原作は「容疑者Xの献身」「白夜行」の原作者でもある東野圭吾。主演・武島直貴は「電車男」で主演を演じた山田孝之。直貴の兄・武島剛志を演じるのは玉山鉄二。ヒロイン・白石由美子を演じるのは沢尻エリカ。
映画『手紙』 作品情報
- 製作年:2006年
- 上映時間:121分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 監督:生野慈朗
- キャスト:山田孝之、玉山鉄二、沢尻エリカ、吹石一恵、尾上寛之 etc…
映画『手紙』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『手紙』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『手紙』のあらすじを紹介します。
武島直貴と兄の武島剛志は兄と二人暮らしをしていた。ある日、兄・武島剛志は弟の大学進学の学費を捻出しようと強盗に入る。強盗に入った家で住人とはちあわせてしまい、殺人を犯してしまう。この事件はニュースで放送されるほど大きな事件となってしまった。
剛志は刑務所へ服役。直貴は大学進学をあきらめ工場へ就職することになった。「強盗殺人犯の弟」として様々な問題や苦悩が直貴に待ち受ける。その苦悩を知らずに刑務所に服役している剛志。そんな剛志と直貴の手紙のやり取りが行われる。
大学進学をあきらめた直貴は工場に勤める。そこで共に働く幼馴染の祐介とお笑いのプロを目指す。そしてお金持ちの令嬢・中条朝美と知り合う。そして直貴を一方的に好いている同僚の白石由美子の存在。兄・剛志との手紙のやり取りは続く…。
徐々に順風に進んでいく直貴の人生も「殺人者の弟」という事実がいつも障害となる。自分が罪を犯したわけではないのに、周囲から非難の目を浴びる直貴。職場から受ける冷遇。遺族との因果関係。お笑いの相方との決別。恋人との結末。
果たして直貴と剛志にはどんな運命が待ち受けるのか…。そして直貴を一方的に好いていた白石由美子が起こす行動は…。
映画『手紙』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『手紙』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
演技力
今作の主軸である俳優人の演技力が高いのが魅力的です。今作ではラストシーンが感動的であるのが有名ですが、ラストシーンのみならず映画の進行過程と空気を安定して保てていると思います。それは俳優の山田孝之、沢尻エリカ、玉山鉄二ら主軸の場面ごとの演技力が生きているからだと思います。
逆の視点で言えば、安定しているがゆえに派手なシーンが少なく、感情移入出来ない人には物足りなく感じるかもしれません。
テーマ
この作品が伝えたいテーマは「差別」です。内容の軸は剛志が犯した罪によって罪を犯していない弟の直貴が生きていく上で受ける差別です。
差別について様々な見解があると思いますが、私自身が持っている差別の印象は「間接的な攻撃」と「暗黙の了解」です。
差別を受ける者はその人自身が行動したわけでないにもかかわらず、関わりの深さによって同じように間接的な攻撃が帰ってくるものだと考えます。また、差別はしてはいけないと言われながらも差別が起こるのは日本社会における暗黙の了解があるからだと私は考えます。
この作品とは無関係ですが、私自身の共感として新渡戸稲造著の『武士道』による日本社会の影響が根強いのだと思います。日本は独立した島国であり長らく続いた封建社会が遺物を弾く性質を日本人は遺伝子として受け継いでる。…といったものです。
差別に対して私も一概には発言できませんが、この作品が伝えたい事は「生きる事」だと思います。
差別は存在する。でも人は生きなければならないという事だと私は思いました。
日本人の嫌な部分が浮き彫りになっている今作。日本の映画だから共感できるし、加害者、被害者どちらの気持ちにもなれるのだと思います。
外国では犯罪を犯した人間「個人」が罰せられるので家族だからと周囲の人間から差別されるようなことはあまりないのでしょう。
しかし、日本では罪を犯した人間だけでなく、その家族や関係者までが同じように扱われ、なんの罪もないのに罰せられているような現状がありますよね。
マスコミやメディアの表現の仕方にも問題があるのだとは思いますが、ほんの些細な言葉や行動が誰かの人生を大きく変えることになってしまうのを忘れてはいけないなと感じました。(女性 30代)
映画『手紙』 まとめ
この作品の鑑賞者の視点での軸は加害者と被害者の関係者ですが、そこを軸に被害者視点と加害者視点でも考える事が深く重い作品だと思いました。
人が罪を犯すと周囲に居る者も関係ないでは済まないという事、それが尚更家族であれば強いのだと私自身思いました。
本作を通じて道徳的な意義も多くあると思います。作品内には「差別をしなければならない」という刺激の強い発言もあります。この作品を鑑賞した後には色々考えさせられる事が多いと思ったのが私の感想です。
また、先に述べたように差別事態が間接的な割合が多いと思うので、作中から差別を感じ取る事が難しいシーンもあると思いました。内容が重いという事もあってか話が暗くなりがちで理解するのが困難という人もいると思います。
それでもラストシーンが感動的なのは間違いありません。
原作者も東野圭吾とあって最後にウェイトを占めている感覚はありますが、そこまでいく話の引っ張りが少々物足りないと感じました。
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