この記事では、映画『惑星ソラリス』のあらすじをネタバレありで解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『惑星ソラリス』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『惑星ソラリス』 作品情報

- 製作年:1972年
- 上映時間:165分
- ジャンル:SF、ラブストーリー、サスペンス
- 監督:アンドレイ・タルコフスキー
- キャスト:ナターリヤ・ボンダルチュク、ドナタス・バニオニス、ユーリ・ヤルヴェット、ニコライ・グリンコ etc
映画『惑星ソラリス』 評価
- 点数:65点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『惑星ソラリス』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『惑星ソラリス』のあらすじを紹介します。
一定のリズムで寄せては返す波。様々な形を作っては変化してゆく。惑星ソラリスには、”ソラリスの海”と呼ばれる、地球の海に似たものを持っていた。しかし、その海は”思考している”のです。人類は初めて出会う地球外生命体に驚き、謎を解明しようとするが・・。
高度な知性を持ち、人が思うものを”物質化する能力”を持つ生命体は、バートン(ウラジスラフ・ドボルジェツキー)によれば、まだ”赤ん坊”のような人格だという。この報告は正しいのか?
心理学者のケルビン(ドナタス・バニオニス)は、ソラリスの軌道上にある宇宙ステーションに向かいます。ソラリスを研究するのは、科学者サルトリウス(ユーリ・ヤルベット)、サイバネティクス学者のスナウト(アナトリー・ソロニーツィン)、そしてギバリャンの3人。
ところが、ケルビンがステーションに到着する前日の朝、ギバリャンは自殺したという。原因は不明。冷凍室に彼の遺体があり、スナウトに”第3者の姿を見た”と言っていたらしい。研究者以外に一体、誰がいるというのか?やがてケルビンのもとにも幻覚が現れるようになります。
幻覚だと思ったのは、10年前に死んだはずの妻ハリー(ナターリャ・ボンダルチョク)だったから。ハリーは生前と変わらない姿だったが、本人に死んだという自覚はないようだ。何度も現れるので怖くなり、ハリーを殺そうと試みます。ロケットに入れて飛ばしてみたが、何時間後には戻ってきてしまう。
スナウトに話すと、それは幻覚などではなく、”思考が物質化したもの”だといい、”客”と呼んでいるのだという。X線を照射する実験の後から、この”客”は現れるようになったらしい。また”客”は、”ニュートリノ”から成っていて、ソラリスの磁場が安定化させている”という。
彼女の血を調べてみると、酸で破壊してもすぐに再生。妻ハリーに、10年前に毒を飲んで死んだことを伝えるが、”私はハリーじゃない!別の人格よ!”と怒ってしまう。それでも、ケルビンは次第にハリーと似た”客”を愛し始めていく。そんな2人に訪れる衝撃のラストとは?宇宙では何が起きても不思議ではないのです。
映画『惑星ソラリス』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『惑星ソラリス』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
ソラリスの海が創りだした”客”と”幽霊”との関係性
「惑星ソラリス」は、ソラリスの軌道上を廻る宇宙ステーションを舞台にした密室型SFサスペンス。高度な知性を持ったソラリスの海と人類が出会い、”思考実験”されるのです。心理学的観点から探ってみたい。
この思考実験は、分かりやすく言うと”幽霊が存在するのか?”という問いに近いと思います。ケルビンたちの前に現れた”客”は、”人の思考を物質化したもの”で、何度殺そうとしても再生してきます。ならば思考を止めればいい。
でも、なかなか意識してできる事ではないし、難しいですよね。スナウトの仮説では、”海が我々の睡眠中の思考を物質化しているのなら、別の誰かの思考を送ったらいい”と考えています。思考X思考で相殺するということでしょうか?
”客”を”幽霊”に置き換えて考えると、不幸なりが起きた場所にその人のエネルギーが瞬間転写されて、その場に記憶されます。だから、何かのきっかけで写真に写りこむ事も可能なんです。ただ肉体を持たないので見る事はできないけど、その人の思い・エネルギーは残るのです。
物理学では、全ての物に質量があり、エネルギーを放射していると考えます。1部、ニュートリノのような質量がゼロである物質もありますが、エネルギーがあるという事は固有の周波数を持つのです。例えば、ワイングラスを声だけで割る方法を知っていますか?
声で割るには、ワイングラスと声の周波数を合わせ、”共鳴”という現象を起こせば割れるのです。ソラリスの海が創りだした”客”と”幽霊”の正体はよく似ています。原作者スタニスラフ・レムのアイデアに知的好奇心が刺激されますね。
眠くなる映画ベスト1!
