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映画『スモーク(1995)』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『スモーク(1995)』の概要:新聞に掲載されたポール・オースターの短編小説『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』に感銘を受けたウェイン・ワン監督が、原作者のポール自身に脚本を執筆してもらい、完成させた秀悦なヒューマンドラマ。群像劇形式で人生の悲喜交々を描いていく。ハーヴェイ・カイテルやウィリアム・ハートの演技も素晴らしい。

映画『スモーク』の作品情報

スモーク

製作年:1995年
上映時間:113分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ウェイン・ワン
キャスト:ハーヴェイ・カイテル、ウィリアム・ハート、ストッカード・チャニング、ハロルド・ペリノー・Jr etc

映画『スモーク』の登場人物(キャスト)

オーギー・レン(ハーヴェイ・カイテル)
ニューヨークのブルックリンの街角で、小さなタバコ屋を営んでいる男性。毎朝8時の7番街と3丁目の角にカメラを構え、1枚だけ写真を撮っている。1日も欠かさずその習慣を続け、すでに写真は4000枚に達している。40歳前後だが、結婚はしていない。
ポール・ベンジャミン(ウィリアム・ハート)
オーギーのタバコ屋の近所に住む作家。オーギーの店には、ほぼ毎日タバコを買いに訪れる。数年前、妊娠中だった妻を銀行強盗に殺された。その傷はまだ癒えておらず、執筆活動も再開できていない。
トーマス・ジェファーソン・コール(ハロルド・ペリノー・ジュニア)
車に轢かれそうになったポールを助け、ポールの世話になる黒人の少年。嘘が上手で、ポールには「ラシード・コール」と名乗る。幼い頃に母親を亡くし、父親は12年前に蒸発したため、叔母に育てられた。家出した本当の理由を隠している。
サイラス・コール(フォレスト・ウティカー)
トーマスの父親。蒸発後、事故で左腕を失い、義手を使っている。最近になって寂れたガソリンスタンドを買い取り、自営を始めた。再婚した妻との間に幼い息子がいる。
ルビー・マクナット(ストッカード・チャニング)
18年ほど前にオーギーの恋人だった女性。オーギーを裏切って別の男と結婚したが、すぐに離婚した。オーギーは知らなかったが、未婚のまま娘を出産し、ひとりで育ててきた。左目を失い、黒の眼帯をしている。
フェリシティ(アシュレイ・ジャッド)
18歳になるルビーの娘。1年前に家出して、ブルックリンのスラム街でタチの悪い男と同棲している。妊娠4ヶ月にも関わらず、重度の薬物中毒に陥っている。ルビーはオーギーの娘だと主張しているが、真相は不明。

映画『スモーク』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『スモーク(1995)』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『スモーク』のあらすじ【起】

1990年、夏。ニューヨークのブルックリンにあるオーギーのタバコ屋では、いつものように常連客が世間話をしている。そこへ、近所に住む作家のポール・ベンジャミンがタバコを買いに来る。ポールが帰った後、オーギーは他の客たちに、彼のことを教えてやる。

ポールは数冊の本を出版した作家だが、今は何も書いていない。数年前の銀行強盗で妊娠中だった奥さんが犠牲になり、そのショックから未だに立ち直れないのだ。奥さんは、事件前にオーギーの店へタバコを買いに来ていた。オーギーは今でも、「あの時、少し店を出る時間がズレていたら、奥さんは死なずに済んだのではないか」と考えることがあった。

ぼんやりしていたポールは、危うく車に轢かれかける。それを助けてくれたのが、ラシード・コールと名乗る黒人の家出少年だった。ポールはラシードにレモネードをご馳走し、自宅アパートに誘う。しかし、ラシードが遠慮したので、ポールは住所を教えておく。

閉店した直後、ポールが再びタバコを買いに来る。オーギーは快くシャッターを開け、ポールにタバコを売ってやる。ポールが店にあったカメラに興味を示したので、オーギーは自分の写真を見せるため、彼を自宅に誘う。

オーギーは、毎朝8時に店の向かいの7番街と3丁目の角にカメラを構え、1枚だけ写真を撮っている。すでに4000日以上、1日も欠かさずにこの習慣を続けていた。ポールに始めたきっかけを聞かれ、オーギーは「ただの思いつきだ」と答える。ポールは適当にアルバムをめくっていたが、オーギーに「ゆっくり見ろ、同じようで1枚1枚違うから」と注意され、丁寧に写真を見ていく。すると、その中に亡くなった妻の姿を発見する。オーギーは、これをポールに見せたかったのだ。ポールは生前の妻を思い出し、思わず泣き出してしまう。オーギーの写真には、この街で生きる人々の人生が写り込んでいた。

