この記事では、映画『風立ちぬ』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『風立ちぬ』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『風立ちぬ』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 2013年 |
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上映時間 | 126分 |
ジャンル | アニメ ドラマ ロマンス 青春 |
監督 | 宮崎駿 |
キャスト | 庵野秀明 瀧本美織 西島秀俊 西村雅彦 |
製作国 | 日本 |
映画『風立ちぬ』の登場人物(キャスト)
- 堀越二郎(庵野秀明 / 鏑木海智)
- 少年時代から飛行機が大好きで、飛行機の設計士になることが夢だった。裕福な家庭で育ち、妹の加代も医者になっている。東大で航空工学を学び、技術者として飛行機開発会社に就職。高い能力を発揮して会社に貢献する。正義感が強く、純粋な心の持ち主。
- 里見菜穂子(瀧本美織 / 飯野茉優)
- 関東大震災の時、同じ汽車に乗り合わせていた二郎に助けてもらった。それから数年後、二郎と再会する。溌剌としたお嬢様で、意志が強い。結核を患っている。
- 本庄(西島秀俊)
- 東大時代からの二郎の親友であり良きライバル。職場も同じ。現実的に物事を考えるリアリストで、後進的な日本の技術力に焦りを感じている。
- 黒川(西村雅彦)
- 二郎の直属の上司。偏屈なところがあるが、二郎の才能を伸ばそうと奔走してくれる。妻とともに、二郎と菜穂子の仲人を務めた。
- カプローニ(野村萬斎)
- 二郎が少年時代から憧れてきたイタリアの航空技術者。二郎は夢の中で度々カプローニと話をし、勇気をもらう。
映画『風立ちぬ』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『風立ちぬ』のあらすじ【起】
とある地方の裕福な家庭に生まれた堀越二郎は、少年時代から飛行機が大好きで、いつか自分で設計した飛行機を作りたいという夢を持っていた。二郎の夢に登場するイタリアの航空技術者カプローニは、二郎と同じ飛行機への夢を語ってくれる。
航空工学を学ぶため東大へ進学した二郎は、実家から大学へ戻る汽車の中で、関東大震災に遭遇する。その際、上野の資産家の娘である里見菜穂子とお付きの絹を助ける。しかし二郎は名前も名乗らずに、2人と別れる。
2年後、焼け野原となった東京も復興し、二郎も大学での勉強に励んでいた。二郎はいつも昼食で鯖を食べ、その骨の曲線の美しさに感心する。二郎と同じ志を持つ親友の本庄は、そんな二郎に呆れつつも、二郎の才能を認めていた。
日本中が不景気で苦しむ中、二郎は航空技術者として、名古屋にある飛行機開発会社に就職する。先に入社していた本庄は、二郎が来るのを心待ちにしていた。上司の黒川は、新入社員の二郎に難しい設計をやらせ、二郎をしごく。黒川は二郎の才能に大きな期待を寄せており、二郎を立派な技術者に育てようとしていた。
映画『風立ちぬ』のあらすじ【承】
この頃の日本の航空技術はヨーロッパ諸国にかなりの遅れをとっており、会社は大枚を叩いてドイツのユンカース社へ視察団を派遣する。黒川の推薦により二郎も視察団に選ばれ、本庄とともにドイツへ渡る。ドイツ側は日本に技術を盗まれることを警戒していたが、ユンカース博士は、最新型の飛行機に二郎たちを乗せてくれる。二郎と黒川は、ドイツの技術力の高さを目の当たりにして、日本の遅れを痛感する。
二郎が入社して5年目。二郎は、海軍の航空母艦用の戦闘機を設計するチームのチーフに大抜擢される。二郎はスタッフに本庄を欲しがるが、黒川は二郎と本庄を一緒のチームにすることを拒む。本庄は、別の飛行機の設計を進めていた。
二郎設計の一号機が完成し、試験飛行が行われる。しかし飛行機は時速400キロのスピードに耐えられず、墜落してしまう。
夏休み。二郎は軽井沢のホテルに滞在して、一号機の失敗について考えていた。散歩の途中、突風が吹き、丘の上で絵を描いていた女性のパラソルが飛ばされる。二郎はそれを捕まえ、女性に返してやる。その女性とは、美しく成長した菜穂子だった。