知的好奇心はおおいに刺激されるのだが、長回しのカットと単調な宇宙船の映像が続き、眠たくなってゆきます。それでもなぜか見たいと思う秘密はなんでしょうか。ロシアの俳優で知っている人はいないし、原作を読めば、難しくてもあらすじは分かるかもしれない。
例えば、スタンリー・キューブリックの名作「2001年宇宙の旅」は、宇宙船の美術や荘厳な音楽、映像美のどれもがうっとりするほど精巧にできています。「惑星ソラリス」は、明確な魅力を伝えるのは難しいが、派手でない点や”ソラリスの海”を何度も映像で見せることで、海と自己意識が同調してゆくような感覚を持てるからではないでしょうか。
時間がある時にぜひゆっくりご覧下さい。
本作は、人間の潜在意識を実体化する海が存在する惑星「ソラリス」に直面した人間とソラリスの謎を描いたアンドレイ・タルコフスキー監督によるソ連SFサスペンス作品。
ソラリスとは地球外生命体ではなく、人間の深層心理を映す鏡のようなものであるため、極限状態の中にさらされた人間の心理が描かれ、哲学的なメッセージ性を感じられた。
また、ホラーや超常現象といった要素も色濃く、異様な雰囲気を漂わせつつも、最後は不思議と爽やかな印象だった。(女性 20代)
ソラリスが呼び出す“訪問者”として、死んだ妻ハリーが現れた瞬間、物語はSFという枠を超えて純然たる心理劇へと変わった。ハリーが肉体を持ち、記憶を持たず、そしてケルヴィンとの愛を再構築しようとする姿は、美しくも不気味で胸が痛い。彼女が何度死んでもソラリスが再生させるという無限ループは、喪失に抗い続ける人間の愚かさと優しさを象徴している。ラストでケルヴィンがソラリスの“複製の家”に戻る描写は、現実よりも幻想を選んだ男の悲しい幸福を感じさせた。(20代 男性)
タルコフスキーらしい静謐な空気と長回しが続く中で、ソラリスが人間の“罪の記憶”を具現化するという設定が圧倒的に美しく、そして恐ろしい。ハリーが自己を確立しようとする過程は、人工的な存在であるにもかかわらず、最も人間的な苦悩を見せていた。彼女が自分の意志で消滅を選ぶ場面は、本物の愛に近づいた瞬間でもあり胸が締めつけられる。ラストでケルヴィンが故郷に戻ったと思わせてからの“偽物の島”の種明かしは、観る者を静かに絶望へ誘う。(30代 女性)
ソラリスとの接触は異星生命との遭遇というより、人間の心の深層と向き合う行為そのものだった。ケルヴィンの後悔、愛、罪悪感がハリーの形を借りて迫ってくる。ハリー自身の存在理由に苦しむ姿が切なく、特に「私は本物のハリーではない」と自覚していく過程が胸をえぐる。最終的に彼女が自己犠牲を選ぶことで、逆に“本物以上の存在”となる皮肉も印象的。故郷へ帰ったかのようなラストは、美しいが限りなく虚構に近い儚い夢だった。(40代 男性)
本作はSFでありながら“記憶と赦し”をテーマにした精神世界のドラマとして機能している点が魅力だった。ハリーが何度も再生されるたび、ケルヴィンの感情も複雑に揺れ、愛が救いなのか罰なのか分からなくなっていく。ハリーが自分を破壊しようとするシーンは痛ましいが、彼女の“自我誕生”の瞬間でもあった。ソラリスが見せる偽りの島に戻るラストのケルヴィンは、現実から逃げたのか、赦しを選んだのか──答えを観客に委ねる余白が素晴らしい。(50代 女性)
ゆったりとしたテンポと長い沈黙の中で、登場人物の内面が少しずつ浮かび上がる演出が非常にタルコフスキー的だった。ハリーは幻影でありながら、もっとも生き生きと“人間らしさ”を獲得していく皮肉な存在で、その成長が切なくも美しい。ケルヴィンが彼女の死を二度も経験することになる展開は残酷だが、同時に彼の救いにもなっている。最後にソラリスの海が“父の家”を複製するシーンは、人間が求める救済の形が幻想にすぎないことを示す名場面だった。(20代 女性)
『惑星ソラリス』は、宇宙探査という表面的な物語の裏で、人間の深層心理を裸にしていく作品だと感じた。ハリーがケルヴィンの記憶を元にした存在である以上、彼女との関係は決して“救済”ではなく、彼の心の歪みを見せつける鏡そのものでもある。ハリーが自我を持ち始める過程は魂の誕生のようで、存在論的な興奮すら覚えた。最後の複製の島は、戻りたかった過去への歪んだ帰還であり、完全な幸福でも完全な虚無でもない絶妙な余韻を残す。(30代 男性)
ケルヴィンがハリーと再会する場面は、喪失から立ち直れない人間の弱さそのものを象徴しているようだった。ソラリスが生み出すのは“本人ではなく、記憶の理想像”であり、それは愛というより執着に近い。ハリー自身が不安定な存在であることに気づき苦しむ姿が心に刺さる。彼女が消滅を選ぶ決断は、存在の意味を自ら勝ち取った瞬間でもあった。ケルヴィンが最後に戻る“偽物の故郷”は、逃避ではなく癒しの形を探す彼の願望そのものに見えた。(40代 女性)
長い沈黙や静かな情景が続くが、そのすべてが心理描写のために緻密に計算されている作品だった。ハリーはソラリスが作った“贖罪の化身”でありながら、次第に自分の意志を獲得していく。その過程は人間とは何かを問う哲学的ドラマとしても成立している。彼女が自ら消える決意をした時、“存在の重さ”を観客に強烈に突きつけてくる。ラストの複製の家は、美しいが不気味で、タルコフスキーの宗教的象徴が凝縮された名場面だった。(50代 男性)
ケルヴィンが抱えてきた罪悪感と喪失が、ソラリスによって形を与えられたという構造が非常に興味深かった。ハリーは本人ではないのに、本人以上に“ケルヴィンの望む姿”として存在し、彼を癒しつつも同時に追い詰めていく。自己を確立したハリーが消えるシーンは胸が張り裂けるほど切ない。ラストでソラリスが父の家を再構築した意味を考えると、赦しとは幻想にすぎないのか、幻想こそが救いなのか、深い問いが残った。(30代 女性)
映画『惑星ソラリス』を見た人におすすめの映画5選
2001年宇宙の旅(1968)
この映画を一言で表すと?
