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映画『鈴木家の嘘』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『鈴木家の嘘』の概要:引き籠っていた鈴木家の長男がある日突然、自殺。息子の姿を発見した母親も意識不明に陥ったが、意識が戻った時には長男が死んだ事実を忘れていた。娘が咄嗟に海外の仕事に行ったと嘘を吐いたことで、長男の死を隠し通す日々が始まる。

映画『鈴木家の嘘』の作品情報

鈴木家の嘘

製作年:2018年
上映時間:133分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:野尻克己
キャスト:岸部一徳、原日出子、木竜麻生、加瀬亮 etc

映画『鈴木家の嘘』の登場人物(キャスト)

鈴木幸男(岸部一徳)
鈴木家の家長。家のことは全て悠子に任せっきりで、どこかぼんやりとしておりあまり頼りにならない。浩一がソープ嬢と恋仲にあったことを密かに知り、ソープランドへ通い詰める。
鈴木悠子(原日出子)
幸男の妻。内助の功であったが、引き篭もってしまった息子を労わるあまり、娘にまで配慮できずにいる。浩一の首吊りを発見した際、自らも意識を失い一時的に逆行性健忘症となる。毒蝮三太夫のラジオが好き。
鈴木富美(木竜麻生)
長女。歳の離れた兄と仲が良かったが、浩一が引き籠ってから誕生日に喧嘩をして、仲違いしてしまう。内に籠る癖があり、言いたいことをあまり口に出さない。大学生で新体操部に所属。グループセラピーで出会った日比野と親交を深める。
鈴木浩一(加瀬亮)
長男。ある日突然、引き篭もりになる。理由は明かしておらず、首を吊って自殺。ソープ嬢と恋仲にあったらしく、生命保険に加入し妹とその女性に保険金を残している。プライドが高く気難しい性格。
日比野さつき(吉本菜穂子)
14歳の娘を3年前に亡くした女性。グループセラピーの参加者。富美に心を配り優しく労ってくれる。自らも娘を失った後悔を抱え、未だに苦しんでいる。
北別府(宇野祥平)
博の事業に参加し、アルゼンチンに駐在している。富美の頼みを聞き浩一の絵葉書を何枚も書いてくれる。気の好い男性だが、酒癖は悪い。
鈴木君子(岸本加世子)
幸男の妹。名古屋で冠婚葬祭会社を経営。兄家族へと親身になって一家の面倒を見るとまで言ってくれる。気丈な女性。
吉野博(大森南朋)
悠子の弟。海外を飛び回り入れ替わり、立ち替わり事業を行っている。気軽な性格で、鈴木家の嘘に率先して協力してくれる。姉思いの弟。20歳も年下の外国人女性と結婚する。

映画『鈴木家の嘘』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『鈴木家の嘘』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『鈴木家の嘘』のあらすじ【起】

引き籠りだった鈴木家の長男、浩一がある日突然、自室で首を吊ってしまった。第一発見者となった母、悠子は咄嗟に包丁を手に息子の元へ戻り意識不明になってしまう。2人は日が暮れた頃に帰宅した長女、富美によって発見されたのだった。

浩一は命を落としたが、悠子は辛くも助かった。だが、あの日以来意識が戻らない。鈴木家の家長であり夫の幸男は、家事の一切を妻に任せきりだったため、洗濯の仕方も分からず四苦八苦していた。

大学生である長女の富美は不甲斐ない父親の幸男と兄の浩一へと特別に気を遣う母親の悠子という家庭で育った。ある日、彼女は悠子の付き添いをしつつ、大切な人を亡くした人達のグループセラピーに参加。浩一が亡くなってから1カ月が経過していた。そこで、3年前に14歳の娘を亡くした母親、日比野さつきと出会う。

浩一の四十九日。法要には幸男の妹、君子と悠子の弟、吉野博が来てくれたが、寺から自殺した親族の骨は本家の墓に入れることができないと断られてしまう。愕然としてしまった一同。そこで幸男は悠子の意識が戻るまでは、納骨しないことに決めた。
君子は冠婚葬祭会社を経営する気丈な女性である。彼女は兄家族の面倒を一手に引き受けると言ってくれたが、博は今後のことは分からないと曖昧だ。彼はアルゼンチンで事業を始めたばかりだと言う。

