映画『栞』の概要:高野雅哉は理学療法士として働いていた。そんなある日、脳腫瘍を患った父が入院してくる。父は手術も治療も乗り気ではなかった。雅哉が父に対してもどかしい思いを感じる中、リハビリを懸命に行う藤村孝志という患者に出会う。
映画『栞』の作品情報
上映時間:115分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:榊原有佑
キャスト:三浦貴大、阿部進之介、白石聖、池端レイナ etc
映画『栞』の登場人物(キャスト)
- 高野雅哉(三浦貴大)
- 理学療法士。患者に寄り添いながら仕事を行う、心優しい青年。患者に対して何ができるのか、苦悩を抱えている。
- 藤村孝志(阿部進之介)
- 元ラグビー日本代表選手。試合中に頸椎を損傷し、下半身不随になる。明るい性格で、リハビリを懸命に行う。
- 高野稔(鶴見辰吾)
- 雅哉の父。公立高校の教師。脳腫瘍を患う。亡き妻が闘病していたときにお金で苦労をしていたことから、治療に乗り気ではない。
映画『栞』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『栞』のあらすじ【起】
高野雅哉は幼い頃に病院で苦しむ母を見たことがあった。大人になった雅哉は、理学療法士の道に進んだ。そんなある日、父の稔が病院に入院してくる。稔は手術にあまり乗り気ではなく、治療する気がない様子だった。雅哉は父とどう接して良いか分からず困惑する。
雅哉は藤村孝志という名の患者を担当することになった。孝志は 頸椎を損傷しており、下半身は動かず握力はほとんどなかった。雅哉は落ち込んでいるのではないかと心配するが、孝志は病室のムードメーカーになるほどとても明るかった。そして、リハビリに対して、とても意欲的だった。
雅哉は父の書類を確認した。稔の病気は脳腫瘍で、複数の転移が確認されていた。頭痛、吐き気、軽度の眩暈といった症状が出ていた。妻は14年前に他界しており、高校生になる娘の遥と暮らしていた。そして、尊厳死の宣誓書を持参していた。
雅哉は孝志のリハビリに付き添った。その際、孝志の体調が悪化してしまう。孝志は呼吸が荒れる中で、もう一度リハビリをして欲しいと何度も口にした。雅哉は落ち着かせようと声をかけるが、孝志の思いは変わらなかった。
雅哉は小児患者の海音の担当もしていた。海音の体調はあまり良くなく、外出もままならないほどだった。母の美咲は海音の傍にいて、懸命にサポートをしていた。雅哉も海音に寄り添い、運動できないときはおしゃべりをしていた。
映画『栞』のあらすじ【承】
孝志はリハビリのリベンジがしたいと雅哉に訴えた。雅哉は無下にすることもできず、車椅子を使ったリハビリを行った。孝志は装具を使った歩行を望んでいたが、今の状態では危険のため無理だった。孝志は落ち込んでいる様子を見せず、車椅子のリハビリを続けた。
稔は手術を受ける決意をするが、もう助からないことは理解していた。稔は子供達にお金の苦労をかけないために、休職中の給与体制などを調べていた。妻が入院していたときに、お金で苦労をしたのが原因だった。雅哉はそんな父にもどかしい思いを感じる。そして、稔は遥に病気のことは知らせず、検査入院だと伝えていた。雅哉も遥に本当のことを言うことはできなかった。
雅哉は孝志の見舞客とエレベーターの中で会い、彼についての会話を聞いてしまう。明るく振る舞われていると逆に困るということや下半身が動けないのは自分だったら辛いなど、ネガティブな言葉が出ていた。
雅哉が見守る中、孝志はリハビリを懸命に行った。病院内を車椅子で移動することはできるようになるが、乗り降りはできなかった。それだけでも凄いことなのだが、孝志は満足していなかった。
映画『栞』のあらすじ【転】
