この記事では、映画『ザ・ブルード 怒りのメタファー』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ザ・ブルード 怒りのメタファー』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『ザ・ブルード 怒りのメタファー』の作品情報

出典:https://video.unext.jp/title/SID0063676
| 製作年 | 1979年 |
|---|---|
| 上映時間 | 91分 |
| ジャンル | ホラー |
| 監督 | デヴィッド・クローネンバーグ |
| キャスト | オリヴァー・リード サマンサ・エッガー アート・ヒンドル シンディ・ハインズ |
| 製作国 | カナダ |
映画『ザ・ブルード 怒りのメタファー』の登場人物(キャスト)
- フランク・カーベス(アート・ヒンデル)
- 5歳の娘キャンディスを持つ一児の父親。妻のノーラが重度な精神疾患を患っており、一緒に生活をすることはもはや不可能で、キャンディスの監護権を巡って争っている状況。ソフマリー研究所という療養施設にノーラを預けているが、主治医であるラグランのいかがわしい治療方法に疑念を抱いている。
- ノーラ・カーベス(サマンサ・エッガー)
- フランクの妻。重い精神病を抱えており療養施設に入院している。施設では主治医のラグランに独自の治療を施されている。病は過去の痛ましい経験からくるものだと知ったラグランによって、ある実験の治験対象にされてしまう。
- キャンディス・カーベス(シンディー・ヒンズ)
- フランクとノーラの5歳の娘。母親が心の病を患っているため、今は父親であるフランクと二人で生活している。治療にプラスになるということで、定期的に施設に赴きラグランから特別にノーラとの面会を許可されている。
- ハル・ラグラン(オリヴァー・リード)
- ソフマリー研究所という精神病患者の療養施設を運営する精神科医。患者の抑圧された感情を解放するため、患者の体に生理学的な変化を起こさせる「サイコプラズミクス」という独自の療法を採用している。中には逆に体に悪影響を及ぼすものもおり、有用性は極めて怪しい。
映画『ザ・ブルード 怒りのメタファー』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『ザ・ブルード 怒りのメタファー』のあらすじ【起】
フランク・カーベスは、精神病を患う妻のノーラをソマフリー研究所という療養施設に預けており、5歳の娘であるキャンディスと共に定期的に面会に訪れていた。研究所の精神科医ハル・ラグランは、「サイコプラズミクス」という独自の心理療法で精神病患者を治療しており、ノーラの主治医でもあった。ノーラとフランクはもう通常の夫婦生活には戻れず、キャンディスの監護権を巡って争っていた。
ある時、フランクはキャンディスの背中に傷跡やアザができていることに気づく。ノーラに面会させた時に虐待を受けたのではないかと疑ったフランクは、ノーラを問い詰めようと研究所へ赴く。しかし、ラグランから治療中なので会わせられないと拒否されてしまう。
ラグランは治療中に、母親に虐待を受けていたとノーラから聞かされる。また、それを知りながら見過ごしていた父親のことも打ち明けられた。
フランクはラグランの治療に疑いを持ち、ノーラの母親であるジュリアナにキャンディスを預け、かつてソマフリー研究所で治療を受けたことのあるジャン・ハートグという人物のもとを訪ねる。彼は治療の影響でリンパ腫を患っており、フランクの疑念は深まる。
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映画『ザ・ブルード 怒りのメタファー』のあらすじ【承】
ジュリアナは、ノーラが幼い頃に原因不明のコブができて入院していたことがあるとキャンディスに話して聞かせる。その後、ジュリアナは侵入してきた何者かによってハンマーで撲殺されてしまう。警察から連絡を受けたフランクは、急いでキャンディスを迎えに行く。精神的ショックを受けているようだったが、大きな怪我もなく無事だったことにフランクは安堵する。
ジュリアナの葬儀に、彼女の元夫でノーラの父親であるバートンがやって来る。フランクから話を聞いたバートンはノーラを連れ戻そうと研究所に向かうが、ラグランに追い返されてしまった。
フランクは、キャンディスが通う幼稚園の教師ルース・メイヤーを家に招く。ジュリアナの件以降、娘に変わった様子はないか彼女に尋ねていると、バートンから電話が掛かって来る。フランクは、すぐ戻るとメイヤーに伝えバートンのもとへ向かった。
フランクの留守中、ノーラがかけた電話にメイヤーが出たため、ノーラは不倫を疑い彼女を口汚い言葉で罵る。一方、バートンのところにやって来たフランクは、彼が殺されているのを発見する。次の瞬間、謎の小人が襲いかかって来るが、すぐに息絶えてしまった。
映画『ザ・ブルード 怒りのメタファー』のあらすじ【転】
フランクは警察に通報し、襲って来た小人は何者なのかを検視医から聞かされる。子供のような姿をしているが、性器を持っておらず、色盲であるようだった。また、歯やへそがないことから少なくとも人間ではないことが分かった。
ジュリアナとバートンの事件を新聞で知ったラグランは、ノーラ以外の患者を全員退院させ、病院を閉鎖。フランクはハートグからそのことを知らされる。また、病院を強制退院させられたマイクという患者に接触し、ラグランがノーラを実験台にしており屋根裏部屋で正体不明の小人たちを世話していると告げられる。