そんな中、悠子の意識が回復。4人が慌てて病院へ駆け付けると、悠子は浩一が自殺した記憶を失っていた。4人は互いに目を合わせ、真実を明かすべきか迷ったが、そこで富美が一言。浩一は引き籠りをやめて博の事業の手伝いをするため、アルゼンチンに行った。嬉しそうな悠子に本当かと問われた幸男は、何も言えず肯定するしかなかった。

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映画『鈴木家の嘘』のあらすじ【承】

悠子には逆行性健忘症の診断が下され、記憶が戻るかは分からないらしい。幸男は仕方なく浩一の遺影など、一部の荷物をまとめて隠し、富美は浩一を装ってメールを書く。その間、悠子は衰えた運動機能を回復させるリハビリを開始。

更に博からアルゼンチン駐在員の北別府という男性を紹介してもらい、絵葉書も送ってもらう。悠子はこれらを励みに日々、リハビリをしながら入院生活を送った。そうして、日常生活を送れるまでに回復した悠子が退院。自宅へと帰って来た。

しばらくして、自宅の掃除をしていた悠子は、幸男のズボンのポケットからソープランドのチラシを発見してしまう。
その頃、富美はグループセラピーに参加していた。参加メンバーは徐々に馴染み、過去を語ることができるようになっていたが、富美は変わらず浩一のことを話せずにいた。

ある日の夜、悠子から浩一に手紙を書けばいいと勧められた富美。だが、富美は過去に浩一と喧嘩したことで兄とは仲違いしている。その上、母親は兄のことにばかりかまけて娘の心のことにまで気が付かなかった。富美は多大なストレスに晒され過呼吸を引き起こしてしまうのだった。

映画『鈴木家の嘘』のあらすじ【転】

娘が倒れたことをきっかけに、悠子と口喧嘩をしてしまった幸男。彼は家庭を顧みなかったと悠子に責められ、嘘を吐き通すことをやめようとする。そして、富美に浩一の生命保険の書類を渡した。富美が受取人に指定されている。だが彼女は、保険金は兄の命の値段なので、受け取りたくないと言う。第一発見者でもある富美は、発見当時の記憶に苛まれ日々、心を痛めていた。

仕方ないので幸男は自分で保険金受取の申請をすることに。その帰り道、息子との一幕を思い出す。浩一へと良い医師に診てもらおうと声をかけた幸男。幸いにも浩一は部屋から出て車に乗ってくれた。だが、走行中にドアを開けて外へ飛び出してしまう。

土手の方へ走り出した息子を必死に追いかける父親。その時から浩一には自殺願望があった。高圧線に触れて死のうとする浩一を幸男は必死に引き止めたが、息子は父親を何度も殴り自分は病気などではないと怒鳴った。その後、浩一はふらつく足取りで自分はまだ大丈夫だと呟きながら去って行く。幸男はそんな息子を泣きながら見送ることしかできなかった。

これまでのことに関し、それぞれに抱えるもので思い悩む鈴木家の面々。富美は思い悩んだ末、浩一に向けて自分の思いを手紙にした。そうして、グループセラピーにて手紙を読む。兄が引き籠った理由は未だに判然としていないが、富美には何となく兄の目論見が分かっていた。彼女が浩一は生きていると嘘を吐いたのは、ある意味復讐のつもりでもあったのだ。

セラピーが終了後、体調を崩して嘔吐してしまった富美。実は、兄が亡くなってからちゃんと眠ることができずにいた。心配して傍にいてくれた日比野に富美は浩一と喧嘩した時のことを語り始める。まだ富美が高校生の頃、浩一の誕生日に悠子がケーキを買って来た。だが、浩一は部屋から出て来なかった。腹を立てた富美は兄の部屋のドアを腹立ち紛れに強く叩いたのだ。

