映画『修羅の群れ(1984)』の概要:戦前戦後を舞台に、任侠道を選んだ男の生き様を描いたヤクザ映画。実在する組織や人物を元に、一つの組がいかにして強大な勢力を誇ったのかを辿る男気溢れる作品。
映画『修羅の群れ』の作品情報
上映時間:123分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:山下耕作
キャスト:松方弘樹、鶴田浩二、菅原文太、酒井和歌子 etc
映画『修羅の群れ』の登場人物(キャスト)
- 稲原龍二(松方弘樹)
- 賭博で身を滅ぼした父の仇を取るため、19歳で極道の道を選んだ青年。柔道を嗜む。男気溢れる性格で、男女の垣根のみならず人種も越えて多くの人から慕われている。
- 横山新二郎 / 大船の兄貴(鶴田浩二)
- 稲原の世話役に付いた加東組の幹部。稲原の懐の深さや情の厚さに一目置いており、若い頃から目をかけている。稲原が独立してからも、相談役として彼の側にいる。
- 出水辰雄 / モロッコ(北島三郎)
- 稲原が介入する以前に熱海を仕切っていたチンピラ。器の大きい稲原に惚れ込み、出所した兄弟分の井沢と共に彼の盃を受けようとする。覚せい剤を常用している。
- 井沢輝一(菅原文太)
- 出水の兄弟分で、共に親を持たず二人三脚で熱海を仕切っていた。稲原の大立ち回りを目の当たりにし、彼に付いて行くことを決めた。後に稲原の右腕となるブレーン的存在。
- 石河隆司(北大路欣也)
- 出水に声を掛けられ稲原組の傘下に入った、元敵対組織のヤクザ。争いを好まず、義理人情に厚い男。後に、極道の世界に入った出水の息子の世話役となる。
- 稲原雪子 / 中田雪子(酒井和歌子)
- 稲原の妻。稲原がヤクザ者と知っても尚彼を慕い続け、当初反対していた母にも一途な気持ちを認められ祝宴を挙げた。稲原との間に二児を儲ける。
- 加東伝三郎(丹波哲郎)
- 柔道場に通っていた稲原を若衆として迎えた加東組の親分。横山を稲原の側に置き、賭博のいろはを教えさせた。
映画『修羅の群れ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『修羅の群れ』のあらすじ【起】
昭和8年、横浜。加東組の親分、加東伝三郎は馴染みの柔道場へ赴き、血の気の多い若者を新しい若衆として迎えようとしていた。師範は加東に、警察から巡査にならないかと声を掛けられている門下生、稲原龍二を紹介した。加東を前にした龍二は二つ返事でヤクザの道へ足を踏み入れ、彼の賭博場で横山新二郎の指導を受けながら修行を始めた。
稲原は横山に、父親が博打で失った金を取り返してやるために任侠道へ入ったことを打ち明けた。これを聞いた横山は、彼の愛ある動機に胸打たれた。
稲原とその舎弟がビーチを歩いていた際、稲原はチンピラに絡まれる中田雪子を助けた。この一件で稲原に惚れた雪子は、彼と電車で再会した際に家へ招いたが、雪子の母しずえは稲原がヤクザ者であると感じ取り彼と親しくなることを反対した。
稲原は、自身も賭博に熱中し借金が嵩んでいた。そのため、出入りしていた賭博場のチンピラから夜道で奇襲をかけられ、後頭部を65針も縫う大怪我を負わされてしまった。姿を見せなくなった稲原を心配した雪子は彼の病室に泊まり掛けで看病したが、彼は動けるようになるまで快復するや否や、雪子の制止を振り切り報復へ向かった。雪子から連絡を受けた横山は、稲原に「我慢するのも男の道だ」と説き、報復を止めさせた。
その後、しずえは娘の稲原への一途さを認め、晴れて稲原と雪子は結ばれた。しかし、二人の間に長男リュウコウが産まれた折、日本は太平洋戦争に突入していった。
映画『修羅の群れ』のあらすじ【承】
昭和19年、大船。兵役を逃れた稲原は、国内で軍の仕事を請け負っていた。開発が進む現場で横暴に振る舞うササオカ一家のキリハラと喧嘩になった稲原は、丁度居合わせた鶴岡の親分に見初められ鶴岡組へと引き抜かれた。
昭和21年、湯河原。稲原は、賭博場で暴れていた愚連隊の長谷部と森谷に情けを掛け、痛めつけずに見逃してやった。彼の懐の深さを痛感した二人は、稲原の舎弟となった。
出水辰雄、通称モロッコは、稲原の噂を聞きつけ彼を脅しに向かった。モロッコは賭博場にいた稲原へ銃を突き付けたが、銃口を向けられても一切怯まない彼の威勢に気圧され、出所した兄弟分である井沢と共に彼と盃を交わしたいと願った。
横山は、鶴岡親分から熱海のシマを譲ると言われたが、自分ではなく稲原をカシラにするよう強く勧めた。横山の口添えあって昭和24年に山崎一家を継承した稲原は、横山から「稲原、よかったなあ」と声を掛けられた。