映画『風立ちぬ』のあらすじ【転】
菜穂子にとって二郎は、ずっと会いたいと願ってきた王子様のような存在だった。二郎も菜穂子のことは心に残っており、2人は再会を喜び合う。
菜穂子と食事の約束をした二郎は、レストランでドイツ人のカストルプと話をする。カストルプはヒトラー政権のやり方に疑問を持っており、母国の将来を憂いていた。そしてこのままでは日本もいずれ破裂するだろうと語る。
その日の食事は、菜穂子が熱を出してキャンセルとなる。菜穂子の病状は良くないようで、その後数日伏せっていた。ようやく元気になった菜穂子と二郎は急速に接近し、恋に落ちる。二郎は、菜穂子が結核を患っていることを承知の上で、彼女と婚約する。病気を治してから結婚したいという彼女を、二郎はいつまでも待つつもりだった。
夏休みが終わり、久しぶりに出社した二郎は、特別高等警察からマークされていた。黒川は二郎を自宅の離れに匿う。会社は全力で二郎を守ると決めていた。二郎は下宿に届いているはずの菜穂子からの手紙を気にしていたが、今はそれどころではなかった。
しばらくして、菜穂子が吐血したという知らせが入る。二郎は東京へ急行し、自宅で療養中の菜穂子を見舞う。菜穂子は2人のために、高原病院で療養することに決める。
映画『風立ちぬ』の結末・ラスト(ネタバレ)
二郎は最高時速500キロで飛ぶ、軽くて丈夫な戦闘機の設計に心血を注いでいた。高原病院で療養中だった菜穂子は、二郎からの手紙を読んでどうしても二郎に会いたくなり、病院を抜け出す。父親から菜穂子の病状を聞いていた二郎は、このまま彼女と結婚して、一緒に暮らそうと決意する。
最初は難色を示していた黒川も、妻の説得と2人の一途な愛に心を動かされ、急遽黒川家で二郎と菜穂子の結婚式が執り行われる。たった4人の質素な結婚式ではあったが、菜穂子はとても幸せだった。そして黒川家の離れで、2人の新婚生活が始まる。
二郎はずっと菜穂子に付き添ってやりたかったが、戦闘機の設計も佳境に入っていた。菜穂子は二郎が仕事に専念できるよう、いつも明るく振舞う。いよいよ新しい戦闘機の試験飛行が行われることになり、二郎は出張する。自分の死期を悟っていた菜穂子は、二郎やお世話になった黒川夫人にも内緒で、ひっそりと高原病院へ帰る。
二郎の開発した戦闘機は見事な出来栄えで、試験飛行は大成功する。しかし二郎はなぜか胸騒ぎを覚え、ずっと菜穂子のことを考えていた。
それから数年後。日本は敗戦し、二郎が開発した戦闘機も一機も戻ってこなかった。夢に現れたカプローニは、二郎と菜穂子を会わせてくれる。菜穂子は“あなた、生きて”と二郎を励まし、風のように消えていく。二郎は涙を流し、菜穂子の愛に感謝する。
映画『風立ちぬ』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
夢を追い続けた堀越二郎の姿勢が、最後まで一貫していて胸を打ちました。震災、病気、戦争という時代の大きな流れに翻弄されながらも、「美しい飛行機を作りたい」という一心で生き抜いた彼の姿が印象的。菜穂子との儚い愛も切なくて、特にラストの「生きねば」という言葉がずっと心に残っています。(20代 男性)
まさに“人生は夢と共にある”ということを描いた映画でした。菜穂子との出会いから結婚、そして別れまでの流れが丁寧に描かれていて、涙が止まりませんでした。美しいアニメーションと静かな空気感の中で、戦争という大きな背景がジワジワと忍び寄る演出も上手い。重くて、でも優しい映画です。(30代 女性)
宮崎駿がこれを「大人のためのジブリ」として作った意味がよくわかりました。美しい飛行機を作るという夢が、結果的に戦争の道具になってしまうという矛盾に苦しみながら、それでも“創る”ことをやめなかった堀越。菜穂子との静かな時間と、その別れが心に沁みました。人生の美しさと儚さを感じる名作です。(50代 男性)
若い頃に夢を追った自分の姿と重ねて観てしまいました。二郎が努力を重ね、理想を形にしていく過程に感動。特に、菜穂子の看病と設計の仕事を両立させながら日々を懸命に生きる姿は、本当に涙なしでは観られません。戦争の影が濃くなっていく中で、それでも前を向く二人の姿に勇気をもらいました。(40代 女性)