一方、幼稚園のキャンディスの前に二体の小人が現れる。キャンディスは別室に閉じ込められ、その間にやって来たメイヤーは、子供たちの目の前で小人に殴り殺されてしまった。知らせを受けたフランクはすぐに駆けつけるが、キャンディスは二体の小人に連れ去られてしまったあとだった。
フランクはラグランに会いに行き、何が起こっているのか問い詰める。ラグランは、キャンディスは屋根裏にいるが、連れ出すことは無理だと話す。
映画『ザ・ブルード 怒りのメタファー』の結末・ラスト(ネタバレ)
ラグランは、小人を”ブルード”と呼び、ノーラの怒りによって生み出されるのだとフランクに説明した。やがて自分たちにもその矛先が向くので、ノーラを怒らせてはだめだとフランクに忠告する。その間に、ラグランは屋根裏に行きキャンディスを救出しようと試みる。フランクはキャンディスに危害が及ばないよう、ノーラの機嫌を取ろうとする。しかし、ノーラはフランクの嘘を見透かし、自分の腹にできた腫瘍を見せてブルードたちを産み落とした。
結局ラグランは、ノーラの怒りによって目覚めたブルードたちによって袋叩きにあい惨殺されてしまった。キャンディスは近くのクローゼットの中に逃げ込むが、ドアを突き破ったブルードたちに掴みかかられて悲鳴を上げる。
フランクはキャンディスを救うため、やむを得ずノーラの首に手を掛け、強く締め上げる。ノーラが絶命するとブルードは全滅し、フランクはキャンディスを助け出すことができた。研究所をあとにする二人だったが、キャンディスの腕にノーラと同じコブができていることにフランクはまだ気付いていないのだった。
映画『ザ・ブルード 怒りのメタファー』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
デヴィッド・クローネンバーグの中でも特に異質で、生理的な恐怖と心理的な不安が入り混じった作品。精神療法を通じて“怒り”が肉体化し、母親ノラの感情から生まれる子ども=ブルードが暴走するという設定が強烈。あの「出産シーン」は今見ても衝撃的だ。母性の歪み、トラウマの連鎖をホラーとして描く手腕はまさに唯一無二。(30代 男性)
初見ではただグロテスクに見えたが、よく考えるとこれは“心の傷が生むモンスター”の寓話。ノラの抑圧された怒りが文字通り形を取り、現実に影響を及ぼすという構造は、心理ホラーとして極めて秀逸。終盤、娘キャンディの背中に現れる発疹が、怒りの遺伝を暗示していてゾッとした。母性という名の暴力を描いた名作。(20代 女性)
観るたびに「これはホラーなのか、それとも悲劇なのか」と考えさせられる。ノラの感情が具現化する“ブルード”たちは、単なる怪物ではなく、彼女自身の心の欠片。夫フランクとの対立も、愛情と支配の境界を揺らがせる。クローネンバーグらしい冷たい映像美と狂気が融合した、知的な恐怖映画。(40代 男性)
“怒り”を生理的レベルで具現化する発想があまりに天才的。血や肉体のグロテスクな描写に目を奪われがちだが、本質は「心の傷が他者をも傷つける」という寓意。ラスト、ノラが自らの分身を出産する場面は、母性と狂気が一体化する瞬間として忘れられない。精神と肉体の境界を破壊した問題作。(30代 女性)
幼い頃に母親との関係にトラウマを持つ自分にとって、この映画はあまりに刺さった。ノラの“子どもを守りたい”という歪んだ愛情が、殺意と暴力に転化していくのがリアルで恐ろしい。クローネンバーグの冷徹な演出は、感情を増幅させる。ラストの暗示的な終わり方も含め、まさに“恐怖の連鎖”を描いた傑作。(20代 男性)
ノラのセラピー描写が怖すぎる。パラサイコロジー的な治療法が、実際に肉体を変容させるという発想が気味悪くも魅力的。クローネンバーグ作品の中でも、科学より感情の暴走を描いている点が新鮮だった。ラストの「出産」はトラウマ級だが、その痛みこそが本作のメタファーなのだと思う。(50代 女性)
「母親の怒りが怪物を生む」というテーマがあまりに斬新。血みどろの描写よりも、“母性”という言葉の裏に潜む狂気が怖い。ノラが自らを解放するために出産するブルードたちは、彼女自身の心の叫び。クローネンバーグはグロテスクを通して、人間の心理を鋭くえぐり出す名匠だと改めて感じた。(40代 男性)
ホラーというより、むしろ“心の崩壊劇”。ノラの精神治療を巡る物語は、70年代後半のカルト的サイコロジーを象徴しているように思う。科学と感情の危うい融合がリアルで、観ているこちらの感情まで不安定になる。クローネンバーグの恐怖は血ではなく“心”から生まれることを証明した作品。(30代 女性)
『ザ・ブルード』の何が怖いって、怪物よりも「母親の感情が制御できないこと」そのもの。怒りや憎しみが現実を侵食していく様が本当に怖い。娘キャンディの怯えた表情がずっと頭から離れない。母の愛が呪いへと変わる過程をこれほど冷酷に描ける監督は、クローネンバーグ以外にいない。(20代 男性)
昔のホラーだと侮っていたが、今観ても全く色褪せない。むしろ現代のメンタルヘルスの問題に通じるリアリティがある。ノラの心の闇は、誰の中にもある怒りの象徴。あの「生まれる瞬間」の異様な映像は、肉体ホラーの極致でありながら、同時に深い哀しみを感じさせる。強烈な余韻が残る一本。(60代 女性)
映画『ザ・ブルード 怒りのメタファー』を見た人におすすめの映画5選
ヴィデオドローム(原題:Videodrome)
この映画を一言で表すと?