突如熱海に介入してきた稲原を快く思わなかった韓国ヤクザ達は、彼の事務所へ奇襲を掛けた。丁度稲原の元へ向かっていたモロッコと井沢もこの抗争に参戦し、井沢は多勢に屈しない稲原の姿を見て、彼と盃を交わすことを決めた。
稲原組にモロッコと井沢が加わったことにより、稲原の傘下はあっと言う間に数百人を超えた。
映画『修羅の群れ』のあらすじ【転】
熱海の大火災のどさくさに紛れて、力士崩れの会津川は稲原のシマを荒らしていた。これに憤った長谷部と森谷は稲原への相談無しに会津川一行を襲撃、二人は会津川を殺害した。
実刑を受けた二人だったが、稲原は父親の三回忌を控える長谷部だけは、どうしても彼の母が元気な内に法事へ行かせてやりたいと考えていた。稲原は多額の保釈金を払うと、長谷部を彼の母と共に法事へ向かわせた。
モロッコと井沢は愚連隊の林俊一郎を懐柔し、京浜兄弟会の制圧にかかった。井沢は稲原の名を広めようと考え東海道制圧に成功、これによって稲原組は1000人を超える軍勢となった。
しかし、横山は、身内だけでなく敵も多く作る井沢へ難色を示し「井沢のようなやり方をしてるとお前が命を縮めることになるぞ」と稲原へ忠告した。それを受けた稲原は、井沢へ「あまり無理するなよ」と声を掛けた。
稲原は、覚せい剤を止められないモロッコから薬と注射器を取り上げると、熱海で療養するよう言い付けた。自分を気に掛けてくれる稲原に感動したモロッコは、彼への手土産に敵対するリュウセイ会の幹部、石河を身内にしようと考え、一人敵陣へ向かった。
石河の事務所へ乗り込んだモロッコは、「俺の舎弟になれ」と凄んだ。しかし、石河が答えるより先にモロッコは吐血。死期を悟った彼は、今わの際に「稲原の身内になれ」と言い残し自刃。モロッコの決意に心打たれた石河は、稲原の傘下に付いた。
一方横山は、心臓を悪くし自身の体調に不安を感じていたが、稲原には何も伝えずにいた。
映画『修羅の群れ』の結末・ラスト(ネタバレ)
横山は、稲原の名を語って好き放題している井沢を破門しよう考え、稲原に話しを通していた。石河伝手にそれを聞いた井沢は「親父は俺を破門にはしねぇよ」と高を括っていたが、石河は井沢に「詫びを入れた方がいい」と忠告した。
横山から「情に溺れるなよ」と釘を刺された稲原の元へ、切り落とした自分の小指を持った石河が訪れ、井沢の不始末を代わりに詫びた。そこへ井沢も現れ、彼が稲原へ「俺が間違ってました」と頭を下げると、稲原は「石河の指を無駄にするな」と言い彼らを許した。
雪子としずえは、19歳になったリュウコウの背中一面に和彫りが入っているのを目撃し狼狽した。彼女達が稲原と横山へ相談すると、横山はリュウコウの決心を悟り彼を石河に預けると提案。稲原もそれに従った。
井沢は、稲原への報告無しに、敵対する大島会長を討つと奮起していた。それを知った稲原は井沢を呼び出し、破門されて堅気になるか、自分に殺されるか選べと迫った。井沢は稲原に「殺して下さい」と申し出たが、稲原は弱気な彼を殴ると「堅気になるんだぞ」と言い残して去った。それを見ていた横山は、安心したように「おめぇは大きくなった」と言い、そのまま息を引き取った。
横山の葬儀を終えた稲原は、彼の墓石に「兄貴の教えはきっちり守っていきやす」と声を掛けると、一人修羅の道を歩き出した。
映画『修羅の群れ』の感想・評価・レビュー
ヤクザの世界特有の、独特な信頼関係や主従関係、緊張感がありありと伝わってくる作品だった。
稲原組がどんどん勢力を拡大していく中で、稲原龍二が直接手を下したような場面は限りなく少ない。彼に怒られた若者達がその情に触れて、知らぬ間に人数が増えていっているように見えた。後半からは、稲原組の傘下を増やしていったのは井沢である。稲原の優しさや男らしさをもっとフォーカスしてもよかったのではないかと感じたが、これはわたしが女だから汲み取りにくい魅力なのかもしれない。(MIHOシネマ編集部)
こういう裏社会を描いた作品が大好きな私。「叔父貴」と言うセリフが好きでヤクザの世界って怖いけど面白いなと思いながら鑑賞しています。人間道から外れ、修羅道を生きる男たちを描いた今作ですが、この世界に生きる男にも優しさを持った人がいたり、仲間や組同士の繋がり、絆があったりと抗争よりも内部の人間の繋がりが深く描かれていたような気がします。
松方弘樹に菅原文太、北大路欣也に北島三郎と名だたる俳優陣が揃っていてものすごく迫力がありました。(女性 30代)
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