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映画『スモーク』のあらすじ【承】

翌日、ポールは2年ぶりにタイプに向かい、夢中でキーボードを叩く。そこへラシードがやって来て、泊めて欲しいと言い出す。ポールは仕方なく彼を家に置き、執筆活動を続ける。

約束の2日間が過ぎたので、ポールはやんわりとラシードを追い出す。本当はもっと泊めてやりたかったが、彼がいると仕事に集中できないのだ。

ホッとしたのも束の間、今度はラシードの叔母だという女性が、ポールの家に乗り込んでくる。彼女の話によると、ラシードの本名はトーマス・ジェファーソン・コール(以下、本名のトーマス)で、彼は2日前に家出していた。トーマスは幼い頃に母親を亡くし、12年前に父親も蒸発したので、叔母さんに育てられた。2週間ほど前、知人が郊外の給油所でトーマスの父親を見かけたらしいが、トーマスはその話に興味を示さなかった。ポールは、もし彼が現れたら連絡すると約束し、叔母さんに帰ってもらう。

その頃、トーマスは父親が働く給油所の前に座り、朝から父親の様子を観察していた。父親のサイラスは、まさかトーマスが自分の息子だとは思わず、店の前から追い払おうとする。しかし、トーマスは頑固で、根負けしたサイラスが、時給5ドルでトーマスを雇う。トーマスは「ポール・ベンジャミン」と名乗り、前の家主が物置にしていた店の2階で暮らす許可をもらう。

サイラスの左腕は義手になっていた。トーマスが理由を聞くと、サイラスは12年前の話を始める。12年前、荒んだ生活をしていたサイラスは、ある女性と駆け落ちしたが、自分の運転ミスで女性を死なせてしまう。その事故でサイラスも左手を失った。サイラスは失った左手を神様からの警告だと受け止め、今は新しい家族と慎ましく暮らしていた。トーマスは、サイラスの奥さんと幼い息子の幸せそうな様子を見て、翌朝黙って店を出て行く。

トーマスは壊れかけのテレビを持ってポールの家に戻る。すぐに帰ろうとするトーマスをポールが引き止め、叔母さんに連絡させてから、事情を聞く。

トーマスは、家の近所でギャングが泥棒する現場を目撃し、店から出てきた彼らとぶつかってしまう。その時、リーダー格のギャングに顔を見られてしまったので、家から離れたこの場所へ逃げてきた。トーマスが「警察に通報したら殺される」と言うので、ポールはしばらく彼の面倒を見てやることにする。

映画『スモーク』のあらすじ【転】

トーマスが12年ぶりに父親と再会した日、オーギーは18年ぶりに昔の恋人のルビーと再会していた。若い頃、オーギーはルビーに夢中になり、彼女のために宝石を万引きして警察に捕まり、4年間も海軍送りになった。ルビーはその間に別の男と結婚したが、すぐに離婚する。その後、2人は1度だけ関係を持ったことがあったが、オーギーはルビーの裏切りが許せず、彼女とはそれきりになっていた。

そのルビーが突然店にやって来て、「私たちの娘のことで相談がある」と言い出す。18歳になるルビーの娘のフェリシティは、1年前にタチの悪い男と付き合い始め、母親に反抗して家を出た。今はブルックリンのスラム街でその男と同棲し、薬物中毒になっている。ルビーは半分諦めていたが、娘が妊娠4ヶ月だと知り、さすがに放っておけなくなった。しかし、自分の言うことは全く聞かないため、オーギーに助けを求めてきたのだ。

ルビーが出産していたことも知らなかったオーギーは、突然の話に驚く。しかもルビーは自分を裏切った女で、「あなたの娘だ」と言われても、信用できるはずがない。オーギーは無性に腹が立ち、ルビーを追い返してしまう。

しかし、ルビーは諦めていなかった。数日後には強引にオーギーを車に乗せ、フェリシティの元へ連れて行く。フェリシティの荒んだ生活ぶりを見て、さすがのオーギーも言葉を失う。「赤ん坊のために暮らしを改めて」とルビーは訴えるが、フェリシティはすでに堕胎を済ませていた。オーギーはルビーが哀れになり、「帰ろう」と彼女に声をかける。フェリシティは、最後まで反抗的な態度を取っていたが、2人の後ろ姿を見ながら涙ぐんでいた。