「風立ちぬ、いざ生きめやも」というキャッチコピーの意味が、ラストシーンでようやく深く理解できました。生きることも、夢を追うことも、誰かを愛することも全てが儚い。だからこそ、美しい。アニメなのにまるで一編の文学作品を読んだような気持ちになりました。エンディング後もしばらく余韻が残りました。(20代 女性)
音楽と映像がここまで調和しているアニメは稀だと思います。久石譲の音楽が、飛行機の滑空音や風の音と溶け合い、心地よい悲しみを描いていました。二郎と菜穂子が草原で風に吹かれるシーンは本当に美しかった。戦争というテーマを真正面から描かず、それでもしっかり伝えてくるバランスも絶妙です。(30代 男性)
堀辰雄の『風立ちぬ』とジブリのアニメーションがここまで融合するとは思っていませんでした。文学的なセリフや淡い時間の流れが、登場人物たちの内面をより深く印象づけていました。菜穂子が結核を患いながらも、二郎を支えようとする強さに心が震えました。ジブリ史上もっとも“静かな感動”のある作品だと思います。(60代 女性)
「夢を追うことの美しさと残酷さ」両方を教えてくれる作品でした。戦争という現実がある中で、二郎は飛行機を作り、愛する人を見送り、最後には何も残らなかった。でも夢を見たことに意味があった。現実は厳しいけれど、それでも生きねばならないというメッセージが、深く胸に刺さりました。(40代 男性)
戦争映画ではないけれど、戦争の空気が静かに全体を覆っていて、その演出がとてもリアルでした。飛行機設計という技術者のロマンと、愛する人を失っていく悲しみの対比が秀逸。菜穂子が去ったあと、夢の中で再会するラストに涙が止まりませんでした。「君がいてくれて幸せだった」と言う二郎の言葉が心に響きました。(30代 女性)
飛行機が飛ぶシーンの音すら、すべて手作りの効果音で構成されていると知り、改めてこの作品の作り込みに驚かされました。どのカットにも宮崎駿の“愛”が詰まっていて、単なるアニメではなく、芸術作品として楽しめます。夢を追った男の物語として、学生にもぜひ観てほしい一本です。(10代 男性)
映画『風立ちぬ』を見た人におすすめの映画5選
この世界の片隅に
この映画を一言で表すと?
戦争の時代を懸命に生きた女性の、静かで力強い人生の記録。
どんな話?
広島・呉を舞台に、絵を描くことが好きな少女・すずが嫁ぎ先で戦時下の生活を送る姿を描く。日常のささやかな幸せや、戦争による喪失を丁寧に綴った感動作。
ここがおすすめ!
『風立ちぬ』と同じく、“戦争”を背景にしながらも、“日々を生きる人間の姿”を美しく描いています。細部まで描き込まれた暮らしと、心に響く静かなドラマが余韻を残す名作です。
紅の豚
この映画を一言で表すと?
空を愛した豚が描く、ロマンと哀愁に満ちた空中戦ファンタジー。
どんな話?
魔法で豚の姿になった元空軍パイロット・ポルコが、空賊たちと戦いながら過去と向き合い、自分の信念を貫いていく。飛行機や空への愛情が詰まった宮崎駿監督ならではの世界観。
ここがおすすめ!
空への憧れ、時代の空気、人としての矜持。『風立ちぬ』と同様、飛行機という夢に人生を重ねた男の生き様が描かれます。ユーモアと哀愁が絶妙に混ざった、心に沁みる名作です。
母と暮せば
この映画を一言で表すと?
戦後の長崎で母が出会ったのは、亡くなった息子の“帰宅”だった。
どんな話?
原爆で息子を亡くした母のもとに、ある日突然その息子が現れる。生者と死者が語らいながら、戦争で傷ついた心を癒し、再生していくヒューマンドラマ。山田洋次監督による感動作。
ここがおすすめ!
『風立ちぬ』が「夢と死」を描いたとすれば、本作は「死と癒し」に焦点を当てています。幻想的な設定の中に、戦後の家族や命の重みが深く描かれています。涙なしには観られない名作です。
海獣の子供
この映画を一言で表すと?
宇宙的スケールで命を描く、幻想と科学が交差するアニメーション。
どんな話?
不思議な力を持つ少年たちと出会った少女・琉花が、海と命の神秘に触れながら自分の存在を見つめ直していく。ダイナミックな自然描写と哲学的テーマが特徴のアート系アニメ映画。
ここがおすすめ!
『風立ちぬ』のような美しいアニメーションと深い内面描写が魅力。ストーリーよりも“感覚”で観る作品で、命とは何か、生きるとは何かをビジュアルで問いかけてきます。映像美が圧巻です。
もののけ姫
この映画を一言で表すと?
人と自然の対立と共存を描いた、宮崎駿の原点にして到達点。
どんな話?