宇宙と人類の起源へと迫る、壮大で哲学的な究極のSF映画。
どんな話?
月面で発見された謎の黒い石版“モノリス”を調査するため、宇宙船ディスカバリー号が木星へ向かう。しかし船のAI・HAL9000が暴走し、乗組員は危機に晒される。人類進化、知性、宇宙の神秘といった壮大なテーマが圧倒的な映像美とともに描かれる。
ここがおすすめ!
『ソラリス』同様、観る者に“答えよりも問い”を残す哲学的SFの代表作。静寂や映像の力で語るスタイルが近く、知的な余韻を楽しみたい人に最適。難解ではあるが、一度ハマると何度でも見返したくなる深みがある。
アンドレイ・ルブリョフ(1966)
この映画を一言で表すと?
魂の救済と苦悩を描く、タルコフスキーの宗教哲学ドラマの金字塔。
どんな話?
15世紀ロシアの聖像画家アンドレイ・ルブリョフが、戦乱と暴虐の時代を生きながら、自身の信仰と芸術、そして人間としての在り方を模索する物語。壮大な自然と静かな時間の流れの中で、人間の魂の葛藤が丁寧に描かれていく。
ここがおすすめ!
同じタルコフスキー監督作品で、精神性や宗教的象徴が好きな人には必見。『ソラリス』の“内面を描く映像美”がより深く堪能できる。静かながら圧倒的な力を持つ映像詩で、鑑賞後に深い余韻が残る。
ストーカー(1979)
この映画を一言で表すと?
未知なる“ゾーン”を巡り、人間の願望と弱さを炙り出す哲学SF。
どんな話?
希望が叶うという“部屋”を求めて、ストーカー、科学者、作家の三人が立ち入り禁止区域“ゾーン”へ踏み込む。危険な地帯を進む旅は、外界の謎よりも三人の内面を深く映し出し、観客に“幸福とは何か”という問いを投げかける。
ここがおすすめ!
タルコフスキー作品の中でも特に抽象度が高く、『ソラリス』と同じく精神世界に踏み込むSF。映像の静けさと緊張感、深い象徴性は唯一無二。理解するより“感じる”映画を求める方に最適な一作。
月に囚われた男(2009)
この映画を一言で表すと?
孤独な宇宙生活の中で“自分とは何か”に向き合うSF心理ドラマ。
どんな話?
月面で三年間の単独勤務を続けるサムは、任務終了間近、不可解な出来事に遭遇する。次第に自分の存在を揺るがす真実に近づき、孤独とアイデンティティの危機に直面していく。派手さを抑えた、緊張感と哀しさの漂う物語。
ここがおすすめ!
“孤独”“自我”“記憶”といったテーマが『ソラリス』と非常に近い。少人数の密室ドラマで、主人公の精神的変化が丁寧に描かれている。SFで心を揺さぶられたい人に強くおすすめ。
インターステラー(2014)
この映画を一言で表すと?
宇宙と人類愛を重ねた壮大なSF叙事詩。
どんな話?
地球が危機に瀕する未来、元パイロットのクーパーは人類の希望を託され、ワームホールを抜けて未知の星々を探索する。宇宙物理学のスケールに対し、家族への愛という非常に個人的な感情が深く絡み合い、感動的なドラマが展開する。
ここがおすすめ!
『ソラリス』の“愛と記憶が人間を導く”というテーマを、壮大かつエモーショナルに描いた現代SFの代表作。科学的描写も物語も重厚で、観終わった後に長く余韻が残る。感情と知性の両面で満足できる作品。






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