孝志はプロラグビー選手として活躍できない以上、会社を辞めることを決めていた。しかし、会社の社員に辞める必要はないと引き止められる。孝志はまずリハビリを行って身の回りのことができるようになってから考えると、話を保留にした。
雅哉が見守る中、孝志は足の装具を着けたリハビリを行った。しかし、立つことさえできなかった。孝志はリハビリを行ってどうにかなる問題ではないと悟り、リハビリを終了することにした。夜、雅哉は遥に父の本当の病気のことを知らせた。遥は受け止められず、もっと早く話して欲しかったと泣き叫んだ。
雅哉は海音が亡くなったと知らせを受け、激しく動揺する。理学療法士として何もできないことに、もどかしい思いを感じた。そんな中、孝志のリハビリが最終日を迎える。立つことはできなかったが、1人で車椅子に乗れるようになっていた。孝志は、雅哉が担当で良かったと思いを伝えた。
雅哉は上司から海音のことを学会で発表することを勧められる。海音が患った病気は、ほとんど症例がない珍しい難病だった。上司は何もできずに悔しい思いをしている雅哉の気持ちを理解しており、症例を発表するという仕事が残っているのではないかと提案した。雅哉は上司の考えが理解できたが、やる気が出ず断った。
映画『栞』の結末・ラスト(ネタバレ)
孝志の退院が決まる中、稔の手術が行われた。目を覚ました稔は、一瞬記憶が混濁していた。しかし、目の前にいるのが稔だと分かると、立派な仕事に就いたと褒めた。雅哉は父の言葉に涙を流した。2人は疎遠な関係だったが、やっとまともに会話することができたのだった。
孝志が柵を乗り越え、飛び降り自殺をして亡くなった。雅哉が落ち込む中、父の容態が悪化する。雅哉は稔の身体に空気を送っている管を抜いてしまう。だが、殺すことはできず、管を元に戻した。
雅哉は辞職を申し出るが、上司に止められる。しばらく休暇することになった。雅哉は遥と共に祖父母の家を訪れた。稔が延命治療をしたのは、生きて子供達にお金を残すためだった。雅哉はそのことを知っており、痛みで辛い思いをしている父を慮った。
雅哉は遥と共に、父の転院手続きをするために病院を訪れた。その時、美咲がお礼の挨拶をしたいと訪ねてくる。美咲と夫は悩んだ末、同じ病気で苦しむ子供や家族のために海音の身体を大学に検体として提供していた。雅哉はその事実を知り、衝撃を受ける。海音が雅哉のことを慕っていたため、会えて幸せだったと思うと美咲は感謝の言葉を述べた。雅哉は泣きながらその言葉を聞いた。
雅哉は海音のことについて、学会で発表を行った。
映画『栞』の感想・評価・レビュー
まず、リハビリを必死に行っていた孝志が、自殺を行ったことに衝撃を受けた。雅哉の悲しみはどれほどのものだったのだろうと、苦しい気持ちになった。この作品は言葉で詳しく説明するというよりは、見ている人がどう感じるのか考える余白が与えられている作品だと思う。きっと見ている人によっても、全く違った感想が生まれると思う。理学療法士としての苦悩や患者に寄り添う難しさが描かれており、それを表現した三浦貴大の演技が素晴らしかった。(MIHOシネマ編集部)
私は雅哉とは立場が違いますが、自分の親が病気になった時に私がしてあげられることと、親がして欲しいと思っていることは違うのかもしれないと考えてしまう作品でした。
雅哉の場合は理学療法士と言う立場だったため、父の姿を最も身近で見ていて、変化にもすぐに気づいてあげられる状況だったと思います。しかし、一般の人は親であってもいつもそばにいられる訳では無いので、親が何をして欲しいのか、どうして欲しいのかを理解してあげるのがなかなか難しいのでは無いでしょうか。
病気をきっかけに親子の関係が再構築されるなんてなんとも切ないなと思いましたが、身近にも有り得ることだなと感じました。(女性 30代)
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