テレビと肉体が融合する、クローネンバーグ流メディア批評ホラー。
どんな話?
マックスというテレビ局のプロデューサーが、過激な番組「ヴィデオドローム」を発見したことから、現実と幻覚の境界が崩壊していく物語。テレビ電波を通じて人間の脳が変質し、肉体までもがメディアに侵食されていくという狂気の展開。
ここがおすすめ!
『ザ・ブルード』の「感情と肉体の変容」というテーマを、より哲学的に発展させたクローネンバーグの代表作。グロテスクなビジュアルの中に、現代社会のメディア依存への皮肉が込められている。観終わった後、現実が揺らぐような感覚を味わえる。
デッドゾーン(原題:The Dead Zone)
この映画を一言で表すと?
超能力がもたらす「知りすぎた人間」の悲劇を描くサスペンス。
どんな話?
昏睡状態から目覚めた教師ジョニーが、触れた人の未来を“視る”力を得てしまう。善意で人を救おうとする一方、未来を変えることの恐ろしさに苦悩していく。やがて彼は、ある政治家の危険な未来を知ってしまう――。
ここがおすすめ!
クローネンバーグがスティーヴン・キング原作を独自の静けさと緊張感で映画化。派手なホラーではなく、運命と道徳の狭間で揺れる人間ドラマとして深く刺さる。『ザ・ブルード』同様、心理の闇をリアルに掘り下げた知的スリラー。
ローズマリーの赤ちゃん(原題:Rosemary’s Baby)
この映画を一言で表すと?
母性と悪魔が交錯する、精神的恐怖の金字塔。
どんな話?
新婚のローズマリーが妊娠するが、周囲の人々の奇妙な行動と悪夢に悩まされていく。やがて彼女の胎内に宿っているのは“普通の子”ではないことが示唆される。母になることへの喜びと恐怖が同居する不穏な物語。
ここがおすすめ!
『ザ・ブルード』と同じく「母親」「出産」「身体の異形化」をテーマにした傑作。ポランスキーの演出が生み出す圧倒的な不安感と閉塞感は、今見ても異様なリアリティを持つ。静かな狂気に満ちた心理ホラーの原点的存在。
エレファント・マン(原題:The Elephant Man)
この映画を一言で表すと?
“異形”の中に宿る、人間の尊厳と優しさを描く感動の名作。
どんな話?
奇形の男性ジョン・メリックが見世物として虐げられながらも、医師トリーヴスの助けで人間としての尊厳を取り戻していく。醜い外見と純粋な心の対比が美しく、涙なしでは観られない物語。
ここがおすすめ!
『ザ・ブルード』が「心の傷の外化」を描いたのに対し、本作は“外見に宿る心の美しさ”を描く。デヴィッド・リンチ監督によるモノクロ映像が神々しく、恐怖ではなく深い感動を呼ぶ。身体と魂のテーマが響き合う1本。
ポゼッサー(原題:Possessor)
この映画を一言で表すと?
他人の身体に入り込む暗殺者――新世代クローネンバーグの狂気。
どんな話?
企業の秘密組織で働く暗殺者タシャは、他人の脳に入り込み殺人を行う特殊能力を持つ。しかし任務を重ねるうちに、自我と他者の境界が崩壊していく。やがて彼女は、自分が誰なのかすら分からなくなっていく――。
ここがおすすめ!
『ザ・ブルード』の監督デヴィッド・クローネンバーグの息子、ブランドン・クローネンバーグが手掛けたサイコSFスリラー。肉体と意識の融合、アイデンティティの喪失というテーマはまさに父の遺伝子そのもの。冷徹で美しい狂気が光る。






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