その頃、幸男はスコップを片手に通っているソープランドへ乗り込み、店で働くあるソープ嬢に会わせろと怒鳴った。幸男はサービスが目的で通っているのではない。浩一が残した生命保険は富美の他にもう一人、受取人がいたのである。それが、件のソープランドで働いていたソープ嬢であった。
騒動を起こした幸男を迎えに行った富美は、父から事情を聞いて納得。結局、ソープ嬢については何も分からなかったが、幸男は諦めずに通うと笑う。

映画『鈴木家の嘘』の結末・ラスト(ネタバレ)

博の若い恋人が妊娠したので結婚の報告に訪れた。更にアルゼンチンでの事業を撤退し、岐阜に移住して飛騨牛での事業一本に絞ると言い出す。どうやらアルゼンチン駐在員の北別府も実家の養殖場を継ぐらしい。そうなると、浩一からの手紙を偽装することができなくなる。博は君子の元へ一家で行くのも悪くないと思うと意見を述べ、帰って行った。

後日、披露宴をしない代わりに鈴木家で博の結婚祝いすることに。お祝いには北別府も駆け付け、富美は改めてお礼を告げることができた。悠子は客に浩一のことを明かし一緒に誕生日も祝いたいと言い出す。だが、富美は嘘を吐き続けることが辛くなり、浩一はもう死んでこの世にいないのだと明かしてしまう。これに便乗して北別府も協力していたことを吐露。

では浩一はどこにいるのか。酔っ払った北別府は浩一を探して家探しを始め、浩一の遺影を隠していたクローゼットを開けてしまう。追って来た悠子は遺影を目にして愕然とした。
暴れ続ける北別府は、押し入れの上の扉を開きそこから蝙蝠が現れる。茫然となった悠子は蝙蝠を目にして失われた記憶を思い出すのだった。

首を吊った浩一を発見した悠子は、包丁を手に2階へ戻りロープを断ち切ろうとした。無我夢中で、自分の手首まで傷つけていたことも分からない。彼女はバランスを崩し、押し入れから転落。仰向けに倒れた悠子は、室内に蝙蝠が飛び回っている光景を目にしてそのまま意識を失ったのである。

蝙蝠は開いている窓から外へと飛び出して行った。
その後、ようやく浩一の納骨が行われる。その日の夜、悠子があの日のことを語り始め、自分のせいだと責め始める。だが、幸男は浩一が死んだのは誰のせいでもないと強く否定するのだった。

以来、今度は悠子が引き籠ってしまう。幸男も家事に大分慣れてきたが、一家で君子の元へ向かおうかという話も出ている。そこで富美は、浩一の部屋に引き籠っている母に喧嘩した時のことを明かす。苛立って兄の部屋へ乗り込んだ富美は、生きている意味がないなら死ねばいいと告げてしまったのだ。

引き金を引いたのは富美かもしれない。彼女は後悔の念に苛まれ強い罪悪感から川へ身を投じようとする。娘を追って来た悠子が泣きながらそれを阻止した。
そうして、一家は霊能者を頼り浩一の霊と交信したその日、家族3人は浩一の部屋で寝ることにした。

早朝、外に行っていた蝙蝠が戻って来る。すると、幸男も目を覚ましその様子を夫婦で笑いながら眺めた。
後日、ソープランドの社長から幸男に連絡が入る。探していたソープ嬢が見つかったのだ。鈴木家は一家総出でその女性へと会いに大荷物を持って出かけて行くのだった。

映画『鈴木家の嘘』の感想・評価・レビュー

松竹ブロードキャスティングのオリジナル映画プロジェクトの第6弾。監督、野尻克己の初劇場映画のデビュー作であり、監督自らが脚本も担当している。

長男が亡くなり母親が記憶を失ったことで、鈴木家のこれまで溜め込んでいたゆがみのような鬱屈したものが明らかになる。結局、最後まで長男が引き籠りになった理由は明らかにされなかったが、彼が亡くなったことで止まっていた時が動き出したようなそんな印象を受けた。家族が再生していく様子が描かれているが、コメディというほど笑えるシーンは少なかったように思う。俳優たちの演技がとても素晴らしく、特に妹役の木竜麻生の演技が良かった。(MIHOシネマ編集部)

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