参りをすることなく明海は一人で戻ってしまった。
映画『きらきら眼鏡』の結末・ラスト(ネタバレ)
気分転換にやよいと飲みに行った明海。無理やりキスを迫った明海は拒絶され再び一人になってしまった。一方であかねは裕二に別れを切り出されてしまう。疎遠になっていた明海はそのことを知らずにいた。ある夜、明海は裕二から唐突に連絡を受け見舞いに出向き、二人の別れを知らされるのだった。
「あかねを頼む」と弱々しく話す裕二に、残された者の辛さをぶつけてしまった明海。裕二も感化されたように死への恐怖を明海にぶつけるのだった。裕二のあかねへの強い気持ちを目の当たりにした明海は、亡くなった恋人へ思いを馳せ泣き明かした。
明海は久々にあかねと会った。裕二の死期が近くなり「どうやって生きていけばいいかわからない」というあかねに対して、最期を看取るべきだと優しく諭した明海。あかねは明海の存在のおかげで、裕二の最期に立ち会うことができたのだった。
季節は巡り、あかねと明海はある公園に来ていた。そこは裕二とあかねが初めてデートした場所だという。少し寂し気なあかねの表情を見ていた明海は「今、きらきら眼鏡かけてます?」と問う。笑顔を見せたあかねは明海に別れを告げ、二人はそれぞれに歩みだすのだった。
映画『きらきら眼鏡』の感想・評価・レビュー
フレッシュで少し固く見える金井浩人と柔らかいが脆そうな池脇千鶴、繊細でありながら頼りがいのある安藤政信。それぞれに演じた3役のバランスが実に心地よい一作。とてもドラマチックな出会いと対照的に、主軸の二人が抱える問題は実に現実的である。最愛の人を失う「空虚感」という埋めきれない心の穴に向き合う男女は、アプローチも違えば解決方法も違う。静かながら、とても丁寧に優しく心情を追う時間であった。(MIHOシネマ編集部)
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