トーマスは17歳の誕生日を迎え、ポールにバーでお祝いしてもらう。その日に知り合ったばかりの本屋の女性店員も来てくれた。女性店員はポールのファンで、彼の新作を心待ちにしていた。そのバーで、たまたまオーギーと会ったので、ポールはタバコ屋でトーマスを雇って欲しいと頼んでみる。オーギーは、それを快く了承する。

トーマスは賢い少年だったので、ポールは彼にいろんな話を聞かせてやった。ある日、トーマスにお勧めの本を探していたポールは、本棚の奥に隠された紙袋を発見する。その中には、6000ドルもの大金が入っていた。実は、トーマスはギャングが落とした金を盗み、そのせいで彼らに追われていた。ポールはすぐに返すべきだと説得するが、トーマスは「それは俺の将来に必要な金だ」と言い張り、金を返そうとしない。

トーマスが仕事に慣れたので、オーギーは彼に店番を任せ、どこかへ出かけて行く。トーマスは床掃除を中断し、バケツを流しに置いたまま、レジに座る。すぐに止めるつもりで、水は出しっ放しにしていた。ところが、ついアダルト雑誌に夢中になり、水を止めるのを忘れてしまう。水は床に溢れ出し、オーギーが特別な客のために仕入れたキューバ産の高級葉巻をダメにしてしまう。この葉巻は、オーギーが5000ドルもの大枚を叩いて仕入れた貴重な禁制品だった。

3年かけて貯めた大金と顧客の信用を失い、オーギーは激怒していた。ポールに付き添われ、改めて謝罪に訪れたトーマスは、ギャングから盗んだ金で5000ドルを弁償する。オーギーは、素性のわからない金など受け取りたくなかったが、トーマスがどうしても仕事を続けたいと言うので、金を受け取って和解する。

それからしばらくして、トーマスの留守中に、ポールの家へ2人組のギャングが押し入ってくる。彼らは銃を突きつけてポールを脅し、トーマスと金の行方を聞く。帰宅したトーマスが警察に通報し、ポールは殺されずに済んだが、トーマスはそのまま姿を消してしまう。

映画『スモーク』の結末・ラスト(ネタバレ)

ルビーは娘のことを諦め、ピッツバーグへ帰ることにする。オーギーは、フェリシティを更生施設へ入れるための資金として、あの5000ドルをルビーに渡してやる。ルビーは感動して泣き出し、オーギーがフェリシティの父親である確率は五分五分だと打ち明ける。もし自分が父親でなかったとしても、この母娘を助けたいというオーギーの気持ちは変わらなかった。

トーマスは本名を隠したまま、サイラスの店で働いていた。トーマスのことを心配していたポールは、彼の居場所を突き止め、オーギーと共にサイラスの店を訪ねる。トーマスがポール・ベンジャミンと名乗っていることを知った2人は、ちゃんと本名を名乗るようトーマスを説得する。トーマスは覚悟を決め、自分の名前がトーマス・コールであることを打ち明ける。サイラスは動揺し、「嘘をつくな!」と激怒してトーマスを殴る。トーマスも父親に対する様々な感情が抑えきれなくなり、サイラスに殴りかかる。掴み合いの喧嘩をしながら、2人は泣いていた。その後、サイラス一家と3人はピクニックへ行くが、誰も話をしない。気まずい沈黙を、タバコの煙が埋めてくれる。

クリスマスの季節。ポールがいつものようにオーギーの店にやってくる。最近彼女ができたポールは、健康のためにタバコの量を減らしていた。執筆活動も再開し、ニューヨーク・タイムズ紙からクリスマスの話を書いて欲しいという依頼をもらっていた。しかし、クリスマスまで後4日だというのに、いいアイデアが浮かばない。その話を聞いたオーギーは、昼食をおごってもらう代わりに、自分が体験したある年のクリスマスの話をしてやる。

1976年の夏。オーギーは今のタバコ屋で従業員として働いていた。そこで黒人の少年が万引きしたのを見つけ、その少年を追いかける。少年は逃げる途中で財布を落とし、オーギーはそれを拾う。財布には、免許証と数枚のスナップ写真が入っていた。オーギーは、賞状を持って満面の笑みを浮かべる少年や彼の母親の写真を見て、何だか少年が愛おしくなる。そしてそのまま、財布を持って引き返す。