呪いを受けた青年アシタカが旅の中で出会うのは、森を守る山犬と共に生きる少女サンと、自然を切り開く人間たち。戦いや対立を超えた“共生”の在り方を問いかける壮大な物語。
ここがおすすめ!
『風立ちぬ』と同様に、理想と現実、破壊と創造の狭間で揺れる主人公の姿が描かれます。壮大なテーマと映像、そして力強いメッセージが、何度観ても心を動かす名作です。
みんなの感想・レビュー
松任谷由実の主題歌が頭に浮かぶこの作品。戦争をテーマにしていることもあり、苦手だと思って見るのを躊躇していましたが実際に見てみると「もっと早く見ればよかった」と後悔するほど素晴らしい作品でした。
主人公の西友の声を務めたのは『エヴァンゲリオン』シリーズの庵野秀明。声優では無い彼が何故「ジブリ作品」の主人公の声を演じたのが疑問に思っていましたが、「掴みどころのなさ」が選ばれた理由ではないかと感じました。西友はあまり感情を表に出さず、言ってしまえば「何を考えているか分からない」人物。そんな人を演じるには「声優」では無い庵野秀明はぴったりだったのでしょう。
二郎はただ美しい飛行機を作りたいという思いでいても、どんなに美しい飛行機も実際には人を殺す道具として使われてしまう現実を考えると切なかった。菜穂子は病気がちで、仕事が忙しい二郎だが、ゆっくりと流れる時間の中で穏やかに愛を育む二人が印象的だ。
ジブリ作品の中でも大人向けで難解な映画だったため、様々な解釈があるようだが、個人的には飛行機設計に心身を燃やす二郎と、その二郎を支える菜穂子の愛情が伝わる優しい映画だったと思う。
『風立ちぬ』で最初に話題になったのは、エヴァンゲリオンシリーズで知られる監督・庵野秀明が主人公の西友を務めたことでしたね。声優初心者の彼がなぜ大抜擢されたのか?それは、主人公の堀越二郎という男がめったに感情を表に出すことがなく、何を考えているかわからない人だからです。声優や有名な俳優が声優を務めると堀越二郎という男に人格を芽生えさせてしまうので、素人の棒読みでなければいけなかったのです。
軽井沢で登場するドイツ人、彼が何者なのか?様々な説がありますが、一番有力で説得力があるのは、彼がリヒャルド・ゾルゲだという説です。ゾルゲは日本で暗躍したソ連のスパイで、日本の同盟国・ドイツ人のふりをしてスパイ活動を行っていました。彼と堀越が合唱した曲を覚えていますか?あれは『会議は踊る』というドイツ映画の主題歌『ただ一度だけ』という曲です。
ラストシーンについての解釈もたくさんあるんですよね。映画評論家・町山智浩氏の説(というか結論ですが)によれば、あれはダンテの『神曲』における煉獄だということです。あれは堀越二郎の妄想でも夢でもなく、天国と地獄の間だったんです。
菜穂子が「生きて…」というセリフを言いますが、あれは絵コンテ、つまり宮﨑駿流の『脚本』では「来て…」というセリフでした。つまり、菜穂子は天国からの使者でした。二郎を迎えたカプローニはさすれば地獄からの使者であったということ。二郎は菜穂子の姿を見て涙ながらに感謝の意を告げ、カプローニとワインを飲みに行きますよね。画面的には、下。丘の向こう側へ並んで歩いて行きました。つまり、どういうことか。分かりますね?
この映画にはあらゆるシーンで異なる解釈を考えることができます。そこが私が気に入っているところで、日本を舞台にした日本人の話なのにここまで何を考えているのか、今のシーンが何なのかを理解するのに時間がかかる映画はないんです。ただ、筋は通っている。本庄は自己中心的な思考で行動しているし、菜穂子は二郎に気に入ってもらうために自分を演出することをためらいません。
私は劇場で5回『風立ちぬ』を見て、全てで号泣してしまいました。それぞれ異なる解釈が頭のなかに浮かんできて、毎回泣いていたんです。不思議な映画ですよ。とんでもない魅力を持った映画です。私は『風立ちぬ』を題材にして文章を書け!と言われればいくらでも書ける自信があります。書く間に何度も何度も映画を見なおさなきゃいけないので、それもまた楽しみ。私はここまで思ってしまうほどハマりました。
ただ、ダメな人にとってはとことんダメな映画に違いありません。劇中に説明は全く無いので、理解できないことがストレスになる人には向いていません。それでも宮﨑駿の引退作なのですから、すべての人に見ていただきたいですけどね。映画は素晴らしいなと築かせてくれる大傑作です。