その年のクリスマス。アパートで退屈していたオーギーは、あの財布のことを思い出し、それを少年に返しに行く。ようやく免許証の住所にたどり着き、アパートのベルを鳴らすと、80歳か90歳くらいの盲目のおばあさんが出てくる。おばあさんは、「来てくれたのね、ロジャー」と言って、いきなりオーギーに頬ずりする。オーギーは咄嗟に「そうだよ、おばあちゃん」と答えてしまい、玄関でおばあさんと抱き合う。ロジャーとは財布の持ち主の少年の名で、彼女の孫らしかった。盲目とはいえ、おばあさんもオーギーが孫ではないことに気づいていたはずだが、2人は祖母と孫の振りを続け、クリスマスの夜を祝う。食事をして、ワインまで飲んだおばあさんは、ソファーでうとうとし始める。彼女を寝かせたまま、トイレに入ったオーギーは、物置に盗品らしき新品のカメラが数台あるのを目にする。オーギーは出来心でそのうちの1台を盗み、片付けを済ませてアパートを出る。気持ち良さそうに眠っているおばあさんは起こさず、財布はテーブルの上に置いてきた。

数ヶ月後、気が咎めていたオーギーは、カメラを返しに行く。しかし、すでにおばあさんはいなくなっていた。おそらく、おばあさんは亡くなったのだろう。そして、オーギーは再び持ち帰ったカメラで、毎朝8時に同じ場所の写真を撮り始める。

話を聞いたポールは、とてもいいことをしたとオーギーを褒める。きっとおばあさんは、オーギーの嘘に感謝し、人生最後のクリスマスを楽しんだことだろう。それこそが、人が生きている価値なのだと、ポールは信じていた。この話は『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』として、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載される。ポールは、例えこの話が嘘だったとしても、オーギーには心から感謝していた。

映画『スモーク』の感想・評価・レビュー

クリスマスっぽくないクリスマス映画です。キラキラした感じはないので、大人がゆっくりお酒を嗜みながら鑑賞するには最高です。
もともとは原作者のポール・オースターが大好きだったので、期待に胸を膨らませて鑑賞しました。まさに小説を読んでいるかのような雰囲気があります。
軸となるのはタバコ屋とそこの常連客、少年の3人。登場人物も多くなく、ややこしさも無い為、純粋にストーリーを楽しむことができました。
煙は現れては消えていく人間のようで、時には嘘を隠し本当も隠す。
儚くも優しい物語です。(女性 20代)


私の中でクリスマス映画といえばこの映画、あとは「グレムリン」…

ブルックリンの一角にあるタバコ屋を中心に交錯する人々のエピソードを綴ります。
それぞれ不幸の中にいるのですが、それぞれが心が温かくなる結末を持ちます。
そして、ラストにオーナーのオーギーがクリスマスのエピソードを語る、またそのシーンがたまらく好きです。
あのタバコ屋が実在するならば、是非行きたい。
そして毎朝8時のオーギーの定点カメラに写り込みたいです。(女性 40代)


本作は、ポール・オースターの原作小説『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』を基にニューヨークのタバコ屋に集まる人々を描いたオムニバス形式のヒューマンドラマ作品。
作品全体の雰囲気はもちろん、毎朝店の前で写真を撮る店主の佇まいがとにかく素敵。
訪れる客たちは皆何か抱えているが、それぞれの人間模様が嘘と真実を巡り交錯していて、メッセージ性を感じた。
人の幸せのためなら嘘も悪くないと思えた。年を重ねてまた見直したい作品。(女性 20代)


私のクリスマス映画リストに新たに仲間入りした今作。今までは『ラブ・アクチュアリー』や『ホーム・アローン』などド定番の作品ばかり見ていましたが、今作は大人で落ち着いていて、映画を「嗜む」という言葉がぴったりな作品でした。
ハーヴェイ・カイテルが演じるタバコ屋の主人がすごく優しくて温かい雰囲気なんです。人を幸せにする嘘や、傷つけないための嘘もあるのだと教えられ、自分を少し大人にしてくれたような気がしました。(女性 30代)


何かを抱えた大人のストーリーは、心に沁みて勇気づけられる。
どんな人生を過ごしてきたとしても「今」を生きている彼らはすごくカッコいい。

特にタバコ屋の店主オーギーが素敵だった。クリスマスのエピソードはもちろん、昔の恋人に「あなたの娘かもしれないし違うかもしれない」と言われても、助けてあげる懐の深さ。
あんな風に相手を包み込んであげられる大人の余裕は、まだまだ自分にはないなあと思ってしまった。もう少し歳をとってからまた観てみたい。(女性 40代)

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